エッセイを書く際、読者に新しいアイデアや情報を紹介する際には、既知の情報から未知の情報への流れを意識することが効果的です。ここでいう「既知の情報」とは、エッセイの中ですでに議論された情報のことです。この情報を基盤にして新しいアイデア(論理展開)を導入することで、読者は文脈を理解し、新しい情報に備えることができます。
「既知の情報から未知の情報へ」の流れを意識して書くことが重要である理由は、人が情報を処理する自然な方法に一致しているからにほかなりません。つまり、すでに理解していることを基盤にして次の議論に進むということです。
未知の情報から始まる具体的な回答を見てみましょう。
- Some may argue that reading entertainment books is beneficial for children because creativeness improves their critical thinking skills.
- 娯楽本を読むことは子供にとって有益であると主張する人もいます。なぜなら、創造性は批判的思考力を高めるからです。
このようなトピックセンテンスはよく見かけますし、一見すると特に大きな問題はなさそうに見えます。
トピックセンテンスの前半は「娯楽本を読むことは子供にとって有益である」というトピック(トピックの詳細についてはこちら)を紹介しているだけですので問題ありません。
問題は、because以降のメインアイデアの部分です。「creativeness improves their critical thinking skills」には、「creativeness」と「critical thinking skills」という2つの新しい概念(未知の情報)が一気に導入されています。「reading entertainment books」が「creativeness」にどのように関連しているのか説明がないままに、説明がどんどん進んでしまっている印象です。
もちろん、頭の回転の速い読者であれば、議論のギャップを想像力で埋めることができますが、エッセイは誰が読んでも議論を追うのに苦労しないのが理想です。
- Some may argue that reading entertainment books is beneficial for children because it improves their creativeness.
- 娯楽本を読むことは子供にとって有益であると主張する人もいます。なぜなら、それが彼らの創造性を高めるからです。
このように、トピックセンテンスの後半を「それが彼らの創造性を高めるからです」と修正することで、読者は「reading entertainment books」が「creativeness」にどのように関連しているのか理解しやすくなります。
そうすると、「critical thinking skills」のアイデアはトピックセンテンスから外れることになります。しかし、それはそれでいいのです。なぜなら、この後のサポートセンテンスで「critical thinking skills」について詳しく説明することができるからです。
「トピックセンテンスのあとに何を書いたらいいかわからない」という方は、このようにトピックセンテンスにアイデアを詰め込みすぎている可能性があります。トピックセンテンスで言いたいことを全部詰め込んでしまうと、どれがメインアイデアかわからなくなるだけでなく、その先のサポートアイデアが尽きてしまう、という事態に陥りやすいのです。
「既知の情報」から「未知の情報」への流れを意識しながら議論を展開することで、読み手を驚かせることなく、話の流れをフォローしやすいエッセイを書くことができます。
この記事を書いた人
Hibiki Takahashi
日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,000名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住13年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。