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ライティング・タスク2

なぜ case が「状況」になるのか?Why do you think this is the case? を理解する

Why do you think this is the case? IELTSライティング・タスク2では、問題文がこの形で理由を尋ねてくることがあります。ここで case を「ケース」や「事例」と訳すと、「なぜこれがそのケースだと思うのですか」という意味の通らない日本語になり、問題の意図がつかめないままエッセイを書き始めることになってしまいます。

この case が指しているのは「事例」ではなく、「いま話題にしている状況・事実」です。この記事では、case の語源である「起こったこと」から核となるイメージを一本つくり、this is the case、if that's the case、as is often the case といった頻出表現を、丸暗記ではなく理屈で使えるように整理します。ライティング・タスク2でそのまま使える言い回しも合わせて紹介します。

01Why do you think this is the case? が訳せない理由

まず、つまずきの正体をはっきりさせておきます。日本語の「ケース」は、「レアなケース」「ケースバイケース」のように「事例・場合」の意味で定着しています。辞書を引けば case には「症例」「事件」「訴訟」といった訳語も並んでいます。そのため the case を見た瞬間に、「そのケース」「その事件」と解釈したくなるのは自然な反応です。

日本語の「ケース」

個別の事例、場合

英語の the case

いま話題にしている状況、事実関係

ところが、this is the case の case は「具体的な一つの事例」ではありません。「いま話題にしている状況・事実関係」を指しています。同じ英文でも、どちらのイメージで読むかによって理解がまったく変わります。

Why do you think this is the case?「なぜこれがそのケース(事例・事件)だと思うのですか」という直訳では意味が通りません

Why do you think this is the case?「なぜそういう状況になっていると思いますか」「なぜそれが事実だと思いますか」

つまりこの質問は、Why do you think this situation is true? とほぼ同じ内容を尋ねています。タスク2では、問題文の前半で現象を提示し、それを受けてこの形の質問が続きます。原因と対策を問うタイプの問題でよく見られる形です。

Fewer young people are choosing to work in agriculture these days. Why do you think this is the case? What could be done to encourage more young people into farming?(最近、農業で働くことを選ぶ若者が減っています。なぜそうなっていると思いますか。より多くの若者に農業へ進んでもらうには何ができるでしょうか)

分解すると、this は前の文で述べられた内容(若者が農業を選ばなくなっていること)、the case はその状況を指します。this is the case で「その内容が実際に起きている」ことを表し、そこに why が付いた質問だと読めれば、「若者が農業を選ばなくなっている原因を論じる」というエッセイの方向が迷わず決まります。

02case の核イメージは「起こったこと」

それでは、なぜ case が「状況」を意味するのでしょうか。手がかりは語源にあります。case はラテン語の casus に由来します。casus は動詞 cadere(落ちる)の名詞形で、「落ちること」、そこから「起こったこと、出来事」を意味しました。この「起こったこと」という核をおさえると、日本語では別々に見える訳語が一本の流れにつながります。

something that happens

起こったこと・出来事

a particular situation

その出来事を取り巻く特定の状況

the situation being discussed

いま話題にしている状況

1段階目は「起こった出来事」そのものを指す使い方です。

Several cases of food poisoning were reported after the festival.(祭りのあと、食中毒の事例が数件報告された)

「症例」「事件」という訳語もここに入ります。病気の症例は実際に起こった発症のことですし、事件も実際に起こった出来事です。そこから2段階目として、出来事そのものだけでなく「その出来事を取り巻く状況・事実関係の全体」を指すようになります。

The lawyer carefully reviewed the facts of the case.(弁護士はその事件の事実関係を注意深く確認した)

そして3段階目が、「いま話題にしている状況」を指す使い方です。this is the case の case はここに当たります。

This is not always the case.(いつもそういう状況だとは限らない)

この流れで見ると、this is the case の直訳は「これがその状況です」となり、自然な日本語では「その通りです」「それが事実です」に相当することが分かります。「ケースは多義語だから訳語を全部覚える」のではなく、「起こったこと、そこからいま話題にしている状況へ」という一本のイメージを持っておくほうが、初めて見る用例にも対応できます。

なお、スーツケースや携帯電話のケースの case は、ラテン語の capsa(箱)に由来する別の単語です。「入れ物」の case は綴りが同じだけで語源が異なるので、こちらまで一つのイメージにまとめる必要はありません。

03スピーキングで使う this is the case と if that's the case

理由を答えるときの this is the case

パート3で理由を尋ねられたら、答える側もこの表現をそのまま使えます。

Many people prefer to shop online rather than in physical stores. Why do you think this is the case?

I think this is the case mainly because online shopping saves people a lot of time.(主な理由は、オンラインショッピングだと時間を大幅に節約できるからだと思います)

I think this is because ... と答えても意味は同じですが、質問の形を受け取って this is the case because ... と返せると、質問を正確に理解していることが伝わります。

相手の発言を受ける if that's the case

会話の中で相手の発言を受けて話を進めるときには、if that's the case が便利です。

A: Apparently the test centre has moved to a new building.(テストセンターが新しいビルに移転したらしいよ)

B: If that's the case, I'd better check the directions again before test day.(そういうことなら、試験当日までに行き方をもう一度確認しておいたほうがよさそうだ)

ここでも構造は同じです。that は相手が直前に述べた内容、the case はその状況を指します。「もしそれが実際の状況なら」と、相手の発言をいったん前提として受け入れて、次の行動や判断につなげる言い方です。

if that's true とのニュアンスの違い

ほぼ同じ場面で if that's true も使えますが、焦点が少し違います。if that's true は「それが本当かどうか」という真偽に焦点があります。一方 if that's the case は、真偽を問い直すというより、その状況を前提として受け入れたうえで話を先に進める感じになります。

A: They say the college is going to cut its library budget next year.

B: If that's true, that's really disappointing.(それが本当なら、とても残念です。本当かどうかに反応している)

B: If that's the case, students will have to rely more on online resources.(そういう状況なら、学生はオンラインの資料にもっと頼ることになるでしょう。状況を前提に次を考えている)

どちらを使っても誤りではありません。ただ、相手の発言を受けて「では、こうしよう」と展開する場面では if that's the case のほうが自然に響くことが多く、パート3のディスカッションでも使いやすい表現です。

04ライティング・タスク2で使える the case の表現

the case を使った言い回しは、ライティング・タスク2でも活躍します。特に覚えておきたいのが次の3つです。

This is often the case in / with ...

「〜ではそういう状況がよく見られる」と、直前で述べた内容が典型的に当てはまる範囲を示します。

Housing shortages are particularly severe in capital cities. This is often the case in countries where jobs and universities are concentrated in a single city.(住宅不足は首都で特に深刻である。仕事と大学が一つの都市に集中している国では、こうした状況がよく見られる)

As is often the case with ...

「〜ではよくあることだが」と、これから述べる内容が典型的なパターンであることを先に示す言い方です。文頭に置けるので、パラグラフの展開にリズムが出ます。

As is often the case with new technology, the spread of AI has brought both excitement and anxiety.(新しい技術ではよくあることだが、AIの普及は期待と不安の両方をもたらした)

This is not always the case

一般論をいったん紹介して、「しかし、いつもそうだとは限らない」と切り返す表現です。譲歩と反論の流れをつくるときに使えます。

It is widely believed that private schools provide a better education, but this is not always the case.(私立学校のほうが良い教育を提供すると広く信じられているが、いつもそうだとは限らない)

The same is true of ... との使い分け

似た働きの表現に The same is true of ...(同じことが〜にも当てはまる)があります。

Cycling has become far more popular over the last decade. The same is true of other outdoor activities such as hiking and camping.(この10年でサイクリングの人気は大きく高まった。同じことはハイキングやキャンプなど他のアウトドア活動にも当てはまる)

The same is true of ... は比較の対象を横に追加する表現、This is often the case with ... はある状況が典型的に起こる範囲を示す表現です。どちらも「前の文の内容を次の対象へつなぐ」働きをするので、エッセイの中で論拠を広げるときに重宝します。

こうした表現を自分のエッセイで使ったときに、語法が正しいか確認したい場合は、こちらのツールが役立ちます。

IELTS学習アプリ Misuse Finder エッセイに含まれる語彙・文法の誤用を検出して解説するツールです。意味がずれた単語の使い方の確認にも役立ちます。

05case と situation と日本語の「場合」

「case は状況を表す」と説明すると、では situation と何が違うのか、という疑問が出てきます。違いは「限定」の感覚です。situation は状況を広く指す一般的な語であるのに対し、case は「いま話題にしているこの特定の状況・事情のもとでは」という限定の感覚を持ちます。

中心イメージ
situation 状況を広く指す一般的な語 The traffic situation in the city has improved since the new metro line opened.(新しい地下鉄の開通以来、市内の交通状況は改善した)
case いま話題にしている特定の状況・事情。「この条件のもとでは」という限定の感覚がある Working long hours is often said to increase productivity, but this may not be the case for everyone.(長時間働けば生産性が上がるとよく言われるが、全員に当てはまるとは限らない)
日本語の「場合」 条件分岐の働きが強い(雨の場合は中止、のように) in this case(この場合)とは自然に対応するが、this is the case を「これはその場合です」とは訳せない

日本語で case に一番近い語は「場合」ですが、この対応には注意が必要です。in this case を「この場合」と訳すのは自然です。ところが this is the case を「これはその場合です」と訳すと意味が通りません。日本語の「場合」は条件分岐を表す働きが強いのに対し、英語の case は「場合」だけでなく「状況・事実・事情・事例」までカバーする広い単語だからです。「場合」という一語に寄りかからず、「起こったこと、いま話題にしている状況」という核イメージのほうで受け止めるのが安全です。

06in case、just in case、in any case も同じ核でつながる

核イメージがつかめると、case を含む定番フレーズも同じ線の上に並べられます。

in case of ...

In case of fire, do not use the lift.(火災の場合はエレベーターを使わないでください)

「火災という状況が起こった場合には」ということです。掲示や案内文でよく見る形です。

just in case

The forecast says it will probably stay dry, but I'll take an umbrella just in case.(予報では降らなそうだけれど、念のため傘を持っていく)

「万一そういう状況になった場合に備えて」が縮まって、「念のため」という意味になります。

in any case

The museum may already be closed by the time we get there. In any case, we can still walk around the old town.(着く頃には博物館はもう閉まっているかもしれない。いずれにしても、旧市街を歩いて回ることはできる)

「どんな状況であっても」から「いずれにせよ」という意味になります。どのフレーズも、「起こる状況」という核から素直に出てきていることが分かります。個別の熟語として丸暗記するより、核イメージから毎回引き出すほうが、記憶にも残りやすいはずです。

07まとめ

this is the case の case は「ケース・事例」ではなく「いま話題にしている状況」である、という一点を軸に、スピーキングの質問文からライティングの定番表現、in case などの熟語までを一本の流れで見てきました。

case の核イメージのポイント

  • case の核イメージは「起こったこと」。そこから「特定の状況」「いま話題にしている状況」へ広がる
  • this is the case は「それが事実です・その通りです」。Why do you think this is the case? は「なぜそうなっていると思いますか」という質問
  • if that's the case は相手の発言を前提として受け入れ、次の判断につなげる表現。if that's true は真偽そのものに焦点がある
  • As is often the case with ... や this is not always the case は、ライティング・タスク2の譲歩・反論の流れで使える
  • in case、just in case、in any case も「起こる状況」という同じ核でつながる

カタカナ語として定着している単語ほど、英語本来の意味とのずれには気づきにくいものです。意味がずれたカタカナ語については、こちらの記事でも詳しく扱っています。

ライティング・タスク2 その「クレーム」、英語では通じません。日本語と意味がずれたカタカナ動詞4選

次に the case という表現に出会ったら、「そのケース」ではなく「その状況」と読み替えてみてください。問題文も、試験官の質問も、これまでよりずっと素直に読めるはずです。

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Hibiki Takahashi

この記事を書いた人

Hibiki Takahashi

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象にIELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住14年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

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