IELTSエッセイのイントロダクションでは、「today」「these days」「recently」「in recent years」「nowadays」「in contemporary society」「in today's society」などの時を表す表現がよく使われます。しかし、これらの表現にはちょっとしたピットフォールがあります。それは、それぞれの表現に適した時制があり、不適切な時制を使うと不自然な文になってしまうということです。今回の記事では、それぞれの表現に適した時制を具体例とともに詳しく解説します。
日本語ではすべて同じ?
「today」「these days」「recently」「in recent years」「nowadays」などの表現を日本語に訳すと、すべて「最近」「近年」といった似たような意味になります。しかし、英語ではそれぞれの表現に適した時制があり、時を表す表現と時制の組み合わせが不自然だと、減点対象になる可能性があります。
もちろん、この一つの文でいきなりスコアが大きく下がるようなことはありませんが、「Grammatical Range and Accuracy(文法の幅と正確性)」でなるべく高いバンドスコアを狙うためには、一つでもミスを減らしたいのは皆さん同じでしょう。
- 注意が必要な表現
- ⚠️ These days, the number of people who work from home has increased.
- 最近、在宅勤務をする人の数が増えています。
上の例では、「these days」という表現は現在の状況を示すため、現在完了形よりも現在進行形(または現在形)を使う方がより自然です。特に変化や傾向を強調したい場合は、現在進行形がより適切です。
- より自然な表現
- These days, the number of people who work from home is increasing.
- 最近、在宅勤務をする人の数が増えています。
現在形・現在進行形を使う表現
以下の表現は、一般的な事実や現在の習慣的な状況を表すため、現在形または現在進行形と一緒に使われます。
- 現在形・現在進行形を使う表現
- today - 今日、現代では
- nowadays - 最近では、今日では
- these days - 最近、このごろ
- currently - 現在
- at present - 現在のところ
- in contemporary society - 現代社会では
- in today's society - 今日の社会では
- in the modern world - 現代世界では
使用例
- 今日(現代)の状況を述べる
- Nowadays, many people rely on technology for communication.
- 最近では、多くの人々がコミュニケーションのためにテクノロジーに依存しています。
- These days, more and more people are choosing to work remotely.
- 最近、ますます多くの人々がリモートワークを選んでいます。
- Currently, governments are implementing stricter environmental regulations.
- 現在、政府はより厳しい環境規制を実施しています。
- In contemporary society, mental health is becoming an important issue.
- 現代社会では、メンタルヘルスが重要な問題になりつつあります。
- In today's society, social media plays a crucial role in shaping public opinion.
- 今日の社会では、ソーシャルメディアが世論形成において重要な役割を果たしています。
現在形と現在進行形の使い分け
これらの表現はすべて現在形・現在進行形の両方と使えますが、currently、at presentは特に現在進行中の変化や傾向を強調したい場合に現在進行形と一緒に使われることが多い表現です。
- 進行形と相性の良い表現
- Currently, the company is expanding into new markets.
- 現在、その会社は新しい市場に進出しています。
- At present, researchers are investigating this phenomenon.
- 現在のところ、研究者たちがこの現象を調査しています。
注意点
これらの表現は「現在の一般的な状況」を表すため、過去形や現在完了形よりも、現在形・現在進行形の方が自然です。
- 避けた方が良い表現
- ⚠️ Nowadays, technology has transformed our lives.
- → より自然:Nowadays, technology is transforming our lives.
- ⚠️ In today's society, people became more health-conscious.
- → より自然:In today's society, people are becoming more health-conscious.
冠詞の有無
上級者は冠詞の有無にも注目しましょう。「world」は通常「the」をつけるのに対し、「society」は「the」なしで(抽象概念として)使われていることにも着目してみましょう。
- 「world」の冠詞
- ✅ in the modern world(最も一般的)
- ✅ in a modern world(文脈による)
- ❌ in modern world(通常は言わない)
- 「society」の冠詞
- ❌ in the modern society(不自然、societyには通常theをつけない)
- ❌ in a modern society(不自然、societyには通常冠詞をつけない)
- ✅ in modern society(一般的)
presently は使い方が難しい
「at present」と似た単語に「presently」がありますが、この単語は二つの異なる意味を持つため、使用には注意が必要です。
- presentlyの二つの意味
- 意味1: すぐに、まもなく(soon)- 伝統的な意味、特にイギリス英語
- 意味2: 現在(now)- アメリカ英語で増えている用法
このように、読み手によって解釈が異なる可能性があるため、IELTSライティングでは避けるのが無難とされています。明確さが重視されるIELTSエッセイでは、意味が一つしかない「at present」や「currently」を使うことをお勧めします。
現在完了形・過去形を使う表現
以下の表現は、過去から現在までの期間や変化を表すため、現在完了形または過去形と一緒に使われます。
- 現在完了形・過去形を使う表現
- in recent years - 近年
- in recent decades - ここ数十年で
- over the past few years - 過去数年間で
- over the last decade - 過去10年間で
- in the last century - 前世紀において
使用例
- 過去から現在までの変化を述べる
- In recent years, the cost of living has risen significantly.
- 近年、生活費が大幅に上昇しています。
- Over the past few decades, technology has revolutionised the way we work.
- 過去数十年で、テクノロジーが私たちの働き方を革新しました。
- Over the last decade, awareness of environmental issues has increased dramatically.
- 過去10年間で、環境問題への意識が劇的に高まりました。
なぜ現在完了形なのか
「in recent years」や「over the past few years」などの表現は、明確な過去の時点を指定していないため、現在完了形を使います。これらの表現は「過去のある時点から現在まで」という期間を示しており、その変化や状況が現在も続いていることを含意しています。
- 避けた方が良い表現
- ⚠️ In recent years, online shopping becomes more popular.
- → より自然:In recent years, online shopping has become more popular.
- ⚠️ Over the past decade, global temperatures are rising steadily.
- → より自然:Over the past decade, global temperatures have risen steadily.
「recently」と「lately」について
「recently」の使い方
「recently」は過去の出来事を表すため、現在完了形または過去形と一緒に使います。現在形や現在進行形とは使わないのが一般的です。詳しくは、『「recently」は現在の話ではない』の記事もご参照ください。
- recentlyの正しい使い方
- Recently, many companies have adopted hybrid work models.
- 近頃、多くの企業がハイブリッド勤務モデルを採用しました。
- Recently, the government announced new policies.
- 政府は近頃新しい政策を発表しました。
「lately」の使い方
「lately」は現在完了形(単純形・進行形の両方)と一緒に使われます。「recently」と違い、過去形とは使えない点に注意してください。「最近ずっと〜している」という継続的な状況を表します。
- latelyの正しい使い方
- I have been studying English every day lately.
- 最近、私は毎日英語を勉強しています。
- Lately, I have been feeling more energetic.
- 最近、私はより元気を感じています。
- I have seen him quite often lately.
- 最近、私は彼にかなり頻繁に会っています。
- 避けた方が良い表現
- ⚠️ Lately, I went to the gym every day.
- → より自然:Lately, I have been going to the gym every day.
- ⚠️ Lately, she worked on this project.
- → より自然:Lately, she has been working on this project.
「recently」と「lately」の違い
- 時制の違い
- recently: 現在完了形・過去形の両方で使える
- lately: 現在完了形のみで使える(過去形とは使えない)
- 意味の違い
- recently: 単一の過去の出来事にも使える
- lately: 継続的な状況や繰り返しの出来事に使う
時制の選び方のまとめ
以上、それぞれの表現で使える時制をまとめると以下のようになります。
- 時制の選び方のまとめ
- nowadays / these days / currently / today / at present: 現在形・現在進行形
- lately: 現在完了形・現在完了進行形(過去形とは使えない)
- in today's society / in contemporary society / in the modern world: 現在形・現在進行形
- recently / in recent years / over the past decade / in recent decades / over the past few years: 現在完了形・過去形
時制選択の実践例
ここでは、実際のIELTSエッセイのイントロダクションでよく見られる文を例に、時制選択のポイントを確認しましょう。
例1:In recent years
- 受講生の回答(改善の余地あり)
- ⚠️ In recent years, awareness of environmental issues is increasing among the general public.
- 近年、一般市民の間で環境問題への意識が高まっています。
- より自然な表現
- In recent years, awareness of environmental issues has increased among the general public.
- 近年、一般市民の間で環境問題への意識が高まっています。
「In recent years」は過去から現在までの期間を表すため、現在完了形を使う方が自然です。現在進行形は「these days」など、現在進行中の動作を強調する表現と一緒に使います。
例2:Nowadays
- 受講生の回答例(改善の余地あり)
- ⚠️ Nowadays, technology has revolutionised the way people communicate.
- 最近では、テクノロジーが人々のコミュニケーション方法を革新しています。
- より自然な表現
- Nowadays, technology is revolutionizing the way people communicate.
- 最近では、テクノロジーが人々のコミュニケーション方法を革新しています。
「Nowadays」は現在の一般的な状況や進行中の変化を表すため、現在形または現在進行形を使う方が自然です。ここでは変化の進行を強調するため、現在進行形が適切です。
例3:Over the past decade
- 受講生の回答例(改善の余地あり)
- ⚠️ Over the past decade, the education system is becoming more technology-dependent.
- 過去10年間で、教育システムはよりテクノロジー依存になってきています。
- より自然な表現
- Over the past decade, the education system has become more technology-dependent.
- 過去10年間で、教育システムはよりテクノロジー依存になってきています。
「Over the past decade」は過去から現在までの期間を明示しているため、現在完了形が適切です。現在進行形は「these days」や「currently」など、現在の時点での進行を強調する表現と使います。
例4:These days
- 受講生の回答例(改善の余地あり)
- ⚠️ These days, many companies have adopted flexible working arrangements.
- 最近、多くの企業が柔軟な勤務形態を採用しています。
- より自然な表現
- These days, many companies are adopting flexible working arrangements.
- 最近、多くの企業が柔軟な勤務形態を採用しています。
「These days」は現在進行中の傾向を表すため、現在進行形がより自然です。もし過去から現在までの変化を強調したい場合は、「In recent years」などの表現に変更し、現在完了形を使います。
まとめ:時制選択のチェックリスト
- それぞれの表現に適した時制を知る
- 日本語のイメージに引きずられない
- より自然な時制の組み合わせを選ぶ
このように、時を表す表現と時制の一致は意外と盲点になる部分です。エッセイを書く際は、各表現に適した時制を意識しながら、正確で自然な文法を心がけましょう。
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この記事を書いた人
Hibiki Takahashi
日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,000名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住13年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。
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