「留学すれば英語は伸びるよ」とよく言われます。でも今はオンライン英会話で毎日ネイティブと話せる時代。わざわざ海外に行かなくても同じことができるのでは?この記事では、留学が英語を伸ばす本当の理由と、日本にいながらその環境を作る方法を解説します。
留学先での英語環境は「強制スクロール」状態
「留学すれば英語は伸びるよ」「パブに行ってネイティブに話しかければ勝手に上手になる」。そんなアドバイスを一度は聞いたことがあるはず。でも今はオンライン英会話で毎日ネイティブと話せる時代。わざわざ海外に行かなくても、同じことができるのでは? そう思うのは自然なことです。
実は、この2つには決定的な違いがあります。
オンライン英会話では基本1対1。講師は生徒のペースに合わせて、答えを辛抱強く待ってくれます。
一方、留学して英語環境に身を置くと、相手はいつも待ってくれるとは限りません。相手は教育者とは限らないし(というかほとんどそうではない)、ノンネイティブのペースに合わせる義理もない。普通のスピードで、なんなら少し訛りも混ぜていただいて、こちらの心の準備などお構いなしに話し続けます。
この状態を僕は「強制スクロール」と呼んでいます。ゲームの画面がプレーヤーの意図とは関係なく、強制的に進んでいくイメージです。
この強制スクロールに慣れていないと、いつの間にか「聞き役」に徹することになってしまうのです。
余談
昨日カフェの隣の席にいた日本人女性とインド人女性。英語で話をしていたのですが、インド人女性が平均ボール支配率99%。日本人女性は聞き役に徹しておられました。英会話レッスンでもない限り、待ってくれないのです。
初級者が英語で話すときのプロセス
英語を聞く → 日本語に訳す → 日本語で考える → 英語に訳す → 英語で答える
これが多くの英語初級者がたどるプロセスです。しかも英語と日本語はまったく別の構造を持つ言語。中級者くらいになると、「英語ではそう言わない」という問題も加わってきて、
英語を聞く → 日本語に訳す → 日本語で考える → 英語に訳す → 英語として自然な表現に改める → 英語で答える
という離れ業をこなそうと努力してしまいます。もしこれを瞬時にこなせるなら、同時通訳者が務まるでしょう。でも実際には、同時通訳者でさえこのようなプロセスを使っていません。これについては後述します。
オンライン英会話だと、講師が待ってくれるので、仮にこのようなプロセスを経て、詰まりながら話していたとしてもなんとかなってしまいます。でも実際にはこれが問題の本質なのです。
一方で、英語圏で暮らすと、待ってもらえない状況が往々にして起こります。そのプレッシャーが「英語のまま処理する」回路を強制的に育ててくれるのです。
これが、留学すると英語が伸びる本当の理由です。
では、上級者はどうやって処理しているのか
すでにお分かりの通り、英語中級者から上級者に上がっていくためには「英語で聞いて、英語で考えて、英語でアウトプットする」ことが必要になります。日本語を経由しない。入力から出力まで、すべてが英語回路の中で完結している状態です。
「はい、よく言われます」という人も多いはず。
英語を聞く → 英語で考える → 英語で答える
これを目指しましょう。
「英語で考える」はイメージの構築
そうはいっても、「英語で考える」ってどういうこと?と思う人もいるでしょう。
皆さんは、"How long did it take to come here?" と聞かれたら、「時間を聞かれているな。1時間だから an hour だな。過去形だな。」などと考える人はいないでしょう。
実際の脳内で起こっていることを想像してみてください。「自分が移動している様子」「かかった時間」というぼんやりしたイメージが先に浮かび、それに対して "It took about an hour." という言葉が自然に口から出てくる感覚。
もしそれができているようなら、その感覚です。
言葉より先にイメージがある。そのイメージに英語が直接結びついている。これが「英語で考える」の正体です。
英語を聞く → イメージ化 → イメージ構築 → 英語でアウトプット
日本語経由での処理には、「翻訳」という余分な工程が挟まっています。簡単な質問や慣れた表現ならその工程を無意識に飛ばせるけれども、少し質問レベルが上がると翻訳を介してしまう。これが多くの学習者の悩みでしょう。スピーキングで「話題によっては急に話せなくなる」という現象の正体は、たいていこれです。
だから「英語で考える」練習とは、英語とイメージを直接結びつける練習であるべきなのです。単語を覚えるとき、例文ごと、場面ごと覚えていますか? 日本語訳だけで覚えていると、いざ使おうとしたときにイメージが浮かばず、口から出てこないということが起きます。
"distribute" という単語を聞いてどのようなイメージを持ちますか?単語帳で「分配する、分布する」というように「2つの意味がある」と覚えていると、それは翻訳を介してしか話せない原因になりかねません。
「ばらばらにして、それぞれに割り当てる」
そんなぼんやりしたイメージを持っておけると、日本語にさっと訳せなくても、英語としてアウトプットができるようになります。
プロの同時通訳者は、このイメージベースの回路が高度に発達しています。英語を聞きながらほぼ同時に英語でアウトプットできるのは、翻訳という工程が存在しないからこそなのです。
海外在住者が日本語を思い出せないのは「かぶれ」ではない
海外在住の長い人が、日本語の単語をとっさに思い出せずに困ったり、英語が混ざったりしてしまう場面を見たことがありませんか? 「外国かぶれ」なんて言われたりもしますが、あれはかぶれでも意識の高さの演出でもありません。
脳が
英語を聞く → イメージ化 → イメージ構築 → 英語でアウトプット
の回路に慣れてしまっているからです。
その概念はすでに英語と直結している。だから日本語を取り出そうとすると、一度イメージに戻ってから日本語に変換するという、むしろ遠回りな作業が必要になる。英語のほうが先に出てきてしまうのは、その回路が太くなっている証拠です。
これは英語学習者の「ゴール」のひとつと言えます。英語で考える練習を積み重ねることで、脳がイメージだけで処理するようになるのです。
では、日本にいながらこの環境を作るには?
でも留学はそんなに簡単にはできないですよね。そこで、英語圏でなくても「日本語に逃げられない状況」を自分で設計する方法を最後にご紹介します。
1. 答えを考える時間を意図的に削る
オンライン英会話であっても、「○秒以内に話し始める」「なるべくたくさんの情報を相手に伝える努力をする」というルールを自分に課すだけで、練習の質が一変します。完璧な文を作ってから話そうとするのをやめる。まず話し続けることを優先する。これだけで、日本語経由のプロセスを使っている余裕がなくなります。2. 独り言を英語にする
「あ、コーヒー飲みたい」「今日寒いな」。そういった日常のひとり言を、英語に変えてみてください。短い文でも大丈夫。"I need some coffee." でいい。日本語を英語に訳す練習ではなく、思考と英語を直結させる練習です。毎日の生活の中でできる、コストゼロのトレーニングです。3. 動画を字幕なしで見る
英語ドラマやYouTubeを見るとき、ついつい字幕を出していませんか? 文字情報があれば内容の理解は深まるのは確か。でも時には字幕なしで見てみましょう。聞こえた英語を日本語に変換する余裕がなくなるので、映像や音を英語に直接つなぐ練習になります。全部わからなくても、流れを感じ取ろうとする練習が、英語脳を育てます。
留学が英語を伸ばすのは、海外にいるからではありません。日本語に逃げられない環境が、英語で考える回路を強制的に育てるからです。
その環境は、工夫次第で日本にいながらでも作れます。
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この記事を書いた人
Hibiki Takahashi
日本語で学ぶIELTS対策専門スクール 『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象に IELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住14年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。
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