毎日勉強しているのに、模試のスコアが同じ数字から上がらない。こうした停滞期は「プラトー」と呼ばれ、学習の初期のように知識を増やすだけでは伸びにくくなった段階で起きやすくなります。一方で、模試の受け方や学習量の変化が原因で、伸びていないように見えているだけのこともあります。まず本当にプラトーなのかを確かめ、設問タイプや採点項目ごとに弱点を絞り込むと、次に変える練習が決まってきます。
目次
プラトーはなぜ起きるのか
プラトーの「典型的な期間」を知っておく
これは本当にプラトーか
「量をこなす」だけでは抜けられない
弱点を数値で「解剖」する
難易度帯をあえて変えてみる
ライティング・スピーキングのプラトーは見え方が違う
第三者の目を入れる
よくある質問
まとめ
01 プラトーはなぜ起きるのか
学習の初期段階では、語彙や文法の明らかな穴を埋めるだけで、努力がそのまま結果に表れやすくなります。単語を100個覚える、頻出の文法ミスを直す、といった行動一つひとつが、リスニングやリーディングの正答数や、ライティングの評価に反映されやすい時期です。
しかし、ある程度のレベルに達すると、すでに持っている知識をどう本番のプレッシャーの中で使いこなすかという、より繊細な調整が求められる段階に入ります。単語や文法のインプットを増やすだけでは伸びにくくなり、代わりに「聞き取れているのに設問の意図を取り違える」「知っている表現なのに本番で出てこない」といった、より複合的な原因がスコアを頭打ちにするようになります。
この移行に気づかないまま、これまでと同じやり方を続けていると、伸びが止まったように感じられます。その場合は、力が伸びなくなったというより、伸ばすために必要な練習の中身が変わったと考えることができます。
02 プラトーの「典型的な期間」を知っておく
プラトーの最中は、「このまま一生伸びないのではないか」という不安に襲われやすいものです。しかし、プラトーは一時的な現象であることも多く、数週間から2、3か月ほどで抜ける人もいますが、技能や目標バンド、学習の条件によってはそれより長く続くこともあります。
ここで重要なのは、スコアという「表面の数字」と、実際に積み上がっている「内部の力」は、必ずしも同じタイミングで動くわけではないという点です。語彙のストックが増えている、聞き取れる音の範囲が広がっている、エッセイの構成が安定してきている、といった変化は、模試のスコアという1つの数字に反映されるまでにタイムラグが生じることがあります。
このタイムラグを知っておくだけでも、プラトー中の焦りはかなり軽減されます。焦りから勉強法をコロコロ変えてしまうと、かえって一つの方法の効果を見極めにくくなり、遠回りになることもあります。まずは「プラトーは一時的なものであり得る」と考えたうえで、原因を確かめるところから始めましょう。
03 これは本当にプラトーか
対策に入る前に、ひとつ確認しておきたいことがあります。スコアが上がらない原因は、必ずしも学習フェーズの移行とは限りません。プラトーだと思っていたものが、測り方や学習量の問題だったというケースがあります。
次のような点に心当たりがあれば、そちらを先に直したほうが早く動きます。
模試を本番と同じ条件で解いていない。時間を計っていない、途中で止めている、答えを見ながら進めている
学習時間が以前より減っている。忙しさで少しずつ減っていることに、自分では気づきにくいものです
毎回ちがう教材に手を出していて、同じ形式を繰り返せていない
スコアの上下が、そもそも模試ごとの難易度差の範囲に収まっている
最後の点は見落とされやすいところです。模試のスコアは1回ごとに多少動くので、1、2回の結果だけでは傾向として読むのは難しく、同じ条件で受けた結果をいくつか並べてみると、横ばいなのかどうかを判断できます。
これらに当てはまらず、条件をそろえた模試を複数回受けてもスコアが上がらない。そのときにはじめて、次のセクション以降の対策の効果が出やすくなります。
04 「量をこなす」だけでは抜けられない
プラトーに入ると、「もっと問題数をこなせば伸びるはずだ」と、これまでと同じ種類の練習量を増やそうとする方が多くいます。模試を毎日解く、単語帳を何周もする、といった量的な努力自体は悪いことではありません。ただし、すでに間違えるパターンがある程度固定されている状態で同じ勉強法を繰り返しても、同じ結果が再生産されるだけになりがちです。
筋力トレーニングでも、同じ重さ・同じ回数を繰り返していると、体がその負荷に慣れて、それ以上は伸びにくくなります。そこで負荷のかけ方を変えるように、IELTSの学習でも、量を増やす前に、何が原因で伸びが止まっているのかを突き止めておきたいところです。
原因を特定しないまま練習量だけを増やしても、疲労だけが蓄積して学習効率がかえって落ちてしまうこともあります。「頑張っているのに結果が出ない」という感覚が続くと、モチベーションの低下にもつながりやすいため、量よりもまず診断を優先することが大切です。
どこに時間をかけ、どこで切り上げるかという判断そのものについては、次の記事で詳しく扱っています。
IELTS総合対策
あえて完璧を目指さない選択
05 弱点を数値で「解剖」する
漠然と「リーディングが苦手」と捉えるのではなく、設問タイプ別・パート別に正答率を出してみると、実は特定のタイプだけが足を引っ張っているケースが多く見つかります。
例えば、次のように分解してみると、対策の方向性が具体的になります。
リーディング:True・False・Not Given、Matching Headings、要約完成など、設問タイプごとの正答率を集計する
リスニング:Part1〜4それぞれの正答率、および地図・表・複数選択といった設問形式ごとの正答率を集計する
ライティング:Task Response、Coherence and Cohesion、Lexical Resource、Grammatical Range and Accuracyのうち、添削で繰り返し指摘されている評価基準を洗い出す
スピーキング:Fluency and Coherence、Lexical Resource、Grammatical Range and Accuracy、Pronunciationのうち、どの採点項目で伸びが止まっているかを確認する
このように弱点を数値やカテゴリで「解剖」すると、例えば「True・False・Not Givenの正答率だけが低い」「Part3のマッチング問題だけ弱い」「Lexical Resourceだけが評価基準を満たせていない」といった、ピンポイントの課題が見えてきます。次に何を練習すべきかが具体的になれば、限られた学習時間を最も効果の出やすい部分に集中させることができます。
プラトーを漠然とした不安のまま放置せず、データとして扱うことが最初の一歩になります。可能であれば、模試を受けるたびに正答率をパート別・タイプ別に記録しておくと、後から傾向を振り返りやすくなります。
数値で弱点を切り分けるのと合わせて、うまくいった日に何をしたかも残しておくと、次の週に再現できる練習が見つかります。
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06 難易度帯をあえて変えてみる
自分の現在のレベルにちょうど合った問題ばかりを解いていると、慣れた範囲での正答率は安定しますが、新しく改善できる部分にはなかなか触れられません。あえて本番より少し難しい問題や、目標より上のバンドのサンプルアンサーに触れてみることで、今の自分に足りない視点に気づきやすくなります。
具体的には、次のような方法があります。
リーディング・リスニングでは、いまの自分には少し難しい問題や、本番より少し短い制限時間での練習に取り組んでみる
ライティングでは、目標バンドより高いスコアのサンプルエッセイを読み、自分のエッセイと構成・語彙のレベル差を具体的に比較する
スピーキングでは、普段よりも抽象度の高いトピックについて話す練習を取り入れ、語彙や論理展開の引き出しを増やす
逆に、応用問題ばかりに疲れてしまっている場合は、一時的に基礎的な文法・語彙の確認に戻ることも有効です。プラトーの原因が実は基礎の抜け漏れだった、というケースも珍しくありません。難易度を上げるか下げるかは、前のセクションで洗い出した「弱点の種類」によって判断するとよいでしょう。表面的な取りこぼしが多いなら基礎に戻る、応用力そのものが足りないなら難易度を上げる、という使い分けが目安になります。
07 ライティング・スピーキングのプラトーは見え方が違う
ここまでは主に、正答数で結果が見えるリスニングとリーディングを念頭に置いてきました。ライティングとスピーキングのプラトーは、少し見え方が違います。
大きいのは、評価が0.5刻みでしか動かないことです。リスニングであれば1問の改善が数字に表れることもありますが、ライティングでは、いくつかの改善が積み上がってはじめて0.5上がります。改善が進んでいる途中の期間は、数字の上ではまったく同じスコアが続きます。実際には前進しているのに停滞して見える期間が長くなりやすいのは、このためです。
もうひとつ、上のバンドに行くほど、0.5上げるために直す点が増えていきます。5.5から6.0へは、目立つ文法の穴を減らすことで届くことがありますが、6.5から7.0では、4つの評価基準のうち足を引っ張っているものを個別に押し上げる必要が出てきます。同じ0.5でも、必要な作業量が違います。
ライティングとスピーキングでプラトーに入ったと感じたときは、総合バンドではなく評価基準ごとに見るほうが実際的です。Task Response は届いているのに Grammatical Range and Accuracy だけが下がっている、という形で内訳が分かれば、次にやることは絞れます。総合スコアだけを見ていると、どこも動いていないように見えてしまいます。
08 第三者の目を入れる
自己採点や自己添削だけを続けていると、自分自身の癖には気づきにくいものです。これがプラトーの一因になっていることもあります。講師や添削サービスなど、第三者からのフィードバックを定期的に挟むことで、自分では見えていなかった弱点、例えば発音の癖や、無意識に繰り返し使ってしまう不自然な表現などが明確になります。
第三者の視点は、自分の学習の「当たり前」を疑うきっかけにもなります。同じ間違いを指摘され続けている部分があれば、そこがプラトーを抜け出すうえで最も効果のある部分である可能性があります。また、第三者に見てもらうことで、自分では「もうできている」と思い込んでいた部分に、実は改善の余地が残っていたと気づけることもあります。
フィードバックを受ける際は、一度きりで終わらせず、同じ観点を継続的にチェックしてもらうことがポイントです。単発の指摘だけでは改善の定着を確認しづらいため、数週間おきに同じ形式でチェックを受け、指摘された点が実際に直っているかまで確かめることができます。
09 よくある質問
プラトーはどのくらい続きますか。
一時的なことが多く、数週間から2、3か月ほどで抜ける場合もありますが、技能や目標バンド、学習の条件によってはそれより長く続くこともあります。スコアという表面の数字と、実際に積み上がっている内部の力は同じタイミングで動くとは限らず、そこにタイムラグが生じます。
スコアが伸びないのは、勉強量が足りないからですか。
量の問題とは限りません。学習の初期は語彙や文法の穴を埋めるだけで伸びやすい時期がありますが、ある程度のレベルに達すると、持っている知識を本番のプレッシャーの中でどう使うかというより繊細な調整が必要な段階に入ります。この移行に気づかないまま同じやり方を続けていると、伸びが止まったように感じられます。
毎日勉強しているのにスコアが上がりません。何から手をつければいいですか。
まず、本当にプラトーなのかを切り分けます。模試を本番と同じ条件で解いているか、学習時間が以前より減っていないか、毎回ちがう教材に手を出していないかを確認しておきましょう。そのうえで、練習量を増やす前に、設問タイプ別・パート別の正答率を出して弱点を数値で特定するところから始めます。
模試のスコアが毎回上下します。これはプラトーですか。
判断するには回数が要ります。模試のスコアは1回ごとに多少動くため、1、2回の結果だけでは傾向をつかみにくいので、同じ条件で受けた結果をいくつか並べて比べます。
プラトーに入ったら、勉強法を変えるべきですか。
闇雲に変えるのは避けたほうがよいでしょう。焦りから勉強法を次々に変えると、ひとつの方法の効果を見極めにくくなり、かえって遠回りになることがあります。変えるべきかどうかは、弱点を数値で特定してから判断します。
難しい教材に切り替えるべきですか、基礎に戻るべきですか。
洗い出した弱点の種類によります。表面的な取りこぼしが多いなら基礎に戻り、応用力そのものが足りないなら難易度を上げる、という使い分けが目安です。難易度を上げる場合は、いまの自分には少し難しい問題や、本番より少し短い制限時間での練習が使えます。
ライティングのスコアだけが上がりません。
ライティングは0.5刻みでしか動かないため、いくつかの改善が積み上がってはじめて数字に表れます。改善が進んでいる途中は同じスコアが続くので、停滞して見える期間が長くなりやすいです。総合バンドではなく、Task Response / Coherence and Cohesion / Lexical Resource / Grammatical Range and Accuracy のどれが足を引っ張っているかを見ると、次にやることが絞れます。
独学でプラトーを抜けられますか。
抜けられることもありますが、自己採点や自己添削だけを続けていると自分の癖には気づきにくく、それ自体がプラトーの一因になっていることがあります。講師や添削サービスなど第三者のフィードバックを定期的に挟むと、発音の癖や無意識に繰り返している不自然な表現が見えてきます。一度きりで終わらせず、数週間おきに同じ形式でチェックを受けて指摘された点が直っているかを追跡すると、改善が定着しているかも分かります。
10 まとめ
プラトーから抜け出すために確かめたい点は、次のとおりです。
プラトーは努力不足ではなく、学習フェーズが変わったサインと捉える
多くの場合、プラトーは一時的なものであり、内部の力とスコアの表示にはタイムラグがあることを知っておく
対策に入る前に、模試の条件や学習量など、測り方の問題ではないかを切り分ける
練習量を増やす前に、弱点を数値やカテゴリで特定する
ライティングとスピーキングは0.5刻みでしか動かないため、総合バンドではなく評価基準ごとに見る
あえて難易度の高い教材、あるいは基礎に立ち戻る教材を、弱点の種類に応じて使い分ける
第三者からのフィードバックを定期的に取り入れ、自分では気づけない癖を洗い出し、改善の定着を追跡する
スコアが上がらない時期は焦りを感じやすいものですが、練習量を増やす前に一度立ち止まって原因を確かめると、次に何を変えればよいかが決まります。伸びが止まって見える期間も、練習の中身を見直す時期として使うことができます。
ライティングだけが5.5から上がらない場合は、停滞の原因を4つの採点基準に分けて見ると絞り込めます。
ライティング
IELTSライティングが5.5から上がらない:6.5までに変えるのは4つの採点項目のうちどれか
停滞の原因が学習量なのか、やり方そのものなのかは、自分の記録だけでは分けにくいところです。これまでの学習と直近の結果を一緒に見ると、どちらに手を入れるかが見えてきます。
コース
IELTSプライベート講座(マンツーマン):講義の中身と料金