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リスニング

スクリプトなら分かるのに聞き取れない:IELTSリスニングで音と文字をつなげる練習法

執筆:高橋 響 公開日: 最終更新:

答え合わせでスクリプトを見ると知らない単語はほとんどないのに、音声だと何を言っているのか分からない。IELTSのリスニングでこの状態にあるとき、足りていないのは語彙ではなく、すでに知っている語の音と文字の結びつきです。

What is your name? は、文字どおりに聞こえなくても意味が取れます。いま聞き取れない表現でも同じことが起きる状態を作るために、ずれている箇所の見つけ方、音読での埋め方、同じ表現をいろいろな発音で聞くための道具を見ていきましょう。

01What is your name? は文字どおりには聞こえていない

スクリプトを読めば分かるのに音声だと聞き取れないという状態は、語彙の不足ではなく、知っている語の音と文字が結びついていないことから起きています。この結びつきがどういうものかは、だれもが聞き取れる表現で確かめられます。

What is your name?

この一文が音声で流れてきたとき、ワット・イズ・ユア・ネームという4つの音として届くことはまずありません。実際の会話では What's your name? の形で話され、そこからさらに音がつながります。

発音記号耳に届く形
一語ずつ発音した場合/wɒt ɪz jɔː neɪm/ワット・イズ・ユア・ネーム
実際に話される短縮形/wɒts jɔː neɪm/ワッツ・ユア・ネーム
your が弱まり、音がつながった形/wɒtʃə neɪm/ワッチャネーム

3行目では、What's の /ts/ とうしろの /j/ が影響し合って /tʃ/ という一つの音になり、your に残るのは /ə/ だけになります。文字の上には8つの文字と3語の切れ目があるのに、耳に届くのは /wɒtʃə neɪm/ という2つのかたまりです。文字とはかけ離れた音です。

それでも意味を取り違えることはありません。この表現を何度も聞き、自分でも何度も口に出してきたので、ワッチャネームという音の並びから What is your name? という文字と意味が同時に浮かびます。文字どおりに聞こえているのではなく、文字どおりでない音のまま処理できている状態です。

目指すのはこの状態を増やすこと

リスニングの練習で作りたいのは、音声を文字どおりに発音してもらうことではありません。文字どおりに聞こえない音のまま意味が取れる表現を、一つずつ増やしていくことです。What is your name? で自然にできていることを、まだできていない表現でも成立させていきます。

スクリプトなら分かるのに聞き取れないという状態は、この結びつきができている表現がまだ少ないということです。知らない語を覚える作業ではなく、すでに知っている語の音を結びつけ直す作業です。単語帳を増やしても解決しないのはこのためです。

なお、リスニングで失点する原因はこれだけではありません。設問の先読みが間に合っていない、集中が続かないといった要因もあります。この記事では、そのうち音と文字の結びつきに絞って扱います。

02知っている語なのに、別の語として処理される

音と文字が結びついていない表現は、聞き逃されるのではなく、耳に届いた音にいちばん近い既知の語へ置き換えられます。空欄のまま残るのではなく別の語が書き込まれるので、自分では聞き取れたつもりになります。

The house also has a media room on the ground floor.

a major room と書く /ə ˈmeɪdʒə ruːm/メジャールームに近い音として届き、知っている語の中でいちばん近いものに当てはめる

a media room /ə ˈmiːdʒə ruːm/a と media がつながり、media の /diə/ が /dʒə/ に変わって発音される

media も major も、文字で見れば知っている語です。意味も言えます。それでも音声で取り違えるのは、a media room という並びの音が、自分の中で文字と結びついていないからです。届いた音を、手持ちの語の中でいちばん近いものに割り当てた結果が a major room になります。

発音記号で並べると、両者の距離が見えます。media は辞書の見出しでは /ˈmiːdiə/ ですが、実際の音声では /diə/ の /d/ とうしろの /j/ の音が影響し合って一つの音になり、/ˈmiːdʒə/ と発音されることがあります。この変化は yod coalescence と呼ばれるもので、soldier や nature の /dʒ/ /tʃ/ も同じ経路でできた音です。

一方 major は /ˈmeɪdʒə/ です。/ˈmiːdʒə/ と /ˈmeɪdʒə/ を並べると、違いは強勢のある母音(/iː/ と /eɪ/)の1か所だけになります。ここまで近づけば、文字と結びついていない media のほうが、よく知っている major に引き寄せられます。なお media には、イギリス英語で /ˈmɛdiə/ という発音も記録されています(発音記号は Wiktionary の記載、2026年8月時点)。一つの音の形だけで覚えていると、これも別の語に聞こえます。

試験では何が起きるか

Part1の穴埋めのように、聞こえた語をそのまま書き取る設問では、そのまま解答欄に入ります。答え合わせでスクリプトを見れば media room だと分かって納得しますが、そこで終わりにすると、次に同じ音が来たときにまた major と書きます。納得した時点では、音と文字はまだつながっていません。

文字どおりに聞こえなくなる主な型

文字と音がずれる原因には、いくつかの決まった型があります。

何が起きるか
弱形機能語が弱く発音され、はっきり聞こえにくくなるto、of、for、and など
連結語と語の境目がつながり、一つのまとまりとして聞こえるpick it up
子音の弱化・脱落子音が弱くなったり、明瞭に聞こえなくなったりするnext week、last year
同化隣り合う音の影響で、元の音とは異なる音に聞こえるdid you、media(/ˈmiːdiə/ → /ˈmiːdʒə/)など

この4つを用語として覚えても、聞き取れるようにはなりません。分類そのものが目的ではなく、自分が実際に取り違えた箇所でどの型が起きていたのかを確認するための道具です。What is your name? が /wɒtʃə neɪm/ になるのも、media が /ˈmiːdʒə/ になるのと同じ同化ですが、こちらは説明されるまでもなく音のまま処理できています。そこが、いまつまずいている表現との違いです。

03同じ語でも、話者によって音が違う

音と文字を結びつけるときに、一つの発音だけで覚えると、話者が変わった途端に認識できなくなります。同じ語が、話し手の出身地によって別の母音で発音されることがあるためです。IELTSのリスニングでは、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダなど、いろいろな地域の話者が出てきます。

どう変わるか耳に届く形
yearイギリスの標準的な発音は /jɪə/、アメリカ英語は /ˈjɪɚ/。バーミンガムでは /jɜː/、イースト・アングリアでは /jɛː/ という発音も記録されているイアに近い音のほか、ヤーやイェアに近い音になることがある
young標準的には /jʌŋ/。イングランド北部やミドランズでは /jʊŋ/ になり、put や book と同じ母音で発音されるヤングよりヨングに近い音になる
bus標準的には /bʌs/。young と同じ母音なので、同じ地域では /bʊs/ になるバスよりブスに近い音になる

young と bus が同じように変わるのは偶然ではありません。どちらも /ʌ/ を持つ語で、イングランド北部やミドランズの発音では、この /ʌ/ が /ʊ/ と区別されないためです(英語方言学で foot-strut split と呼ばれる現象。発音記号は Wiktionary の記載、2026年8月時点)。語を1つずつ覚えるのではなく、/ʌ/ を持つ語がまとめて変わると分かっていれば、初めて聞く語でも見当が付きます。

すべての地域差を覚える必要はない

地域ごとの発音の一覧を暗記しても、リスニングは楽になりません。ここで必要なのは、自分が結びつけた表現について、一つの音の形だけで固定しないことです。year を /jɪə/ の音だけで覚えていると、/jɜː/ で来たときに別の語だと感じます。同じ表現をいろいろな話者の声で聞いておくと、この幅に耐えられるようになります。

04音と文字がずれている箇所を見つける

ずれは、自分が実際に取り違えた箇所からしか見つかりません。教材に載っている音の変化のリストを上から順に確認していくやり方では、自分がどこでずれているかは分からないためです。解いた問題を材料にして探していきましょう。

週に解くセット数は、時間ではなく回数で決めておくと続けやすくなります。1日に何時間という決め方だと、忙しい週にそのまま止まります。週に何セットという決め方にしておけば、1セットあたりに使える時間から、どこまで掘るかを逆算できます。

2回目で取れるかどうかで分ける

1セット解いたら、間違えた設問の正解をすぐには見ずに、同じ音声をもう一度聞きます。この2回目が判断のもとになります。

2回目の結果何が起きていたかそのあとやること
2回目で取れた音は認識できていた。先読みが間に合っていない、集中が切れていたなど、聞き取り以外の要因解く手順のほうを見直す。音の練習には回さない
2回目でも取れないその箇所の音が認識できていないその設問の周辺だけスクリプトを見る

スクリプトを見て、理由をもう一段分ける

2回目でも取れなかった設問の周辺をスクリプトで確認したら、分からなかった理由をさらに2つに分けます。この2つは、そのあとにやることがまったく違います。

理由どういう状態かやること
ストラクチャーが取れていないスクリプトを読んでも意味が取れない。文の組み立てや語そのものが分かっていない文法・語彙として学び直す。音の練習を重ねても埋まらない
音と文字がずれているスクリプトを読めば分かる。音では認識できなかったこの記事の05と06の手順で、音と文字を結びつける

この区別をせずに復習したことにすると、文法・語彙の問題に音読を当てたり、逆に音の問題を単語帳で埋めようとしたりすることになります。どちらも時間をかけた割に、次に同じ箇所で止まります。

掘る範囲は、間違えた設問の周辺を中心に、1回あたり1分から2分程度に絞ります。1セットぶんすべてを扱おうとすると最後まで届かないので、狭くして終わりまで通すほうが結びつきは増えます。

05音と文字のずれを音読で埋める

音と文字を結びつける方法は、その一文を自分で声に出して読めるようにすることです。自分が同じように発音できる音は、聞いたときに認識しやすくなります。目で確認して納得するところで止めると、結びつきはできません。

  • スクリプトを目で追いながら音声を聞き、文字と音がどこでずれているかを確かめる
  • 1文だけ再生して止め、そのあとにスクリプトを見ながら同じ速さで声に出す
  • うまく言えない箇所は、そこだけ何度か繰り返す
  • 最後に、何も見ずにもう一度その音声を聞く

同じ速さで言えるところまでやる

ゆっくり正確に読むだけでは、実際の音とのずれは埋まりません。音声と同じ速さで言えるようになると、つながっている部分やはっきり発音されない部分も、自然に同じ形になります。a media room を a major room と取り違えていたなら、自分で a media room を音声と同じ速さで言えるようになったところで、その音が別の語に化けなくなります。

1回の復習で扱えるのは数文で構いません。1セットぶんを全部やろうとせずに、取り違えた箇所の前後だけを、言えるようになるまで通します。

速度を落とすのは確認のときだけ

つながって聞こえる部分がどの語で構成されているか分からないときは、一時的に再生速度を落として確認します。確認できたら通常速度に戻して聞き直します。遅い英語なら聞き取れるという状態を作るのが目的ではないので、落としたままにはしません。

IELTS学習アプリ 英文読み上げ プラスワンポイントのアプリ。聞き取れなかったフレーズを貼り付けると音声で読み上げます。再生速度を0.75倍から1.5倍まで変えられるので、落として確認してから通常速度に戻す使い方ができます

06同じ表現を何度も聞いて定着させる

What is your name? の音と文字が結びついているのは、何度も聞いて何度も言ってきたからです。いまつまずいている表現との違いは、能力ではなく触れた回数にあります。1回の復習で音読して終わりにすると、次に同じ音が来たときにまた迷います。

03で見たとおり、同じ語でも話者によって音が変わります。1つの音声だけで練習していると、その話者の発音にだけ慣れることになるので、同じ表現を、いろいろな話者、いろいろな速さで聞いておきましょう。

YouGlishで同じ表現の用例を続けて聞く

YouGlish(youglish.com)は、入力した語句が実際に話されている動画の該当箇所から再生でき、次の用例へ順に送っていけるサイトです。イギリス、アメリカ、オーストラリアなどのアクセントを選んで絞り込むこともできます(2026年8月時点)。同じ表現を、話者を変えて連続して聞ける点がこの練習に向いています。

  • 聞き取れなかったフレーズを、そのまま検索窓に入れる
  • 10例ほど続けて聞き、話者が変わっても同じ表現だと分かるか確かめる
  • アクセントを切り替えて、同じ語句をもう一度聞く
  • 元のIELTSの音声に戻って、その箇所をもう一度聞く

最後に元の音声へ戻るところまでを1セットにします。出てくる動画は一般の英語なので、IELTSの音声そのものではありません。目的は同じ表現の音に何度も触れることであって、設問演習の代わりにはならないという前提で使います。

外部サイト YouGlish(youglish.com)

結びついた表現は残る

一度この形で結びついた表現は、What is your name? と同じように、次からは意識せずに処理できます。1回の復習で扱えるのが数文でも、積み上がっていくと、初見の音声でも文字が浮かぶ範囲が広がっていきます。伸びているかどうかは、模擬試験のスコアよりも、聞こえたとおりの音のまま意味が取れる表現が先週より増えているかで見ます。

IELTS学習アプリ LR学習記録ツール プラスワンポイントのアプリ。リーディング・リスニングで解いた問題と正誤を記録し、どの設問で落としているかを振り返れます

07よくある質問

スクリプトを見れば分かるのに聞き取れないのは、語彙力が足りないからですか。

スクリプトを読んで意味が取れるのであれば、その音声については語彙不足が主な原因ではない可能性が高いでしょう。知っている語の音と文字が結びついていないため、届いた音をいちばん近い別の語に置き換えてしまっている状態です。単語帳を増やすより、取り違えた箇所の音を自分で言えるようにする練習が先です。

音の変化のルールを覚えれば、聞き取れるようになりますか。

弱形、連結、子音の弱化・脱落、同化といった型を用語として覚えても、それだけでは聞き取れるようにはなりません。自分が実際に取り違えた箇所で、どの型が起きていたのかを確認するために使う道具です。確認したあと、その一文を自分で言えるようにするところまで進めます。

同じ語なのに、音声によって違う音に聞こえるのはなぜですか。

話し手の出身地によって、同じ語が別の母音で発音されることがあるためです。young /jʌŋ/ や bus /bʌs/ は、イングランド北部やミドランズでは /jʊŋ/ /bʊs/ になり、ヨング、ブスに近い音で届きます。year も、標準的な /jɪə/ のほか、地域によっては /jɜː/ のようにヤーに近い音で発音されます。

IELTSのリスニングでは、どの国の発音が出ますか。

イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダなど、いろいろな地域の話者が出てきます。地域ごとの発音の一覧を暗記する必要はありませんが、自分が結びつけた表現を一つの音の形だけで固定しないほうが安全です。同じ表現を、話者を変えて聞いておく練習が役に立ちます。

過去問は、正解を見る前にもう一度聞いたほうがいいですか。

2回目を聞くと原因を分けられます。2回目で取れた設問は音を認識できていたので、先読みや集中の持続といった解く手順の問題です。2回目でも取れない設問だけが音を認識できていない箇所なので、そこにスクリプトを使います。

音読は何回くらいすればいいですか。

回数より、音声と同じ速さで言えるかどうかを目安にします。ゆっくり正確に読めるだけでは、実際の音とのずれは埋まりません。同じ速さで言えるようになると、つながっている部分やはっきり発音されない部分も自然に同じ形になります。1回の復習で扱う量は数文で構いません。

再生速度を落として聞くのはよくないですか。

つながって聞こえる部分がどの語でできているかを確認するときには有効です。ただし、確認したら通常速度に戻して聞き直します。遅い英語なら聞き取れるという状態を作るのが目的ではないので、落としたままの練習を続けることは避けます。

YouGlishのような一般の動画で練習しても、IELTSの対策になりますか。

同じ表現を、話者や速さを変えて繰り返し聞く用途には向いています。IELTSの音声にはイギリス、オーストラリア、アメリカなどの発音が含まれるので、一人の話者の音だけで覚えないためにも役立ちます。ただし出てくる動画はIELTSの音声ではないため、設問演習の代わりにはならず、最後は元の音声に戻って確認します。

08まとめ

What is your name? は /wɒtʃə neɪm/ に近い音で届きますが、意味を取り違えることはありません。文字どおりに聞こえているからではなく、その音のまま処理できるところまで結びついているからです。リスニングの練習で増やしたいのは、この状態にある表現です。

スクリプトなら分かるのに音声では分からないという箇所は、知らない語ではなく、まだ結びついていない語です。取り違えた箇所を見つけ、その一文を音声と同じ速さで言えるようにして、同じ表現をいろいろな発音で聞く。この3つを回していけば、結びつく表現は増えていきます。

  • 解いたあと、正解を見る前に同じ音声をもう一度聞き、2回目でも取れない設問を絞り込む
  • スクリプトを見て、ストラクチャーが取れていないのか、音と文字がずれているのかを分ける
  • 音と文字のずれは、その一文を音声と同じ速さで音読できるところまで進める
  • 速度を落とすのは確認のときだけにして、通常速度に戻して聞き直す
  • 同じ表現を、話者やアクセントを変えて何度も聞く。最後は元の音声に戻る

今日解いた音声のうち、スクリプトなら分かるのに音声では分からなかった文はいくつあったでしょうか。そこから1文ずつ、ワッチャネームと同じ状態に変えていきましょう。

自分の音読が音声と同じ速さになっているかどうかは、読みながらでは判断しにくいところです。録音して聞き比べる方法もありますが、どの部分がずれているのかまでは分かりにくいことがあります。プライベート講座では、実際に読んでいただいた音を担当講師が聞いて、元の音声との違いをその場でお伝えしています。

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Hibiki Takahashi

この記事を書いた人

Hibiki Takahashi

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