「number」と「amount」は、どちらも「量」を表す言葉ですが、使い分けを間違えると不自然な英語になってしまいます。IELTSライティングでも頻繁に見られる誤用の一つです。
この記事では、「number」と「amount」の正しい使い分けと、エッセイライティングにおけるこれらの表現の適切な使用方法について解説します。
基本的な使い分け
「number」と「amount」の使い分けは、非常にシンプルです。
- 基本ルール
- number:可算名詞(数えられる名詞)と一緒に使う
- amount:不可算名詞(数えられない名詞)と一緒に使う
基本的な使用例
- number の使用例(可算名詞)
- The number of students has increased.
- 学生の数が増えた。
- A large number of people support this policy.
- 多くの人がこの政策を支持している。
- The number of cars on the road is growing.
- 道路上の車の数が増えている。
- amount の使用例(不可算名詞)
- The amount of pollution has increased.
- 汚染の量が増えた。
- A large amount of money was invested in the project.
- 多額のお金がそのプロジェクトに投資された。
- The amount of time required depends on experience.
- 必要な時間の量は経験によって異なる。
この点については、拙著『英語ライティングの鬼100則(明日香出版社)』(Must 21)でも詳しく解説をしておりますので、あわせてご参照ください。
「a number of」と「the number of」の違い
続いて、「a number of」と「the number of」の使い分けを確認しましょう。また、それに伴う動詞の単数・複数の扱いも合わせて覚えておく必要があります。この違いを理解していないと、主語と動詞の一致(subject-verb agreement)の誤りを犯してしまいます。
a number of(多くの〜)
「a number of」は「多くの〜」という意味で、複数扱いになります。焦点は「number(数)」ではなく、その後に続く名詞にあるからです。
- a number of の使用例
- A number of students have expressed concerns.
- 多くの学生が懸念を表明している。
- A number of problems remain unsolved.
- 多くの問題が未解決のままである。
「a number of students」の焦点は「students(学生たち)」なので、動詞は複数形の「have」を使います。
the number of(〜の数)
「the number of」は「〜の数」という意味で、単数扱いになります。焦点は「number(数)」そのものにあるからです。
- the number of の使用例
- The number of students has increased.
- 学生の数が増えた。
- The number of problems is growing.
- 問題の数が増えている。
「the number of students」の焦点は「number(数)」なので、動詞は単数形の「has」を使います。
よくある間違い
- 主語と動詞の不一致
- The number of students have increased.
- →「the number」は単数なので「has」を使う
- A number of students has expressed concerns.
- →「a number of students」は複数扱いなので「have」を使う
「a large number of」なども同様
実際のエッセイでは、「a large number of」「a significant number of」などの形でよく使われます。これらも複数扱いです。
- a large number of の使用例
- A large number of people believe that technology is beneficial.
- 多くの人がテクノロジーは有益だと信じている。
- A significant number of companies have adopted remote work policies.
- かなりの数の企業がリモートワーク方針を採用している。
「numbers of」と「a number of」の違い
「numbers of」(複数形)という表現もありますが、これは「number」自体が複数であることを強調する場合に使います。
- numbers of の使用例
- Large numbers of refugees have fled the country.
- 大量の難民がその国から逃れた。
- Numbers of studies have shown this correlation.
- 多数の研究がこの相関関係を示している。
「a large number of」とほぼ同じ意味ですが、「numbers」を使うことで「多数の集団」というニュアンスが若干強くなります。ただし、特に理由がない場合には「a large number of」の方を選択すると良いでしょう。
amount の場合
「amount」の場合は、「a large amount of」も「the amount of」も常に単数扱いです。不可算名詞は単数形しか持たないためです。
- amount の動詞
- A large amount of money was spent on the project.
- 多額のお金がそのプロジェクトに費やされた。
- The amount of pollution has increased.
- 汚染の量が増えた。
「amounts of」という表現について
ここで重要なポイントがあります。実は、「amount」自体は可算名詞なのです。そのため、「large amounts of」という複数形の表現も存在し、実際によく使われています。
- amounts of の使用例
- Large amounts of money were spent on various projects.
- 多額のお金が様々なプロジェクトに費やされた。
- Vast amounts of data are collected every day.
- 膨大な量のデータが毎日収集されている。
「amounts」(複数形)を使う場合、動詞も複数形になります。これは、複数の「量」が存在するというニュアンスです。
- a large amount of と large amounts of の違い
- a large amount of money:(一つの)多額のお金
- → 単数扱い、動詞は「was」、まとまった一つの金額を指す
- large amounts of money:多額のお金(複数の金額や繰り返しの支出)
- → 複数扱い、動詞は「were」、様々な場面での支出や複数の金額を指す
どちらも正しい表現で、実際に広く使われています。ここでも特に理由がない場合には「a large amount of」の方を選択すると良いでしょう。
可算名詞と不可算名詞
「number」と「amount」を正しく使い分けるには、可算名詞と不可算名詞の区別を理解することが不可欠です。
可算名詞(Countable Nouns)
可算名詞は、一つ、二つと数えることができる名詞です。複数形を作ることができる名詞ですね。
- 可算名詞の例
- students(学生たち)
- cars(車)
- books(本)
- people(人々)
- problems(問題)
- ideas(アイデア)
これらの名詞には「number」を使います。
不可算名詞(Uncountable Nouns)
不可算名詞は、数えることができない名詞です。複数形にすることができません。
- 不可算名詞の例
- pollution(汚染)
- money(お金)
- information(情報)
- advice(助言)
- traffic(交通量)
- research(研究)
これらの名詞には「amount」を使います。
よくある間違い
IELTSライティングでよく見られる「number」と「amount」の誤用例を見てみましょう。
間違い1:不可算名詞に number を使う
- 誤用例
- The number of pollution has increased in recent years.
- 汚染の量が近年増加している。
- 正しい表現
- The amount of pollution has increased in recent years.
- 汚染の量が近年増加している。
「pollution(汚染)」は不可算名詞なので、「amount」を使います。
間違い2:可算名詞に amount を使う
- 誤用例
- The amount of cars on the road has increased.
- 道路上の車の数が増えた。
- 正しい表現
- The number of cars on the road has increased.
- 道路上の車の数が増えた。
「cars(車)」は可算名詞なので、「number」を使います。
間違い3:people に amount を使う
- 誤用例
- A large amount of people believe that technology is beneficial.
- 多くの人がテクノロジーは有益だと信じている。
- 正しい表現
- A large number of people believe that technology is beneficial.
- 多くの人がテクノロジーは有益だと信じている。
「people(人々)」は可算名詞なので、「number」を使います。これは非常によく見られる誤用です。
間違い4:the number of で複数形の動詞を使う
- 誤用例
- The number of students have increased significantly.
- 学生の数が大幅に増加した。
- 正しい表現
- The number of students has increased significantly.
- 学生の数が大幅に増加した。
「the number of」は単数扱いなので、動詞は「has」を使います。「students」という複数形の名詞に惑わされないように注意しましょう。
間違い5:a number of で単数形の動詞を使う
- 誤用例
- A number of problems has been identified.
- 多くの問題が特定された。
- 正しい表現
- A number of problems have been identified.
- 多くの問題が特定された。
「a number of」は複数扱いなので、動詞は「have」を使います。
エッセイでは使わない方がいい?
「the number of」や「the amount of」は文法的には正しい表現ですが、エッセイライティングではあまり使わない方が良い場合があります。その理由を説明しましょう。
レポート的・客観的すぎる印象
「the number of」や「the amount of」は、統計データや客観的な事実を述べる際に使われることが多く、やや堅苦しく、レポート的な印象を与えます。
- レポート的な印象の例
- The number of university graduates has increased by 30% over the past decade.
- 大学卒業者の数は過去10年間で30%増加した。
- The amount of carbon dioxide emissions has risen significantly.
- 二酸化炭素排出量が大幅に増加した。
これらの表現は、IELTS Task 1(グラフや図表の説明)では適切ですが、Task 2(エッセイ)では、もう少し自然で説得力のある表現を使った方が効果的です。
具体性に欠ける
「the number of」や「the amount of」は抽象的な表現で、具体的なイメージを読者に与えにくいという欠点があります。
- 抽象的な表現
- The number of people using social media has increased.
- ソーシャルメディアを使う人の数が増えた。
この文は正しいですが、やや無機質で、説得力に欠けます。
エッセイで使いやすい状況
ただし、「the number of」や「the amount of」が効果的に使える場面もあります。
場面1:対比を明確にする場合
2つの数量を比較する際には、「the number of」や「the amount of」を使うことで、対比を明確にできます。
- 効果的な使用例
- While the number of university graduates has increased, the number of available jobs has decreased.
- 大学卒業者の数は増加している一方で、利用可能な仕事の数は減少している。
この場合、「the number of」を使うことで、2つの数量の対比が明確になります。
場面2:統計的な根拠を示す場合
議論に統計的な裏付けを与える際には、「the number of」や「the amount of」が適切です。
- 効果的な使用例
- Research shows that the amount of time children spend on screens has tripled in the past decade, contributing to declining academic performance.
- 研究によると、子供たちがスクリーンに費やす時間は過去10年間で3倍になり、学業成績の低下に寄与している。
統計的な事実を述べる際には、これらの表現が説得力を高めます。
場面3:譲歩の表現として
相手の主張を認める(譲歩する)際にも使えます。
- 効果的な使用例
- It is true that the number of people working remotely has increased. However, this does not necessarily mean that productivity has improved.
- リモートで働く人の数が増加したのは事実です。しかし、これは必ずしも生産性が向上したことを意味するわけではありません。
代替表現
「the number of」や「the amount of」の代わりに、より自然で説得力のある表現を使うことができます。
「the number of」の代替表現
- より自然な表現
- 元の表現:The number of people using social media has increased.
- ソーシャルメディアを使う人の数が増えた。
- 代替表現1:More and more people are using social media.
- ますます多くの人がソーシャルメディアを使っている。
- 代替表現2:Social media usage has become increasingly common.
- ソーシャルメディアの利用がますます一般的になっている。
- 代替表現3:Millions of people now rely on social media for communication.
- 今や数百万人がコミュニケーションのためにソーシャルメディアに依存している。
「the amount of」の代替表現
- より自然な表現
- 元の表現:The amount of pollution has increased.
- 汚染の量が増えた。
- 代替表現1:Pollution levels have risen significantly.
- 汚染レベルが大幅に上昇した。
- 代替表現2:Cities are becoming increasingly polluted.
- 都市がますます汚染されている。
- 代替表現3:Air quality has deteriorated in urban areas.
- 都市部の空気の質が悪化している。
まとめ
「number」と「amount」の使い分けと、エッセイライティングにおけるこれらの表現の適切な使用方法について解説しました。
基本ルールは単純です。可算名詞には「number」、不可算名詞には「amount」を使います。しかし、エッセイライティングでは、これらの表現はレポート的・客観的すぎる印象を与えるため、より自然で説得力のある代替表現を使うことを検討しましょう。
ただし、対比を明確にする場合や統計的な根拠を示す場合には、「the number of」や「the amount of」が効果的に使えます。状況に応じて適切な表現を選ぶことが重要です。
- 重要なポイントのまとめ
- 「number」は可算名詞、「amount」は不可算名詞と使う
- 「a number of(多くの〜)」は複数扱い
- 「the number of(〜の数)」は単数扱い
- エッセイではレポート的な印象を避けるために多用しない
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この記事を書いた人
Hibiki Takahashi
日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,000名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住13年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。
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