ライティング・タスク2

難易度の高い問題は
後回しにするべき理由

DIFFICULT TASKS

IELTSライティングの勉強をしていると、

  • こんな問題が実際の試験で出たらやばいよなぁ...

と思うことってありますよね。

特に公式問題集には難易度の高い問題がたくさん掲載されていて、ついつい気になってしまうでしょう。しかし、効率的にスコアを上げていくことを考えると、難易度の高いライティングの問題は後回しにするべきです。

今回は、難易度の高いライティングの問題は後回しにするべきである理由についてお話しします。

難易度の低い問題から練習するのが鉄則

IELTSのライティング・タスク2の勉強をする際には、難易度の低い問題から取り組むのが大原則です。

ライティング・タスク2の問題には比較的容易に取り組めるテーマから、上級者であっても非常に難しいと感じるテーマまであります。公式問題集や過去問などを見ていると、「こんな難しい問題が実際の試験で出たらどうしよう...」という不安がよぎるかもしれません。しかし、焦る気持ちを抑えて、難易度の低い問題からチャレンジをしていきましょう。

簡単な問題に対応できないなら、難しい問題には絶対に対応できない

難易度の低い問題で目標スコアをクリアできない状態であれば、どう頑張っても難易度の高い問題で目標スコアをクリアすることはできません。

特にIELTSライティングの勉強を始めたての頃はいろいろな問題に目移りしがちです。そして、なぜかほとんどの人が難しい問題から挑戦しようとします。ライティング対策では「難しい問題に対応できるようになったら簡単な問題も対応できる」、言わば「大は小を兼ねる」というような考えは成り立ちません。

難しい問題に挑戦をしてエッセイがうまく書けなかったとしても、その原因がどこにあるのかがわからないまま終わってしまいます。エッセイの基本的な書き方ができていないからなのか、文法や語彙のスキルが不足しているからなのか、あるいは単にテーマが難しかっただけなのか、特に独学で対策をしている場合には分析が難しくなります。

まずは、難易度の低い問題を確実にクリアできる実力を付けるとともに、IELTSライティングで必要なことをしっかり身につけていくことが先決です。難易度の低い問題で目標スコアをクリアできるようになったら、徐々に難易度の高い問題に挑戦をしていきましょう。

難易度の高い問題から練習する弊害

それだけではありません。難易度の高い問題を中心に取り組んでしまうことは、実は思わぬ弊害を引き起こすことがあります。それはモチベーションの低下です。

ピアノの練習を想像してみてください。ピアノの練習を始めたばかりだとして、いきなりショパンやリストの名曲集を練習しようとしたらどうなるでしょうか?きっと3ヵ月もしないうちにモチベーションがどんどん低下して、「ひょっとして自分には向いていないんじゃないだろうか・・・」というように思うことでしょう。

ライティングの問題でもまったく同様のことが言えます。難易度の高い問題ばかりに挑戦をしていると、いつの間にかモチベーションが低下してしまって、エッセイのフィードバックをもらうことが億劫になってきます。場合によってはエッセイ自体を書かなくなってしまいます。つまらないと感じるかもしれませんが、まずは難易度の低い問題から確実に潰していき、「この問題なら確実に目標スコアを取れる」という問題を一つでも増やしていくことが最終的には目標スコア達成への近道となります。

難易度の高い問題は時間を計らずに

IELTSのライティング・タスク2は40分で250語以上のエッセイを完成させるわけですが、難易度の高い問題に挑戦する際には時間を計らずに書いてみましょう。

時間を計って書くメリットは、「今、試験を受けたらどのくらいのスコアが取れるか?」をおおよそ把握できることです。一方、時間を計って書くデメリットは、じっくりと内容を吟味して書くことが難しいため、効率的な学習になりがちであることです。せっかく難易度の高い問題に挑戦するのであれば、じっくりそのテーマについて考きたいところです。

一方、簡単な問題に挑戦するときに時間を計って書いてみるといいでしょう。特に、ある程度エッセイがスムーズに書けるようになってきたら、まずは40分でエッセイを書いてみて、その時点での完成度を記録しておきましょう。そのあと、じっくり時間をかけて自分なりのベストの状態に仕上げてみましょう。そうすることで今の実力をある程度把握しつつ、そのエッセイの完成度を高めることができます。

カウントアップ方式とカウントダウン方式

時間を計る方法として、カウントアップとカウントダウンの2種類があります。

カウントアップ方式とは、書き始めから書き終わりまでの時間をタイマーで計測する方法です。カウントアップ方式のメリットは、エッセイを書いている間、必要以上に時間を気にする必要がないため、書くことに集中できる点です。

一方、カウントダウン方式とは、一定の時間が経過するとアラームが鳴るように事前にタイマーをセットしておき、書き始めにタイマーをスタートさせる方法です。カウントダウン方式のメリットは、目標とする時間内にどのくらいのレベルのエッセイを書くことができるか、すなわち「今の実力」を測定することができる点です。

カウントアップカウントダウン
メリット時間を気にせずに書ける今の実力を把握できる
デメリット今の実力は把握できない丁寧に書けない

時間をかけてエッセイを仕上げる

ライティング学習において「エッセイをベストの状態に仕上げる」というプロセスはとても大切です。

時間を計って書くというのは言わば模擬試験を受けているようなものです。模擬試験ばかり受けていても実力が上がらないのと同じように、時間を計ってたくさんエッセイを書いてもライティングの実力はなかなか伸びません。

時間をかけてじっくりエッセイを仕上げていく過程で、いまの自分に足りていない部分をあぶり出すことができます。また伝えたい内容をうまく表現できなかった部分は、辞書を使って自分で調べることで長期的な記憶に繋がります。

難易度よりも出題頻度が重要

挑戦する問題を選ぶ際には出題頻度にも注目してみましょう。

難易度の低い問題で目標スコアをクリアできるようになったら、徐々に難易度の高い問題も織り交ぜて練習をしていくことになりますが、その際にも「難易度」よりも「出題頻度」を意識しながら挑戦する問題を選びましょう。

難易度は高いもののあまり出題されないような問題は後回しにして、難易度は高いながらも比較的よく出題されるような問題を優先しましょう。

難易度が高くあまり出題されない問題の例

難易度が高いけれども頻出問題ではない問題の例としては以下のようなものがあります。

  • Some people believe that it is a good idea to share as much information as possible in scientific research, business and the academic world. Others believe that some information is too important or too valuable to be shared freely. Discuss both these views and give your own opinion.

難易度は高いが比較的よく出題される問題の例

一方、難易度は高いけれども比較的よく出題される問題の例としては以下のようなものがあります。

  • The differences between countries are becoming less and less evident, as people all over the world wear the same fashions, use the same brands, have similar eating habits and watch the same TV channels. Do the advantages of this trend outweigh its disadvantages?

確率を上げることが目標達成の最短ルート

プラスワンポイントが提供するIELTSライティング徹底添削サービス『IELTS MyEssay』では、最も効率よくライティングの目標スコアを達成する方法として、練習での確率を上げることであると説明しています。

例えば、ライティングの目標スコアが7.0であれば、練習の段階で30%の確率を目指します。これは、時間を計って書いたエッセイが7.0以上のクオリティに仕上がる確率が30%であることを意味します。

そのためには、「難易度の高いタスク1問」よりも「難易度の低いタスク3問」です。まずは自分が自信を持って書けるエッセイのストック数を増やすことが目標スコア達成への第一歩なのです。Twitterで実施した『12週間チャレンジ』においても、基本的にはこれと同じ方法を取り、参加者4名全員が12週間で7.0以上のハイスコア(うち2名は7.5を達成)を達成しました。

もちろん、試験で不幸にも難易度の高いタスクに当たる可能性もあるのですが、仮に難易度の高い問題を練習していたとしても目標スコアをクリアできるかどうかは別問題です。難易度の低い問題かつ出題頻度の高い問題に1つずつ挑戦していきましょう。

目標スコア目標確率目標ストック
本数
7.5以上20%25本以上
7.030%20本以上
6.540%15本以上
5.5-6.050%10本以上
5.0以下60%5本以上

100%を目指すのは目標達成後でも遅くない

そうは言っても自分は100%の確率を目指したい、難易度が高い問題が出題されても目標スコアを取れるようになりたいと考える方もいるかもしれません。しかし多くの人は「いつまでにこのスコアを取らなければならない」という期限付きで勉強をされているはずです。そのような方は、まずは目標スコアを達成することを最優先に考えましょう。その上のレベルは、試験で目標スコアをクリアしてから挑戦しても遅くありません。

語学は生涯学習です。目標スコアを達成したあともIELTSに挑戦し続けていただければ幸いです。

試験で難しい問題に遭遇したら?

  • でも、運悪く試験で難しい問題に出くわしたら、どうしたらいいの?

ここまでの話を読んでこう思った人もいるかもしれません。

確率で勝負をしていますので、アンラッキーにも試験で難しい問題に遭遇することもあるでしょう。もし試験で難易度の高い(と少なくとも自分が感じる)問題が出題されたら、気持ちを切り替えて最善を尽くしましょう。

これまでに難易度の低い問題や頻出問題を中心に、たくさんのエッセイのストックを作ってきたはずです。その過程でライティングへの理解が十分に深められていれば、ある程度の応用力はついているはずなのです。すぐに諦めてしまうのではなく、これまでに培った自分のライティング力を信じてベストを尽くしましょう。仮に目標スコアに0.5届かなかったとしても、難しい問題であと0.5のところまで来ることができたのであれば、次の試験で比較的簡単な問題が出たら目標スコアを達成できるサインとして捉えることができます。

100%の実力を身につけるまで十分に準備ができればそれに越したことはありませんが、それには相当な時間と努力が必要です。時間が十分に確保できる方であれば100%の実力を付けてから試験に臨むこともできますが、多くの方は「スコア達成の期限」が決まっているため、そこまで到達できない場合がほとんどです。だからこそ、複数回受験をして「確率」で勝負をする必要があるのです。

まとめ

IELTSのライティング・タスク2の勉強において、難易度の高いライティングの問題は後回しにするべきである理由についてお話ししました。難易度の高い問題を後回しにし、簡単な問題から挑戦をすることで完成エッセイのストック数を増やすことができます。100%の確率を目指したいという気持ちをぐっと抑えて、頻出問題から順番に自分のものにしていくことができれば、確実に目標スコアを達成できます。

頑張りましょう!

WRITER
PROFILE

Hibiki

Hibiki TAKAHASHI

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は2,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住10年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

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