もう一つ、gain には目的語の好みがあります。増えていく量として捉えられるもの、あるいは手にすると有利になるものが基本なので、gain stress や gain a disease といった組み合わせは標準的な英語になりません。この記事では3語の違いを整理したうえで、IELTSのライティング・タスク2の答案でよく見かける不自然なコロケーションを、直し方まで含めてまとめます。
gain は、ゼロから何かを手に入れる語ではなく、すでにある程度持っているものが増えるときの語です。ですから gain の後ろには、多い少ないという量で捉えられるもの、あるいは手にすると有利になるものが来ます。英英辞典(Cambridge Dictionary、Longman、いずれも2026年8月時点)の語義も「有利なものを手に入れる」という書き方になっており、gain recognition や gain acceptance のように、量というより社会に受け入れられて手にしていくものもこの範囲に入ります。IELTSのライティング・タスク2では、経験、自信、支持、知名度、機会へのアクセスといった抽象名詞と組み合わせる場面がよく出てきます。
積み上がっていくものと組み合わせる
gain experience(経験を積む)/ gain confidence(自信をつける)/ gain insight into ...(〜への理解を深める)
gain popularity(人気を集める)/ gain support(支持を得る)/ gain recognition(認知される)/ gain acceptance(受け入れられる)
gain momentum(勢いを増す)/ gain an advantage over ...(〜より優位に立つ)
gain independence(自立していく)/ gain weight(体重が増える)
gain access to は使いどころが広い
gain access to は、教育、医療、情報、資金など、これまで届かなかったものに手が届くようになる状況を一言で表せる組み合わせです。社会格差や地方と都市の差を論じる課題で、have や can use よりも具体的に書けます。
Rural communities have gained access to specialist healthcare through online consultations.
Free public libraries allow low-income families to gain access to educational resources.
Once students gain access to reliable information, they can evaluate sources for themselves.
gain in ... という形もある
gain は自動詞としても使え、gain in popularity、gain in importance のように in を挟む形があります。他動詞の gain popularity とほぼ同じ意味ですが、in を使うと変化の過程に焦点が当たります。答案ではどちらでも問題ありません。
Remote working has gained in popularity since the pandemic.
Environmental issues have gained in importance over the past two decades.
主語は人でなくてもよい
gain の主語は人だけではありません。制度、政策、技術、考え方など、広がりを持つものが主語に立てます。The idea has gained widespread support. のように書けると、賛否の広がりを一文で示せます。ライティング・タスク2では、意見や取り組みが社会に受け入れられていく過程を書く場面が多いので、この形は使い回しがききます。
The proposal has gained widespread support among younger voters.
Electric vehicles have gained ground in markets where fuel prices are high.
名詞の gain と gains
名詞の gain は「増加分、利益」を表します。economic gains(経済的な利益)、a net gain(差し引きの増加)、short-term gains(短期的な利益)のように使い、複数形にできます。short-term gains at the expense of long-term stability のような対比は、賛否を論じる課題で使いやすい形です。
obtain information や obtain data は、誰かが手渡してくれる場面に限りません。検索、観察、実験、調査、聞き取りなど、手段を通じて手に入れる場合にも普通に使います。The information was obtained through interviews with local residents. のように、どうやって手に入れたのかを through や from で添えられるのが obtain の特徴です。
学位については earn a degree もよく使われます。obtain は大学から授与されるという側面、earn は努力の対価として得たという側面に光を当てる言い方で、どちらも答案で使えます。イギリス英語では gain a qualification や gain a degree という言い方も一般的で、資格については gain と obtain のどちらでも問題ありません。
学術的な文章での定番の形
研究や調査に触れる文では、the data obtained from ... という後置修飾の形がよく使われます。答案でデータや調査結果を引き合いに出すとき、この形を知っていると一文が締まります。
The data obtained from the survey suggest that working hours have little effect on productivity.
Students who obtain a degree abroad often struggle to have their qualifications recognised at home.
Small businesses find it difficult to obtain funding from traditional banks.
受動態にすると誰が受け取るかを隠せる
obtain は受動態で使われることも多い語です。Permission must be obtained before ... の形は、規則や手続きを説明する文でそのまま使えます。誰が申請するのかを明示せずに、手続きが必要だという事実だけを述べられるので、制度を論じる段落で便利です。
Permission must be obtained from the local authority before any building work begins.
Information obtained through social media is often difficult to verify.
入手先が想定できないものには合わない
逆に言えば、どこから手に入れたのかを言えないものには obtain が合いません。経験や自信は申請しても調査しても手に入らず、自分の中で積み上がっていくものなので、obtain experience や obtain confidence は不自然に響きます。ここは gain の領域です。
○
Interns gain experience that cannot be taught in a classroom.経験は積み上がるものなので gain
✗
Interns obtain experience that cannot be taught in a classroom.経験を発行してくれる窓口はない
05なぜ gain stress は不自然なのか
gain stress が不自然に響くのは、gain の目的語が「増えていく量」または「手にすると有利になるもの」に偏っているからです。stress は溜まっていく感覚が日本語にはありますが、英語では自分に降りかかってくるもの、あるいは置かれる状態として扱われます。そのため stress を受ける動詞は experience、suffer from、be under などになります。gain stress という形は非母語話者の英語では見かけますが、標準的なコロケーションではないので、答案では置き換えておくのが安全です。
✗
Employees who work long hours gain a lot of stress.stress は増やして得をするものではない
○
Employees who work long hours experience considerable stress.ストレスを経験するという捉え方
○
Employees who work long hours are under constant stress.圧力の下に置かれている状態として書く
同じ理屈で、病気、損害、費用、困難といったマイナスの物事も gain では受けられません。それぞれに決まった動詞があるので、まとめて覚えておくと答案で迷いません。
表したいこと
使う動詞
例
ストレスを受ける
experience / suffer from / be under
experience stress at work
病気になる
develop / contract
develop diabetes / contract an infection
損害を受ける
suffer / sustain
suffer serious damage
費用や負債を負う
incur
incur additional costs / incur debt
問題に直面する
face / encounter
face financial difficulties
圧力がかかる
come under
come under pressure from voters
gain weight はなぜ許されるのか
体重が増えるのは健康の面ではマイナスなのに gain weight は自然です。これは weight が増減する数量そのものだからです。gain の条件は「望ましいこと」ではなく「量として増えること」なので、体重、人口、速度のように数値で測れるものは、内容がマイナスでも gain で受けられます。
評判は良くも悪くも gain できる
もう一つ例外に見える形が gain a reputation です。reputation は評判の良し悪しにかかわらず「広がっていくもの」として扱われるため、gain a reputation for poor customer service のようにマイナスの内容でも使えます。gain notoriety(悪名が広がる)も同じ理屈です。ここでも判断の軸は、良いか悪いかではなく、量として増えていくかどうかです。
The company has gained a reputation for treating its staff poorly.
The city gained notoriety as one of the most polluted places in the region.
表の中で分かりにくいのが gain a job です。gain employment は求人統計や政策の文章でも使われる標準的な形ですが、gain a job とは言いません。理屈をつけるなら、employment は雇用されている状態を指す不可算名詞であるのに対し、a job は一つの職という具体物だから、となります。ただし実際には gain employment は組み合わせとして固定した定型なので、このまま覚えてしまうほうが早いところです。具体的な職に就く話なら secure a job、find a job、land a job を使います。
○
Graduates with technical skills gain employment more quickly.雇用という状態には gain が使える
✗
Graduates with technical skills gain a job more quickly.個別の職には secure や find を使う
Vocational training helps unemployed adults acquire skills for a new career.
Regular feedback allows employees to develop the skills they already have.
earn と receive の違い
教育を扱う課題では receive an education が定型です。一方、学位については earn a degree(努力の結果として得る)と obtain a degree(大学から授与される)が両方使え、視点が違うだけです。receive a degree も可能ですが、大学側から与えられる場面に限られます。
標準的なコロケーションではありません。gain の目的語は増えていく量か、手にすると有利になるものが基本で、stress はそのどちらでもないからです。非母語話者の文章では見かける形ですが、英語として自然な組み合わせではないので、答案では experience stress、be under stress、suffer from stress のいずれかに置き換えます。
obtain experience とは言えませんか。
不自然に響きます。obtain は入手先がはっきりしていて、手続きや調査で手に入るものに使う語ですが、経験はそのどちらでも手に入りません。経験は自分の中に積み上がっていくものなので gain experience が標準の形です。同じ理由で obtain confidence も gain confidence や build confidence に直します。
acquire a degree は使えますか。
学位については earn a degree か obtain a degree を使います。学術的な文章では earn a degree のほうがよく見かけます。努力の対価として得るという意味の earn、大学から授与されて受け取るという意味の obtain で、視点が違うだけです。acquire は技能や言語、習慣、資産のように、身について保持されるものと結びつく語です。
gain weight はマイナスの内容なのに、なぜ gain を使えるのですか。
weight が増減する数量そのものだからです。gain の条件は望ましい内容かどうかではなく、量として増えるかどうかです。体重、人口、速度のように数値で測れるものは、内容がマイナスでも gain で受けられます。gain a reputation for poor service のように、評判が広がる場合も同じ理屈です。
答案で get を使うとスコアに影響しますか。
get 自体が誤りになるわけではありませんが、話し言葉寄りの語なので、書き言葉らしさが求められる場面では他の語に置き換えるほうが有利です。get a job なら secure a job や find employment、get information なら obtain information のように、内容に合った語を選びます。ただし不自然なかたい語を無理に当てるくらいなら、get のほうが読みやすい場合もあります。