学習計画というと、いつ何時間やるかを決めることだと考えがちです。ただ、同じ1時間でも、朝の1時間と仕事を終えたあとの1時間では、こなせる内容がまったく違います。何を勉強するかは、確保した時間の長さよりも、その学習に脳がどれくらいの負荷を使うかで決めたほうが、続けやすく成果も出やすくなります。
この記事では、IELTS学習のメニューを負荷の大きさで3段階に分け、時間帯や体力に合わせてどう割り振るかを整理します。疲れている夜に無理をしてしまう方、計画は立てたのに実行できない方に向けた内容です。
01学習計画は「時間」ではなく「負荷」で組む
学習計画を立てるときは、時間割を埋めるより先に、それぞれの学習が脳にどれだけの負荷をかけるかを見積もっておくとよいでしょう。計画が続かない原因は、時間が取れなかったことよりも、確保した時間に対して重すぎるメニューを入れていたことにあります。
たとえば「平日の夜9時から1時間、エッセイを1本書く」という計画は、時間の確保という点では現実的です。1時間はなんとか作れます。ところが、エッセイを書くという作業は、課題文を読んで論点を決め、立場を選び、理由を2つ組み立て、それを英語の文にしていくという判断の連続です。仕事を終えたあとの脳に、その判断を40分間続けさせるのは、時間の確保とはまったく別の話になります。
計画を立てる段階でこの2つを分けて考えていないと、実行できなかった日が積み上がっていきます。しかも実行できなかった理由が「時間がなかった」と記録されるので、次の計画でも同じ配置を繰り返してしまいます。実際には時間はあったのに、その時間帯に置くべきメニューではなかった、というのが起きていることです。
そこで、学習メニューを負荷の大きさで分類しておき、時間帯ごとに置けるものと置けないものを決めておきます。やることを毎回その場で考えるのではなく、状態に応じて選べる状態にしておく、という考え方です。
02IELTS学習の負荷はどう分類できるか
IELTS学習のメニューは、必要な判断の量と、途中で中断できるかどうかで、おおまかに3段階に分けられます。負荷を決めるのは学習時間の長さではなく、その作業がどれだけ「その場で考えて決めること」を要求するかです。
| 負荷 | 学習メニューの例 | 特徴 |
| 高負荷 | エッセイを1本書き切る、リスニングとリーディングを通しで解く、模擬試験、スピーキングのパート3を録音して答える | ゼロから作り出す、または本番と同じ時間を通して集中を保つ必要がある。途中で止めると練習にならない |
| 中負荷 | リーディングの設問を数問だけ解く、添削されたエッセイの見直しと書き直し、スピーキングのトピックを1つ準備する | 考える作業は入るが、範囲が限られていて区切れる。30分程度から成立する |
| 低負荷 | 単語の復習、スペリングの練習、間違えた問題の見直し、覚えたフレーズの音読 | やることが決まっていて、判断がほとんど要らない。手や口が動けば進む |
この分類で大事なのは、低負荷のメニューが劣ったものではないという点です。単語の復習もスペリングも、スコアに直結する要素です。リスニングとリーディングでは、聞き取れていても書き取りのつづりを間違えれば不正解になります。低負荷というのは、成果が小さいという意味ではなく、実行するのに必要な状態のハードルが低いという意味です。
逆に、高負荷のメニューは代わりがききません。エッセイを40分で書き切る力は、エッセイを40分で書く練習でしか身につきません。だからこそ、その練習を状態のよい時間に確実に置く必要があります。
03頭が動く時間帯には何をするか
まとまった時間と集中力が確保できる時間帯には、高負荷のメニューを置きます。具体的には、リスニングとリーディングを通しで解く、エッセイを制限時間内で1本書き切る、といった内容です。
リスニングとリーディングを通しで解く
リスニングは約30分、アカデミック・リーディングは60分です。この2つを通しで解く練習には、正誤を確認する以上の目的があります。リーディングの後半で集中が落ちてくる感覚や、パッセージ3に入る前に何分残っているかという時間配分は、通しで解いたときにしか出てきません。設問を10問ずつ切り分けて解くと、正答率は測れても、この持続力の部分が測れないままになります。
エッセイを1本、時間内に書き切る
ライティング・タスク2は40分が目安です。この40分の中に、課題文の読解、立場の決定、ボディ1とボディ2の内容の設計、そして英文の産出がすべて入っています。途中で20分中断して翌日に続きを書くと、構成を考え直すところからやり直しになり、本番で必要な「決めて書き進める」という動きが練習できません。
時間帯としては、朝や休日の午前が向いていることが多いのですが、朝である必要はありません。判断の材料は時刻ではなく、その時間帯に自分の頭がどれだけ動くかです。夜のほうが集中できるという方であれば、夜に高負荷を置いて問題ありません。重要なのは、自分にとって高負荷を置ける時間帯がいつなのかを把握しておくことです。
朝にまとまった時間が取れない場合
朝に時間そのものが確保できないのであれば、高負荷のメニューは平日から外し、休日に寄せます。平日は中負荷と低負荷だけで組み、通しの演習やエッセイは土日にまとめる、という形です。高負荷は週に2回から3回あれば足りるので、その全部が休日に入っていても構いません。
ここで分けて考えたいのは、朝型ではないという話と、朝に時間が取れないという話が別だという点です。前者は高負荷を置く時間帯を夜にずらせば解決します。後者は時間帯をずらしても枠が生まれないので、平日に高負荷を置くこと自体をあきらめる判断になります。出勤前に30分早く起きるという調整が続かないのであれば、無理に作らないほうが計画は安定します。
なお、通勤中や昼休みに30分あるとしても、そこは高負荷の枠にはなりません。周囲の音や中断が入る環境では、リーディングを60分通す練習もエッセイを書き切る練習も成立しないためです。この時間は単語の復習やスペリングの練習など、中断されても損失の小さいメニューに使うほうが向いています。
04仕事のあと、疲れているときには何をするか
仕事を終えたあとなど、すでに一日分の判断を使い切っている時間帯には、新しく何かを作り出す学習ではなく、一度やったものに戻る学習を置きます。復習、間違えた問題の見直し、単語やスペリングの練習が中心になります。
この時間帯に向いている学習には、共通する特徴があります。次に何をするかを自分で決めなくてよい、ということです。復習であれば対象はすでに決まっています。単語やスペリングの練習も、出てきたものに答えるだけで進みます。学習の内容そのものよりも、「何をやろうか」と考える段階が消えていることが、疲れているときには効いてきます。
疲れているときに向くメニュー
- その日または前日に間違えた問題の見直し
- 覚えた単語やフレーズの確認
- スペリングの練習
- すでに読んだリーディングのパッセージの音読
- 添削で指摘された箇所を読み返す
スペリングは、疲れている時間帯の学習として特に扱いやすいメニューです。1問あたりの時間が短く、どこで止めても次の日に続けられます。10分だけでも成立しますし、その10分で確実に何問かは覚え直せます。
IELTS学習アプリ
スペリング強化
リスニングとライティングで間違えやすい語のつづりを、短時間で繰り返し練習できるツール
こうしたアプリを疲れている時間帯用のメニューとして最初から決めておくと、その日にやることを考える手間がなくなり、着手までの抵抗が小さくなります。
05疲れている夜に高負荷の学習をするとどうなるか
疲れている時間帯に高負荷のメニューを無理に入れると、使った時間の割に得るものが少なく、しかもその学習に対する抵抗感が残ります。やらないほうがよかった、という結果になることがあります。
出てきた結果が判断材料にならない
疲れた状態で書いたエッセイを見直しても、構成が崩れている原因が実力の問題なのか、そのときの状態の問題なのかを切り分けられません。同じように、疲れているときにリスニングとリーディングを通しで解いて低いスコアが出ても、そのスコアは記録として使いにくくなります。スコアの推移を追って対策を調整したいのであれば、状態が極端に悪いときのデータは判断を狂わせる材料になります。
できなかったという感覚だけが残る
もう一つの問題は、学習そのものへの印象です。エッセイを書き始めたものの手が止まり、30分かけてボディ1の途中までしか進まなかった、という日が続くと、エッセイを書くこと自体が重い作業として記憶されます。そうなると、状態のよい休日にも着手が遅れるようになります。
この2つを避けるには、疲れている時間帯には最初から低負荷のメニューを置いておくことです。単語の復習を15分やって終えた日は、学習量としては小さくても、やり切ったという記録が残ります。この差は、数週間から数か月続く学習では小さくありません。
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06一週間の学習メニューをどう組むか
一週間の組み立ては、高負荷のメニューを置ける枠を先に決め、残りを中負荷と低負荷で埋めるという順番にします。高負荷を毎日入れる計画は、ほとんどの場合、数日で実行できなくなります。
| 時間帯 | 目安の時間 | 負荷 | 置くメニューの例 |
| 平日の朝 | 20分から30分 | 中負荷 | 前日に間違えた設問の見直し、リーディングを1パッセージだけ |
| 平日の夜 | 15分から30分 | 低負荷 | 単語の復習、スペリングの練習、音読 |
| 休日の午前 | 2時間前後 | 高負荷 | リスニングとリーディングを通しで解く、またはエッセイを1本書いて見直す |
高負荷の枠は、週に2回から3回確保できていれば、学習として成立します。土曜日の午前にリスニングとリーディングの通し、日曜日の午前にエッセイを1本、という形にすると、平日は中負荷と低負荷だけで組めます。平日の夜に高負荷を置かなくてよいと決まっているだけで、計画の実行率は変わります。
平日の朝に枠が作れない場合の組み方
朝に時間が取れないのであれば、上の表の「平日の朝」の枠をなくし、その分を休日に移します。平日は低負荷だけ、高負荷は土日の2枠、という組み方です。
| 時間帯 | 目安の時間 | 負荷 | 置くメニューの例 |
| 通勤中や昼休み | 10分から20分 | 低負荷 | 単語の復習、スペリングの練習 |
| 平日の夜 | 30分 | 低負荷から中負荷 | 音読、前日に間違えた設問の見直し |
| 土曜の午前 | 2時間前後 | 高負荷 | リスニングとリーディングを通しで解き、見直しまで行う |
| 日曜の午前 | 1時間半前後 | 高負荷 | エッセイを1本書いて、書いたあとに読み返す |
この形でも高負荷の枠は週2回確保できています。平日に高負荷が1つも入っていないことを不安に感じるかもしれませんが、平日の夜に置いたエッセイが実行されない週が続くくらいなら、最初から土日に寄せておくほうが結果的な演習量は増えます。
もう一点、休日の高負荷の枠には、解いたあとの見直しの時間も含めて考えます。リーディングを60分で解いて、そこで終わりにすると、間違えた設問がなぜ間違いだったのかを確認しないまま次に進むことになります。見直しは中負荷の作業なので、通しで解いた直後にそのまま続けるか、翌日の朝に回すかを決めておくとよいでしょう。
07自分の「今の負荷レベル」をどう見極めるか
学習を始める前に、いま自分がどのくらい動けるかを短時間で判定し、それに合わせてメニューを選びます。判定に時間をかける必要はありません。机に向かってから2、3分で分かる目安がいくつかあります。
- 英文を読んで、内容が入ってくるか。同じ行を2回読み直しているなら、その日は高負荷を避けます
- エッセイの課題文を読んで、立場と理由の方向が2、3分で浮かぶか。まったく浮かばないなら、今日は書かない判断をします
- 音声を聞いて、意味を追う前に音が流れていってしまうか。そうなっているなら、通しで解いても正答率は測れません
そのうえで実務的に効くのは、疲れているとき用のメニューを事前に決めておくことです。疲れている状態で「今日は何をやろうか」と考えること自体が、すでに負荷になっています。「疲れている日はスペリングを10分と単語の復習」というように中身を固定しておけば、判定した直後にそのまま始められます。
また、計画どおりに進まなかった日は、時間を削るのではなく負荷を落とすほうが現実的です。1時間の予定を30分に減らしても、メニューがエッセイのままなら着手できないことがあります。エッセイをやめて音読と復習に切り替えれば、30分でも最後まで終わります。時間を半分にするより、負荷を1段階下げるほうが、実行できる可能性は高くなります。
08よくある質問
疲れているときは勉強を休んだほうがよいですか。
休むより、低負荷のメニューに切り替えることをおすすめします。単語の復習やスペリングの練習であれば、判断がほとんど要らないため、疲れている状態でも15分程度なら進められます。やり切ったという記録が残ることも、翌日以降の着手を軽くします。
朝にまとまった時間が取れない場合はどうすればよいですか。
高負荷のメニューを平日から外し、土日に寄せてください。高負荷は週に2回から3回あれば足りるので、その全部が休日に入っていても構いません。なお、朝型ではないという話と、朝に時間が取れないという話は別です。前者は高負荷を夜にずらせば解決しますが、後者は平日に高負荷を置くこと自体をあきらめる判断になります。
エッセイは夜に書いてはいけませんか。
禁止ということではありません。疲れていない夜であれば問題ありません。避けたいのは、判断力が落ちている状態でエッセイを書くことです。書き始める前に課題文を読み、立場と理由の方向が2、3分で浮かぶかどうかを目安にするとよいでしょう。
低負荷の学習だけでスコアは上がりますか。
低負荷のメニューだけでは足りません。エッセイを40分で書き切る力や、リーディングを60分通して解く持続力は、その練習でしか身につかないためです。高負荷の練習を週に2回から3回確保したうえで、残りの時間を低負荷で埋めるという組み方になります。
スペリングの練習はどのタイミングでやるのがよいですか。
疲れている時間帯に向いています。1問あたりの時間が短く、どこで止めても翌日に続けられるためです。10分だけでも成立するので、平日の夜のメニューとして固定しておくと使いやすくなります。
リスニングとリーディングは通しで解かないと意味がないですか。
目的によって変わります。時間配分や後半の集中の落ち方を確認したいのであれば、通しで解く必要があります。一方で、特定の設問形式の正答率を上げたいのであれば、数問だけ解く形でも練習になります。通しで解けない日に部分演習をするのは有効です。
高負荷の学習は週に何回必要ですか。
週に2回から3回を目安にするとよいでしょう。休日の午前に2枠を確保し、リスニングとリーディングの通しとエッセイを1本ずつ割り当てる形が組みやすくなります。毎日高負荷を入れる計画は、数日で実行できなくなることが多いです。
計画どおりに進まないときはどうすればよいですか。
時間を削るのではなく、負荷を1段階下げてください。1時間の予定を30分に減らしても、メニューがエッセイのままなら着手できないことがあります。エッセイをやめて音読と復習に切り替えれば、同じ30分でも最後まで終わります。
09まとめ
学習計画を立てること自体は大切ですが、そこに何を入れるかは、確保できた時間の長さではなく、その学習が脳にどれだけの負荷をかけるかで決めたほうがうまくいきます。時間はあったのに実行できなかった日が続いているなら、時間の問題ではなく、その時間帯に置くメニューの選び方の問題である可能性があります。
- 学習メニューを高負荷、中負荷、低負荷の3段階に分けておく
- 高負荷はエッセイを1本書き切る、リスニングとリーディングを通しで解くなど、途中で止められないもの
- 低負荷は復習、単語、スペリング、音読など、判断がほとんど要らないもの
- 頭が動く時間帯に高負荷を置き、週に2回から3回確保する
- 朝にまとまった時間が取れないなら、高負荷は平日から外して土日に寄せる
- 仕事のあとなど疲れている時間帯には、最初から低負荷のメニューを決めておく
- 疲れているときに高負荷を無理に入れると、結果が判断材料にならず、着手への抵抗だけが残る
- 計画どおりに進まない日は、時間を削るのではなく負荷を1段階下げる
まずは、自分の一週間の中で高負荷のメニューを置ける時間帯がどこにあるかを確認してみてください。そこが決まれば、残りの時間に何を入れるかは自然と決まってきます。