日本で英語を学んできた人にとって、もっとも馴染みのある英語試験は英検(実用英語技能検定)でしょう。留学や仕事でIELTSが必要になったとき、「自分の英検の級はIELTSでいうとどのくらいのレベルなのか」が気になる方は多いはずです。この記事では、英検とIELTSのスコア対応の考え方、そして試験の性質の違いから見えてくる使い分け方を整理します。
01英検とIELTSは「測っているもの」が違う
比較の前提として押さえておきたいのが、英検とIELTSはそもそも設計思想が異なる試験だという点です。英検は級ごとに出題内容・難易度が固定された「合否判定型」の試験で、級が上がるごとに求められる語彙・文法・トピックの難度が段階的に上がっていきます。
一方IELTSは、級のような区切りがなく、どんな英語力の受験者が受けても同じ試験を受け、0〜9のバンドスコアで結果が連続的に示される「尺度型」の試験です。そのため「英検準1級に合格した」という事実と、「IELTS 6.0を取得した」という事実は、測定の仕組みそのものが異なり、単純な一対一の対応にはならないという前提を理解しておく必要があります。
02目安としてのスコア対応表
とはいえ、大学の入試要項などでは実務上の目安として、英検とIELTSのスコア対応表が示されることがあります。よく参照される目安は次の通りです。
| 英検 | IELTS目安 |
| 準2級 | 4.0前後 |
| 2級 | 4.0〜5.0前後 |
| 準1級 | 5.5〜6.5前後 |
| 1級 | 7.0〜8.0前後 |
これはあくまで大まかな目安であり、実施団体や大学によって対応の基準が異なる場合があります。特に準1級からIELTS 6.5相当までの幅は広く、同じ準1級保持者でもIELTSでは5.5から6.5まで振れ幅が出ることが珍しくありません。正式な出願・申請に使う場合は、必ず提出先が示す対応表を個別に確認してください。
対応表はCEFRを経由して作られている
この対応表がどこから来ているのかを知っておくと、幅が出る理由が分かります。英検もIELTSも、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)という国際的な尺度にそれぞれ対応づけられており、対応表はそのCEFRを間にはさんで作られています。
| CEFR | 英検 | IELTS |
| C1 | 1級 | 7.0〜8.0 |
| B2 | 準1級 | 5.5〜6.5 |
| B1 | 2級 | 4.0〜5.0 |
| A2 | 準2級 | 4.0前後 |
CEFRのB2という1つの区分に、IELTSでは5.5・6.0・6.5という3段階が入ります。英検準1級は「B2に到達した」ことを示しますが、B2のどのあたりにいるかまでは示しません。一方IELTSは0.5刻みでその位置を示します。幅が出るのは対応表が不正確だからではなく、英検が合否で区切り、IELTSが連続した尺度で測るという設計の違いによるものです。
03スピーキング・ライティングの評価方法の違い
対応表の幅が広くなる大きな理由の一つが、スピーキングとライティングの評価方法の違いです。英検のスピーキングは面接形式で、級ごとに決められた質問パターンに沿って進みます。ライティングも級ごとに出題形式が固定されています。
IELTSのスピーキングとライティングは、Band Descriptorsと呼ばれる4つの評価基準(スピーキングであれば流暢さと一貫性・語彙力・文法・発音)に沿って、試験官が総合的に判断します。級ごとの「合格ライン」を超えればよい英検とは異なり、IELTSでは同じバンド6.0でも、どの評価基準で強みと弱みがあるかによって内訳が変わってきます。英検で高い級に合格していても、IELTS特有の採点基準に慣れていないと、思ったよりスコアが伸びないという声もよく聞かれます。
04受験料・実施回数・有効期限の違い
試験の中身以外にも、対策の進め方に影響する実務的な違いがあります。
| 項目 | 英検 | IELTS |
| 受験料 |
準1級10,500円 / 2級9,600円(S-CBT・2026年度) |
27,500円(2025年9月改定後) |
| 実施回数 |
従来型は年3回。S-CBTは毎週土日 |
コンピューター版は週に複数回 |
| 受験の単位 |
級を選んで受験。不合格なら結果は残らない |
全員が同じ試験。必ずスコアが出る |
| 結果の有効期限 |
合格の資格自体は生涯有効 |
2年 |
1級はS-CBTで受験できない
英検S-CBTで受験できるのは準1級までです。1級は従来型のみで、年3回の実施に限られます。一方IELTSは級の区切りがないため、8.0を狙う人も5.0を狙う人も同じ試験を週に複数回のなかから選んで受けられます。上位レベルを目指すときの受験機会は、IELTSのほうが多く確保できます。
費用は1回あたりで比べない
1回あたりの受験料は英検のほうが安く見えますが、判断材料としてはそれだけでは足りません。英検は不合格だと級としての結果が残らないのに対し、IELTSは受けたぶんだけ必ずスコアが出ます。目標に届かなくても現在地が分かり、次に何を伸ばすかを判断できるという点は、費用に見合う情報量と考えることもできます。
有効期限は提出先の規定を見る
英検の合格は資格として生涯有効ですが、出願先が「2年以内に取得したもの」といった条件を付けることは珍しくありません。IELTSは2年と明確に決まっています。どちらの場合も、最終的には提出先の規定に従うことになります。
05英検準1級からIELTSへ移るときにやること
英検準1級を持っている方がIELTSに移る場合、英語力そのものは土台ができています。つまずくのは、たいてい英語力ではなく形式への慣れです。取り組む順番を決めておくと、遠回りせずに済みます。
1. 採点基準を読む
最初にやるべきことは、Band Descriptors(採点基準)に目を通すことです。英検には「合格ライン」がありますが、IELTSには4つの評価基準ごとに9段階の記述があります。何が評価されるのかを知らないまま問題を解いても、伸ばす方向が定まりません。
2. ライティングの形式の差を埋める
英検のライティングは、与えられた観点に沿って書く形式です。IELTSのタスク2は、問題タイプ(賛成・反対、両論、原因と解決策など)によって求められる構成が変わり、タスク1では図表の説明という英検にない課題が出ます。特にアカデミック・タスク1は、英検の学習では一度も書いたことのない種類の文章なので、ここは新しく身につける必要があります。
3. スピーキングの長さに慣れる
IELTSのスピーキングPart 2では、1つのトピックについて1〜2分間、一人で話し続けます。英検の面接は質疑応答が中心なので、この長さを一人で埋める経験は積んでいないことが多いところです。
4. リーディングの分量に慣れる
アカデミックのリーディングは60分で3本、合計2,150〜2,750語を読んで40問に答えます。英検準1級の長文よりも1本あたりが長く、時間の使い方を自分で管理する必要があります。
この4つのうち、1と2は知識で埋められるので着手が早いところです。3と4は練習量が要るので、早めに始めておくと安心です。
06どちらを受けるべきかの判断基準
留学先や提出先がIELTSを指定している場合は、英検の級に関わらずIELTS対策が必要になります。逆に国内の大学入試や資格加点などで英検が指定されている場合は、英検を受けることになります。
もしどちらでも良い場面(英語力の自己証明、就職活動でのアピールなど)であれば、英検は級ごとの合格実績として分かりやすく伝わりやすい一方、IELTSはバンドスコアという国際的に通用する尺度で英語力を示せるという違いがあります。将来的に留学や海外での就労を考えている場合は、早い段階からIELTS形式に慣れておくことが遠回りに見えて近道になることもあります。
07使い分けのポイント
- 英検は級ごとの合否判定型、IELTSは0〜9の連続的な尺度型。仕組みが異なるため単純比較はできない
- 対応表はあくまで目安。特に準1級以上は振れ幅が大きく、正式な出願には提出先の基準を個別に確認する
- スピーキング・ライティングは評価方法そのものが異なるため、英検の級が高くてもIELTS特有の対策は別途必要
- 提出先の指定が最優先。指定がなければ、将来の留学・海外就労を見据えてIELTSに早めに触れておくのも一つの選択肢
- 1回あたりの受験料は英検が安いが、IELTSは不合格という概念がなく必ずスコアが残る
- 英検1級はS-CBTで受験できず年3回。上位レベルの受験機会はIELTSのほうが多い
- 準1級保持者がIELTSへ移る場合、つまずくのは英語力ではなく形式。採点基準を読むところから始める
08よくある質問
英検準1級はIELTSでいうとどのくらいですか。
CEFRのB2にあたり、IELTSでは5.5から6.5程度が目安とされています。幅があるのは対応表が不正確だからではなく、英検が合否で区切るのに対し、IELTSは同じB2の範囲を0.5刻みで示すという設計の違いによるものです。正式な出願に使う場合は、提出先が示す対応表を個別に確認してください。
英検1級を持っていればIELTS 7.0は取れますか。
英検1級はCEFRのC1にあたり、IELTSでは7.0から8.0が目安です。ただし自動的に取れるわけではありません。IELTSはタスク1の図表説明やスピーキングPart 2の1〜2分のスピーチなど、英検にない形式を含みます。英語力の土台があっても、形式への対策は別途必要です。
英検とIELTSはどちらが難しいですか。
単純な比較はできません。英検は級ごとに出題範囲が決まっており、合格ラインを超えれば合格です。IELTSは全員が同じ試験を受け、できたところまでがスコアになります。英検で高い級に合格していても、IELTS特有の採点基準に慣れていないと思ったよりスコアが伸びないことはよくあります。
受験料はどちらが安いですか。
1回あたりは英検のほうが安く、S-CBTで準1級10,500円、2級9,600円(2026年度)です。IELTSは27,500円(2025年9月改定後)です。ただし英検は不合格だと級としての結果が残らないのに対し、IELTSは受けたぶんだけ必ずスコアが出るという違いがあります。
英検1級はS-CBTで受験できますか。
できません。英検S-CBTで受験できるのは準1級までで、1級は従来型のみ・年3回の実施です。IELTSは級の区切りがなく、コンピューター版が週に複数回実施されているため、上位レベルを目指す場合の受験機会はIELTSのほうが多く確保できます。
英検のスコアに有効期限はありますか。
英検の合格は資格として生涯有効です。IELTSは2年と明確に決まっています。ただし出願先が「2年以内に取得したもの」といった条件を付けることは珍しくないため、最終的には提出先の規定を確認してください。
英検の勉強はIELTSに活かせますか。
活かせます。語彙・文法・読解・リスニングという土台は共通です。一方で、アカデミック・タスク1の図表説明、スピーキングPart 2の1〜2分のスピーチ、60分で3本の長文を読むリーディングなど、英検の学習では経験しない形式があります。まずBand Descriptors(採点基準)を読み、そのあと形式の差を埋める順番が効率的です。
どちらを受けるべきですか。
提出先の指定が最優先です。留学先や出願先がIELTSを指定していれば、英検の級に関わらずIELTS対策が必要になります。国内の大学入試や資格加点で英検が指定されていれば英検です。どちらでもよい場面なら、将来的に留学や海外就労を考えているかどうかが判断材料になります。