ライティングサミット講義資料(Unit 7)

その意味、伝わっていますか?

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IELTSのライティングでは、内容面での論理性と明瞭性が重要であることは言うまでもありませんが、仮にしっかりプランニングできたとしても、今度はそれを英語で表現する際に、文法・語彙がネックになってうまく伝わらない英語になってしまうことがあります。

まずは以下のセンテンスを見てみましょう。

  • A possible disadvantage of small local shops closing and larger supermarkets and shopping centers opening is that small local shops offer more humanised services to customers.
  • 小規模な地元の店が閉店して大型のスーパーマーケットやショッピングセンターが開店することの可能性のある欠点は、小規模な地元の店が顧客により人間味のあるサービスを提供することです。

これは、以下のタスクに対して作成された回答の一部(トピックセンテンス)です。

  • Many small local shops are closing due to competition from large supermarkets and shopping centres. Do the advantages of this development outweigh the disadvantages for shoppers?
  • 多くの小規模な地元の店が、大型スーパーマーケットやショッピングセンターとの競争により閉店しています。この発展の利点は、買い物客にとって欠点を上回りますか?

先ほどの回答には、大きく3つの問題があります。

問題点1: 必要以上に長いトピック

まず、トピックの部分が非常に長くなっていることに気づきましたでしょうか?

トピックセンテンスについては、さまざまな記事の中で紹介している通り、段落の主旨を簡潔にまとめた文です。この段落でどのようなことを議論するのかという「トピック」と、そのトピックに対するメインの主張である「メインアイデア」で構成されるセンテンスのことでしたね。

ライティング・タスク2

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確かにトピックでこの段落でどのような議論をする予定であるかを明示することは重要ではあるのですが、慎重になりすぎたためか、「小規模な地元の店が閉店して大型のスーパーマーケットやショッピングセンターが開店すること」というように、非常に長いフレーズになってしまっています。

トピックセンテンスは、その性質上、簡潔にまとめることが求められます。トピックセンテンスが長くなりすぎると、何について議論しているのかが不明瞭になり、またそれに対する主張も曖昧になってしまいます。IELTSのライティングでは、トピックセンテンスはできるだけ短く簡潔にすることが明瞭性を高める上でも大変有効です。

では、具体的な改善方法を見てみましょう。

「小規模な地元の店が閉店して大型のスーパーマーケットやショッピングセンターが開店すること」というようにタスクに書かれていることをすべて書くのではなく、例えば、「the rise of large supermarkets and shopping centres(大型スーパーマーケットやショッピングセンターの台頭)」とすれば、小規模な地元の店が閉店に追い込まれている様子は読み手には容易に想像できるので省略することができそうです。

問題点2: 誤った語彙の選択

次に、誤った語彙の選択についてです。

  • A possible disadvantage of small local shops closing and larger supermarkets and shopping centers opening is that small local shops offer more humanised services to customers.
  • 小規模な地元の店が閉店して大型のスーパーマーケットやショッピングセンターが開店することの可能性のある欠点は、小規模な地元の店が顧客により人間味のあるサービスを提供することです。

この文の中で、特に気になるのは「humanised」という語彙です。

「humanise」は主に「(動物・物を)人間化する」「(仕組みを)人間味のあるものにする」という意味で、医療・工学・製品設計などの文脈で使われることが多く、サービスの質を表すときには馴染みが薄い表現です。

このような場合には、「humanised(人間味のある)」という表現を使うよりも、「きめ細やかなサービス」という意味で「personalised(個人に最適化された)」といった表現を使う方が自然です。

問題点3: トピックとメインアイデアのミスマッチ

次に、トピックとメインアイデアのミスマッチについてです。こちらの方が重要な問題を孕んでいます。

  • A possible disadvantage of small local shops closing and larger supermarkets and shopping centers opening is that small local shops offer more humanized services to customers.
  • 小規模な地元の店が閉店して大型のスーパーマーケットやショッピングセンターが開店することの可能性のある欠点は、小規模な地元の店が顧客により人間味のあるサービスを提供することです。

この文の意味は、直訳すれば、「小規模な地元の店が閉店して大型のスーパーマーケットやショッピングセンターが開店することの可能性のある欠点は、小規模な地元の店が顧客により人間味のあるサービスを提供すること」となります。

ここで読み手はおそらく疑問に感じることになるでしょう。というのも、「小規模な地元の店が顧客により人間味のあるサービスを提供すること」が、果たして「欠点」なのでしょうか?

書き手が伝えたかったことは、(小規模な地元の店が閉店することによって)より人間味のあるサービスが失われることだったのかもしれません。もしそうだとすれば、英語としては不十分な表現になってしまっていることがわかります。

では、このように表現したらどのような印象になるでしょうか?

  • A possible disadvantage of small local shops closing and larger supermarkets and shopping centers opening is losing personalised services to customers that small local shops offer.
  • 小規模な地元の店が閉店して大型のスーパーマーケットやショッピングセンターが開店することの可能性のある欠点は、小規模な地元の店が顧客に提供するきめ細やかなサービスを失うことです。

かなり印象が変わりますね。ただ、もう少し改善ができそうです。気になるのは「losing personalised services to customers that small local shops offer」という部分です。

「losing」は動名詞ですので「何かを失うという行為そのもの」を指します。「現在進行形で失いつつある、あるいは失う行為」という動きを含む語感があります。一方、「the loss of ...」という表現を使うと、「loss」は名詞ですので、「何かを失うこと」という状態を指します。「the loss of ...」のように抽象名詞化することで、失うという行為よりも、失った状態を強調することができるのです。

  • A possible drawback of the rise of large supermarkets and shopping centres is losing personalised services to customers that small local shops offer.
  • 大型スーパーマーケットやショッピングセンターの台頭は、小規模な地元店が顧客に提供するきめ細やかなサービスを失う行為である。
  • A possible drawback of the rise of large supermarkets and shopping centres is the loss of personalised service that small local shops used to provide.
  • 大型スーパーマーケットやショッピングセンターの台頭は、小規模な地元店がかつて提供してきたようなきめ細やかなサービスの喪失である。

このように「the loss of ...」という表現を使うことで、より明確に「失うこと(失った状態)」を表現することができるようになります。あわせて「to customers」の部分は文脈で明らかですので、省略してもいいでしょう。

以上、合わせると、例えば以下のようなトピックセンテンスにすることができるでしょう。

  • A possible drawback of the rise of large supermarkets and shopping centres is the loss of personalised services that small local shops used to provide.
  • 大型スーパーマーケットやショッピングセンターの台頭は、小規模な地元店がかつて提供してきたようなきめ細やかなサービスの喪失である。

これでかなり自然になりました。あるいは、以下のように表現することもできそうです。

  • One major drawback of the rise of large supermarkets and shopping centres is the erosion of personalised services once offered by small local shops.
  • 大型スーパーマーケットやショッピングセンターの台頭は、小規模な地元店がかつて提供していたきめ細やかなサービスの侵食である。

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では、このようなミスはなぜ起こるのでしょうか?それは、大きく以下のような理由が考えられます。

この記事はライティグサミット受講生限定記事です。

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Hibiki

この記事を書いた人

Hibiki Takahashi

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,000名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住13年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

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