IELTSのことならプラスワンポイント!
利点は「merit」じゃないの?|PlusOnePoint

カタカナに惑わされない英語力

利点は「merit」じゃないの?

日本語で「メリット」という単語は、利点や長所を表す一般的な言葉として広く使われています。そのため、英語で「利点」を表現する際に、多くの学習者が自然に「merit」という単語を選んでしまいます。

しかし、英語の「merit」は日本語の「メリット」とは異なるニュアンスを持ち、場面によっては不自然な印象を与えたり、意図しない意味に受け取られたりすることがあります。この記事では、日本語と英語の語感の違い、そして状況に応じた適切な表現の選び方を具体例とともに解説します。

日本語の「メリット」と英語の「merit」

日本語の「メリット」は、利点や長所を表す一般的な言葉として定着しています。

日本語の「メリット」の使われ方

  • 日本語の「メリット」の例
  • 「この商品のメリットは価格が安いことです」
  • 「オンライン学習のメリットとデメリット」
  • 「電気自動車には環境面でメリットがある」

このように、日本語ではあらゆる場面で「利点」「長所」の意味で使われますが、いずれも「メリット」に置き換えることができてしまいます。

ネイティブスピーカーは意外と「merit」を使わない

しかし、英語の「merit」は、日本語の「メリット」ほど幅広く使われる単語ではありません。英語では「merit」よりも「advantage」「benefit」の方がはるかに一般的に使われます。もちろん、「merit」を使っても文法的に間違いではないことも多いですが、ネイティブスピーカーは「利点=merit」というようには認識していないのです。

「merit」の主な意味

では、なぜネイティブスピーカーは「利点」を表現する際に「merit」を好まないのでしょうか。それは、英語の「merit」は単なる「利点」以上の意味を持つ単語だからです。

「merit」の3つの意味

  • 「merit」の意味
  • ①価値、真価:何かが持つ固有の価値や質
  • 例:The idea has merit. (そのアイデアには価値がある)
  • ②功績、美点:称賛に値する性質や業績
  • 例:She was promoted on merit. (彼女は実力で昇進した)
  • ③長所:ある提案や議論の長所(複数形で)
  • 例:Let's discuss the merits of each proposal. (各提案の長所を議論しましょう)

「merit」が持つニュアンス

「merit」という単語には、評価的・判断的なニュアンスがあります。単に「良い点がある」というよりも、「価値があると認められる」「真価が問われる」といった含みを持ちます。

  • 「merit」のニュアンス
  • 評価的:何かの真価や価値を判断する文脈で使われる
  • フォーマル:日常会話よりも、議論や評価の場面で使われる
  • 総合的:個別の利点というより、全体的な価値を指すことが多い

利点を表す適切な英語表現

では、日本語の「メリット」に相当する英語表現は何でしょうか。状況に応じて、以下のような単語が適切です。

「advantage」(最も一般的)

「advantage」は、日本語の「メリット」に最も近い、最も一般的な表現です。あらゆる文脈で使えます。

  • 「advantage」の使用例
  • One advantage of online learning is flexibility.
  • オンライン学習の利点の一つは柔軟性です。
  • The main advantage of this approach is cost-effectiveness.
  • このアプローチの主な利点は費用対効果です。
  • 最も汎用性が高く、どんな文脈でも自然に使える表現。

「benefit」(恩恵・便益)

「benefit」は、何かから得られる具体的な恩恵や便益を指します。「advantage」よりも、受け取る側の視点が強調されます。

  • 「benefit」の使用例
  • The benefits of exercise include improved health and reduced stress.
  • 運動の利点には、健康の改善とストレスの軽減が含まれます。
  • This policy will bring economic benefits to the region.
  • この政策は地域に経済的な恩恵をもたらすでしょう。
  • 具体的な恩恵や便益を強調したいときに最適。

「strength」(強み)

「strength」は、何かの強みや優れた点を指します。比較や評価の文脈でよく使われます。

  • 「strength」の使用例
  • One of the strengths of this method is its simplicity.
  • この方法の強みの一つは、そのシンプルさです。
  • The company's main strength is its innovative culture.
  • この会社の主な強みは、革新的な文化です。
  • 比較や評価の文脈でよく使われます。

「positive aspect / positive point」(良い点)

よりカジュアルな表現として、「positive aspect」や「positive point」も使えます。

  • 「positive aspect」の使用例
  • One positive aspect of remote work is the elimination of commuting time.
  • リモートワークの良い点の一つは、通勤時間がなくなることです。
  • カジュアルな表現です。口語でよく使われます。

具体例で比較する

同じ内容を表現する際、どの単語を使うかで印象が変わります。実際の例で比較してみましょう。

例1:オンライン教育

  • ネイティブがあまり使わない表現(merit)
  • Online education has several merits. The first merit is that students can study from anywhere. Another merit is the lower cost compared to traditional education.
  • オンライン教育にはいくつかのメリットがあります。最初のメリットは、学生がどこからでも勉強できることです。もう一つのメリットは、従来の教育と比べて費用が安いことです。
  • 「merit」を繰り返し使うことは間違いではないが、ネイティブスピーカーはこの文脈では他の単語を選ぶことが多いです。
  • 自然な表現(advantage / benefit)
  • Online education offers several advantages. First, students can study from anywhere, providing greater flexibility. Additionally, it typically costs less than traditional classroom-based education, making it accessible to a wider range of learners.
  • オンライン教育にはいくつかの利点があります。第一に、学生はどこからでも勉強でき、より大きな柔軟性を提供します。さらに、通常は従来の教室ベースの教育よりも費用が安く、より幅広い学習者にアクセス可能にします。
  • 「advantage」を使い、説明を加えることで、より自然で説得力のある文章になります。

例2:環境政策

  • ネイティブがあまり使わない表現(merit)
  • The merit of renewable energy is that it does not produce carbon emissions.
  • 再生可能エネルギーのメリットは、二酸化炭素排出を生み出さないことです。
  • 単数形の「merit」をこの文脈で使うことは間違いではないですが、ネイティブスピーカーは他の単語を選ぶ傾向があります。
  • 自然な表現(advantage / benefit)
  • A key advantage of renewable energy is that it produces no carbon emissions, helping to mitigate climate change.
  • 再生可能エネルギーの主な利点は、二酸化炭素排出を生み出さず、気候変動の緩和に役立つことです。
  • または:
  • One of the main benefits of renewable energy is its carbon-neutral nature.
  • 再生可能エネルギーの主な利点の一つは、カーボンニュートラルであることです。
  • 「advantage」や「benefit」を使うことで、より自然な英語になります。

「merit」を使える場面

では、「merit」はまったく使えないのでしょうか。いいえ、適切な場面では効果的に使えます。

複数形で使う場合(merits)

「merits」(複数形)で「長所と短所」や「価値」を議論する文脈では、自然に使えます。

  • 「merits」の適切な使用例
  • We need to evaluate the merits and demerits of each proposal before making a decision.
  • 決定を下す前に、各提案の長所と短所を評価する必要があります。
  • Let's discuss this issue on its merits.
  • この問題をその価値に基づいて議論しましょう。
  • 総合的な評価や判断の文脈で使うと自然です。

価値や真価を表す場合

「merit」が「価値がある」「真価がある」という意味で使われる場合は、他の単語では代替できません。

  • 「merit」の価値・真価としての使用例
  • This proposal has considerable merit and deserves serious consideration.
  • この提案にはかなりの価値があり、真剣な検討に値します。
  • The theory lacks scientific merit.
  • その理論には科学的な価値がありません。
  • 「価値がある」「真価がある」という意味では「merit」が最適です。

実力・功績を表す場合

「merit」が「実力」や「功績」を表す場合も、固有の用法です。

  • 「merit」の実力・功績としての使用例
  • She was selected purely on merit.
  • 彼女は純粋に実力で選ばれました。
  • The award recognises academic merit.
  • この賞は学業成績を認めるものです。
  • この用法では「merit」以外の単語は不適切と考えておきましょう。

ポイント制度での「merit」と「demerit」

「merit」はポイント制度や評価システムで頻繁に使われます。これは単なる「利点」という意味を超えた、システム化された概念です。良い行いで「merits」を得て、悪い行いで「demerits」を受けます。

  • ポイント制度での使用例
  • He earned five merits for his essay.
  • 彼はエッセイで5ポイントを獲得した。
  • You'll get 3 demerit points for speeding.
  • スピード違反で減点3点になるよ。
  • 評価や記録のシステムでは「merit」「demerit」が標準的な用語です。

このように、制度化されたポイントシステムでは「merit」が固有名詞のように使われるため、他の単語で置き換えることはできません。一方で、日常的な「利点」を表現する場合には、「advantage」や「benefit」を使うのが自然です。

まとめ

日本語の「メリット」と英語の「merit」の違い、そして適切な表現の選び方について解説しました。

日本語で「メリット」という単語は、利点や長所を表す一般的な言葉として広く使われていますが、英語の「merit」は文法的に間違いではないものの、ネイティブスピーカーは「利点」を表現する際に他の単語を選ぶことが多いのです。

IELTSライティングで「利点」を表現する場合、「advantage」や「benefit」を使うのが最も自然で一般的です。「merit」は、複数形で長所・短所を議論する場合、価値や真価を表す場合、実力や功績を表す場合、そしてポイント制度の文脈では効果的に使えますが、個別の利点を列挙する際にはあまり使われません。

  • 重要なポイントのまとめ
  • 日本語の「メリット」と英語の「merit」は必ずしも一致しない
  • 「merit」を使うことは文法的に間違いではないが、ネイティブは他の単語を選ぶ
  • 利点を表すには「advantage」「benefit」が最適
Ask the Expert
Mika

プラスワンポイントでは、IELTS学習に関する疑問やお悩みを相談できる『無料IELTS学習相談』を実施しています。IELTSの学習方法やスコアアップのコツ、勉強計画の立て方などを、経験豊富なカウンセラーが無料でアドバイスいたします。お気軽にご相談ください。

  • 試験を何回受けてもスコアがなかなか上がらない
  • 自分自身の学習方法が正しいかどうかを知りたい
  • 学習・受講プランの相談に乗ってもらいたい

このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

Hibiki

この記事を書いた人

Hibiki Takahashi

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,000名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住13年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

あわせて読みたい記事

現在形は現在の話ではない?
現在形は現在の話ではない?...

2025年11月28日更新

ライティング・タスク2

「現在形」という名前から、つい「今起きていること」を表すと思いがちですが、実は英語の現在形は「今この瞬間」を表す時制ではありません。現在形の本質的な役割は、習慣...

記事を読む
knowは「知る」ではない!?
knowは「知る」ではない!?...

2025年12月7日更新

ライティング・タスク2

IELTSライティングでよく見られる動作動詞と状態動詞の誤用について解説します。特に「know」は「知っている」という状態を表す動詞であり、「知る」という動作を...

記事を読む
IELTS奮闘記⑥爆弾投下(オーストラリア・パースでソーシャルワークな日々)
IELTS奮闘記⑥爆弾投下(オーストラリア・...

2020年10月10日更新

紹介記事

皆さま、お待たせいたしました課題の提出にバタバタしておりましたため(単に期限をすっかり忘れていただけ)、更新が滞っていましたが、IELTS奮闘記の続きです。12...

記事を読む
6.0以上では必須知識!トピックセンテンスはなぜ重要なのか?
6.0以上では必須知識!トピックセンテンスは...

2025年11月25日更新

ライティング・タスク2

IELTSのライティング・タスク2は『Band Descriptors』と呼ばれる4つの採点基準に従って評価されます。そのうち、Lexical Resource...

記事を読む
独学で絶対にやっておきたいこと!
独学で絶対にやっておきたいこと!...

2025年11月17日更新

ニュースレター

独学で絶対にやっておきたいこと! リスニング、リーディングのスコア確認 リスニング、リーディングは解説がないと、よく理解できない。だから、解説のある、参考書で練...

記事を読む
上級者でも間違えがちな動詞
上級者でも間違えがちな動詞...

2025年11月25日更新

ライティング・タスク2

「let」と「allow」は上級者でも間違えやすい動詞です。どちらも「許可する」という意味を持ちますが、使い分けに注意が必要です。let: (したいように)させ...

記事を読む