「much」は「多くの」という意味を持つ英単語ですが、肯定文では使いにくいという特徴があります。例えば、「I have much money.」という文は文法的には間違いではないものの、英語では不自然に聞こえます。この記事では、なぜ肯定文で「much」を使うことが少ないのか、その理由と代わりに使うべき表現について解説します。また、「much」が肯定文で使える場合や、副詞としての用法についても詳しく説明します。
much moneyとは言わない!?
- 不自然な表現
- I have much money.
- 私はお金をたくさん持っています。
このような文は、英語では不自然だということを聞いたことがあるかもしれません。
確かに、「much」には「多くの」という意味があり、不可算名詞を修飾する際に使われることが多いため、不可算名詞である「money」の前に「much」をつけて、「much money」としたくなる気持ちはわかります。
しかし、英語ではこのような表現はあまり使われません。代わりに、次のように表現することが一般的です。
- 自然な表現
- I have a lot of money.
- 私はお金をたくさん持っています。
- I have a substantial amount of money.
- 私はかなりの額のお金を持っています。
このように、肯定文では「a lot of money」「a substantial amount of」「a significant amount of」などを使うことが一般的です。
では、「much money」という表現自体が間違いかというと、そうではありません。特に否定文や疑問文では、「much money」を使うことができますし、後述のように肯定文であっても「much money」という表現を使うことができる場合があります。
muchの本来の意味は「過剰」
「much money」は不自然に感じられる理由は、「much」が持つニュアンスにあります。
「much」は「多くの」という意味だけでなく、「過剰である、多すぎる(too much)」というニュアンスも持っています。そのため、「much money」は「過剰なお金」というニュアンスになり、「私は多すぎるお金を持っている」というような感じの英語になり、不自然に感じられるのです。
一方、否定分や疑問文では「much money」という表現は特に問題なく使うことができます。
- 自然な表現
- I don't have much money.
- 私はあまりお金を持っていません。
- There isn't much traffic today.
- 今日はあまり交通量がありません。
「I don't have much money.」は「十分(過剰)と言えるほどのお金を持っていない」、つまり「あまりお金を持っていない」という意味になります。同様に、「There isn't much traffic today.」は、「過剰なほどの交通量ではない」、すなわち「交通量がそれほどない」という意味になります。
muchは肯定文で使う場合もある
「much」は肯定文で全く使わないというわけではありません。例えば、以下のような状況では自然に使うことができます。
- 自然な表現
- Much work remains to be done.
- まだたくさんの仕事が残っています。
- The project requires much time and effort.
- そのプロジェクトには多くの時間と労力が必要です。
- Much money was spent on unnecessary items.
- 多くのお金が不必要なものに使われました。
この例文では「much」を肯定文で用いていますが、不自然ではありません。直訳するならば「(過剰なほどの)多くの仕事が残っている」「(過剰なほどの)多くの時間と労力が必要である」「(過剰なほどの)多くのお金が使われた」となりますが、それがまさに伝えいたいことであり、このような文脈では「much」を使うことができます。
しかし、冒頭で紹介したような「I have much money.」は「私は多すぎるお金を持っている」というニュアンスになるため、不自然に感じられるのです。
副詞用法はこの限りではない
ここまでで紹介した「much」は、いずれもあとに名詞が続く場合の話(形容詞的用法)でしたが、副詞として使う場合は肯定文であっても自由に「much」を使うことができます。
- 自然な表現
- I much appreciate your help.
- あなたの助けを大変感謝しています。
- I much prefer tea to coffee.
- 私はコーヒーよりも紅茶をずっと好みます。
- This idea is much better than the previous one.
- このアイデアは前のものよりもずっと良いです。
これは「much」が動詞や形容詞・副詞を修飾する「副詞的用法」と呼ばれるものですが、この場合は、「非常に」「とても」という意味で使われるため、肯定文で使うことができます。
また、以下のような慣例表現でも肯定文で「much」を使うことができます。
- 自然な表現
- Much to my surprise, he showed up at the party.
- 驚いたことに、彼はパーティーに現れました。
- Much to my disappointment, the concert was canceled.
- 残念なことに、コンサートは中止になりました。
まとめ
まとめると、「much money」のように名詞に直接続ける場合(形容詞的用法)は、肯定文では「a lot of money」「a substantial amount of money」などの表現を用いる方が自然だが、否定文や疑問文ではその限りではないということになります。また、「much」のあとに名詞がない場合、つまり副詞的用法の場合には、肯定文でも自由に「much」を使うことができます。
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この記事を書いた人
Hibiki Takahashi
日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,000名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住13年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。
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