IELTSリーディングのバンド5.0は、アカデミックで40問中16〜17問の正解で届くスコアです。数字だけ見れば、決して高いハードルではありません。それでも本文を開くと知らない単語や複雑な構文が並び、読む気力そのものが失われていく人は少なくありません。そうした場面で「自分には語彙が足りない」という結論に飛びつき、遠回りな対策に時間を使ってしまうことがあります。正答数という客観的な数字に立ち返ることが、このメンタルの壁を乗り越える手がかりになります。
01なぜIELTSリーディングは実際の難易度以上に難しく感じるのか
日本の英語試験の多くは、受験者のレベルに合わせて試験そのものが分かれています。英検であれば、3級の受験者は3級の問題だけを解き、準1級の受験者は準1級の問題だけを解きます。自分のレベルに近い問題ばかりが並ぶため、難易度の見通しが立てやすい仕組みです。
IELTSはこの前提が異なります。バンド3を目指す受験者もバンド9を目指す受験者も、同じ3つのパッセージを読み、同じ40問を解きます。正答数に応じてスコアが決まる仕組みのため、比較的答えやすい設問も一定数含まれるのが特徴です。それでもバンド8を狙う受験者でも悩むような設問が同じ試験内に混在するため、全体として「難しい試験」という印象がついて回ります。
この構造を知らないまま問題に向き合うと、難解な設問に当たった瞬間に「この試験は自分には難しすぎる」と受け取ってしまいます。実際には、その設問がバンド5.0を目指す受験者にとって解ける設計になっているとは限りません。同じ試験の中に難易度の異なる設問が混ざっているというだけのことです。
Note
バンド5.0はアカデミックで40問中16〜17問の正解で届きます。半分に届かない4割強の正答数で、目標のスコアに届く仕組みです。正答数とスコアの対応の全体は、こちらの記事にまとめています。
リーディング
【リーディング】正答数とスコア:バンドスコアの目安がわかる対応表
02読めないと感じたときになぜ語彙不足を疑ってしまうのか
本文を読み進めていて、知らない単語や見慣れない構文が2つ3つと連続する場面を考えてみましょう。そこで頭に浮かびやすいのは「やっぱり自分は語彙が足りない」という考えです。実際には知らない単語があっても設問には正解できることが多いのですが、読めなかった感覚だけが強く残り、原因を語彙不足に求めてしまいます。
この考えが厄介なのは、次に何をすればよいかまで決めてしまう点です。「語彙が足りないなら単語を増やそう」という発想に流れ、単語帳を1冊増やす、難しい語のリストを作る、といった対策に向かいます。単語を知っていること自体は役立ちますが、これだけでは目の前の1問を落としている本当の原因には届いていないことがあります。
実際に起きているのは、語彙の不足というより、わからない部分にとどまり続けてしまうことです。1つの単語や1つの文にこだわり、そこで立ち止まっている間に、すでに読み終えた部分から得られる情報や、後ろに続く文で補える情報を見落としてしまいます。読めない部分があること自体は前提であって、そこにどう向き合うかが結果を左右します。
ポイント
知らない単語があること自体は失点に直結しません。その単語にとどまり続けることが、次の設問に使える時間と集中力を奪います。
もちろん、必要な語彙をある程度身につけておく価値はあります。ただし目指したいのは全文の完全な読破ではなく、設問を解くのに必要な箇所を効率よく拾い上げることです。目的をどこに置くかで、語彙学習にかける時間の使い方も変わってきます。
03満点の理解を目指さなくてもスコアが取れるのはなぜか
バンド5.0を目指す段階では、本文の内容を5割程度理解できていれば十分なことが多くあります。40問中16〜17問の正解で届くスコアなので、本文の細部まですべて理解し切る必要はありません。設問に関わる箇所を拾い、そこだけを正確に読めれば、残りの部分がぼんやりとしたままでも得点にはつながります。
この割り切りが難しいのは、日本の学校教育で「文章は最初から最後まで理解するもの」という読み方に慣れているためです。全訳しながら読む練習を積んできた人ほど、わからない部分を残したまま先に進むことに抵抗を感じます。しかしIELTSリーディングは、限られた60分の中で40問を処理する試験です。全文を均等に理解しようとする読み方は、この試験の設計とかみ合いません。
| 読み方 | 目的 | 向いている場面 |
| 全文を訳しながら読む | 本文全体を正確に理解する | 時間制限のない精読の練習 |
| 設問に関わる箇所だけ精読する | その設問に正解する | 本番の解答時、時間を計った練習 |
設問に直接関係しない箇所が理解できていなくても、そこで失点するとは限りません。むしろ、そこに時間を使いすぎることで、正解できるはずの設問にかける時間が減るほうが、スコアへの影響は大きくなります。
意外と理解できなかったパッセージでも、いくつかの設問には正解できていた、という経験を積み重ねることが、この割り切りを自分のものにする一番の近道です。1回の模擬試験で全体の理解度が低くても、正答数がある程度取れていれば、その読み方を本番でも試してみる価値があります。
04必要正答数とのギャップをどう追えばメンタルを保てるか
読めない箇所があってもスコアが取れると頭でわかっていても、本文を目の前にすると同じように焦ってしまう、ということはよくあります。この焦りを抑えるために有効なのが、理解度ではなく正答数そのものを記録し、目標とのギャップを追い続けることです。
「今回は何問取れたか」だけを記録する
模擬試験や過去問を解いた段階では、理解できた割合は気にせず、純粋に40問中何問正解したかだけを書き留めます。バンド5.0を目指しているなら、目標は16〜17問です。今回の正答数が14問であれば、目標まであと2〜3問という具体的な差になります。
「全然読めなかった」という感覚的な評価と、「あと2問」という数字による評価では、次にやるべきことの見え方が変わります。感覚的な評価は際限なく悪化していきますが、数字による差はいずれ0に近づいていく、終わりのある指標です。
近い目標を1つずつ超えていく
目標を「バンド5.0を取る」という遠い1点だけに置くと、今回の結果が目標から離れているほど無力感が強くなります。そこで、今の正答数から2〜3問先を次の目標に設定します。14問取れたなら、次は16問。16問取れたら、次は18問というように、近い目標を1つずつ超えていく形です。
- 今回の正答数を記録する(40問中◯問)
- 目標の正答数との差を数字で確認する(あと◯問)
- 次回の目標を、今回の正答数から2〜3問先に置く
- 間違えた設問のうち、時間さえかければ正解できたものを分けておく
最後の項目は、次に伸びしろのある部分がどこかを知るために重要です。時間さえあれば正解できていた設問が多いなら、時間配分を見直す余地があります。逆に、時間をかけても答えが見つからなかった設問が多いなら、その設問タイプの解き方を見直す必要があります。
正答数の記録を続けるためのツール
正答数の推移を手元のノートで管理してもかまいませんが、毎回の記録が面倒になると続きにくくなります。解いた結果を残しておくだけで、正答数の推移や目標との差を自動的に確認できるツールも用意しています。
IELTS学習アプリ
LR学習記録ツール
リスニング・リーディングの正答数を記録し、推移を確認できます
記録を続けていくと、理解度という曖昧な感覚に振り回されにくくなります。読めなかったという印象が残る回でも、正答数を確認すれば目標に近づいていることが分かる場合があります。記録がたまるほど、感触の悪さと実際の正答数が一致しないことを数字として確認できるようになります。
05よくある質問
バンド5.0を取るには何問正解する必要がありますか。
アカデミックのリーディングでは40問中16〜17問の正解で届きます。4割強の正答数です。
IELTSリーディングが難しく感じるのはなぜですか。
英検のようにレベル別の試験ではなく、全レベルの受験者が同じ3つのパッセージと同じ40問を解く仕組みだからです。比較的答えやすい設問も含まれていますが、上位バンドを狙う受験者でも悩む設問が同じ試験内に混在しているため、全体として難しい試験という印象がついて回ります。
知らない単語が多いと感じたら、単語学習を増やすべきですか。
語彙を身につけておく価値はありますが、知らない単語があること自体は失点に直結しません。多くの場合、原因はその単語にとどまり続けてしまうことにあるため、単語学習だけでなく、わからない部分を残したまま先に進む練習も必要です。
本文を全部理解できなくてもスコアは取れますか。
取れます。バンド5.0の段階では、本文の内容を5割程度理解できていれば十分なことが多く、設問に関わる箇所を正確に読めれば、残りの部分がぼんやりとしたままでも得点にはつながります。
読めなかったという感覚と、実際のスコアが一致しないことはありますか。
あります。意外と理解できなかったパッセージでも、いくつかの設問には正解できていた、というケースは珍しくありません。理解度の感覚ではなく、正答数そのものを確認することが実態をつかむ手がかりになります。
メンタルを保つために、どのような記録を取ればよいですか。
40問中何問正解したかという数字を記録し、目標の正答数との差を確認します。目標をいきなり遠くに置かず、今回の正答数から2〜3問先を次の目標にすると、差を1つずつ縮めていけます。
正答数を記録するのに便利なツールはありますか。
LR学習記録ツールを使うと、解いた結果を残すだけでリスニング・リーディングの正答数の推移や目標との差を確認できます。
間違えた設問は、どのように振り返ればよいですか。
時間さえかければ正解できていた設問と、時間をかけても答えが見つからなかった設問を分けて振り返るとよいでしょう。前者が多ければ時間配分に、後者が多ければ設問タイプの解き方に、それぞれ改善の余地があります。
06まとめ
IELTSリーディングでバンド5.0を目指す段階でつまずきやすいのは、読解力そのものよりも、全部読めなければ正解できないという思い込みです。40問中16〜17問という必要な正答数を意識せず、難解な単語や構文に出会うたびに「自分には無理だ」と感じてしまうと、本来届くはずのスコアからも遠ざかってしまいます。
- IELTSは全レベルが同じ試験を受けるため、難しい設問も同じ試験内に混在する
- 知らない単語があること自体より、そこにとどまり続けることのほうが失点につながる
- バンド5.0の段階では、本文の5割程度の理解で十分な場合が多い
- 理解度の感覚ではなく、40問中の正答数と目標との差を記録する
- 目標は遠くに置かず、今回の正答数から2〜3問先に設定する
読めなかったという感覚を一度脇に置き、正答数という数字だけを確認してみましょう。感覚と結果がずれるのは、部分的な理解でも正解できる設問が含まれているからです。
リーディング
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