impactとinfluenceは、どちらも「影響」という意味を持ちますが、影響の強さや使い方が大きく異なります。この記事では、名詞・動詞としての使い分けを含めて、具体例とともに詳しく解説します。IELTSライティングで正確な語彙を使用するために、この違いをしっかり理解しましょう。

基本的な意味の違い

impactとinfluenceは、どちらも「影響」を表す言葉ですが、最も重要な違いは影響の強さと直接性です。

基本的な意味
impact: 強い影響、大きな衝撃（強力で直接的な影響）
influence: 影響力、影響（穏やかで間接的な影響）

impactは、強力で直接的、測定可能な影響を表します。何かが劇的に変化したり、明確な結果が生じたりする場合に使います。衝撃や打撃のようなイメージです。

一方、influenceは、穏やかで間接的、徐々に作用する影響を表します。人の考え方や行動に徐々に作用し、時間をかけて変化をもたらす場合に使います。

名詞としての使い分け

名詞として使う場合、両者は影響の強さと性質によって使い分けます。

名詞としての使い分け
impactを使う場合：強力で明確な影響、目に見える結果、劇的な変化、即座の効果
influenceを使う場合：穏やかな影響、徐々に作用する効果、人の考えや行動への影響、権力や立場による影響

have a positive/negative impact

have a positive/negative impactは、明確で強力な良い/悪い影響を与えるという意味です。どちらかというと結果が目に見えやすく、はっきりとした変化が見られる場合に使います。

have a positive/negative impactの使用例
The new policy had a significant impact on employment rates.
新しい政策は雇用率に大きな影響を与えました。
Climate change has a negative impact on agricultural productivity.
気候変動は農業生産性に悪影響を与えています。
Technology has had a profound impact on modern education.
テクノロジーは現代教育に深刻な影響を与えています。

have a positive/negative influence

have a positive/negative influenceは、穏やかで持続的な良い/悪い影響を与えるという意味です。人の考え方や行動に徐々に作用する場合に使います。

have a positive/negative influenceの使用例
Parents have a strong influence on their children's values.
親は子どもの価値観に強い影響を与えます。
Social media has a negative influence on young people's self-esteem.
ソーシャルメディアは若者の自尊心に悪影響を与えています。
Teachers can have a positive influence on students' career choices.
教師は生徒の進路選択に良い影響を与えることができます。

よく使われるコロケーション

impactと相性の良い形容詞
significant/major/profound impact: 重大な影響
immediate/direct impact: 即座の/直接的な影響
devastating/dramatic impact: 壊滅的な/劇的な影響
measurable/tangible impact: 測定可能な/明白な影響

influenceと相性の良い形容詞
strong/powerful influence: 強い影響力
lasting/enduring influence: 持続的な影響
subtle/indirect influence: 微妙な/間接的な影響
cultural/social influence: 文化的な/社会的な影響

動詞としての使い方

impactとinfluenceは、どちらも動詞として使うことができますが、使い方と文法が異なります。

動詞としての基本
impact (動詞): 〜に影響を与える（強力で直接的）
influence (動詞): 〜に影響を与える（穏やかで間接的）

両者とも「影響を与える」という意味を持ちますが、動詞として使う際には注意すべき点があります。

impactを動詞で使う場合の注意点

impactを動詞で使う場合、いくつかの重要な注意点があります。

1. フォーマルな文脈で推奨される使い方

impactを動詞で使う場合、名詞形の「have an impact on」の方がよりフォーマルで推奨されることが多いです。特にアカデミックライティングでは名詞形が好まれます。

推奨される表現
Recommended: The policy has a significant impact on small businesses.
その政策は中小企業に大きな影響を与えます。
Acceptable: The policy impacts small businesses significantly.
その政策は中小企業に大きな影響を与えます。

2. impact on（自動詞の用法）

動詞のimpactには、前置詞「on」を伴う自動詞の用法もあります。

自動詞の用法
Climate change impacts on agriculture.
気候変動は農業に影響を与えます。

確かに辞書にも自動詞の用法が掲載されていることが多いですが、この用法は論争的であり、「impact on」（自動詞用法）の使用は 85%の専門家が不承認しているという記事もあります。このように、多くの文法専門家が「impact on」（自動詞用法）を避けるよう推奨しています。

参照記事：“Impact” as a Verb

3. 受動態での使用

動詞のimpactは受動態で特によく使われますが、この場合も「be impacted by」という形になります。

受動態の使用例
Small businesses are severely impacted by economic downturns.
中小企業は景気後退により深刻な影響を受けます。
The local community was impacted by the factory closure.
地域社会は工場閉鎖により影響を受けました。

4. IELTSライティングでの推奨

IELTSライティングでは、「have an impact on」の方がより適切と考えておくといいでしょう。動詞のimpactは避けるべきというわけではありませんが、名詞形の方がアカデミックで洗練された印象を与えます。

IELTSでの推奨表現
Recommended: Social media has a negative impact on interpersonal relationships.
Acceptable: Social media negatively impacts interpersonal relationships.

influenceを動詞で使う場合の注意点

influenceを動詞で使う場合も、いくつかの重要な注意点があります。

1. 直接目的語を取る

influenceは前置詞なしで直接目的語を取ります。「influence on」のような自動詞の用法はありません。

正しい使い方
Correct: Parents influence their children's behavior.
親は子どもの行動に影響を与えます。
❌ Incorrect: Parents influence on their children's behavior.

2. 名詞形と動詞形の使い分け

influenceは、impactとは異なり、名詞形も動詞形も両方とも自然に使えます。文脈や強調したい点によって使い分けることができます。

名詞形 vs 動詞形
名詞形: Advertising has a strong influence on consumer behavior.
広告は消費者行動に強い影響を与えます。
動詞形: Advertising strongly influences consumer behavior.
広告は消費者行動に強く影響を与えます。

3. 受動態での使用

influenceは受動態でも自然に使えます。「be influenced by」という形が一般的です。

受動態の使用例
Young people are easily influenced by celebrities.
若者は有名人に影響を受けやすいです。
Consumer choices are influenced by advertising campaigns.
消費者の選択は広告キャンペーンに影響されます。
His decision was influenced by his parents' advice.
彼の決断は両親の助言に影響されました。

4. 副詞との組み合わせ

influenceは様々な副詞と組み合わせて使えます。影響の程度や方法を表現できます。

副詞との組み合わせ例
greatly/strongly/heavily influence: 大きく影響を与える
directly/indirectly influence: 直接的に/間接的に影響を与える
positively/negatively influence: 良い/悪い影響を与える
subtly influence: 微妙に影響を与える

5. IELTSライティングでの使用

influenceは、名詞形・動詞形ともにIELTSライティングで適切に使えます。impactと異なり、動詞形の使用に特別な制約はありません。

IELTSでの使用例
Technology influences the way people communicate.
テクノロジーは人々のコミュニケーション方法に影響を与えます。
Technology has an influence on the way people communicate.
テクノロジーは人々のコミュニケーション方法に影響を与えます。

理解度チェッククイズ

以下の文で、impactとinfluenceのどちらが適切か選んでください。

問題1
The earthquake had a devastating _____ on the local economy.
地震は地域経済に壊滅的な＿＿＿を与えました。

問題2
Teachers can _____ students' attitudes toward learning.
教師は生徒の学習に対する態度に＿＿＿を与えることができます。

問題3
The new regulation will have a significant _____ on business operations.
新しい規制はビジネス運営に重大な＿＿＿を与えるでしょう。

問題4
Social media has a strong _____ on teenagers' behavior.
ソーシャルメディアは10代の行動に強い＿＿＿を与えています。

問題5
Climate change _____ agricultural productivity worldwide.
気候変動は世界中の農業生産性に＿＿＿を与えています。

問題6
Parents have a lasting _____ on their children's values.
親は子どもの価値観に持続的な＿＿＿を与えます。

問題7
The pandemic had an immediate _____ on global travel.
パンデミックは世界の旅行に即座の＿＿＿を与えました。

問題8
Cultural factors _____ people's dietary choices.
文化的要因は人々の食事の選択に＿＿＿を与えます。

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この記事を書いた人

Hibiki Takahashi

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール『PlusOnePoint（プラスワンポイント）』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』（明日香出版社）著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,000名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成（うち2名は7.5を達成）。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住13年、IELTS 8.5（ライティング 8.0）、CEFR C2。