【IELTSスピーキング・パート2】

トピックに左右されず
2分間話し続けるには?

SPEAK FOR 2 MINUTES

IELTSのスピーキング・パート2では、1〜2分間続けて一人で話し続けることが求められます。しかも、トピックはその場で与えられるため、十分に準備する時間がありません。場合によっては予想もしていなかったようなトピックにあたってしまい、1分どころか30秒すら話せなかった、ということも起こりえます。

そのような事態にならないように、この記事ではトピックに左右されずに2分間話し続けるためのヒントをご紹介します。

自分の話す速さを知る

皆さんは自分の話す速さを知っていますか?自分の話す速さを知っておくことは2分間というスピーチを成功させるためにとても大事なことです。「え、そんなの計ったことないよ...」という方がほとんどだと思いますので、今知らなくても大丈夫です。でもこれから紹介する方法で自分の話す速さを計ってみてください。

話す速さとは?

話す速さ(speech rate)は、1分間に何語話すか(words per minutes)で表されます。例えばネイティブが話す日常会話の場合、120〜150語/分が平均と言われています。会議などのプレゼンテーションであればもう少しゆっくりのペースになるでしょう。一方、テレビ番組などで軽快にトークをするパーソナリティは200語/分以上で話しています。

では、私たちはどのくらいの速さを目標にすればいいのでしょうか?

実はどのようなスピードであっても問題ありません。あくまで「自分のスピード」で話せばいいのです。ではなぜ「自分の話す速さ」を知っておくことが重要なのでしょうか?それは、スピードを知っておくとどのくらいの分量を話せば何分くらいのスピーチになるかが容易に想像できるようになるからです。

パート2のスピーチでは、与えられたトピックに対して1分間の準備時間が与えられます。その際、大きな話の柱を考えることになります。「誰との話?」「いつの話?」「その時のエピソード」など。自分が話すおおよその速さを知っているとそのような組み立てがしやすくなります。

繰り返しになりますが、話すスピードは速ければいいわけではありません。もちろん極端にスピードが遅いと「slow speech」と判断されてしまいますが、スピードを上げて速く話せば流暢になるわけではないということを覚えておきましょう。

「速く話す」と「流暢」は別のもの
スピードを上げて速く話せば流暢になるわけではない。

緊張しているなら意識的にゆっくり話す

スピーキングの試験は誰でも緊張します。これはネイティブであっても同じです。みなさんが日本語で面接を受ける状況を想像してみてください。これから何を聞かれるかわからないような状況で緊張をしない人のほうが珍しいでしょう。人は緊張をすると交感神経が高ぶり話すスピードは速くなりがちです。もし自分がいつも以上に緊張しているなぁと感じたら、深呼吸をしながら意識的にゆっくり話すことを心がけましょう。

緊張しているなら意識的にゆっくりと
自分がいつも以上に緊張しているなぁと感じたら、深呼吸をしながら意識的にゆっくり話すことを心がけましょう。

箇条書きを答えようとせずエピソードで話す

パート2の問題は以下のような感じで、メインの質問の下にいくつかの箇条書きが添えられています。

  • Describe a person you know who is from a different culture.
  • You should say:
  • - who this person is
  • - when you first met this person
  • - what kind of cultural differences you have experienced
  • and explain how you felt when you met this person.

箇条書きはすべて答えられなくても大丈夫

意外かもしれませんが、"You should say ..."以降に書かれている質問はすべて答えなくてもペナルティなどはありません。そもそもIELTSスピーキングのパート2はプレゼンテーションではないため、2分間の制限時間にスピーチを終了させなければいけないというルールはありません。そのため、2分間経って試験官が静止したとしてもペナルティなどはないのです。それどころか、むしろ2分以上話し続ける意欲があることの方をポジティブに評価してもらえることも多いです。

もちろん箇条書きの質問に順番に答えていくことでスピーチの流れを作りやすくなりますので、まだスピーチに慣れていない方は、箇条書きの質問を順番に答えていくといいでしょう。

中級者以上の方は、「Describe ...」というメインの質問だけをしっかり見て、あとは自由にスピーチを組み立ててもいいでしょう。もっとも、箇条書きの質問の部分に書かれていることは、いわゆる「5W1H(いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ・どのように)」に関する質問がほとんどなので、状況を説明してく上で自然と含まれることになります。

箇条書きで「答えよう」としてはいけない

ありがちな失敗として、箇条書きの質問に一つずつ「答えよう」としてしまうために、箇条書きの質問を答え終わったとともにネタ切れになってしまうことがあります。僕も最初のスピーキングの試験では同じ失敗をしましたので気持ちは良くわかります。

そうではなく、話を広げるためのヒントとして箇条書きの質問を捉えるようにしてみてください。そのためには、箇条書きの質問に答えるのではなく、あくまで大きな一つの話(エピソード)として話をすすめることが大切なのです。

2分間話し続けられる人の頭の中はどうなってる?

では、実際に2分間話し続けられる人は、頭の中でどのような組み立てをしているのでしょうか?

ここではモデルアンサーをメインで紹介するというよりも、実際の試験でより役立つように、話の組み立て方やプランニングについてお話をしてみたいと思います。

  • Describe a person you know who is from a different culture.
  • You should say:
  • - who this person is
  • - when you first met this person
  • - what kind of cultural differences you have experienced
  • and explain how you felt when you met this person.

これはオリジナルで作成した問題ですが、例えばこのようなトピックが出て「ラッキー!」と思える人はほとんどいないでしょう。どちらかというと「今回は終わったかな...」と諦めてしまう人もいるかもしれません。

しかし、これから紹介する方法で考えると、諦める必要などまったくないことがわかります。

Step 1: まずは「人」を想定する

トピックは「Describe a person ...」となっているので、「人」について話をすることになります。もちろん「文化の異なる人」ですが、そこは後で考えます。まずは誰について話をするかを決めましょう。普段からたくさんスピーキングの練習をしている方であれば、「この人についてなら比較的話しやすい」という人がいるはずです(いない人は練習で作っておきましょう)。ここでは仮に会社の同僚のAさんということにしましょう。

  • 人→会社の同僚のAさん

Step 2: どんな「文化の違い」を話すかを考える

このトピックで最も難しく感じるのは「文化の違い」をどのように話すかでしょう。ここは想像力をしっかり働かせる必要があります。「文化」という言葉を深く考えすぎてはいけません。みなさんが「文化の違い」と聞いてパッと思いつくものはなんですか?例えば、「外国人は家では靴を脱がない」「外国でチップを払う」「日本人は毎日お風呂に入る」などなど。実は何でもいいんです。その中から話しやすそうなものを1つ決めます。ここでは「日本人は毎日お風呂に入る」にしてみましょう。

  • 文化の違い→日本人は毎日お風呂に入る

Step 3: 話のつじつまを合わせる

次に、Step 1とStep 2で考えた内容をつなぎ合わせます。具体的には会社の同僚Aさんは日本人ではなく外国人である想定のほうが話しやすそうです。Tomという架空の同僚にしておきましょう。またお風呂の話につなげるために、例えば「先日、家に泊まりに来た」という想定にすると話を広げやすそうです。場合によっては「靴を脱がない」という文化の違いについても触れられそうです。

Step 4: エピソードでゆっくり話す

ここまでの準備でおそらく1分が経過しているでしょう。ですので、あとはこれらの状況を想像しながら話を始めることになります。重要なことは、箇条書きにの質問に答えるのではなく、なるべく「エピソードとして話す」ということです。エピソードとは、過去に経験した出来事を相手にストーリーとして伝えるという意味です。そのためには何も知らない相手にひとつひとつ丁寧に説明をしてくことが求められます。その意識を持つことで試験官も話をフォローしやすくなり、自分もたくさん話すことが出てくるのです。

  • ・Let me talk about one of my colleagues, Tom.

話の切り出しはこんな感じでもいいでしょう。「エピソードで話す」という意識を持っていれば、自分がどのような会社で働いていて、彼とはいつ知り合って、どのくらいの年数一緒に働いているのか、など自然に話を広げることができるはずです。

  • ・This company is a marketing company, particularly focused on social media marketing such as Twitter.
  • ・I've been working for this company for more than xxx years, but I only met him very recently when we were assigned to the same project.

ちなみに「普通のスピード」で話すと、ここまでの3センテンスでおおよそ20秒くらい使っていることになります。クリアするべき最低ラインは「1分」ですから、もう3分の1経過です。余裕でしょ?

続いて、「文化の違い」について話をつなげていかないといけませんので、ある日Tomが自分の家に泊まりに来たことをお話ししてみましょう。

  • ・When that project was finished, I invited him to my home and we had dinner together.
  • ・Since he is an American, I also wanted to learn English from him.

どうですか?それほど難しい英語は使わなくても、状況を相手に伝えられることがわかってきたと思います。

  • ・After dinner and lots of drinks, I decided to let him stay over.
  • ・I showed him around my house and he said he wanted to take a shower.
  • ・I told him he could have a bath if he wanted to, but then he said, to my surprise, that he had never had a bath.

Step 5: 最後の質問に答える

このようにエピソードで話すと箇条書きの質問にはだいたい答えたことになりますが、最後の質問(and explain ...の部分)は答えられていない場合があります。最後の質問は多くの場合「理由(and explain why ...)」、あるいは今回のように「感情(and explain how you felt ...)」が聞かれています。

今回は「how you felt when you first experienced the difference」ですのでどのように感じたかを説明することにしましょう。

  • ・I was really taken aback by that, because it was the first time I had ever met someone who had never taken a bath.

このあたりでだいたい1分が経過したことになります。

Step 6: 全部の質問に答えたあとはどうする?

ここからは今までの話をさらに広げていくことになります。これまでは自分が経験した文化の違いの話をしましたので、逆にTomも同じように文化の違いを経験していたことを話すことにしてみましょう。

  • ・He then told me many stories about the cultural differences he had experienced since he came to Japan.
  • ・One of the things that surprised him was that nobody paid tips, even in a very decent restaurant.
  • ・He was even more surprised when he tried to give a tip and the restaurant did not accept it.
  • ・He was also surprised that when he greeted people in a convenience store, none of the staff responded.

Step 7: 話すことがなくなったら未来の話へ

おそらくこのあたりでだいたい1分半くらいでしょう。このままラップアップ(まとめ)をして終わってもいいですし、もう少し話せそうなら「未来」の話に広げてみましょう。エピソードは「過去」の話です。「過去」から「未来」へ話を広げていくのです。

  • ・This experience inspired me to study in Australia a year later.
  • ・I became much more interested in the cultural differences and wanted to learn more about different cultures.
  • ・I chose Australia because I found out that people from many different cultures live together and it is one of the most successful multicultural countries in the world.
  • ・Although I have not been to Canada or the USA yet, I would definitely like to go there in the near future.

いかがだったでしょうか?

このようにエピソードで話すと箇条書きの質問にはだいたい答えたことになり、また話も広げやすいことがわかっていただけたかと思います。ここで紹介した方法はあくまで僕が実践していた方法ですので、この方法が合っている人もいればそうではない人もいると思います。あくまで一つの方法として参考にしていただければ幸いです。

回答例

Let me talk about one of my colleagues, Tom. This company is a marketing company, particularly focused on social media marketing such as Twitter. I've been working for this company for more than 10 years, but I only met him very recently when we were assigned to the same project.

When that project was finished, I invited him to my home and we had dinner together. Since he is an American, I also wanted to learn English from him. After dinner and lots of drinks, I decided to let him stay over. I showed him around my house and he said he wanted to take a shower. I told him he could have a bath if he wanted to, but then he said, to my surprise, that he had never had a bath. I was really taken aback by that, because it was the first time I had ever met someone who had never taken a bath.

He then told me many stories about the cultural differences he had experienced since he came to Japan. One of the things that surprised him was that nobody paid tips, even in a very decent restaurant. He was even more surprised when he tried to give a tip and the restaurant did not accept it. He was also surprised that when he greeted people in a convenience store, none of the staff responded.

This experience inspired me to study in Australia a year later. I became much more interested in the cultural differences and wanted to learn more about different cultures. I chose Australia because I found out that people from many different cultures live together and it is one of the most successful multicultural countries in the world. Although I have not been to Canada or the USA yet, I would definitely like to go there in the near future.

WRITER
PROFILE

Hibiki

Hibiki TAKAHASHI

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は2,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住10年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

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