「let」と「allow」は上級者でも間違えやすい動詞です。どちらも「許可する」という意味を持ちますが、使い分けに注意が必要です。
- let: (したいように)させる
- allow: 許可する
「let」は「(したいように)させる、止めはしない」というのが本来の意味です。例えば、以下のように使われます。
- The mentor let the interns experiment with different approaches to solve the problem independently.
- 指導者はインターンが問題を解決するために様々なアプローチを試すことを許可しました。
- The teacher let the students explore the topic without imposing restrictions.
- 先生は生徒たちに制限を加えずにトピックを探求させました。
一方、「allow」は「許可する」という意味が含まれます。例えば、以下のように使われます。
- The university allows students to access online resources even after graduation.
- 大学は卒業後も学生がオンラインリソースにアクセスできるようにしています。
- The policy allows researchers to collaborate across disciplines.
- その政策は研究者が学際的に協力することを許可しています。
このように、「let」は「(したいように)させる」という意味が強く、時には「できればしてほしくないが・・・」という含みを持つこともあります。一方、「allow」は許可のニュアンスが強くなります。このようなニュアンスの違いから、エッセイでは主に「allow」のほうを使うことが多い印象です。
「rise」と「raise」もよく混同される動詞です。
- rise: <<自動詞>> 上がる
- raise: <<他動詞>> (何かを)上げる
「rise」は自動詞で、何かが(自らの力で)上がることを意味します。自動詞なので目的語を取ることができません。例えば、以下のように使われます。
- The global temperature continues to rise due to the accumulation of greenhouse gases.
- 温室効果ガスの蓄積により、地球全体の気温が上昇し続けています。
- As inflation rises, the purchasing power of the average citizen decreases.
- インフレが上昇すると、一般市民の購買力が低下します。
一方、「raise」は他動詞で、何かを上げることを意味します。他動詞なので必ず目的語が必要です。例えば、以下のように使われます。
- The government raised the minimum wage to address income inequality.
- 政府は最低賃金を引き上げ、所得格差に対処しました。
- Researchers raised concerns about the long-term effects of the new technology.
- 研究者たちは新技術の長期的影響について懸念を表明しました。
このように、「rise」は自らの力で上がることを意味し、「raise」は何かを上げることを意味します。エッセイやスピーチでは、文脈に応じて適切な動詞を選ぶことが重要です。
「admit」と「recognise」もよく混同される動詞です。特に受動態でよく間違いを見受けます。
- admit: (特に不快な事実や過ちを)しぶしぶ認める
- recognise: (特に公式に)認識する、認める
「admit」は、特に不快な事実や過ちをしぶしぶ認めるというニュアンス意味です。例えば、以下のように使われます。
- The scientist admitted that the initial hypothesis was flawed.
- その科学者は、最初の仮説に欠陥があることを認めました。
- The politician admitted to the shortcomings of the policy during the debate.
- その政治家は討論中に政策の欠点を認めました。
一方、「recognise」は、特に公式に認識することや認めることを意味します。例えば、以下のように使われます。
- The academic community recognised the researcher’s groundbreaking contributions to quantum physics.
- 学術界は、その研究者の量子物理学への画期的な貢献を認めました。
- It is widely recognised that critical thinking skills are essential for academic success.
- 批判的思考力が学業の成功に不可欠であることは広く認識されています。
使い分けのポイント
まとめると、
- admit: 不快な事実や過ちをしぶしぶ認める(confess に近いニュアンス)
- recognise: 正式に・客観的に認識する、承認する(acknowledge に近い)
「admit」は主に過ちや否定的な内容に対して使われ、「recognise」は功績や状況などを公式に認める場面で使われます。"She was admitted for her achievements." のような表現は不自然なので注意しましょう。
「try」と「attempt」もよく混同される動詞です。
- try: (結果を気にせずに、とりあえず)やってみる
- attempt: (特に難しいことに対して、結果を出すことを目標に)試す
「try」は、一般的に何かを試みることを意味しますが、「attempt」に比べて、軽い気持ちでとりあえずやってみるというニュアンスが強いです。例えば、以下のように使われます。
- She tried to learn a new language during her free time.
- 彼女は自由時間に新しい言語を学ぼうとしました。
- They tried different methods to solve the problem.
- 彼らは問題を解決するためにさまざまな方法を試みました。
一方、「attempt」は、特に難しいことに対して(時にはしっかり計画を立てて)試みることを意味します。例えば、以下のように使われます。
- The scientists attempted to develop a vaccine within a remarkably short timeframe.
- 科学者たちは驚くほど短期間でワクチンを開発しようと試みました。
- The institution attempted to implement a new policy to reduce carbon emissions by 50%.
- その機関は炭素排出量を50%削減する新たな政策を実施しようと試みました。
使い分けのポイント
まとめると、
- try: 結果をあまり気にせずに気軽に試してみる
- attempt: 難しいことに対して意図的・計画的に挑戦する
カジュアルな文脈では「try」、フォーマルで慎重な場面では「attempt」を使うのが一般的です。文脈に応じて使い分けましょう。
「facilitate」は用法を間違えやすい動詞です。まず意味の違いを確認しておきましょう。
- facilitate: 物事を円滑に進める、プロセスを容易にする
- enable: 何かを可能にする、能力や環境を与える
「facilitate」は手順やプロセスをスムーズにすることを指し、「enable」は何かができる状態にすることを意味します。例えば、以下のように使われます。
- Good management facilitates effective communication within a team.
- 優れた管理は、チーム内での効果的なコミュニケーションを円滑にします。
- The new system facilitates faster data processing.
- 新しいシステムは、より高速なデータ処理を容易にします。
一方、「enable」は、何かができる状態にすることを強調します。例えば、以下のように使われます。
- The software enables users to edit videos easily.
- そのソフトウェアは、ユーザーが簡単に動画を編集できるようにする。
- The new policy enables employees to work remotely.
- 新しい方針により、従業員はリモートワークが可能になる。
このように、「facilitate」はプロセスをスムーズにする意味、「enable」は何かができる状態にする意味で使われます。
用法に注意!
ここで注意したいのは、「enable」は「人 to 動詞」を目的語として「(人が〜することを)可能にする」という用法があるのに対して、「facilitate」にはそのような用法がない点です。
- The software facilitates users to edit videos easily.
- そのソフトウェアは、ユーザーが簡単に動画を編集できるようにします。
使い分けのポイント
まとめると、
- facilitate: プロセスや手順を円滑にする(例:会議、議論、連携)
- enable: 人や物が何かを可能にする状態にする(例:機能、アクセス、能力)
「facilitate」は抽象的なプロセスを対象に使われる一方、「enable」は人や物を主語にして何かを可能にする構文で使われます。
- The software enables users to edit videos easily.
- そのソフトウェアは、ユーザーが簡単に動画を編集できるようにします。
- The software facilitates the editing of videos.
- そのソフトウェアは、動画の編集を容易にします。
「promote」も用法を間違えやすい動詞です。まず意味の違いを確認しておきましょう。
- promote: 物事を促進する、普及させる
- encourage: 人を励ます、行動を促す
「promote」は物事を推進・普及させる意味を持ち、「encourage」は人を励ましたり、行動を促したりする意味を持ちます。例えば、以下のように使われます。
- The government promotes healthy eating habits.
- 政府は健康的な食習慣を促進しています。
- The campaign promotes environmental awareness.
- そのキャンペーンは環境意識を高めることを促進しています。
一方、「encourage」は、特定の個人やグループに対して行動を促す場合に使われます。例えば、以下のように使われます。
- The teacher encourages students to ask questions.
- 先生は生徒に質問するよう促しています。
- Parents should encourage their children to read books.
- 親は子供に本を読むように励ますべきです。
使い分けのポイント
まとめると、
- promote: 広い範囲での普及・促進(政策・習慣・意識など)
- encourage: 個人や集団に対して行動を促す(人を対象にする)
それぞれの動詞が対象とするもの(人か事柄か)や文構造に注意して使い分けましょう。
用法に注意!
ここで注意したいのは、「encourage」は「人 to 動詞」の形で「(人に〜するように)促す」という用法があるのに対して、「promote」にはそのような用法がない点です。
- The government promotes people to recycle more.
- 政府は人々にリサイクルをするよう促進しています。
このように、「promote 人 to 動詞」の形で用いることはできません。このような構文にしたい場合は、「encourage」を使って表現をするか、「promote」の目的語が「環境意識」や「健康的な習慣」などの名詞になるようにしましょう。
- The government encourages people to recycle more.
- 政府は人々にリサイクルをするよう促しています。
- The government promotes recycling.
- 政府はリサイクルを促進しています。
このように、「promote」は物事を推進・普及させる意味を持ち、「encourage」は人を励ましたり、行動を促したりする意味を持ちます。文脈に応じて適切な動詞を選ぶことが重要ですね。
「prevent」「avoid」「hinder」は、いずれも「妨げる」「回避する」といった意味で使われることがありますが、ニュアンスや使い方が異なります。特に、エッセイやレポートでの正確な使い分けが重要です。
- prevent: (未然に)防ぐ、起こらないようにする
- avoid: (意図的に)避ける、回避する
- hinder: (進行や発展を)妨げる、遅らせる
「prevent」は、何かが起こるのを事前に阻止する意味で使われます。たとえば以下のように使われます。
- Vaccination prevents the spread of infectious diseases.
- 予防接種は感染症の拡大を防ぎます。
- Security measures were implemented to prevent data breaches.
- セキュリティ対策が導入され、データ漏洩が防がれました。
「avoid」は、意識的にその状況に近づかないようにする行動を表します。たとえば以下のように使われます。
- She avoids using plastic bags to reduce environmental impact.
- 彼女は環境への影響を減らすためにビニール袋の使用を避けています。
- To stay healthy, it’s important to avoid processed foods.
- 健康を維持するには、加工食品を避けることが重要です。
一方、「hinder」は何かの進行・発展・成果を妨げる、遅らせるという意味で使われます。以下のように使用されます。
- Poor internet connectivity hindered the completion of the online course.
- インターネット接続の不良が、オンラインコースの完了を妨げました。
- Lack of funding hinders scientific research.
- 資金不足が科学研究を妨げています。
使い分けのポイント
まとめると、
- prevent: 何かが「起きる前」に阻止
- avoid: 自分の行動で「避けて通る」
- hinder: すでに始まっているものの「進行を邪魔する」
それぞれ文脈や目的語によって使い方が大きく異なるため、正確に選びたい語句です。
「discourage」と「deter」はどちらも「やる気をなくさせる」「思いとどまらせる」という意味を持ちますが、ニュアンスと使い方に違いがあります。
- discourage: (気持ち的に)やる気をそぐ、やめさせる
- deter: (行動の結果や罰などにより)抑止する、思いとどまらせる
「discourage」は、精神的なやる気をくじくニュアンスが強いです。例えば、以下のように使われます。
- Negative feedback can discourage students from participating in class.
- 否定的なフィードバックは、生徒が授業に参加する意欲をくじくことがあります。
- High tuition fees may discourage low-income families from pursuing higher education.
- 高額な授業料は、低所得層の家庭が高等教育を目指す意欲をそぐかもしれません。
一方、「deter」は、恐れや不利益を感じさせることで実際の行動を抑止するニュアンスです。
- Strict penalties are intended to deter people from committing crimes.
- 厳しい罰則は人々が犯罪を犯すのを思いとどまらせるためのものです。
- The presence of security cameras deters theft in public places.
- 防犯カメラの存在は公共の場での盗難を抑止します。
使い分けのポイント
まとめると、
- discourage: 気持ちをくじいてやめさせる(心理的)
- deter: 恐れや罰によって行動をやめさせる(抑止力)
エッセイや議論文では、状況に応じてこのニュアンスの違いを意識することが重要です。
「claim」と「argue」は、どちらも「主張する」と訳されるため混同されがちですが、学術的な文脈では意味とニュアンスに明確な違いがあります。
- claim: 主張する(根拠が弱い場合も含む)
- argue: (根拠や論理をもって)論じる、主張する
「claim」は、証拠の有無に関わらず、自分の意見や立場を述べることに使われます。例えば、以下のように使われます。
- Some people claim that video games cause violence.
- 一部の人々は、テレビゲームが暴力を引き起こすと主張しています。
- The company claimed its product was 100% eco-friendly.
- その企業は自社製品が100%環境に優しいと主張しました。
一方、「argue」は、理由や根拠を示しながら論理的に主張する際に使われます。エッセイやスピーチでは好まれる表現です。
- The researcher argues that early education plays a crucial role in brain development.
- その研究者は、幼児教育が脳の発達に重要な役割を果たすと論じています。
- Many scholars argue that climate change is the result of human activities.
- 多くの学者は気候変動が人間の活動によるものであると論じています。
使い分けのポイント
まとめると、
- claim: 証拠の有無を問わず主張する(場合によっては根拠が曖昧)
- argue: 論拠をもとに理論立てて主張する(説得力のある主張)
アカデミックライティングでは、単に「claim」するだけでなく、「argue」して論理的な展開を示すことが求められます。
「affect」「influence」「impact」はいずれも「影響を与える」という意味を持つ語ですが、使う場面や文法上の扱いが異なるため、注意が必要です。
- affect: 動詞 / 直接的に作用する、影響を及ぼす
- influence: 名詞・動詞 / 間接的に影響を与える
- impact: 名詞中心(動詞としても使用可)/ 強い影響・衝撃
「affect」は他動詞で、直接的に作用する意味合いがあります。フォーマルな書き言葉でよく使われます。
- Climate change affects agricultural productivity.
- 気候変動は農業の生産性に影響を与えます。
- Stress can negatively affect mental health.
- ストレスは精神的健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
「influence」は、名詞と動詞の両方で使えます。影響はより間接的・長期的なものを指すことが多いです。
- Parents significantly influence their children’s values.
- 親は子どもの価値観に大きな影響を与えます。
- Social media has a strong influence on public opinion.
- ソーシャルメディアは世論に強い影響力を持っています。
「impact」はもともと名詞中心で、変化を引き起こすほどの強い影響・衝撃を意味します。動詞として使う場合はややフォーマルでビジネス寄りです。
- The new policy had a significant impact on small businesses.
- その新しい政策は中小企業に大きな影響を与えました。
- Technological advances impacted the way people communicate.
- 技術革新は人々のコミュニケーションの仕方に影響を与えました。
使い分けのポイント
まとめると、
- affect: 直接的な影響(他動詞としてのみ)
- influence: 間接的・長期的な影響(名詞・動詞両方)
- impact: 強い影響や衝撃(名詞中心/動詞も可)
ライティングでは、場面に応じて語の強さ・品詞・文構造に気をつけながら使い分けましょう。
この記事を書いた人
Hibiki Takahashi
日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,000名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住13年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。