「駅から近いところに住んでいます」と言いたいだけでも、英語にはいくつもの言い方があります。I live near the station. でも通じますし、I live within walking distance of the station. とも言えます。I'm just a stone's throw from the station. まで来ると、かなり口語的な響きになります。
スピーキングの語彙力は、Lexical Resource という項目で評価されます。IELTS公式サイトが現在公開しているスピーキングの Band Descriptors には、この項目についてバンドごとに次のように書かれています(2026年8月27日時点)。
Lexical Resource
Band 6 Resource sufficient to discuss topics at length. Vocabulary use may be inappropriate but meaning is clear.
Lexical Resource
Band 7 Resource flexibly used to discuss a variety of topics. Some ability to use less common and idiomatic items and an awareness of style and collocation is evident though inappropriacies occur.
Lexical Resource
Band 8 Wide resource, readily and flexibly used to discuss all topics and convey precise meaning. Skilful use of less common and idiomatic items despite occasional inaccuracies in word choice and collocation.
3つを比べると、バンドが上がるにつれて何が求められるのかが見えてきます。Band 6 で求められているのは、話題について詳しく話せるだけの語彙があり、多少ふさわしくない語が混ざっても意味が伝わることです。Band 7 になると flexibly(柔軟に)と awareness of style and collocation(文体とコロケーションへの意識)が加わります。Band 8 では less common and idiomatic items を skilful に使えることが挙がります。
My house is near the station. It takes about ten minutes on foot.
My place is within walking distance of the station, about ten minutes.
I'm just a stone's throw from the station, so I hardly ever use the bus.
3つとも同じ事実を述べています。違うのは語の難しさではなく、どこまで柔軟に言い換えられているかです。この柔軟さこそ Band 7 に挙がっている flexibly で、語を1つ覚えるより直接この観点に関わります。
02基本・中級・上級は何で分けているのか
この3段階は、上に引いた Band Descriptors の記述に対応させています。ただし、IELTSが語彙を3段階に分類しているわけではありません。学習しやすいようにプラスワンポイントで整理したものです。
段階
対応する記述
そこに入るもの
使うときの判断
基本
Band 6 meaning is clear
誰でも知っている語だが、前置詞・冠詞・時制まで含めて正しく言える形
迷ったら必ずここに戻れるようにしておく
中級
Band 7 awareness of style and collocation
語そのものは平易でも、組み合わせが自然なもの。言い換えの候補
ここを厚くすると答えが伸びる。多くの受験者にとって効果的な対策になる
上級
Band 8 less common and idiomatic items
使う場面が限られる比喩的な言い方、口語のイディオム
まずは1つの回答に1つ程度を目安にする。合う場面が来なければ使わない
どこから手をつけるか
スピーキングのスコアが5.5から6.0のあたりで止まっている場合、上級の表現を集めても答えは伸びにくくなります。Band 6 の記述にある meaning is clear が安定していない状態で less common な語を混ぜると、意味の通りにくい箇所が増えるためです。この段階では基本を正確に言い切れる形にしてから、中級を足していくほうが確実です。
Part 3 Housing prices have gone through the roof, you know.Part 3 の議論では、文脈によってはやや口語的に聞こえる
○
Part 3 Housing prices have risen sharply, particularly in major cities.社会の話をする場面に合う
Part 1 と Part 3 では話す内容の性質が変わります。Part 1 は自分の身の回りのことなので口語的な言い方が合いますが、Part 3 で社会全体を論じているときに同じ調子で話すと、内容と語調がちぐはぐになりかねません。場面に応じて語を選べることも、Band 7 に出てくる awareness of style の一部と考えられます。
同じイディオムを何度も出す
気に入った表現を Part 1 と Part 2 と Part 3 で繰り返すと、準備してきた一言を差し込んでいるように聞こえます。Band 8 の記述は Wide resource(幅広い語彙資源)から始まっているので、同じイディオムを繰り返すより、場面に応じて別の表現を選べるほうが語彙の幅は伝わります。同じ表現は試験を通して1回までと自分で決めておくと、この形は避けられます。回数についてIELTSの規定はありません。
上級の表現を避ける必要はない
ここまで3つ挙げましたが、だからといって上級の表現を避けたほうが得だとは考えないでおきましょう。大切なのは、難しい表現を無理に入れることではなく、自分が意味と使い方を分かっている表現を、合う場面で使うことです。Band 7 の記述には less common and idiomatic items について though inappropriacies occur とあり、多少の不適切な使い方が起こることを想定したうえで、こうした表現を使う力も評価の対象になっています。各回で上級の表現を出すときは、合う場面と合わない場面をあわせて書いていきます。