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スピーキング試験で試験官は何を考えているか?|PlusOnePoint

対等な立場で、敬意を持って

スピーキング試験で試験官は何を考えているか?

IELTSのスピーキング試験に臨むとき、多くの受験生は極度の緊張を感じます。特に日本人受験生の場合、試験官を「上の立場」にいる人と捉えがちで、必要以上に萎縮してしまうことがあります。

しかし、試験官と受験生の関係性を正しく理解することで、この緊張は大きく軽減されるはずです。この記事では、試験官が実際にどのような立場で、どのような考えを持って試験に臨んでいるのかを詳しく解説します。

試験官と受験生は対等な関係

多くの日本人受験生がスピーキング試験で感じる緊張の一因は、試験官を「上の立場」にいる人と捉えてしまうことにあります。しかし、これは大きな誤解です。

欧米文化における対等性の原則

欧米社会では、専門家と一般人の関係性について、日本とは異なる文化的背景があります。例えば、医師と患者、弁護士と顧客の関係を考えてみましょう。

これらの関係において、医師や弁護士は確かに専門知識を持っていますが、それは患者や顧客より「上の立場」にいるということを意味しません。むしろ、それぞれが異なる役割を持つ対等なパートナーとして、協力して問題解決に取り組むという考え方が基本になっています。

  • 専門家と一般人の関係性(欧米文化)
  • 医師と患者:対等なパートナーとして健康問題に取り組む
  • 弁護士と顧客:対等な立場で法的課題を解決する
  • 試験官と受験生:対等な立場でコミュニケーション能力を評価する

対等であっても敬意は必要

ただし、対等な関係であるからといって、無礼に振る舞ってよいということではありません。対等な立場であっても、相互に敬意を持って接することは重要です。

スピーキング試験では、試験官に対して丁寧に、しかし萎縮することなく、自然な会話を心がけることが理想的な姿勢と言えるでしょう。

試験官の本心はどれ?

スピーキング試験に臨むとき、「試験官は自分のことをどう思っているのだろう?」と不安になることがあるかもしれません。試験官の心理状態を理解することで、この不安を軽減できるでしょう。

そこで、突然ですがクイズです。みなさんは、試験官の本心はどれだと思いますか?

  • 試験官の本心はどれ?
  • ① この受験生の良い部分を引き出して、できるだけ高い点数をつけたい
  • ② この受験生の苦手な部分をあぶり出して、厳しめの点数をつけたい
  • ③ 早く終わらないかな...

正解は①です。意外に思った方もいらっしゃるかもしれません。なぜなら、ほとんどの受験生は、試験官が②だと感じているからです。

試験官は「私たちの味方」

なぜほとんどの試験官が「受験生の良い部分を引き出したい」と考えているのでしょうか。それには、試験官の背景が大きく関係しています。

試験官の多くは教育者

IELTS試験官の多くは、英語教育に携わっている専門家です。彼らは日常的に第二言語を学ぶ学習者と接しており、第二言語を学ぶ人の気持ちが痛いほどわかっているのです。

教育者として、学習者の成長を支援することに喜びを感じる人が多く、試験においても、受験生の最良の部分を引き出したいと考えるのは自然なことです。

試験官自身も語学学習者

さらに重要なポイントとして、多くの試験官が自分自身も第二言語を学んでいる経験を持っています。

例えば、日本で試験官をしている外国人の多くは、日本語を学習しています。つまり、彼ら自身が「第二言語で話すときの緊張」や「思ったことをうまく表現できないもどかしさ」を実体験として理解しているのです。

  • 試験官が受験生の立場を理解できる理由
  • 日常的に第二言語学習者と接している教育者である
  • 自分自身も第二言語を学んでいる(学んだ経験がある)
  • 受験生の緊張や不安を共感的に理解できる

このような背景を知ることで、試験官が実は受験生の味方であることが理解しやすくなるでしょう。

試験官たちの本音

実際、プラスワンポイントでは過去に多くの試験官と話をする機会がありましたが、全員が口を揃えて言っていたことがあります。それは、「なんとかみんなに良いスコアをつけたいが、ルールを破ることはできない」ということです。

試験官にとって、受験生の良い部分をいかに引き出すかが腕の見せどころなのです。質問の仕方やタイミング、会話の流れを工夫することで、受験生が持っている本来の力を最大限に発揮できるように導くことが、優れた試験官の条件とされています。

表情を見せられない理由

「試験官が味方なら、なぜ試験中に無表情なのか?」と疑問に思うかもしれません。これには明確な理由があります。

試験の公平性を保つため

IELTS試験では、試験官は表情を見せてはいけないことになっています。これは、すべての受験生に対して公平な評価を行うためのルールです。

もし試験官が特定の受験生に対して笑顔を見せたり、頷いたりすることで励ましてしまうと、その受験生は他の受験生よりも有利な状況に置かれることになります。逆に、困惑した表情を見せてしまうと、受験生はさらに緊張してパフォーマンスが低下する可能性があります。

  • 試験官が表情を見せない理由
  • すべての受験生に対して公平な試験環境を提供するため
  • 特定の受験生を有利にしたり不利にしたりしないため
  • 試験の標準化と品質管理のため

言葉で誘導することもできない

同様に、試験官は言葉で受験生を誘導することもできません。例えば、「もう少し長く話したらスコアが上がるかもしれません」といった助言や励ましは、試験の公平性を損なうため禁止されています。

試験官ができるのは、すべての受験生に公平に問いかけることだけなのです。

録音と審査の仕組み

試験官が表情や言葉で助けられない理由は、もう一つあります。それは、試験が録音されており、試験官自身も定期的に審査されているからです。

すべての試験が録音されている

IELTSのスピーキング試験は、すべて録音されています。これは、評価の透明性を確保するためと、試験官の品質管理のための重要な仕組みです。

もし試験官が不適切な誘導をしたり、感情的な反応を示したりすると、録音を通じてそれが明らかになります。

試験官も定期的に審査される

IELTS試験官は、定期的に自分自身の試験実施方法を審査されています。録音された試験を上級試験官がチェックし、適切な手順で試験を実施しているか、公平な評価をしているかを厳しく確認されるのです。

もしこの審査で不適切な点が見つかれば、試験官の資格を更新できなくなり、「元試験官」になってしまいます。

  • 試験官の審査システム
  • すべての試験が録音される
  • 上級試験官による定期的な評価審査が行われる
  • 定期的に試験官の資格更新の制度がある
  • 不適切な対応があれば資格を失う可能性がある

このような厳しい管理体制があるため、試験官は表情や言葉で受験生を助けたいと思っても、それができないのです。無表情で淡々としているように見えるのは、決して冷たいからではなく、公平性を保つための職業的な態度なのだと理解しましょう。

すべての試験官が理想的とは限らない

もっとも、すべての試験官が理想的な対応をしてくれるとは限りません。中には、あまり受験生に配慮しない試験官や、経験不足の試験官もいるかもしれません。

だからこそ、IELTSでは試験官の能力が定期的にチェックされ、資格を更新する制度が設けられているのです。また、もし試験での対応に疑問を感じた場合には、リマーク(再採点)の制度 も用意されています。これも、試験の公平性と品質を保つための重要な仕組みの一つです。

まとめ

IELTSスピーキング試験における試験官の立場と心理について解説しました。

試験官は受験生と対等な立場であり、多くの場合、受験生の良い部分を引き出したいと考える「味方」です。無表情に見えるのは、すべての受験生に対して公平な試験環境を提供するための職業的な態度であり、決して受験生を否定的に見ているわけではありません。

この理解があれば、スピーキング試験での緊張が少し和らぐのではないでしょうか。試験官を対等なパートナーとして、敬意を持ちながらも自然なコミュニケーションを心がけることが、最良のパフォーマンスにつながるはずです。

  • まとめ
  • 試験官と受験生は対等な関係(ただし相互の敬意は必要)
  • ほとんどの試験官は教育者で、受験生の立場を理解している
  • 多くの試験官が自身も第二言語学習の経験を持つ
  • 試験官は「なんとか良いスコアをつけたい」と考えている
  • 無表情なのは公平性を保つための職業的態度
  • すべての試験が録音され、試験官も定期的に審査される
  • リマーク制度も試験の公平性を保つための仕組み
Ask the Expert
Mika

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Hibiki

この記事を書いた人

Hibiki Takahashi

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,000名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住13年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

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