ようやくライティングで7.0に届いたのに、リスニングとリーディングが振るわず、全技能のスコアを揃えられない。ライティングとスピーキングの対策に力を入れるあまり、リスニング・リーディングの実戦感覚を落としてしまう受験者は一定数います。
これはプラスワンポイントの受講生でもよく見かけるパターンです。特に、海外大学院やビザ申請などで「各技能◯◯以上」と全技能に条件がある方は注意が必要です。この記事では、ありがちな失敗パターンと、なぜリスニング・リーディングの感覚だけが鈍りやすいのか、そしてそれを防ぐための練習習慣とスコアのトラッキング方法を紹介します。
目次
よく見かける失敗パターン
なぜリスニング・リーディングだけ「使わないと鈍る」のか
鈍り始めたときに出るサイン
時間が取れないときに何を解くか
定期的に解く習慣をつくる
トラッキングでリスニング・リーディングの状態を可視化する
よくある質問
まとめ
01 よく見かける失敗パターン
受験者の多くが苦しむのは、ライティングとスピーキングのスコアメイクです。リスニングとリーディングはある程度独学でも伸ばしやすいのに対し、ライティングとスピーキングは自分では正確に評価しづらく、伸び悩みの原因になりやすい技能だからです。その結果、学習時間の配分は自然とライティングとスピーキングに偏りがちになります。
この偏りが続いたときに起きやすいのが、次のような失敗です。
数か月間ライティングとスピーキングの対策に集中し、リスニング・リーディングの問題演習をほとんどしないまま受験日を迎える
リスニング・リーディングは一度目標スコアを取れたので「もう大丈夫」と判断し、以後まったく触れなくなる
直前期にライティングの仕上げに追われ、リスニング・リーディングに充てるはずだった時間をすべて削ってしまう
そして、ライティングやスピーキングがようやく目標に届いたところで、今度はリスニング・リーディングの方が目標スコアに届かず、全技能のスコアが揃わない。この流れが、繰り返し起きるパターンです。全技能に条件がある場合、どれか一つでも欠ければ、他の技能がどれだけ良くても要件を満たすことができません。
02 なぜリスニング・リーディングだけ「使わないと鈍る」のか
リスニングとリーディングは、制限時間内に情報を処理し続ける速度と集中力に強く依存する技能です。単語や文法の知識があっても、実際の試験形式で音声を聞き取り続けたり、大量の英文を時間内に読み切ったりする感覚は、定期的に負荷をかけ続けなければ徐々に鈍っていきます。運動の実技に近い性質を持つ技能だと考えるとわかりやすいでしょう。
なかでも鈍りやすいのは、次のような感覚です。
タイムマネジメントの感覚:リーディングで1パッセージにかけられる時間の配分や、時間内に解き切るペースの感覚は、実戦から離れるとすぐに崩れます
長時間の集中を保つ感覚:リスニングは約30分、リーディングは60分、処理し続ける集中の持久力が必要で、これは定期的に負荷をかけることでしか維持できません
音声についていく感覚:一度しか流れない音声を、止めずに聞き取り続ける感覚です。聞き逃したときに引きずらず、次の設問に切り替える対応力も含まれます
先読み・探し読みの感覚:リスニングで設問を先読みするリズムや、リーディングで答えの根拠を素早く探し当てるスキャニングの感覚も、間隔が空くと鈍りやすい部分です
03 鈍り始めたときに出るサイン
実力の低下は、ある日を境に急に起きるものではありません。久しぶりに1セット解いたときに、次のような形で表れます。心当たりがあれば、練習の間隔が空きすぎているサインだと考えてよいでしょう。
時間内に解き終わらない。特にリーディングで、最後のパッセージの数問が手つかずになる
後半で集中が切れる。リスニングであれば Part 3 以降、リーディングであれば3つ目のパッセージで、内容が頭に入らなくなる
設問の先読みが間に合わない。音声が始まってしまい、聞きながら設問を読むことになる
1問聞き逃したあと、次の設問にも影響が出る。切り替えができず、連続で落とす
正答率は落ちていないのに、解き終わったあとの疲れ方が以前より大きい
最後の点は見過ごされやすいところです。スコアが同じでも、同じスコアを出すのに使う集中力が増えているなら、余力が減っています。本番はリスニングとリーディングを続けて受けるので、余力の差は後半に表れます。演習で1セットだけを単体で解いているうちは、この差が見えません。
逆に言えば、これらのサインは1セット解けば分かります。感覚が鈍っているかどうかを頭で考えるより、実際に時間を計って解いてみるほうが早く判断できます。
どのサインが出たかによって、戻すべきものも変わります。時間内に終わらないなら時間配分の練習、後半で集中が切れるなら通しで解く量、先読みが間に合わないなら設問を読む速さです。全部をまとめて戻そうとすると負担が大きくなるので、出ているサインに合わせて1つずつ戻すほうが続きます。
04 時間が取れないときに何を解くか
フルセットを解くには、リスニングで約30分、リーディングで60分、加えて復習の時間が要ります。ライティングとスピーキングの対策で手一杯の時期に、この時間をまとめて確保するのは簡単ではありません。
ただ、維持したいのは知識ではなく、処理速度と集中の感覚です。そこだけを狙うなら、短い単位でも効果があります。
リーディングはパッセージ1つだけを、20分を計って解く。時間配分の感覚はこれで戻ります
リスニングは Part 3 と Part 4 だけを解く。鈍りが出やすいのは後半なので、そこに絞る
設問の先読みだけを練習する。音声を流す前に、設問を読んで何を待ち受けるかを決めるところまでをやる
すでに解いた素材を、時間を短くして解き直す。初見でなくても、速く処理する感覚は維持できます
リーディングは、解かずに1パッセージを時間内に読み切るだけでもよい。設問に答えなくても、読む速度そのものは戻ります
大事なのは、必ず時間を計ることです。時間を計らずに解くと、鈍っているのは知識ではなく速度なので、その低下に気づけません。
そのうえで、月に1回はフルセットを通しで解いておきます。パーツごとの練習では、最後まで集中を保つ持久力までは戻らないためです。
組み合わせるなら、たとえば次のような2週間のサイクルにしておくと、ライティングとスピーキングの対策を続けながらでも回せます。
1週目:リーディングのパッセージを1つ、20分を計って解く。あわせてリスニングの Part 3 と Part 4 を解く。合計で1時間ほど
2週目:リスニングとリーディングを通しで1セット。復習まで含めて3時間ほどを確保する
ここで削りやすいのは復習の時間ですが、削るなら解く量のほうを先に削ります。間違いの原因を見ないまま次のセットに進んでも、同じところで落とし続けるためです。
なお、この演習は新しい教材である必要はありません。維持が目的なので、一度解いた素材でも構いません。むしろ、初見の素材を毎回用意しようとすると準備が負担になり、演習そのものが止まりやすくなります。
2週間という間隔は、多くの方にとって感覚が落ち始める手前に収まる目安です。1ヶ月空けると、久しぶりの1セットで前のセクションのサインが出やすくなります。毎週解ければ理想的ですが、ライティングとスピーキングの対策時間を圧迫してしまうなら、2週間を下限として守るほうが現実的です。
もうひとつ、演習を続けていると、本番当日に「久しぶり」の状態にならずに済みます。当日は会場の環境も画面の操作も普段と違います。そこに加えて解く感覚まで久しぶりだと、最初のパートで調子が出るまでに時間がかかります。定期的に解いておくことは、当日の立ち上がりを速くすることにもつながります。
05 定期的に解く習慣をつくる
この感覚の低下を防ぐ最も確実な方法は、リスニング・リーディングを試験直前の対策期間にまとめて詰め込むのではなく、日常的な習慣として定期的に解き続けることです。
具体的には、いつ受験しても実力を発揮できるという自信がある方以外は、最低でも2週間に1セットのペースでリスニング・リーディングの模擬問題に取り組んでおくとよいでしょう。ライティングやスピーキングの対策に多くの時間を割いている時期ほど、意識的にリスニング・リーディングの時間を確保しておく必要があります。
ライティング・スピーキングの対策期間中も、リスニング・リーディングの時間を別枠として固定しておく
最低2週間に1セットを目安に、実戦形式のリスニング・リーディングの模擬問題を解く
受験直前だけでなく、普段からリスニング・リーディングの感覚を維持する意識を持つ
07 よくある質問
リスニングとリーディングは、一度目標スコアを取れたらもう大丈夫ですか。
大丈夫とは言い切れません。この2技能は制限時間内に情報を処理し続ける速度と集中力に強く依存するため、定期的に負荷をかけ続けなければ徐々に鈍っていきます。運動の実技に近い性質だと考えると分かりやすいでしょう。一度取れたので以後まったく触れなくなる、というのは全技能を揃えられなくなる典型的なパターンです。
どのくらいの頻度で解けばいいですか。
いつ受験しても実力を発揮できる自信がある方以外は、最低でも2週間に1セットのペースを目安にしてください。ライティングやスピーキングの対策に多くの時間を割いている時期ほど、意識的にリスニング・リーディングの時間を別枠として固定しておく必要があります。
フルセットを解く時間が取れません。
短い単位でも維持できます。リーディングならパッセージ1つを20分計って解く、リスニングなら鈍りの出やすい Part 3 と Part 4 だけを解く、設問の先読みだけを練習する、といった方法があります。ただし必ず時間を計ってください。時間を計らないと、落ちているのが知識ではなく速度であることに気づけません。そのうえで、月に1回はフルセットを通しで解いておくと、集中の持久力まで維持できます。
感覚が鈍っているかどうか、どう判断すればいいですか。
1セット解けば分かります。時間内に解き終わらない、後半で集中が切れる、設問の先読みが間に合わない、1問聞き逃したあと次の設問にも影響が出る、といった形で表れます。正答率は落ちていないのに解き終わったあとの疲れ方が大きくなっている場合も、同じスコアを出すのに使う集中力が増えているということなので、余力が減っています。
なぜリスニングとリーディングだけ鈍りやすいのですか。
知識ではなく処理速度と集中力に依存する技能だからです。単語や文法を知っていても、試験形式で音声を聞き取り続けたり、大量の英文を時間内に読み切ったりする感覚は、定期的に負荷をかけ続けなければ維持できません。タイムマネジメントの感覚、長時間の集中を保つ感覚、音声についていく感覚、先読みや探し読みの感覚が、間隔が空くと落ちていきます。
ライティングとスピーキングに集中したい時期はどうすればいいですか。
その時期ほど、リスニング・リーディングの時間を別枠として固定しておくことが要ります。直前期にライティングの仕上げに追われて、リスニング・リーディングに充てるはずだった時間をすべて削ってしまう、というのはよくある失敗です。短い単位でよいので、時間を計って解く習慣を切らさないでください。
スコアの記録はつけたほうがいいですか。
つけたほうが早く気づけます。実力の低下は、本人が自覚する前に進行していることが少なくありません。主観的な手応えだけに頼らずスコアの推移を記録しておけば、下降し始めたタイミングで練習量を増やすといった調整がしやすくなります。
リスニングかリーディングだけ目標に届かなかった場合はどうなりますか。
1技能だけを受け直せる制度があります。ただし、受験料が無駄になることを考えると、そもそも全技能を揃えられる状態で本番に臨むほうが確実です。制度の対象者や申込方法は別の記事で扱っています。
08 まとめ
ライティングとスピーキングは対策の成果が積み上がりやすい一方、リスニングとリーディングは日々の練習を怠ると静かに感覚が鈍っていく技能です。どちらか一方に偏った学習は、思わぬところで総合スコアの足を引っ張る原因になります。
ライティング・スピーキングに集中している時期ほど、リスニング・リーディングの実戦感覚が鈍りやすい
リスニング・リーディングは知識ではなく処理速度・集中力に依存するため、使わないと衰えやすい
いつ受験しても自信がある人以外は、最低2週間に1セットのリスニング・リーディングの演習を続ける
フルセットの時間が取れないときは、パッセージ1つや後半のパートだけでもよいので、必ず時間を計って解く
解き終わったあとの疲れ方が増えているのは、スコアが同じでも余力が減っているサイン
主観に頼らず、スコアの推移をトラッキングして状態を客観的に把握する
なお、万が一リスニング・リーディングで失敗してしまった場合には、1技能だけを受け直せる制度もあります。ただ、できれば受験料を無駄にしないためにも、そもそも失敗しない準備をしておきたいところです。
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