ライティング・タスク2では、タスクの表現が具体的にどのようなことを示そうとしているのか、解釈に困ることがあります。試験中にタスクについて質問することはできないので、書き手が自分で判断することになります。
決め手になるのは常識的な解釈です。この記事では、第213週のライティングサミットの課題を例に、タスクの表現が指す範囲を語彙・論理・実務の3つの視点から考えていきます。
目次
課題の確認:"the streets" はどの道路を指すのか
視点1(語彙):street という語の意味の広さ
視点2(論理):住民と政府の対立が成立する範囲
視点3(実務):現実には誰が高速道路を掃除しているか
他のタスクでも同じ考え方で範囲を決める
まとめ
01 課題の確認:"the streets" はどの道路を指すのか
第213週のライティングサミットでは、次のような課題を受講生とともに考えました。
Task
Some people believe that residents are responsible for keeping the streets clean and tidy, while others believe that this is the responsibility of the government. Discuss both views and give your own opinion.
道路をきれいに保つのは住民の責任か、それとも政府の責任か。両方の意見を論じて自分の意見を述べなさい。
discuss both views 型の課題です。
ここで受講生が気になったのは、"the streets" がどの道路を指しているのか という点です。自宅の前の道路なのか、近所の通りなのか。それとも、誰の家の前でもない高速道路まで含むのでしょうか。
結論から言うと、この "the streets" は自分の住む家の前の道路 をイメージするのが常識的な解釈です。中心はあくまで住民の生活圏の道で、高速道路は含まれないと考えるべきです。
なぜそう解釈できるのか。理由を語彙・論理・実務の3つの視点に分けて見ていきます。
02 視点1(語彙):street という語の意味の広さ
一つ目は語彙的な理由です。street は road よりも狭い概念で、建物が並び、人が歩いたり生活したりする道 を指す語です。高速道路は highway や motorway という別の語で呼ばれる、独立したカテゴリーの道路です。
語
イメージ
典型例
street
建物が並び、人が歩き、生活する道
商店街の通り、住宅街の道路
road
場所と場所を結ぶ道全般を指す広い語
幹線道路、郊外の道
highway / motorway
高速走行のための専用道路
高速道路
英語の語感として、street と highway はそもそも別物として区別されています。日本語では「道路」という一語でまとめられる範囲が、英語では複数の語に分かれているわけです。タスクが street という語を使っている時点で、生活圏の道が話題の中心にあると考えられます。
03 視点2(論理):住民と政府の対立が成立する範囲
二つ目は論理的な理由で、これが一番重要です。
このタスクの前提は「住民と政府のどちらが清掃すべきか」という対立構造です。住民が清掃するという選択肢が成立するためには、その道路のそばに住民が実際に住んでいる必要があります。 自分の住む家の前の道路であれば、住民が掃除をするという行動は現実的にあり得ます。
一方、タスクが residents(住民)という語を使っている以上、そばに住民がいない道路はこの対立に当てはまりません。店を構える人が商売の場として使う通りは議論の中心から外れますし、高速道路にいたっては、そばで暮らす人がそもそもいません。「住民の責任か政府の責任か」という問い自体が成立しないため、議論の対象から自然に除外されます。
このように、タスクの対立構造そのものが表現の範囲を教えてくれることがあります。「AとBのどちらの責任か」と問われたら、AとBの両方が主体になり得る場面だけを議論の対象にすればよいのです。
04 視点3(実務):現実には誰が高速道路を掃除しているか
三つ目は実務的な理由です。高速道路の清掃は、専用車両や交通規制を伴う専門的な作業です。地域の住民に任せられないのはもちろん、一般的な地方自治体の清掃サービスとも管轄が異なり、多くの国では高速道路を専門に管理する機関が別に存在します。
つまり高速道路の清掃を持ち出すと、「住民か一般行政か」という今回の対立軸とは別の話になってしまいます。仮に触れたとしても、答えは「専門機関がやるべき」の一択で、住民側に議論の余地がありません。discuss both views 型のエッセイで両論を展開する材料にはならないのです。
逆に、生活道路の側では、住民と行政が場所を分け合って管理している実例があります。オーストラリアの多くの自治体では、家の前の芝生部分(ネイチャーストリップ)はその家の住人が手入れをし、車道そのものは自治体が管理する、という線引きになっています。こうした実例は、範囲の確認に役立つだけでなく、「責任は住民と政府で分担するのが現実的だ」といった自分の意見を支える具体例としても使えます。
ネイチャーストリップとは
nature strip はオーストラリア英語で、車道と歩道(または家の敷地)の間に設けられた芝生の帯を指す言葉です。土地そのものは自治体の所有ですが、芝刈りなどの日常的な手入れは隣接する家の住人が行うのが一般的で、条例で住人の管理を定めている自治体もあります。同じものが、イギリスでは verge、アメリカでは tree lawn や parkway など、地域によって別の名前で呼ばれています。
05 他のタスクでも同じ考え方で範囲を決める
整理すると、迷ったときは自分の住む家の前の道路 を思い浮かべて書けば十分です。高速道路のような特殊な道路には触れない方が、議論の焦点がぶれません。
範囲を決めておくと、ボディ1で住民側の意見、ボディ2で政府側の意見を書くときに、両方の段落が同じ「生活道路」のイメージの上で展開されるため、議論が噛み合います。逆に、段落ごとに思い浮かべる場所が変わると、タスクの中心的なイメージから議論が逸れてしまい、採点基準(Band Descriptors)の Task Response の観点で不利に働きます。
今回の考え方は他のタスクでも使えます。解釈に迷う表現が出てきたら、次の3つを順に確認してみてください。
語彙: その語が類義語の中でどのくらいの広さを持つのかを確認する
論理: 問いの対立や比較が成立する場面だけを議論の対象にする
実務: 現実の世界でどう運用されているかを思い浮かべる
書き始める前に「この表現はどの範囲を指しているのか」を1分だけ考えておくと、エッセイ全体の一貫性が保ちやすくなります。タスクの読み取りから通して練習したい方は、本番形式の模擬試験を活用するとよいでしょう。
IELTS学習アプリ
MockTest-WT2
ライティング・タスク2の模擬試験。本番形式で、タスクの読み取りからエッセイ作成までを通して練習できます。
また、タスクの理解のズレは自分では気づきにくいものです。ズレが生まれる仕組みと防ぎ方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ライティング・タスク2
タスクの理解のズレはどう防げばいいのか?自分では気づけない理由と気づくための練習法
06 まとめ
今回のポイントを振り返ります。
タスクの表現の範囲は明示されないため、書き手が常識的な解釈で決める
今回の "the streets" は、自分の住む家の前の道路をイメージすれば十分
語彙:street と highway は英語では別カテゴリーの語として区別されている
論理:「住民の責任」が成立するのは、そばに住民が実際に住んでいる道路だけ
実務:高速道路の清掃は専門機関の管轄で、今回の対立軸の外にある
書き始める前に範囲を決めておくと、ボディ1とボディ2の議論が噛み合う
解釈に迷う表現が出てきたときは、語彙・論理・実務の3つの視点に立ち戻って、タスクが想定している範囲を確かめてから書き始めてみてください。