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トピックセンテンスは
なぜ重要なのか?
トピックセンテンスは
なぜ重要なのか?
IELTSのライティング・タスク2は『Band Descriptors』と呼ばれる4つの採点基準に従って評価されます。そのうち、Lexical Resource(語彙)とGrammatical Range and Accuracy(文法の幅と正確性)については表現面での評価です。残りの2つである、Task Response(タスクへの応答)とCoherence and Cohesion(首尾一貫性とつながり)は内容面での評価です。エッセイでは、それぞれのボディの段落にトピックセンテンスと呼ばれる文が存在します。IELTSのような英語資格試験では、回答の中にトピックセンテンスがあるかどうか、トピックセンテンスがしっかり機能しているかどうかが、スコアメイクをする上で非常に重要です。この記事では、特にライティングで6.0以上のスコアを必要とする人には必須となる、「トピックセンテンス」について詳しく解説いたします。『英語ライティング鬼100則』(明日香出版社)をお持ちの方は、Must 58〜59(266〜273ページ)もご参照ください。
トピックセンテンスとは?
トピックセンテンスに含める要素は2つ
トピックセンテンスとは、「その段落でどのようなことを議論しようとしていて、それに対して書き手がどのように主張をする予定であるか」を簡潔にまとめた文です。逆に言うと、トピックセンテンスを読めば、その段落で何を議論しようとしていて、どのような主張を展開しようとしているのか、おおよその見当がつくことになるはずなのです。
前者のことを「トピック」、後者のことを「メインアイデア」と呼びます。通常、トピックセンテンスにはトピックとメインアイデアが含まれていることになります。
トピックセンテンスに含む要素
- ❶議論の方向性(トピック)=その段落でどのようなことを議論しようとしているのか
- ❷書き手の主張(メインアイデア)=トピックに対して書き手がどう主張をする予定であるか
議論の方向性(トピック)
「IELTSでは議論するべきことは与えられていますので、わざわざ議論の方向性を書かなくてもいいのではないか?」と思いたくなるかもしれません。確かに試験では「問題」が存在し、エッセイはその「回答」です。しかしエッセイというものは本来は「問題文」が存在しない前提で読まれます。
すなわち、問題(タスク)を読まなくても、、エッセイだけを読めば何について議論をしようとしていて、それについて書き手はどのようなポジションでどのような主張をしようとしているのかが分かるのが理想的なエッセイなのです。したがって、問題が与えられているIELTSライティングにおいても、各段落の中で議論の方向性を示すことが重要なのです。
全体で250〜300語と比較的短いエッセイを書くIELTSでは、通常2〜3つのボディでエッセイを構成します。その、それぞれの段落に「議論の方向性」が存在します。例えば、何かの意見について賛成か反対かを問われている問題(To what extent do you agree or disagree with this opinion?)において「賛成」として書く場合にも、それぞれのボディで同じ議論をするとは限りません。
『ライティング・タスク2 問題タイプ別の回答の注意点』で紹介したように、To what extent do you agree or disagree? という問いに対するエッセイの構成方法は数パターンあります。その段落が賛成意見について議論を深めようとしているのか、反対意見について言及をしようとしているのか、、読み手を惑わせることがないように最初の一文でしっかり方向性を示すようにしましょう。
書き手の主張(メインアイデア)
議論の方向性が示せたら、次はそれに対する書き手のアイデアを簡潔に示しましょう。その段落で色々と説明するのですが、それを、「ひとこと」でまとめたものが「メインアイデア」です。
メインアイデアは、言い換えれば「タスクへの直接の回答タスクへの直接の回答」になります。もし、何かの利点・欠点について聞かれているのであれば、利点や欠点が何であるのかを答えたものがメインアイデアになります。
問題タイプ別トピックセンテンス
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議論タイプの問題
IELTSのライティング・タスク2で出題される問題タイプは、『ライティング・タスク2 問題タイプ別の回答の注意点』で紹介したように6種類あります。これらを「議論をするタイプの問題」と「説明をするタイプの問題」に分けて考えてみましょう。ひとまず「問題タイプ6:Combined / Irregular questions」については除いて考えます。
- 議論タイプの問題
- 問題タイプ1
- To what extent do you agree or disagree?
- 問題タイプ2
- Discuss both views and give your own opinion.
- 問題タイプ5
- Is this a positive or negative development?
議論をするタイプの問題は、この3つです。「ポジションを答える問題」と考えてもいいでしょう。「是か非か」「賛成か反対か」を考えるタイプの問題ですね。
このタイプの問題では、トピックとメインアイデアが因果関係になっていることがほとんどです。因果関係とは「AだからB」のようになっているもので、今回の場合は、メインアイデアがトピックの理由や根拠を表しています。
したがって、トピックとメインアイデアは、理由を表す表現を使ってつなぎ合わせることになります。代表例はbecauseです。あえて「公式」にするのであれば、次のようなイメージになります。
- 議論タイプのトピックセンテンス
- トピックセンテンス = 議論の方向性(トピック)+ because + 書き手の主張(メインアイデア)
説明タイプの問題
- 説明タイプの問題
- 問題タイプ3
- Advantage / Disadvantage
- 問題タイプ4
- Cause / Problem / Effect / Solution
説明をするタイプの問題はこの2つです。「ポジションのない問題」と考えてもいいでしょう。もちろん、「問題タイプ3b:Do the advantages of this outweigh the disadvantages?」ではポジションを示す必要がありますので厳密には「議論タイプ」の方に入れるべきところですが、これについては後ほど解説します。
「〇〇の利点・欠点は何ですか?」という問題に対して答えている状況を想像してみましょう。そうすると、議論の方向性は「〇〇の利点(または欠点)」です。そしてそれに対する書き手の主張は「利点として考えられること」です。これらの2つは「因果関係」ではなく、「イコールの関係」になっています。
したがって、トピックとメインアイデアは、イコールの関係を表す表現を使ってつなぎ合わせることになります。be動詞がその代表例です。こちらもあえて公式にするなら、次のようなイメージです。
- 説明タイプのトピックセンテンス
- トピックセンテンス = 議論の方向性(トピック)+ is + 書き手の主張(メインアイデア)
Do the advantages of this outweigh the disadvantages?は議論タイプか説明タイプか?
今回の分類では、「Advantage / Disadvantage(問題タイプ3)」を説明タイプに分類しましたが、Advantage / Disadvantageの問題でも「Do the advantages of this outweigh the disadvantages?」タイプの問題ではポジションを示すことになりますので、議論タイプと捉えることもできます。
ただし、『ライティング・タスク2 問題タイプ別の回答の注意点』でご紹介したようなエッセイの構成方法を取る場合には、利点と欠点を紹介しつつ、どちらか一方が他方を上回ることをエッセイ全体で示していくことになりますので、説明タイプと捉えるほうがいいでしょう。
- 説明タイプで書く場合
- ボディ1:A possible advantage of ... is ...
- ボディ2:However, there are more disadvantages to ... The major disadvantage is ...
- 議論タイプで書く場合
- ボディ1:A possible advantage of ... is ...
- ボディ2:However, the disadvantages of ... outweigh its advantages because ...
採点基準から見る重要性
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トピックセンテンスはどこに影響するのか?
エッセイにおいてトピックセンテンスが重要であることはご理解いただけたともいますが、IELTSの採点においても重要視されていることを忘れてはいけません。
Task Response(タスクへの応答)
まずは、Task Response(タスクへの応答)から見てみましょう。
Task Response(一部のみ抜粋)
- Band 7: presents, extends and supports main ideas, but there may be a tendency to over-generalise and/or supporting ideas may lack focus
- (メインアイデアを示し、展開・サポートしているが、一般化しすぎていたりサポートアイデアの焦点がぼけたりする傾向にある)
- Band 6: presents relevant main ideas but some may be inadequately developed/unclear
- (関係性のあるメインアイデアを示しているが、そのいくつかは展開が不十分であるか不明瞭である)
- Band 5: presents some main ideas but these are limited and not sufficiently developed
- (いくつかのメインアイデアを示しているが、それらは限定的で、十分にサポートされていない)
- Band 4: presents some main ideas but these are difficult to identify and may be repetitive, irrelevant or not well supported
- (いくつかのメインアイデアを示しているが、それらを同定することが難しく、繰り返し・無関係であるか、よくサポートされていない)
このようにBand 4からBand 7まで何度も「main ideas」という言葉が出てきます。もちろん、メインアイデアはトピックセンテンスに必ず含めなければならないとは書かれていません。しかし、ハイスコアを狙っていくにはBand 4で記載されているように、メインアイデアがどれなのか試験官が迷ってしまう(difficult to identify)状況は避けなければなりません。
試験官がパッと見てメインアイデアであることがはっきり分かるようにトピックセンテンスを書いてあげることが、読み手に優しいライティングであり、スコアアップにも繋がります。目標スコアがいくつであってもトピックセンテンスの重要性に変わりはありませんが、特に6.0以上のスコアが必要な方は、トピックセンテンスは必須と考えておきましょう。
Coherence and Cohesion(首尾一貫性とつながり)
次にCoherence and Cohesion(首尾一貫性とつながり)について見てみましょう。
Task Response(一部のみ抜粋)
- Band 7: presents a clear central topic within each paragraph
- (それぞれの段落にセントラルトピックを示している)
Band Descriptorsでは、トピックの代わりに「セントラルトピック」という用語が使われていますが、意味は同じです。メインアイデアとは異なり、セントラルトピックについては明確に示されているかどうかだけが判断基準となっています。7.0以上のハイスコアを狙っていくには各段落でトピックを示すことがいかに重要であるかをご理解いただけたかと思います。
トピックセンテンスの実例
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それでは、IELTSのライティング・タスク2の問題を使ってトピックセンテンスの実例を見ていきましょう。
議論タイプのトピックセンテンス
まずは議論タイプの問題です。
「政府はソーシャルメディアを規制するべきであると、多くの人が信じています。どの程度、賛成または反対ですか?」という問題です。FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアは私たちの日常に浸透し、もちろんいい影響ももたらしていますが、悪い影響ももたらしています。
例えば、ちょっとした発言に対して集中的に攻撃をする人がいたり、個人の情報をソーシャルメディアで拡散する人がいたり、やはり政府がそのあたりを規制するべきであるという意見があっても当然かも知れません。それに対して、どの程度、賛成か反対かを答える問題です。
ここでは「賛成」の立場でトピックセンテンスを作ってみることにしましょう。まずはトピックセンテンスを作るためのアイデアの整理です。この段落で議論をする方向性、すなわちトピックは「政府はソーシャルメディアを規制するべきである(と思います)」です。それに対するメインアイデアは、そう考える根拠を示すことになります。上で挙げたような理由でもいいでしょうし、他には、「誤った情報(フェイクニュース)が社会にとっての関心事だから」という根拠も挙げられるかもしれません。
トピックセンテンスを作るためのパーツ
- ①議論の方向性(トピック)
- 政府はソーシャルメディアを規制するべきです。
- ②書き手の主張(メインアイデア)
- 誤った情報(フェイクニュース)は社会にとっての重大な関心事だからです。
次に英語にしてみましょう。
トピックセンテンスを作るためのパーツ
- ①the government should regulate social media
- (政府はソーシャルメディアを規制するべきです)
- ②fake news is a serious concern for society
- (誤った情報は社会にとっての重大な関心事だからです)
あとは①と②を、理由を表す表現でつなぎ合わせるとトピックセンテンスが完成します。
ただし、「the government should regulate social media」という表現はタスクで使われています。タスクで与えられている表現をそのまま使うことは避けたほうがいいですので、別の表現を選択しましょう。例えば次のようなトピックセンテンスにすることができます。
もちろん、「理由」としてではなく「目的」としてメインアイデアを示すことも可能です。その場合には、例えば次のようなトピックセンテンスを書くことができます。
説明タイプのトピックセンテンス
続いて、説明タイプの問題です。
「今日、より多くの人が調理された食品を購入するようになっています。なぜこのようなことが起こっているのでしょうか?この状況を改善するには何ができるでしょうか?」という問題です。『ライティング・タスク2 問題タイプ別の回答の注意点』の「問題タイプ4:Cause / Problem / Effect / Solution」です。ここでは、「原因」と「解決策」が問われています。
ここでは、1つ目のボディに「原因」について議論をするとして、そのトピックセンテンスを作ってみることにしましょう。先ほどと同じようにトピックセンテンスを作るためのアイデアの整理をしましょう。この段落で議論をすること(トピック)は、「より多くの人が調理された食品を購入するようになってきている原因」です。それに対するメインアイデアは、それに対する直接の回答です。「人々の生活が忙しくなってきているから」というような回答を考える方が多いかもしれませんね。
トピックセンテンスを作るためのパーツ
次に英語にしてみましょう。
トピックセンテンスを作るためのパーツ
あとは①と②を、イコールを表す表現でつなぎ合わせるとトピックセンテンスが完成します。
be動詞を使って「A=B」という関係性を示すことができます。AとBにそれぞれ名詞が入る場合には、「I am a student.」のように表せますが、Bの部分に文章(節)を入れたい場合にはthat節(SがVすること)を用いると便利です。公式にするならば、「A is that SVO/SVC.」のようになります(『英語ライティング鬼100則』Must 25参照)。
もちろん、ここでも「people prefer to buy ready-made food」はタスクで与えられた表現ですので、なるべく別の表現を選択する必要があります。例えば次のようなトピックセンテンスにすることができます。
トピックセンテンスの実例
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IELTSライティングの問題を使ってトピックセンテンスの実例をご紹介しましたが、上で紹介した方法はあくまで一例です。トピックセンテンスの書き方はいろいろにありますが、もう一つだけ紹介いたします。
先ほど作ったトピックセンテンスでは、メインアイデアの部分を「fake news is a serious concern for society」というように文章で書きましたが、「ひとことの名詞」で表現をすることもできます。
どちらが正解でどちらが間違いということはありません。重要なことは、その表現で十分に書き手の主張が伝わるかどうかです。「ひとことの名詞」でまとめることができれば文はスッキリしますが、名詞でまとめるには正確な表現力が求められます。例えば「for the prevention of fake news」のように書いてしまうかもしれませんが、これだと不自然な英語に聞こえます。もし自信がなければ「文」で説明をするほうが無難でしょう。
また、8.0以上の超ハイスコアを狙う方を除いて、技巧を凝らしたトピックセンテンスを書く必要はほとんどありません。まずは、しっかりと読み手に伝えたい内容を自分の自信のある英語表現で伝えることが重要です。そのためには、トピックとメインアイデアがそれぞれしっかり伝わることを優先しなければなりません。
トピックセンテンスが不明瞭な例
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最後に、トピックセンテンスが不明瞭な例を紹介します(受講生の許可を得て掲載しております)。原文のままの掲載のため文法の間違いなどが含まれています。
非常に高いレベルの語彙が使えており、文法のコントロールもしっかりしているので、全体を通して意味が伝わりにくい部分はほとんどありません。
一方で、トピックセンテンスについてはやや不明瞭になっています。この段落で議論をしたかったことは何だったでしょうか?それに対して書き手はどのようなメインの主張をしていたでしょうか?それらが、段落をかなり読み進めるまで分からなかったことを実感していただけたと思います。実際には、第3文がトピックセンテンスになっています。
今回の英文のように最初の一文が「背景説明」になってしまうのは日本語的な考え方から抜け出せていない証拠でもあります。また、PREPなどの英語の論理展開の方法に従って結論を最初に示すようにすると、自然とメインアイデアも最初に示しやすくなります。メインアイデアが含まれている第3文を冒頭に持ってきて書き直してみましょう。
まとめ
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トピックセンテンスについてまとめました。エッセイを読み手にとって読みやすくするだけでなく、IELTSのような資格試験でも非常に重要視されているトピックセンテンス。自分のエッセイを見直してみてトピックセンテンスが曖昧だなぁと感じたら、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

この記事を書いたIELTS講師
Hibiki TAKAHASHI
日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は2,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住10年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。
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