リーディングで時間が足りなかったという振り返りは非常によく出てきます。ただ、その原因が「読む速度が遅いこと」であるケースはそれほど多くありません。多くの場合、本文のどこを速く読み、どこで速度を落とすかという切り替えが起きていないことのほうが原因になっています。
この記事では、60分をどう配分するか、3種類の読み方をどう使い分けるか、そして詰まったときにどこで撤退するかを整理します。
目次
60分の中身を把握する
「1パッセージ20分」の落とし穴
読み方は3種類ある
設問タイプで時間の使い方が変わる
詰まったときの撤退ライン
最後の5分に何をするか
時間感覚を作る練習のしかた
よくある質問
まとめ
01 60分の中身を把握する
リーディングは60分で40問です。アカデミックは長文が3つ、ジェネラル・トレーニングは短い文書が集まったセクションから始まり、最後に長文が1つという構成になります。
時間の進行を管理してくれるものがない
リスニングでは音声が勝手に進んでいくため、1つの設問に使える時間は音声が決めてくれます。リーディングにはその強制力がありません。60分をどう割り振るかは完全に自分に委ねられており、その気になれば1つの設問に5分でも10分でも使えてしまいます。時間が足りなくなる最大の原因はここにあります。
解答をまとめるための追加時間もありません。60分がそのまま、読んで答えを確定するまでの全時間です。
コンピューターで受験する場合、画面の左側に本文、右側に設問が並び、残り時間は画面上部に表示されます。設問には後で戻るための印を付けられるので、「飛ばす」という判断が取りやすい環境になっています。
1問あたりの持ち時間は約1分30秒
60分を40問で割ると1問あたり1分30秒です。ただし、この中には本文を読む時間も含まれています。実際には本文全体の把握に使う時間を各パッセージで数分確保する必要があるので、1問にかけられるのは1分前後だと考えておくほうが実態に近くなります。
この数字を頭に入れておくと、1つの設問で3分も4分も粘っている状態が、どれだけ他の問題を圧迫しているかが分かります。
02 「1パッセージ20分」の落とし穴
60分を3で割って20分ずつ、という配分が広く言われています。出発点としては悪くありませんが、これを固定した目標にすると、かえって崩れやすくなります。
難しいパッセージがどこに来るかは分からない
かつては「パッセージ3がもっとも難しい」とよく言われましたが、近年はそうとも限りません。パッセージ1から語彙の難しい文章が来ることもあります。つまり「3つとも同じ20分で読める」という前提も、「後半に多めに残しておけば安心」という前提も、当日の問題次第で崩れます。
目安としては、次のように前半をやや短めに設定して数分の貯金を作っておき、想定より重いパッセージが来たところにその貯金を回します。パッセージ1が難しいと感じたら、無理に17分で切ろうとせず、均等配分に戻してかまいません。
アカデミック ジェネラル・トレーニング
パッセージ1 17分 18分
パッセージ2 20分 20分
パッセージ3 20分 20分
見直し 3分 2分
ジェネラルはセクション1・2の英文自体は読みやすいものの、短い文書が複数並び、設問数も多いため、処理量はむしろ多くなりがちです。同じスコアに必要な正答数もアカデミックより多いので、「前半は簡単だから貯金できる」という見込みは持たないほうが安全です。前半で確実に正解を積み上げつつ、最後の長文に時間を残す配分にします。
目標時間ではなく「上限」として使う
配分表を目標にすると、早く終わったときに残り時間を使い切ろうとして無駄が出ます。そうではなく「パッセージ1に20分以上かかっていたら赤信号」という上限として使うほうが実用的です。上限を超えたら、その時点で残りの設問に印を付けて次のパッセージへ移ります。
時計を見るタイミングも決めておくとよいでしょう。パッセージを1つ終えたときだけ確認する、という運用なら、時間を気にして集中が切れることもありません。
03 読み方は3種類ある
時間が足りなくなる人に共通しているのは、本文を最初から最後まで同じ速度で読んでいることです。IELTSのリーディングは、速度を3段階に切り替えることを前提に作られています。
読み方 目的 やること 目安時間
スキミング 全体の構造をつかむ タイトルと各段落の最初の1〜2文だけを読む 2分前後
スキャニング 該当箇所を見つける 固有名詞・数字・大文字で始まる語を目で探す 1問あたり10〜20秒
精読 答えを確定する 見つけた箇所の前後2〜3文を丁寧に読む 1問あたり30〜40秒
スキミングで作るのは「地図」
スキミングの目的は内容を理解することではなく、どの話題がどの段落にあるかという地図を作ることです。各段落の最初の1〜2文を読み、「実験の紹介」「反対意見」のように、段落ごとに頭の中で一言のラベルを貼っていきます。
この地図があると、後の設問でスキャニングする範囲を段落単位まで絞れます。地図なしで探すと、毎回本文全体を見渡すことになり、ここで時間が消えていきます。
スキャニングでは「読まない」
スキャニングは読む作業ではなく、探す作業です。数字、年号、大文字で始まる固有名詞、記号は視覚的に目立つので、文を読まずに見つけられます。設問にこうした手がかりが含まれていたら、まずそれを探すのが最短です。
手がかりが一般的な語しかない場合は、その語がそのまま本文に出てくることは期待できません。言い換えられているのが普通なので、意味の近い表現を探す視点に切り替えます。
精読に入るのは、場所を特定してから
速度を落としてよいのは、答えがありそうな箇所を特定したあとだけです。ここで初めて文構造を追い、否定語や限定表現に注意を払います。範囲を絞らずに精読を始めてしまうと、1つのパッセージで20分を使い切ります。
リーディング
リーディングのパラフレーズ(言い換え)を見抜く読み方トレーニング
04 設問タイプで時間の使い方が変わる
設問タイプによって、かかる時間には大きな差があります。何が重いタイプなのかを知っておくと、順番を組み替える判断ができます。
本文の順番と設問の順番が一致するタイプ
True/False/Not Given、Sentence Completion、Summary Completion、Note Completion などは、答えが本文の流れに沿って順に出てきます。1問解いたら、次の答えはその続きから探せばよいので、探す範囲が自然に狭まります。処理効率が高いタイプです。
順番が一致しないタイプ
Matching Information(「この情報はどの段落にあるか」)は、設問の順番と本文の順番が対応しません。1問ごとに本文全体が探索範囲になるため、40問の中でもっとも時間を消費しやすいタイプです。
Matching Headings も段落全体の趣旨をつかむ必要があるので、1問あたりの負荷は高めです。ただしこちらはスキミングの段階で地図を作っておけば、かなり短縮できます。
解く順番を組み替える
設問は画面に並んだ順に解かなければならないわけではありません。順番が一致するタイプを先に片付けると、その過程で本文の内容が頭に入るので、あとから Matching Information に取りかかったときに探す速度が上がります。
スキミングで段落の地図を作る(2分)
順番が一致するタイプを順に処理する (本文を前から追う形になる)
Matching Headings を処理する (地図がある状態なので速い)
Matching Information を最後に回す (本文の記憶が最も豊富な状態で解く)
ただし、この組み替えは練習で慣れておかないと本番で混乱します。模擬試験の段階から同じ手順で解いておくことが前提です。
リーディング
IELTSリーディング設問タイプ完全攻略【全種類の解き方を解説】
05 詰まったときの撤退ライン
時間配分が崩れるきっかけは、たいてい1問です。分からない問題に粘っているうちに5分が過ぎ、その遅れが最後まで尾を引きます。
2分で切り上げる
1問に2分かけて答えが決まらないなら、そこから先も決まらないことがほとんどです。設問に印を付けて次に進みます。コンピューター受験なら見直し用のフラグ機能があるので、迷わず使ってください。
先に進んだあとで本文の他の部分を読むと、飛ばした問題の答えが分かることがあります。粘って解くよりも、いったん離れて戻るほうが結果的に速いという場面は珍しくありません。
空欄のまま提出しない
IELTSのリーディングに誤答による不利益はありません。空欄は確実に0点ですが、埋めておけば当たる可能性が残ります。飛ばした問題にも、その時点で最も可能性が高いと思うものを入れておきます。
True/False/Not Given で完全に分からない場合、Not Given は判断が難しいぶん選ばれにくく、受験者が避けがちな選択肢でもあります。どうしても決められないときの選択肢として頭に置いておくとよいでしょう。
最後のパッセージで時間が足りなくなったとき
残り5分で最後のパッセージの設問が10問残っている、という状況では、全部を丁寧に解くことはできません。この場合は設問タイプを見て、短時間で処理できるものから拾います。空欄補充など本文の1箇所を見つければ答えが決まるタイプは、残り時間が少なくても得点につながりやすいところです。
06 最後の5分に何をするか
見直しの時間は、内容をもう一度考え直すために使うものではありません。形式面の確認に絞ります。
空欄がないか: 飛ばしたまま戻っていない設問が残っていないかを確認します。
語数制限: NO MORE THAN TWO WORDS などの指示を超えていないかを見ます。内容が合っていても、超えていれば不正解になります。
スペル: 本文からそのまま書き写す形式の設問で、綴りが本文と一致しているかを確認します。
写し間違い: 単数・複数の取り違えなど、本文と違う形で書いていないかを見ます。リーディングは答えがそのまま本文に書いてある唯一の科目です。本文の形をそのまま写せば失点しません。
一度決めた答えを迷いだけで書き換えるのは、この段階ではおすすめしません。書き換えるのは、本文の該当箇所をもう一度読んで明確な根拠が見つかったときだけにします。
07 時間感覚を作る練習のしかた
まず時間無制限で解いて、上限を知る
時間を計らずに、納得できるまで考えて1セット解いてみます。ここで出た正答数が、今の読解力と語彙で取れる上限です。
次に別のセットを60分で解きます。この2つの差が、時間の使い方によって失っている得点になります。差が大きければ配分と読み方の切り替えの問題、差が小さければ語彙と読解そのものの問題です。取り組むべき課題がどちらなのかが、この比較ではっきりします。
パッセージ単位で時間を測る
60分通しで解くだけでは、どのパッセージで時間を失ったのかが分かりません。パッセージごとに終わった時刻を記録し、後から配分を確認します。記録が溜まってくると、自分がどのタイプの設問で時間を使いすぎているかが見えてきます。
段落を一言で要約する練習
スキミングの精度を上げるには、本文を1段落読むごとに、その段落が何の話だったかを日本語で一言だけ書く練習が有効です。10文字程度で言い切る、という制限を付けると、細部ではなく趣旨をつかむ意識が働きます。
この練習は Matching Headings と Matching Information の両方に直接効きます。時間を計らず、精度だけを見る練習として取り組んでみてください。
08 よくある質問
IELTSリーディングに解答を書き写すための追加時間はありますか。
ありません。60分がそのまま、読んで解答を確定するまでの全時間です。さらにリーディングには、リスニングの音声のように進行を決めてくれるものがなく、1つの設問に時間をいくらでも使えてしまいます。配分を自分で管理することが前提の科目です。
1パッセージ20分ずつという配分でよいですか。
出発点としては使えますが、固定する配分としてはおすすめしません。難しいパッセージがどこに来るかは当日まで分からないためです。17分・20分・20分に見直し3分のように前半で少し貯金を作る形を目安にしつつ、目標時間ではなく「これを超えたら次へ移る」という上限として使ってください。
本文を先に全部読むべきですか、設問を先に読むべきですか。
本文を全部読む必要はありません。まず2分ほどのスキミングで、どの話題がどの段落にあるかという地図を作り、そのあと設問に移ります。全文を精読すると、それだけで1パッセージの持ち時間を使い切ります。
1問にどれくらい時間をかけてよいですか。
目安は1分前後で、2分かけて答えが決まらないなら印を付けて次に進んでください。そこから粘っても決まらないことがほとんどで、その遅れが後半のパッセージまで尾を引きます。本文の他の部分を読んでから戻ると答えが分かる場合もあります。
分からない問題は空欄のままにすべきですか。
必ず何かを入れてください。IELTSのリーディングでは誤答による不利益はないため、空欄は確実に0点ですが、埋めておけば当たる可能性が残ります。
設問は並んでいる順番に解かなければいけませんか。
その必要はありません。True/False/Not Given や Sentence Completion のように本文と順番が対応するタイプを先に処理し、本文全体を探す必要がある Matching Information を最後に回すと、内容が頭に入った状態で解けるので効率が上がります。ただし本番で初めて試すと混乱するので、練習の段階から同じ手順にしておいてください。
読む速度そのものを上げるにはどうすればよいですか。
速度を上げる前に、時間無制限で解いた場合の正答数と、60分で解いた場合の正答数を比べてみてください。差が小さければ問題は速度ではなく語彙と読解力にあります。その場合は速読の練習より、知らない語に出会う頻度を下げる取り組みのほうが効果があります。
09 まとめ
リーディングの時間配分は、速く読むための工夫ではなく、どこに時間を使うかを決める作業です。
60分がそのまま全時間。進行は誰も管理してくれないので、配分は自分で決める
難しいパッセージがどこに来るかは分からない。前半で貯金を作り、重いパッセージに回す
配分表は目標ではなく「超えたら次へ移る」上限として使う
スキミングで地図を作り、スキャニングで場所を絞り、精読はそこだけに使う
順番が一致する設問タイプを先に、Matching Information を最後に回す
1問2分で撤退。印を付けて先へ進み、空欄は残さない
最後の数分は内容ではなく、空欄・語数制限・写し間違いの確認に使う
次に模擬試験を解くときは、パッセージごとの終了時刻だけ記録してみてください。どこで時間を失っているかが分かれば、対策する場所が1つに絞れます。