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一見正しそうな一文に潜む並列構造のずれ|何気なく使う and がもたらす意味のずれ

執筆:高橋 響 公開日: 最終更新:

and は英語で最もよく使う接続詞でありながら、最も事故が起こりやすい接続詞でもあります。つないだ2つの要素の形と意味がそろっていないと、書き手の意図とは別の構造で読まれてしまうからです。こうした並列構造のずれは、イントロダクションの決まり文句の中にも入り込みます。

この記事では、その代表例を一つ取り上げ、ずれの仕組みと見つけ方を解き明かした上で、修正するときの考え方と、よくある類例を紹介します。

01一見正しそうな一文に潜むずれ

「Why is this? Is it a positive or negative development?」のように、原因と評価の両方を問う設問では、イントロダクションの最後に「これから何を論じるか」を予告する一文、いわゆるアウトライン・センテンスを置くのが定番です。そこで多くの受験者が書いてしまうのが、次のような文です。

不自然な表現

I will explain the reasons for this and believe that this is a positive development.

(この理由を説明し、これは好ましい変化であると考えることを述べたい、という意図の文)

書き手の意図は明確です。「本論では理由を説明します。そして私は、これは好ましい変化だと考えています」。設問の2つの問いにきちんと答える宣言をしており、内容としては申し分ありません。

ところが、この英文には文の骨格に関わる問題が一つあります。and で結ばれた並列構造がずれていて、後半が「I will believe(私はこれから信じる)」と読まれてしまうのです。

なお、文末の「this is a positive development」という表現自体は、この設問タイプで使われる定番の自然な言い回しです。問題はそこではなく、その手前のつなぎ方にあります。順番に見ていきましょう。

02will が believe まで支配する、並列構造のずれ

この文で and が結んでいるのは、explain と believe という2つの動詞の原形です。動詞の原形が並んでいるということは、文法上、両方が文頭の will の支配下に入ることを意味します。つまり、読み手にはこう見えています。

I will explain the reasons for this and believe that this is a positive development.

will は and で結ばれた2つの動詞の両方にかかります。後半は「I will believe(私はこれから信じるつもりだ)」と読まれてしまいます。

「これから理由を説明します」は未来の行為なので will と相性が良いのですが、「信じる」はどうでしょうか。believe は動作ではなく心の状態を表す状態動詞で、意見は「これから持つもの」ではなく「今すでに持っているもの」です。それを will の並列に入れてしまうと、「私はまだそう思っていないが、エッセイを書きながらこれから信じる予定だ」という奇妙な意味になり、時制の整合性が崩れてしまいます。

やっかいなのは、単語一つひとつはどこも間違っていないことです。スペルも語形も正しいのに、and のつなぎ方だけで文全体が不自然になる。これが並列構造のずれの怖さです。採点基準(Band Descriptors)では Grammatical Range and Accuracy が文構造の正確さを見る観点なので、こうしたずれが積み重なると評価に影響します。

and を見たら、後ろを文頭につなげて読み直す

このタイプのずれは、簡単なセルフチェックで見つけられます。自分の文に and が出てきたら、and の後ろの要素を、並列の起点(この文なら will)に直接つなげて読み直してみるのです。「I will believe that ...」と声に出してみれば、「これから信じる?」という違和感にすぐ気づけるでしょう。書き終えた後の見直しの習慣として、ぜひ取り入れてみるといいでしょう。

03ずれを直すときの考え方

それでは、冒頭の一文をどう直せばよいのでしょうか。ポイントは、believe を will の並列から外して、「意見は今持っている」ことが伝わる形に組み込むことです。直し方は一つに決まっているわけではありません。考え方の方向を3つ見てみましょう。

直し方1:explain の目的語を2つ並べる

This essay will explain the reasons for this trend and why I believe it is a positive development.

このエッセイでは、この傾向の理由と、私がそれを好ましい変化だと考える根拠を説明します。

元の文の explain をそのまま活かせる、最小限の修正です。ここで and が結んでいるのは、the reasons for this trend という名詞句と、why I believe ... という名詞節です。どちらも explain の目的語なので、並列の構造が安定します。believe は why の節の中に現在形のまま収まるため、「今そう考えている」という時制の整合性も保たれます。

直し方2:意見側の動詞を行為動詞に変える

I will outline the reasons behind this phenomenon and argue that it is a positive development.

この現象の背景にある理由を示し、それが好ましい変化であることを論じます。

believe が will と合わないのは、状態動詞だからでした。それなら、意見を述べる側の動詞を argue(論じる)のような行為動詞に変えれば、「will outline ... and (will) argue ...」という並列がきれいに成立します。「これから論じる」は未来の行為として自然だからです。エッセイの予告文らしい、引き締まった一文になります。

直し方3:関係代名詞で意見を添える

This essay will discuss the causes of this trend, which I regard as a positive development.

このエッセイでは、この傾向の原因を論じます。私はこの傾向を好ましい変化だと考えています。

並列そのものを避けてしまう方法もあります。カンマ付きの関係代名詞 which で意見をコンパクトに差し込めば、「予告」と「立場表明」を一文で両立できます。regard A as B(AをBとみなす)は believe の言い換えとしても使える表現なので、あわせて覚えておくと便利です。

どの直し方でも構いません。大切なのは、理由の予告は未来の行為として、意見の表明は現在の状態として、それぞれにふさわしい形を与えることです。

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04他にもある、よくある並列構造のずれ

冒頭の will と believe は、「形はそろっているのに、意味が並列に耐えない」というケースでした。実際のエッセイでは、その逆、つまり「形そのものがそろっていない」ずれのほうがさらに頻繁に起こります。どれも and の前後を見比べるだけで見つけられるので、代表的なパターンを3つ押さえておきましょう。

類例1:to 不定詞と動名詞が混ざる

It is important to reduce waste and recycling materials.to reduce と recycling で形がそろっていません。しかも「waste and recycling materials(廃棄物とリサイクル資源)を減らす」という別の意味にも読めてしまいます。

It is important to reduce waste and recycle materials.to reduce と (to) recycle で形がそろい、あいまいさも消えます。

並列の起点が to のときは、and の後ろも原形(または to 付きの不定詞)でそろえます。形がずれると、読み手が構造を取り違える余地が生まれてしまいます。

類例2:not only A but also B の A と B がそろっていない

Studying abroad is beneficial not only for learning a language but also to experience a new culture.A は for + 動名詞、B は to 不定詞で、形がちぐはぐです。

Studying abroad is beneficial not only for learning a language but also for experiencing a new culture.for + 動名詞で A と B の形がそろいました。

not only A but also B は、A と B に同じ形を要求する構文です。書き出した時点の A の形を覚えておき、B もそれに合わせる意識を持つとよいでしょう。

類例3:should の支配範囲で形が崩れる

Governments should improve public transport and encouraging people to use it.should improve と encouraging で、助動詞の並列が崩れています。

Governments should improve public transport and encourage people to use it.should が improve と encourage の両方にかかる、安定した並列です。

これは冒頭の will と believe のちょうど裏返しのパターンです。助動詞を起点に動詞を並べるなら、and の後ろも原形にそろえる。逆に、原形でそろえた以上は、助動詞が両方にかかっても意味が成立するかを確認する。並列は「形」と「意味」の両面がそろって初めて完成します。

05よくある質問

「I will explain the reasons for this and believe that this is a positive development.」の何が問題なのですか?

and で結ばれた並列構造がずれていて、後半が「I will believe(私はこれから信じる)」と読まれてしまう点です。単語一つひとつはスペルも語形も正しいのに、and のつなぎ方だけで文全体が不自然になります。文末の this is a positive development という表現自体は、この設問タイプで使われる定番の自然な言い回しです。

なぜ will が believe にまでかかるのですか?

and が結んでいるのが explain と believe という2つの動詞の原形だからです。動詞の原形が並んでいるということは、文法上、両方が文頭の will の支配下に入ることを意味します。

believe を will の並列に入れると、なぜ不自然になるのですか?

believe は動作ではなく心の状態を表す状態動詞で、意見は「これから持つもの」ではなく「今すでに持っているもの」だからです。will の並列に入れると「私はまだそう思っていないが、エッセイを書きながらこれから信じる予定だ」という奇妙な意味になり、時制の整合性が崩れてしまいます。

このずれは、自分でどうやって見つければよいですか?

自分の文に and が出てきたら、and の後ろの要素を並列の起点(この文なら will)に直接つなげて読み直してみるといいでしょう。「I will believe that ...」と声に出してみれば、「これから信じる?」という違和感にすぐ気づけます。

どう直せばよいですか?

考え方の方向が3つあります。1つ目は explain の目的語を2つ並べる形(This essay will explain the reasons for this trend and why I believe it is a positive development.)。2つ目は意見側の動詞を argue のような行為動詞に変える形(I will outline the reasons behind this phenomenon and argue that it is a positive development.)。3つ目はカンマ付きの関係代名詞で意見を添える形(This essay will discuss the causes of this trend, which I regard as a positive development.)です。

to 不定詞と動名詞が混ざると、どんな問題が起きますか?

It is important to reduce waste and recycling materials. は to reduce と recycling で形がそろっておらず、しかも「waste and recycling materials(廃棄物とリサイクル資源)を減らす」という別の意味にも読めてしまいます。It is important to reduce waste and recycle materials. とすれば形がそろい、あいまいさも消えます。

not only A but also B ではどこに気をつければよいですか?

A と B に同じ形を要求する構文だという点です。not only for learning a language but also to experience a new culture. は for + 動名詞と to 不定詞でちぐはぐなので、but also for experiencing a new culture. とそろえます。書き出した時点の A の形を覚えておき、B もそれに合わせる意識を持つとよいでしょう。

並列構造のずれは、採点にどう関わりますか?

採点基準(Band Descriptors)では Grammatical Range and Accuracy が文構造の正確さを見る観点なので、こうしたずれが積み重なると評価に影響します。単語レベルの間違いがない分だけ自分では気づきにくいミスですが、見つけ方さえ知っていれば、見直しの数十秒で修正できます。

06まとめ

今回は、イントロの最終文でよく見かける「I will explain the reasons for this and believe that ...」という一文を題材に、並列構造のずれを解説しました。最後にポイントを確認しましょう。

  • and が出てきたら、後ろの要素を並列の起点(will や to など)につなげて読み直す
  • believe のような状態動詞は will の並列に入れない。意見は「今持っているもの」
  • 意見は「why I believe ...」「argue that ...」「, which I regard as ...」の形で組み込む

並列構造のずれは、単語レベルの間違いがない分、自分では気づきにくいミスです。しかし、見つけ方さえ知っていれば、見直しの数十秒で修正できます。次にエッセイを書いたら、まず and の前後をチェックしてみるといいでしょう。

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Hibiki Takahashi

この記事を書いた人

Hibiki Takahashi

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象にIELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住14年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

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