IELTSライティングでは、語彙・文法などの表現を評価する項目があります。表現の正確性を高めたい、自然な表現にしたい、と誰もが思うところですが、表現をブラッシュアップするには一体何をしたらいいのか、そんな疑問に直面している人も多いと思います。ひたすら単語帳を覚える、ニュースなどの自然な英語に触れる、など人それぞれのやり方がありますが、ここではライティングサミットで実践していただいている方法をご紹介します。
受講生の回答
以下は、ライティングサミットで取り扱ったタスクと、それに対する回答の一部です。
- Task
- A portion of the human population believes that criminal behaviour has its roots in genes. Others think that circumstances lead people to commit crimes. Discuss both views and give your own opinion.
- 一定数の人は、犯罪行為の根源は遺伝子にあると考えています。一方で、環境が人々に犯罪を犯させていると考える人もいます。両方の見方を説明し、自分の意見を述べなさい。
- 受講生の回答例
- イントロダクション
- Some believe that genes have something to do with commiting crimes, while others argue that circumstances have more direct impacts on people to such conducts. I believe that circumstances have more influences on people.
- (後略)
表現のブラッシュアップ
ライティングサミットで実践していただいている表現のブラッシュアップ方法は以下のとおりです。
- 表現のブラッシュアップ方法
- 1. 自分が書いたエッセイの中から今日身につけたい表現を最大5つ選ぶ
- 2. それらの表現について(AIではなく)辞書で調べる
- 3. 覚えておきたいポイントを(欲張らずに)ノートなどにまとめる
- 4. それらの表現を使った英作文を通して身についているかを確認する
今回取り上げる表現はこちらです。
- 今回取り上げる表現
- have something to do with
- commit crimes
- circumstances
- impacts/influences
have something to do with
「have something to do with 〜」は文法的には正しく不自然でもありませんが、アカデミックエッセイではあまり使わない印象です。代わりに「associated with 〜」「linked to 〜」「contribute to 〜」などの表現が使えると自然ですね。
言われてみれば知っている、という表現ばかりだと思いますが、いざ試験の環境でこれらの表現を引き出すためには、もっと慣れ親しんでおく必要があります。
ここでは「linked to 〜」という表現を身につけることにしましょう。
辞書で調べる
まず、辞書で「linked to 〜」を調べましょう。ここではウィズダム英和辞典を引用します。
辞書には、「(人・物・出来事)をつなぐ、関連付ける «with/to» (!しばしば受け身で)」と定義されています。
次に例文で確認します。「しばしば受け身で」と言われていますので、3つ目の例文が良さそうですね。
- 例文
- Many famous phrases are linked to Shakespeare.
- 有名な文句の多くはシェイクスピアと関係があるものだ
4つ目の例文は能動態ですが、基本的には同じ形ですね。
英作文で練習する
次に、英作文を通してこの表現を練習してみましょう。ライティングサミットでは自動的に英作文の練習問題作成と添削ができる専用アプリを使用していますが、みなさんはAIなどを使って「この表現を使った英作文の練習問題を5つ作ってほしい」などと依頼をしてもいいでしょう。
欲張るといけませんが...
欲張るといけませんが、参考までに以下のような表現を使うことができます。
- 遺伝子に起因する/関係がある
- be rooted in genetics(遺伝子に根ざしている)
- be genetically determined(遺伝的に決定されている)
- be attributed to genes/genetics(遺伝子に起因する)
- stem from genetic factors(遺伝的要因に由来する)
- be associated with genetic makeup(遺伝子構成と関連している)
- be linked to hereditary factors(遺伝的要因と結びついている)
- be genetically influenced(遺伝的に影響を受けている)
- be biologically predisposed(生物学的に素因がある)
- result from genetic predisposition(遺伝的素因から生じる)
commit crimes
次は、「commit crimes」についてです。今回覚えたいのは、スペリングです。回答では、「... have something to do with commiting crimes」と書いていましたが、正しくは「committing crimes」です。
「-ing」になると子音が重なる動詞がいくつかありますね。今回はそれらをまとめて確認しておくことにしましょう。
- -ing形で子音が重なる動詞
- commit → committing
- submit → submitting
- permit → permitting
- admit → admitting
- occur → occurring
- prefer → preferring
- refer → referring
- begin → beginning
実はこれらには共通する特徴があります。それは、「短母音+単子音」で終わり、かつ最後の音節にアクセントがあるという点です。このような動詞は、-ingや-edをつけるときに最後の子音を重ねます。逆に、「enter → entering」のように最後の音節にアクセントがない場合や、「meet → meeting」のように長母音の場合は子音を重ねません。このルールを覚えておくと、スペリングミスを防ぐことができますね。
circumstances
つぎは、「circumstances」についてです。この表現自体は間違いではありませんが、あまり馴染みのない語彙かもしれませんので、言い換えに苦労しそうです。そこで、いくつかの言い換えを考えておきましょう。
「circumstances」自体は「状況」「環境」を意味する語彙ですが、この問題では「遺伝子」と対比していますので「環境因子」と理解するのが良さそうですね。そうすると以下のような言い換えが考えられそうです。
- circumstancesの言い換え
- environmental factors(環境要因)
- situational factors(状況的要因)
- external factors(外的要因)
- social conditions(社会的条件)
- upbringing(育ち・養育環境)
- one's environment(環境)
「circumstance」にも「circumstantial」という形容詞はありますが、「circumstantial evidence(状況証拠)」のように法律用語として使われることが多く、「circumstantial factors」のような表現はこの文脈では適していません。
impacts/influences
最後は「impacts/influences」についてです。特に今回確認しておきたいのは、単数形で用いるのか、複数形で用いるのかです。
回答では「circumstances have more direct impacts on people to such conducts」「circumstances have more influences on people」と2回とも複数形で用いられていました。しかし、この文脈ではどちらも不可算名詞として単数形の方が自然です。一般的な比較を述べる場合は不可算名詞として単数形で用いるのが適切です。
ただし、「positive」「negative」「lasting」「significant」などの性質を表す形容詞を伴って表現する場合には、「一つの影響力」として可算名詞の扱いをします。また、「複数の異なる種類の影響」を強調したい場合には複数形を使うこともあります。
- 例文
- Environmental factors have great influence on criminal behavior.
- 環境要因は犯罪行為に大きな影響を与えます。
- Childhood trauma can have a lasting impact on one's psychological development.
- 幼少期のトラウマは心理的発達に永続的な影響を与える可能性があります。
- The policy had various impacts on different sectors.
- その政策は異なる分野にさまざまな影響を与えました。
ちなみに、「circumstances have more direct impacts on people to such conducts」という表現は「on people to such conducts」の部分が文法的に誤りです。「impact on〜」や「influence on〜」という表現では、前置詞は「on」を使います。また、「such conducts」という表現も不自然で、「criminal behavior」や「committing crimes」などの表現の方が適切です。
- 修正例
- circumstances have more direct impact on criminal behaviour
- circumstances have greater influence on people's tendency to commit crimes
- circumstances have more direct impacts on people to such conducts
まとめ
このように復習をするポイントを絞って学習することで、次回から同じようなミスを防ぐことができます。大切なのは、一度に多くのことを覚えようとせず、自分が実際に使った表現の中から「今日はこれを身につける」と決めて、深く理解することです。
今回取り上げた表現のポイントをもう一度確認しておきましょう。
- 今回のポイント
- アカデミックライティングでは「have something to do with」よりも「be associated with」「contribute to」などを使う
- 「短母音+単子音」で終わり最後の音節にアクセントがある動詞は、-ing形で子音を重ねる(committing, submitting など)
- 「circumstances」は「environmental factors」「situational factors」などで言い換えられる
- 「impact」「influence」は一般的な程度を述べる場合は不可算、性質を表す形容詞を伴う場合は可算(a positive impact)、複数の異なる影響を強調する場合は複数形
表現のブラッシュアップは一朝一夕にはできませんが、このような地道な積み重ねが確実な力となります。次回エッセイを書く際には、「このミスだけはしない」という気持ちで取り組んでみましょう。
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この記事を書いた人
Hibiki Takahashi
日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,000名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住13年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。
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