for example と for instance は使い分けるべきか:example と instance の本来の違い
執筆:高橋 響公開日:
例を挙げる合図として使う for example と for instance は、つなぎ語としては多くの文で入れ替えが可能です。厳密な使い分けの規則があるわけではないので、IELTSの答案でどちらを選んでも、それ自体が評価を左右することはありません。ただし、もとになっている名詞の example と instance には、はっきりした意味の違いがあります。example は全体から取り出した見本、instance は実際に起きた個別の一件です。
この違いを知っておくと、for instance がなぜ一つの具体的なケースになじむのか、set an example と in this instance がなぜ入れ替えられないのかが見えてきます。この記事では、2語の本来の意味から出発して、つなぎ語としての実際の使われ方、such as や like との住み分け、ライティング・タスク2の答案で見かける誤用までを整理します。
01for example と for instance は使い分けるべきか
結論から言うと、例を挙げる合図として使うかぎり、for example と for instance に守るべき使い分けの規則はありません。どちらも日本語の「たとえば」にあたり、文中の同じ位置に入って同じ働きをします。答案でどちらを選んでも、標準的な英語として通ります。
とはいえ、まったく同じ語というわけでもありません。もとになっている名詞の example と instance は意味が違い、その名残がつなぎ語のほうにもわずかに残っています。example は全体を代表する見本、instance は実際に起きた一件です。この差があるため、次の2つの場面では選ぶ意味が出てきます。
同じエッセイで例示が続くとき:2回目以降を for instance にすると、同じ語の反復が減ります。必要以上に同じ表現を繰り返すより、文脈に応じて自然な表現を選ぶほうが、Coherence and Cohesion(一貫性とつながり)の観点では読みやすい答案になります。
挙げる例が一つの具体的な出来事やケースのとき:instance のもとの意味が「起きた一件」なので、for instance のほうがややなじみやすい傾向があります。逆に、項目を2つ3つ並べて示すときは for example が選ばれやすくなります。あくまで傾向で、どちらの形にどちらの語を使っても誤りにはなりません。
example と instance の違いは、それぞれの語がたどってきた道筋を見ると輪郭がはっきりします。example はラテン語の exemplum に由来する語で、もともとは「取り出されたもの」「見本となるもの」という意味だったそうです。そこから、全体の中から取り出して示す代表例という現在の意味につながっています。ここに「他も同じようなものだと分かる」という含みが残りました。
Her recovery is a classic example of what good rehabilitation can achieve.
There have been several instances of flooding in this area over the past decade.
1文目は「良いリハビリで何ができるのかを代表して示す事例」なので example です。2文目は洪水が起きた回数を数えているので instance になります。ここを入れ替えると、意味が通らないか、少なくとも不自然に響きます。
03名詞の example と instance は入れ替えられない
つなぎ語としての for example と for instance はほぼ同義ですが、名詞として単独で使うときの2語は別物です。決まった言い方が固まっているので、片方をもう片方に替えると英語として成立しません。
example しか使えない形
「手本」の意味は、全体から取り出して見せる見本という example の中心の意味から生まれたものです。instance にはこの意味がないため、次の形で instance は使えません。
set an example:手本を示す。set an instance とは言いません
follow someone’s example:人にならう
lead by example:自ら行動して示す
make an example of someone:見せしめにする
take X as an example:Xを例にとる
instance しか使えない形
instance が「当面の事案、その場合」を指す語であることから、次の形が定着しています。ここに example を入れると意味が変わってしまいます。
in this instance:この場合は、今回に関しては
in many instances:多くの場合
in the first instance:まず第一段階として、さしあたり
an instance of X:Xが起きた一件(an instance of discrimination で、差別が起きた具体的な一件)
○
Parents should set an example for their children.親が子どもに手本を示す
✗
Parents should set an instance for their children.instance に「手本」の意味はない
○
In this instance, the government chose not to intervene.この場合、政府は介入しない道を選んだ
✗
In this example, the government chose not to intervene.「この例では」となり、実際の場面を指せない
an example of と an instance of も、指しているものが違います。an example of good design は「良いデザインの見本になっているもの」、an instance of poor design は「まずいデザインが現れた一件」です。前者は代表として示し、後者は起きた件を数えています。
実務的な結論としては、基本を for example にしておき、同じ答案の中で2回目の例示が来たときに for instance を使う、という運用が扱いやすいでしょう。語の選択に悩む時間を、例そのものを具体的にする時間に回せます。
05文中での位置とコンマの型
for example と for instance はどちらも文と文をつなぐ副詞的な表現なので、文の中で入る位置がいくつかあります。位置ごとにコンマの打ち方が決まっており、ここを外すと読みにくい文になります。
位置
コンマ
例
文頭
うしろにコンマ
For example, governments can subsidise public transport.
主語のあとに挿入
前後をコンマで挟む
Governments, for example, can subsidise public transport.
名詞のあとに例を並べる
前にコンマ
Renewable sources, for example solar and wind, are becoming cheaper.
文末
前にコンマ
Public transport could be subsidised, for example.
for example のうしろには、完全な文も名詞句も続けられます。この柔軟さが such as との大きな違いです。次の3つはいずれも成立します。
For example, many students take a gap year before university.
Many students take a break before university, for example a gap year.
Many students, for example those from rural areas, face longer commutes.
よく崩れる形
✗
For example the government should invest more in public transport.文頭のコンマが抜けている
✗
For example of this, many countries have introduced a carbon tax.for example に of は続きません
○
For example, many countries have introduced a carbon tax.例をそのまま文で続ける
e.g. より for example と綴るほうが安全
e.g. はラテン語の exempli gratia の略で、注や括弧の中で使われる記号的な表現です。文法的に禁じられているわけではありませんが、ライティング・タスク2の本文では、こうした略記より for example と綴るほうが自然で安全です。etc. や i.e. についても同じことが言えます。
06such as・like・namely との住み分け
例を挙げる表現は for example と for instance だけではありません。うしろに来られるものが語によって違うので、そこで選ぶと迷いません。
表現
うしろに来るもの
働き
注意点
for example / for instance
文でも名詞句でもよい
例を1つ以上挙げる
コンマで区切る
such as
名詞・名詞句のみ。節は続きません
種類の中から具体例を挙げる
直前の名詞にかかる
like
名詞・名詞句のみ
such as とほぼ同じ
くだけた響き。エッセイでは such as が無難
namely
名詞句
該当するものを特定して言い直す
例示ではなく限定
in particular
名詞句
その中でも特に、と絞り込む
例示ではなく強調
いちばん多いつまずきは、such as のうしろに文を続けてしまう形です。such as は前置詞のように働くので、主語と動詞のある節は続きません。
✗
Students can gain skills such as they work part-time.such as のうしろに節は続きません
○
Students can gain skills such as time management and teamwork.名詞句を並べる
○
Students can gain useful skills. For example, they learn to manage their time.文で説明したいときは for example
もう一つ見かけるのが、such as for example と続けて書く形です。such as cars のように名詞が直接続くところに for example を割り込ませると、例示の合図が二重になって読みにくくなります。一方だけにしておくのが無難です。
✗
such as for example cars and trains合図が二重になっている
○
such as cars and trainssuch as だけで足りる
○
such as, for example, cars and trainsコンマで挟んだ挿入なら成立する
3つ目の形が成立するのは、for example が挿入句としてコンマで挟まれているからです。読み手には「such as に続く例、たとえば車や電車」という区切りで届きます。とはいえ答案では、こみ入った形を避けて such as だけで書くほうが読みやすくなります。
namely と in particular は、例示に見えて役割が違います。namely は「すなわち、具体的には」と該当するものを特定する語で、挙げたもの以外がある含みは残りません。for example は「他にもあるが、そのうちの一つとして」という含みを持ちます。この差を取り違えると、主張の範囲がずれて伝わります。
07IELTSの採点では何が見られているのか
for example と for instance のどちらを選ぶかは、採点基準(Band Descriptors)のどの項目とも結びついていません。両方とも標準的な英語なので、この選択がスコアを分けることはありません。実際に見られているのは、次の3点です。
Coherence and Cohesion:つなぎ語が必要なところで正確に使えているか。多く使うほど良いという評価ではありません。必要以上に同じ表現を繰り返すより、文脈に応じて自然な表現を選ぶことが求められます。機械的に段落の頭ごとに Firstly、For example、In conclusion と並ぶ答案は、かえって不自然に映ります。
Lexical Resource:例の中で使われている語彙の幅と正確さ。for example そのものは基本語なので、ここで加点材料にはなりません。例の中身に出てくる名詞や動詞が見られています。
つなぎ語として使うかぎり、どちらでもかまいません。どちらも標準的な英語で、IELTSの採点基準のどの項目とも結びついていない選択です。迷ったときは、より一般的な for example を基本にして、同じ答案で2回目の例示が来たときに for instance を使うと反復が減ります。
for instance はフォーマルすぎませんか
for instance のほうがわずかに硬い響きですが、その差はごく小さいものです。IELTSのエッセイはどちらの語もそのまま使える文体なので、あらたまりすぎるという心配はいりません。話し言葉のスピーキングでも for instance は自然に使えます。
エッセイ本文で e.g. を使ってもよいですか
文法的に禁じられているわけではありませんが、for example と綴るほうが自然で安全です。e.g. はラテン語 exempli gratia の略で、注や括弧の中で使われる記号的な表現にあたります。ライティング・タスク2の本文では略記を避けたほうが読みやすく、etc. や i.e. についても同じことが言えます。
for example は1本のエッセイで何回まで使えますか
250語から290語のエッセイなら、例示の合図は2回程度で足ります。3回以上出てくると単調に見えるので、一つを such as に替えるか、合図なしで具体的な文を書く形にすると落ち着きます。具体的な文が来れば、合図がなくても読み手は例だと理解します。
for example と such as はどう違いますか
うしろに来られるものが違います。for example は完全な文も名詞句も続けられますが、such as には名詞や名詞句しか続きません。主語と動詞のある節を出したいときは for example を選ぶことになります。such as for example と続けて書く形は合図が二重になるため、such as だけにしておくと読みやすくなります。
名詞の example と instance も入れ替えられますか
入れ替えられません。example は全体から取り出した見本で、set an example や lead by example のように手本の意味でも使われます。instance は実際に起きた個別の一件を指し、in this instance や in many instances という形で定着しています。set an instance や in this example とは言えません。
For example のあとにコンマは必要ですか
文頭に出したときは、うしろにコンマを入れます。主語のあとに挿入する場合は前後をコンマで挟み、文末に付ける場合は前にコンマを入れます。For example the government should act のようにコンマが抜けた形は、読みにくい文になります。
for example と for instance の使い分けは、答案を書くうえで悩む価値の小さい論点です。つなぎ語としては多くの文で入れ替えが可能で、どちらを選んでも読み手は同じように受け取ります。一方で、もとになっている名詞の example と instance ははっきり別の語で、こちらを混同すると英語として通らなくなります。
つなぎ語の for example と for instance は、多くの文で入れ替えが可能
example は全体から取り出した見本、instance は実際に起きた一件
set an example と in this instance のような名詞の形は入れ替えられない
for instance も複数の例を並べられる。相性は傾向であって規則ではない
for example は文も名詞句も続けられるが、such as には名詞句しか続かない
文頭ならうしろにコンマ、挿入なら前後をコンマで挟む
e.g. や etc. などの略記は綴った形にするほうが安全
例示の合図は1本のエッセイで2回程度にとどめる
採点で見られているのは語の選択ではなく、例が主張を支えているか
次に答案を書くときは、for example のうしろに続く一文だけを読み返してみるとよいでしょう。そこに人物や場面、数字が見えていれば、その例は働いています。見えていなければ、語を入れ替えるより先に、例そのものを一段具体的にするほうが効きます。