「もっと早く始めればよかった」。IELTSの受験者から最もよく聞く後悔のひとつです。スコアアップには時間がかかる。それはほとんどの人がわかっています。それでも、多くの方が直前になるまで本格的に動き出せません。
プラスワンポイントにいただくご相談・お問い合わせのうち、半数近くが「数ヶ月以内に目標スコアが必要」という状況です。中には「2週間後が最後の受験チャンス」という方も珍しくありません。ご相談のメッセージからは、焦りと迷いが同時に伝わってきます。
ではなぜ、わかっていても人は動けないのでしょうか。そして、本当に時間がないとき、何をすべきで、何を捨てるべきなのか。この記事では、先延ばしの心理と直前期の実践戦略を整理します。
なぜ人は直前まで動けないのか
英語ではprocrastination(先延ばし)と呼ばれる行動パターンは、IELTSに限らず多くの場面で人の足を引っ張ります。しかし、IELTSには特有の「先延ばしを正当化する理由」がいくつかあります。
周りでなんとかなった人を知っている
友人や知人が短期間でスコアを伸ばした話を聞くと、「自分もひょっとしたらなんとかなるかもしれない」という楽観的な期待が生まれます。この期待は根拠がないにもかかわらず、行動を遅らせる大きな要因になります。これまでの試験でなんとかなった経験がある
学校の定期試験や資格試験を、直前の追い込みで乗り越えてきた成功体験がある人は少なくありません。「今回も追い込めばいける」という感覚が、準備を先送りにする口実になります。しかしIELTSは、短期の詰め込みが通用しにくい試験です。特にスピーキングとライティングは、反復練習と質の高いフィードバックの積み重ねが不可欠で、一夜漬けではスコアを上げにくい技能であることは確かです。プランBがある
「もしダメだったら・・・」「いざとなったら・・・」という逃げ道が頭の片隅にあると、どうしてもスイッチが入るのが遅くなりがちです。「プランB」の存在自体は悪いことではありませんが、それが現在の行動の妨げになっているとしたら、問題です。
先延ばしを続けると何が起きるか
準備期間が短くなるほど、選択肢は狭まります。余裕があれば弱点を補強しながら全セクションをバランスよく伸ばせますが、直前期は「捨てる判断」が必要になります。そしてその判断を正しく下すには、手助けしてくれる人が必要になります。
「数日で合格した」という話が、人を油断させる
プラスワンポイントの約13年の歴史の中で、「最短」で目標スコアを達成した人は、2時間です。もう10年以上前の話になりますが、スカイプを使ったレッスンのたった1回で合格された方がいます。英語の基礎はしっかりできていて、ライティングだけスコアが届かずにいた方でしたが、たった1回のレッスンでコツをつかんで、翌日の試験で合格されました。それ以外にも、数日間の集中サポートでスコアを上げた方は実際にいます。
そういった達成記録はインパクトもありますし、プラスワンポイントの合格者の声にもたくさん掲載されています。でも、それを自分に当てはめてしまうことはとても危険なことなのです。
投資の世界では「1年で○億円貯めた」というような本が、定期的に店頭に並びます。もちろん、それは事実であって、そのような実績は素晴らしいものです。ただ、そのような話は多くの人を油断させます。「ひょっとしたら自分もできるかもしれない」という根拠のない楽観が、大切な準備時間を食いつぶしていきます。IELTSも同じ構造です。例外的な成功例を過信することで、「なんとかなるかもしれない」という感覚を強化し、準備を後回しにする理由になってしまう。
短期合格が成立するのは、特定の条件が揃っている場合に限ります。英語の総合的なベースがあること、試験形式に慣れていること、伸ばすべき技能がピンポイントで特定できていること。これらが揃っていて初めて、短期の集中が効果を発揮します。自分がその条件を満たしているかどうか、冷静に見極めることが先決です。
時間がないと感じたら、まず現在地を確認する
直前期に最もやってはいけないのは、焦りのまま手当たり次第に動くことです。限られた時間を有効に使うためには、「今どこにいるか」「何にフォーカスすべきか」「何を捨てるべきか」を把握する必要があります。
現在地を把握したうえで、目標スコアとのギャップが最も縮まりやすい技能を特定します。ライティングとスピーキングは、正しいフィードバックがあれば数週間で大きく変わることがあります。一方、リーディングとリスニングは、基礎的な語彙力や読解力が土台にある場合は短期で伸びますが、アプローチを変えることでスコアを伸ばすことができる場合もあります。
本当に時間がないときにすべき4つのこと
時間がないからこそ、やることを厳選して動く必要があります。
1. やることを絞る
短期的なスコアアップを優先しましょう。語彙の強化など、比較的中長期でスコアアップにつながるものは諦め、まずは今すぐ効果が出ることを優先しましょう。いろいろな人から意見を聞くことは大切ですが、それぞれの人がそれぞれのやり方で合格しています。「いろいろ試す」期間はもう終わっています。直前期は、意図的に諦めることが戦略になります。2. 信頼できる一人のメンターをつけ、その人を信じる
直前期に最も時間を奪うのは「迷い」です。「この勉強法で合っているのか」「もっといい方法があるのではないか」。この迷いが行動を止め、時間を消耗させます。信頼できる講師やコーチを一人決めて、その人を信じましょう。直前期の情報収集は、迷いを増やすだけです。3. 迷いを生むなら情報をシャットダウンする
XやYouTubeには、さまざまな勉強法や合格体験談が溢れています。情報収集は重要ですが、直前期はむしろ情報を絞るべき段階です。迷ってしまう人は、「あの方法のほうがいいかもしれない」という迷いを生むような情報源から、意識的に距離を置くとよいでしょう。4. 家族や職場の協力を得る
直前期の集中には、周囲の理解と協力が欠かせません。家族に「この時期は勉強に集中させてほしい」と事前に伝えておく。職場では可能な限り残業を減らし、帰宅後の時間を確保する。こうした環境づくりが、実際の学習時間と集中力を大きく変えます。
まとめ
時間が迫っているからといって、焦って手当たり次第に動くのは逆効果です。残り時間が少ないほど、「何をやるか」より「何をやらないか」の判断が重要になります。
先延ばしには必ず理由があります。周りの成功例、過去の体験、プランBの存在。それらは「仕方なかった」ことではなく、多くの人が同じ罠にはまります。大切なのは、今の自分の現在地を正直に把握して、残り時間でできることに集中することです。
「もう遅いかもしれない」と感じているなら、今日が最も早いスタートの日です。諦める前に、まず現在地の確認から始めてみてください。
Ask the Expert
プラスワンポイントでは、IELTS学習に関する疑問やお悩みを相談できる『無料IELTS学習相談』を実施しています。IELTSの学習方法やスコアアップのコツ、勉強計画の立て方などを、経験豊富なカウンセラーが無料でアドバイスいたします。お気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人
Hibiki Takahashi
日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住14年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。
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