ここ数年、日本では移民に関するニュースを目にする機会が増えました。その影響もあってか、IELTSのエッセイやスピーキングで移民の話題を持ち出す受験者が以前より多くなっています。
移民の話題そのものを避ける必要はありませんが、扱い方によっては思わぬところで印象を損ねることがあります。語の選び方や議論の組み立て方に加えて、目の前の試験官がどんな立場の人なのかという点からも、この話題の扱い方を考えてみます。
目次
移民の話題を持ち出す受験者が増えている
論理的な説明があれば問題はない
感情的、差別的な発言は再考したい
語彙の選び方で印象が変わる
一方に偏らない議論の組み立て方
目の前の試験官も移民であることが多い
あなた自身も移民になるかもしれない
よくある質問
まとめ
01 移民の話題を持ち出す受験者が増えている
日本でも、治安や労働、社会保障などの切り口で移民が報じられることが多くなり、身近な話題になりつつあります。
IELTSのエッセイやスピーキングでも、意見や具体例として移民の話を持ち出す受験者が増えてきています。社会問題を問うトピックでは、移民は確かに関連づけやすいテーマです。
移民の話題を使うこと自体に問題はありません。気をつけたいのは、その扱い方です。
02 論理的な説明があれば問題はない
移民に触れる場合でも、論理的な説明の上で必要な言及であれば問題はありません。たとえば「言語の壁」は、移民に関する議論でよく使われる論点です。
Some immigrants face language barriers, which can limit their access to education, healthcare and stable employment.
移民の中には言語の壁に直面する人がいて、それが教育や医療、安定した雇用へのアクセスを制限しうる、という主張です。根拠と結論のつながりが明確で、感情に頼っていません。
このように、主張と根拠が筋道立ってつながっていれば、移民はほかの社会的なテーマと同じように扱える話題です。賛成の立場でも反対の立場でも、論理が通っていれば議論として成立します。
03 感情的、差別的な発言は再考したい
一方で、感情的に、あるいは差別的に聞こえる形で移民に言及するのは再考した方がよいでしょう。
Immigrants cause problems, so the government should not accept them.
この文は根拠が示されておらず、「問題を起こす」という決めつけだけで結論に飛んでいます。
もちろん、どのような立場を取っても、意見の中身そのものが直接採点されるわけではありません。ただし、感情的な主張は根拠が薄くなりがちで、結果として採点基準(Band Descriptors)のTask ResponseやCoherence and Cohesionの観点で不利になることがあります。
感情に頼らない議論の組み立て方については、以下の記事で詳しく解説しています。
ライティング・タスク2
感情論に頼らない論理的な議論の構築
04 語彙の選び方で印象が変わる
同じ内容でも、選ぶ語によって受け取られ方は変わります。言い換えの例を知っておくだけで対処できます。
避けたい表現 中立的な表現
illegal immigrants undocumented migrants
foreigners(文脈により雑に響く) people from other countries / international residents
they take our jobs there are concerns about competition in the labour market
flood / invasion(大量流入のたとえ) a significant increase in arrivals
右側の表現は、立場を変えているわけではありません。同じ懸念を、事実の記述として述べているだけです。左側の表現は、書き手の感情が語そのものに含まれているため、根拠を示す前に結論が出てしまっているように読まれます。
人ではなく状況を主語にする
もう一つ有効なのが、主語の置き方です。「移民が〜する」と人を主語にすると断定的になりますが、状況や制度を主語にすると議論として扱いやすくなります。
Immigrants do not learn the local language.(人を主語にした断定)
Language support programmes are often insufficient for newcomers.(制度を主語にした記述)
後者は、同じ「言語の問題」を扱いながら、誰かを非難する形になっていません。しかも解決策の議論につなげやすくなります。
05 一方に偏らない議論の組み立て方
移民のように意見が割れる話題では、反対側の論点にも触れたうえで自分の立場を示すと、一方的な主張に見えにくくなります。両面に触れることが必須というわけではありません。ただ、Task Responseでは立場を明確にしながら主張を展開できているかが見られるので、譲歩はそのための方法のひとつとして使えます。
譲歩してから主張する型
While it is true that rapid population change can put pressure on local services, this is largely a question of planning rather than of immigration itself.
(急激な人口変化が地域のサービスに負担をかけうるのは事実だが、これは移民そのものというより計画の問題である)
前半で相手の論点を認め、後半で自分の見方を示す形です。相手の主張を無視していないことが伝わるため、一方的な印象になりません。
断定を避ける表現を添える
統計を持ち出せない場面では、断定せずに程度を示す表現が役に立ちます。
Some / In some cases / tend to / may / it is often argued that ...
「移民は〜だ」と全体を一括りにするより、「一部のケースでは〜が起こりうる」と範囲を限定するほうが、事実として正確であり、語彙・文法の面でも幅を見せられます。
スピーキングPart 3で聞かれたら
移民に関する話題は、スピーキングPart 3で社会問題として問われることがあります。その場では、賛否を決めきれなくても構いません。「立場によって見え方が違う」という整理の仕方も、十分な答えになります。
I think it depends on how well the system supports both sides. For the people who move, the main challenge is often language, while for the host community it is more about how quickly services can adapt.
06 目の前の試験官も移民であることが多い
もう一つ忘れてはならないのは、試験官が誰かという点です。特に日本で受験する場合、試験官は日本に住んでいる外国人であることが多くあります。つまり、彼ら自身も移民です。
移民について感情的な発言をすれば、その発言を移民である本人の前ですることになります。この意識を持っておくだけでも、言葉の選び方は自然と変わってくるはずです。
07 あなた自身も移民になるかもしれない
また、留学のためにIELTSを受験しているのであれば、あなた自身も近い将来、移民の立場になるかもしれません。海外の大学で学ぶ間、あなたはその国で暮らす外国人であり、受け入れる側ではなく受け入れられる側の立場を経験することになります。
移民に対する偏った考えを持っていることを、わざわざ試験官に示す必要はないでしょう。
08 よくある質問
IELTSで移民の話題を扱っても大丈夫ですか。
問題ありません。社会問題を問うタスクでは関連づけやすいテーマです。意見の中身そのものを採点する項目はないため、どの立場を取ってもそれだけでスコアが決まることはありません。大切なのは扱い方で、根拠と結論がつながった論理的な説明を添えることです。
移民に反対の立場で書くとスコアが下がりますか。
下がりません。賛成でも反対でも、論理が通っていれば議論として成立します。ただし感情的な主張は根拠が薄くなりがちで、結果としてTask ResponseやCoherence and Cohesionの観点で不利になることがあります。評価が下がるのは立場そのものではなく、根拠のない決めつけです。
避けたほうがよい表現はありますか。
illegal immigrants は undocumented migrants、they take our jobs は there are concerns about competition in the labour market のように、感情が語そのものに含まれる表現は言い換えられます。flood や invasion のような大量流入のたとえも避けたほうが安全です。立場を変える必要はなく、同じ懸念を事実の記述として述べれば十分です。
どう書けば非難しているように読まれずに済みますか。
人ではなく状況や制度を主語にするといいでしょう。Immigrants do not learn the local language. と書くと断定になりますが、Language support programmes are often insufficient for newcomers. とすれば同じ論点を扱いながら誰かを非難する形になりません。解決策の議論にもつなげやすくなります。
一方に偏らないようにするにはどうすればよいですか。
譲歩してから主張する型が使えます。While it is true that ..., this is largely a question of ... のように、前半で相手の論点を認め、後半で自分の見方を示します。あわせて some / tend to / may / it is often argued that などを使い、全体を一括りにする断定を避けると、事実としても正確になります。
スピーキングPart 3で移民について聞かれたらどうすればよいですか。
賛否を決めきれなくても構いません。立場によって見え方が違うという整理の仕方も十分な答えになります。移動する人にとっては言語が主な課題で、受け入れる地域にとってはサービスの適応速度が課題、というように複数の視点を示すと、内容にも語彙にも幅が出ます。
試験官の国籍や立場を気にする必要はありますか。
採点は基準に沿って行われるため、試験官の主観でスコアが決まることはありません。ただし日本で受験する場合、試験官自身が日本に住む外国人であることが多く、つまり移民です。目の前の相手について感情的な発言をしているという意識を持つだけでも、言葉の選び方は自然と変わってきます。
移民の話題は具体例として使えますか。
使えます。言語の壁、労働市場、社会保障、教育など、多くのトピックと関連づけられる汎用性の高いテーマです。ただし具体例として出す場合も、根拠のない一般化は避け、some immigrants や in some countries のように範囲を限定して述べるといいでしょう。