IELTSの学習を始めるとき、多くの方がまず心配するのは英語力です。単語力が足りない、リスニングが聞き取れない、エッセイの書き方が分からない。確かにどれも乗り越えるべき課題ですが、多くの受講生を見てきて感じるのは、最後に立ちはだかる敵は英語力でも、そして経済力でもない、ということです。
この記事では、その「最後の敵」の正体と、どう向き合えばよいのかをお話しします。これから学習を始める方はもちろん、すでに学習中でスケジュールに不安がある方にも参考にしていただける内容です。
01目標を達成する人、間に合わない人
プラスワンポイントでは、毎月多くの受講生が目標スコアを達成しています。一方で残念ながら、予定していた時期までにスコアが取れず、留学の時期を延ばす方、志望校のランクを下げる方、場合によっては留学そのものを諦めざるを得ない方もいます。
プラスワンポイント
合格者の声
両者を分けるものは何でしょうか。英語力の差、と考えたくなりますが、実際にはそうとも言い切れません。間に合わなかったケースを振り返ると、その多くに共通しているのは「スタートが遅かった」ことです。出願の締め切りから逆算したときに、残された時間がそもそも足りていなかった。つまり、学習の中身以前に、学習に使える時間そのものが不足していたのです。
02「1ヶ月で達成」という特殊なケースに影響されない
スタートが遅れてしまう背景のひとつに、「短期間でも何とかなるのではないか」という期待があります。ソーシャルメディアや体験談では「1ヶ月で目標達成」のような話が目立ちますし、実際にそういうケースが存在するのも事実です。
ただし、こうした短期達成の例は、特殊な条件がそろったケースだと考えたほうがよいでしょう。人によって状況は全く違います。少なくとも、フルタイムで勉強に専念できる人と、フルタイムで働きながら、ときには残業もこなしながら勉強する人とでは、同じ「1ヶ月」でも中身が大きく違います。
他の人の達成期間は、あくまでその人の条件での話です。自分の計画の根拠にできるのは、自分の生活の中で実際に確保できる時間だけです。
03経済力で有利になれるのは、条件がそろったときだけ
では、お金をかければ解決できるのでしょうか。タイトルにある「経済力」についても触れておきます。
たしかに、経済力がある人が有利になる場面はあります。たとえば、締め切りの直前に試験を何度も受けられることです。すでにスコアが目標に届くかどうかというレベルまで達しているのであれば、受験回数を増やせば目標スコアが出る確率は単純に上がります。この意味で、受験料を気にせず受けられる人が有利になることはあります。
ただし、これはあくまで「あと一歩」の状態まで来ている場合の話です。目標スコアが出る可能性がゼロに近い状態のまま受け続けるのは、どぶにお金を捨て続けるようなものです。
レッスンをふんだんに受けられるという点でも、経済力は有利に働くことがあります。しかし、こちらにも限界があります。たとえば1日に4時間レッスンを受けたとしても、その内容をすべて吸収しきれるわけではありません。レッスンで学んだことを自分のものにするには、復習して定着させる時間が別に必要だからです。
つまり、経済力で買えるのは「チャンスの回数」と「サポートの量」までです。学んだことを吸収する時間そのものは、お金では買えません。
04勉強時間は単純な引き算では計算できない
ここでもうひとつ注意したいのは、勉強時間は単純な引き算では計算できない、ということです。たとえば「18時に仕事が終わって24時に寝るから、1日5時間は勉強できるはず」という計算は、机上では成り立ちますが、現実にはうまくいかないことが多いものです。
理由ははっきりしています。仕事で一日中頭を使ったあとは、脳がすでに疲れているからです。フレッシュな考えができない時間を、そのまま勉強時間としてカウントするのはやや危険です。特にライティングのように思考力を要するタスクでは、疲れた状態の1時間と、頭が冴えている状態の1時間を同じ1時間として扱うことはできません。
働きながら学習する場合は、確保できる時間の「量」だけでなく「質」も割り引いて見積もる必要があります。この点まで考えに入れると、計画には想像以上の余裕が必要だと分かります。
05疲れている時間に向く学習、向かない学習
使える時間の質が落ちると分かっていても、仕事のあとの時間を捨てるわけにはいきません。現実的な対応は、時間帯によってやることを変えることです。
頭が疲れているときに向かないのは、ゼロから組み立てる作業です。エッセイを新しく1本書く、プランニングでアイデアを出す、初見の長文を時間内に読み切る。どれも判断と発想を続けて使うので、疲れた状態では手が止まりやすく、そのわりに時間だけが過ぎていきます。
一方、疲れていても進めやすいのは、すでに一度通った素材に戻る作業です。
- 解き終えた模試の音声をもう一度聞き、スクリプトと突き合わせる
- 添削が返ってきたエッセイを読み直し、指摘された箇所だけ書き直す
- 語彙やコロケーションの復習
- すでに解いた問題文の音読やシャドーイング
この振り分けをしておくと、「今日は疲れているから何もしない」という日が減ります。頭が冴えている時間、多くの方にとっては朝か休日ですが、そこに組み立てる作業を寄せて、平日の夜は戻る作業に充てる。同じ週5時間でも、中身の進み方が変わってきます。
もうひとつ、休日の使い方も分けて考えたほうがよいところです。平日に戻る作業しかできていない場合、休日はエッセイを書く、模試を通しで解くといった、まとまった時間を要するものに優先して充てます。休日にも復習を積んでしまうと、一続きの時間でしかできない練習がいつまでも入りません。
06使える時間を数字にする
ここまでの話は、自分が実際に何時間使えるのかを把握していないと、計画には落ちません。感覚で見積もると、たいてい多めに出ます。
1週間分を書き出してみる
まず、直近の1週間を振り返って、勉強に使えた時間を曜日ごとに書き出します。予定ではなく、実際に使えた時間です。通勤中の20分、昼休みの15分といった細切れも含めます。
そのうえで、書き出した時間を2つに分けます。頭が冴えていた時間と、疲れていた時間です。前のセクションのとおり、この2つは同じ1時間として扱えません。分けて数えると、組み立てる作業に使える時間が週に何時間あるのかが見えてきます。多くの場合、最初の見積もりより少なくなります。
書き出すと、予定していた時間と実際に使えた時間のあいだにずれが出ているはずです。急な残業、家の用事、体調。こうした想定外は毎週なにかしら起きるので、週あたり何時間と見るときは、うまくいった週ではなく普通の週を基準にします。
この数字が出てはじめて、週に何時間なら目標まで何ヶ月かかりそうか、という見当がつけられます。
締め切りから逆算する
出願や提出の締め切りが決まっている場合は、そこから逆に並べていきます。
- スコアの提出締め切り
- それに間に合う最後の受験日。コンピューター版の結果は試験の1〜5日後に出ます
- その手前に、少なくとも2回は受験の機会を置く
- 最初の受験日から逆算した、学習に使える期間
受験の機会を複数回見込んでおくのは、一度で目標スコアが出なかった場合に備えるためです。4技能のうち1つだけ届かない、という結果は珍しくありません。1回で決めるつもりの計画は、その1回が外れた時点で行き詰まります。
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実際に並べると、たとえば9月末が提出の締め切りであれば次のような形になります。
- 9月末:スコアの提出締め切り
- 9月上旬:最後の受験日。結果が出るまでの日数と、出願書類をそろえる時間を見て、締め切りより早めに置く
- 7月と8月:それぞれ1回ずつ、受験の機会を置く
- 今日から7月まで:学習に使える期間
この並べ方をすると、学習に使える期間は「締め切りまでの期間」ではなく「最初の受験日までの期間」になります。9月末まで半年ある、と思っていたものが、実際に手を動かせるのは3ヶ月だった、ということが起こります。
ここまで並べてみると、学習に使える期間が思っていたより短いことに気づく方が多いはずです。それが分かった時点で手を打てるなら、まだ選べる道があります。目標の時期をずらす、志望先が求めるスコアの条件を確認し直す、学習の対象を絞る。どれも、締め切りの直前に気づいたのでは選べなくなるものです。
07だからこそ、一刻も早くスタートする
人によって状況は全く違う。経済力で買えるものには限界がある。そして勉強時間は額面どおりには使えない。ここまでを踏まえると、結論はシンプルです。一刻も早くスタートするべきだ、ということです。
目標を達成した方からも「思ったよりも大変だった」という感想をよく聞きます。順調に進んだように見える方でも、実際には想定外の忙しさや疲れと折り合いをつけながら学習を続けています。だからこそ、余裕のあるスケジュールで早めに始めた人ほど、途中の想定外を吸収しやすくなります。
言い換えると、IELTSの最後の敵は英語力でも経済力でもなく、仕事の忙しさであり、その中で勉強時間を確保する計画性だと言えます。敵の正体が分かっていれば、対策は立てられます。まずは自分の1週間を振り返って、現実的に使える時間がどれくらいあるのかを把握するところから始めるとよいでしょう。
IELTS総合対策
IELTS学習と仕事・家事の両立
08よくある質問
IELTSの学習はいつから始めるべきですか。
目標の時期が視野に入っているなら、早いほど有利です。予定していた時期までにスコアが取れなかったケースの多くに共通しているのは、学習の中身ではなくスタートの遅れでした。出願の締め切りから逆算したときに、そもそも残された時間が足りていなかった、という形です。
「1ヶ月で目標達成」という体験談は参考になりますか。
条件がそろった特殊なケースだと考えたほうがよいでしょう。フルタイムで勉強に専念できる方と、働きながら残業もこなして勉強する方とでは、同じ1ヶ月でも中身が大きく違います。計画の根拠にできるのは、自分の生活の中で実際に確保できる時間だけです。
お金をかければ早くスコアは取れますか。
買えるものと買えないものがあります。受験回数を増やせること、レッスンを多く受けられることは確かに有利に働きます。ただし受験回数が効くのは、すでに目標まであと一歩という状態にある場合です。また、1日に4時間レッスンを受けても、その内容を吸収して定着させる時間は別に必要になります。その時間そのものはお金では買えません。
仕事のあとに毎日3時間勉強すれば、計算どおりに進みますか。
額面どおりには進まないことが多いです。一日中頭を使ったあとは脳がすでに疲れていて、特にライティングのように思考力を要するタスクでは、疲れた状態の1時間と頭が冴えている状態の1時間を同じ1時間として扱えません。働きながら学習する場合は、時間の量だけでなく質も割り引いて見積もる必要があります。
疲れている日は何を勉強すればいいですか。
すでに一度通った素材に戻る作業が向いています。解き終えた模試の音声を聞き直してスクリプトと突き合わせる、添削が返ってきたエッセイの指摘箇所だけを書き直す、語彙の復習、すでに解いた問題文の音読などです。新しくエッセイを書く、プランニングでアイデアを出すといったゼロから組み立てる作業は、頭が冴えている時間に寄せるほうが進みます。
週にどのくらいの時間を確保できれば十分ですか。
一律の基準はありません。目標スコアと現在のスコアの差、そして締め切りまでの期間によって必要な時間は変わります。先に決めるべきなのは必要な時間数ではなく、自分の1週間で実際に確保できる時間がどれくらいあるかのほうです。それを数えたうえで、締め切りから逆算して間に合うかを見ます。
受験は何回くらい見込んでおけばいいですか。
締め切りまでに少なくとも2回は機会を置いておくと安全です。4技能のうち1つだけ届かない、という結果は珍しくないため、1回で決めるつもりの計画は、その1回が外れた時点で行き詰まります。コンピューター版の結果は試験の1〜5日後に出るので、次の受験日を決めるまでの間隔は短く取れます。
すでにスタートが遅れてしまいました。どうすればいいですか。
まず、自分の1週間で実際に使える時間を書き出して数字にすることです。そのうえで締め切りから逆算し、間に合う見込みがあるかを確認します。間に合わないと分かった場合でも、早く分かるほど打てる手は残ります。目標時期をずらす、志望先の条件を確認し直す、学習の対象を絞るなど、選べる道が変わってきます。
09まとめ
最後に、この記事のポイントを整理します。
- 予定の時期までにスコアが取れなかったケースの多くは、スタートの遅れが原因
- 「1ヶ月で達成」のような体験談は特殊なケース。自分の条件をもとに計画を立てる
- 経済力で買えるのは受験回数とレッスンの量まで。吸収して定着させる時間は買えない
- 仕事で頭を使ったあとの時間は質が落ちる。勉強時間を額面どおりに計算しない
- 疲れている時間は、組み立てる作業ではなく一度通った素材に戻る作業に充てる
- 締め切りから逆算し、受験の機会を複数回見込んでおく
- 「思ったよりも大変だった」が多くの人の実感。余裕を持って一刻も早く始める
英語力は、正しい方法で学習を続ければ必ず伸ばしていけます。その学習を支えるのは、十分な時間と現実的な計画です。留学や進学の予定が視野に入っているのであれば、「まだ先のこと」と考えずに、今日から準備を始めることをおすすめします。