リーディングはタイムマネジメントがすべてと言っても過言ではありません。リーディングは唯一そこに答えが書いてある技能です。ある程度のレベルに達した方であれば、120分かければほぼ全問正解できるかもしれません。これを60分で解くからこそスコアの差が生まれるわけです。
しかし、初級者の多くは、Passage 1とPassage 2に20分以上使ってしまい、Passage 3に入った時点で残り10分、ということも珍しくないでしょう。リーディングで時間が足りなくなるときによくある流れです。
一方で、タイムマネジメントを厳しくしようと、時計を気にしすぎることにも実は落とし穴があります。時計を見る回数が増えるほど、集中力が削がれ、目で文を追っているだけで内容がまったく頭に入ってこない、という現象が起こります。
目次
リーディングでは、なぜパッセージごとに時間を均等に使うのか
時計を何度も見ると、読解にどんな影響が出るのか
カウントダウンからカウントアップに変えると、何が変わるのか
練習では、パッセージの途中で時計を何回見ればよいのか
時計を見て遅れや余裕に気づいたら、どう判断すればよいのか
時計を見ずに18〜21分で解き終えられるようになるには
よくある質問
まとめ
01 リーディングでは、なぜパッセージごとに時間を均等に使うのか
最後のパッセージに十分な時間を残すためです。アカデミックのリーディングは60分で3つのパッセージを読み、合わせて40問に答えます。均等に分ければ1パッセージあたり20分で、設問は1つのパッセージに13問前後です。
時間が足りなくなる人の配分を振り返ると、最初の2つに時間を使いすぎていることがよくあります。パッセージ1で「あと1問で全部埋まる」と粘り、パッセージ2でも同じように粘ると、それぞれ25分ずつかかって、パッセージ3に残るのは10分です。
パッセージ1 パッセージ2 パッセージ3
均等に使った場合 20分 20分 20分
前半で粘った場合 25分 25分 10分
10分で13問前後に答えるとなると、本文を読む時間まで含めて1問あたり1分を切ります。パッセージ1と2で粘って取れたのが1〜2問なら、パッセージ3で落とす問題のほうが多くなります。
リーディングには、リスニングの音声のように進行を決めてくれるものがありません。1つの設問にいくらでも時間を使えてしまうので、配分は自分で管理する必要があります。そこで、こまめに時計を見て遅れないようにしようと考えがちですが、この「こまめに見る」ことにも別の問題があります。
リーディング
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02 時計を何度も見ると、読解にどんな影響が出るのか
時計を見るたびに読解が途切れ、急ごうとする気持ちから読み方が浅くなります。遅れないように何度も時計を見た結果、かえって読み直しが増えて時間を失う、という逆転が起きます。
2-1 時計を見るたびに、読んでいた文から注意が離れる
本文を読んでいる途中で時計に目をやると、そこで読解はいったん止まります。本文に戻ったとき、直前の文が何を言っていたのかを拾い直すところから始めることになります。1回なら数秒のことでも、1つのパッセージで5回、6回と繰り返すと、そのたびに集中が途切れます。
コンピューター受験では画面上部に残り時間が表示されているので、視線を少し上げるだけで確認できます。確認が簡単なぶん、気づかないうちに見る回数が増えやすくなります。
2-2 早く解こうとして、理解が浅くなる
時計を見て「もう12分たっている」と気づくと、次の設問からは急いで解こうとします。設問の語と同じ語を本文で見つけた時点で答えを決め、その前後の文を読まずに次へ進むようになります。
たとえば次の問題で、急いで答えるとどうなるでしょうか。
本文
Early studies suggested that the new material could replace steel in most bridges. Later tests, however, showed that it performed well only in dry climates. As a result, engineers now recommend it mainly for small pedestrian bridges in desert regions.
設問文
Engineers currently recommend the new material for most bridges.
✗
TRUE1文目の most bridges を見つけた時点で答えを決めている。これは初期の研究が示したことで、現在の推奨ではない
○
FALSE3文目で、現在の推奨は砂漠地帯の小さな歩道橋が中心だと書かれている。設問文の most bridges と矛盾する
however と now を読んでいれば迷わない問題です。時間に追われていると、こうした流れを変える語を読み飛ばします。急いで答えた1問が誤答になるだけでなく、あとで見直して読み直すことになれば、急いだ意味もなくなります。
2-3 目では文を追っているのに、頭に入ってこない
時間のことが頭にあるまま読み進めると、目は英文の上を動いているのに、段落を読み終えても何が書いてあったのか説明できない状態になります。本文を読みながら「このペースで間に合うか」を並行して考えているためです。
この状態に気づくと、同じ段落をもう一度最初から読むことになります。遅れを取り戻そうとして急いだ結果、同じ段落を2回読むことになるので、時間の面でも損をします。
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03 カウントダウンからカウントアップに変えると、何が変わるのか
時計を見たときに頭に浮かぶのが「あと何分しかない」から「いま何分たった」に変わります。練習で20分のタイマーをセットしてカウントダウンで解いている人は、ストップウォッチを0から動かすカウントアップに切り替えてみるといいでしょう。
カウントダウン カウントアップ
表示されるもの 残り時間 経過時間
見たときに浮かびやすいこと あと6分しかない いま14分
20分を過ぎたとき タイマーが鳴って途中で終わる そのまま最後まで解き、かかった時間が残る
練習のあとに分かること 20分で何問解けたか そのパッセージに実際に何分かかったか
カウントアップで練習するときは、時間を過ぎてもいいという気持ちで解きます。パッセージ1に24分かかったなら、24分かかったという記録が残れば十分です。20分で打ち切ってしまうと、自分がそのパッセージを解き終えるのに本当は何分必要だったのかが分からないまま終わります。
時間を過ぎてもよいことにしておくと、時計を見たときに焦る理由が1つ減ります。焦りが減れば、設問の語を見つけた時点で答えを決めるような浅い読み方もしにくくなります。制限時間を守る練習は、自分の所要時間がつかめてからでも遅くありません。
パッセージごとにストップウォッチを0に戻して測ると、3つのパッセージのうちどこで時間を使っているのかも見えてきます。本番のコンピューター受験で表示されるのは残り時間ですが、1パッセージにかかる時間の感覚が身についていれば、残り時間を見ても「いまどのあたりにいるか」をすぐに判断できます。
04 練習では、パッセージの途中で時計を何回見ればよいのか
1つのパッセージを解いている途中で時計を見るのは、1回までにします。1回見れば、予定より遅れているのか余裕があるのかは分かります。それ以上回数を増やしても、そのたびに読解が途切れるわりに、判断できることはあまり増えません。
見るタイミングは、設問のまとまりを1つ解き終えたところのような、区切りのよいところがおすすめです。段落の途中や、1問の答えを探している最中に見ると、本文に戻ったときに読んでいた内容を拾い直すことになります。
練習は次の順で進めます。
ステップ すること 確かめること
解き始める前 ストップウォッチを0から動かし、表示が視界に入らない場所に置く 画面や手元で数字が目に入り続けていないか
パッセージの途中 区切りのよいところで1回だけ時計を見る 何分たっていて、設問をどこまで解いたか
解き終えたとき 時計を見る前に、何分かかったかを予想する 予想と実際の時間がどれくらい違ったか
3つ解き終えたあと パッセージごとの時間を記録する どのパッセージで時間がかかったか
解き終えたときに時間を予想するのは、自分の感覚を鍛えるためです。最初は「18分くらい」と思っていたのに実際は23分だった、というずれが出ます。記録を重ねるうちにこのずれは小さくなっていき、時計を見なくても経過時間の見当がつくようになります。
「1回まで」と決めていても、慣れないうちは2回、3回と見てしまうかもしれません。時計を見てしまった回数もメモしておくと、見た回数と所要時間の関係をあとから確かめられます。
05 時計を見て遅れや余裕に気づいたら、どう判断すればよいのか
時計を見たときに目指したいのは、「あ、ちょっとビハインドだな」「あ、少し余裕がありそうだな」くらいの受け止め方です。遅れに気づいても慌てず、次に何をするかを1つ決めて読解に戻れれば、時計を見た1回が判断の材料として役に立ちます。
時計を見たときの状況 慌てたときの反応 落ち着いて判断できたとき
12分たって、設問の半分に届いていない 「まずい」と急ぎ、設問の語と同じ語を見つけた時点で答えを決める 「ちょっとビハインドだな」と受け止め、迷っている問題に印を付けて次へ進む
8分で設問の半分を解き終えている 「今のうちに稼いでおこう」と速度を上げる 「少し余裕がありそうだな」と受け止め、同じペースで読み続ける
遅れの原因が1問で粘っていることなら、読む速度を上げるより、1問にかける時間の上限を下げます。答えが決まらない問題で粘るのをやめ、印を付けて先へ進めば、丁寧な読み方を保ったまま遅れを取り戻せます。本文を急いで読むと、however のような流れを変える語を読み飛ばして誤答が増えます。
余裕があるときも、ペースを上げる必要はありません。余裕は、判断に迷う設問で本文の該当箇所をもう一度確かめる時間に使えます。そのパッセージで数分短く済んだなら、その分は次のパッセージに回ります。
どちらの場合も、時計を見る前と後で読み方が大きく変わらないことが理想です。残り時間を「間に合うか、間に合わないか」の二択で受け取っていると、時計を見るたびに気持ちが揺れます。「少し遅れている」「少し余裕がある」という幅のある受け止め方ができると、時計を見ても読解のリズムが崩れにくくなります。
06 時計を見ずに18〜21分で解き終えられるようになるには
カウントアップで測り、途中で見るのは1回まで、という練習を続けていくと、1パッセージにかかる時間の感覚が少しずつ身についてきます。慣れてくれば、途中で1回も時計を見ずに、だいたい18〜21分の間で解き終えられるようになります。
18分で終わるパッセージもあれば、21分かかるパッセージもあります。この幅に収まっていれば、短く済んだパッセージの分を時間がかかったパッセージに回して、3つ合わせて60分に収まるよう調整できます。パッセージ1が18分で終われば、残った2分をパッセージ2や3に回せるからです。
段階としては、次のように進めるといいでしょう。
カウントアップで測る: 時間を過ぎてもよいことにして、パッセージごとに実際にかかった時間を記録する
途中で見るのは1回まで: 区切りのよいところで1回だけ見て、ビハインドか余裕があるかを判断する
解き終えたら予想してから見る: 予想と実際の時間がほぼ一致するようになるまで続ける
途中で1回も見ずに解く: 予想が当たるようになってきたら、途中の確認をやめて解き終えたときだけ時計を見る
時計を見る回数を減らしても、毎回25分以上かかっているなら、原因は時計の見方ではなく、読む力や語彙のほうにあるのかもしれません。時間を計らずに解いた正答数と、時間内に解いた正答数を比べると、どちらに取り組めばよいかが見えてきます。この比べ方は、時間配分の記事で詳しく紹介しています。
07 よくある質問
IELTSリーディングの途中で時計は何回見ればよいですか。
練習では、1つのパッセージの途中で見るのは1回までが目安です。1回見れば遅れているか余裕があるかは分かり、それ以上見ても得られる情報はほとんど増えません。見るたびに読解が途切れるので、回数が増えるほど内容が頭に入りにくくなります。
時計を気にすると英文の内容が頭に入らないのはなぜですか。
読みながら「このペースで間に合うか」を並行して考えているためです。目は英文を追っていても、段落を読み終えたときに内容を説明できない状態になります。その結果、同じ段落を読み直すことになり、かえって時間を失います。
リーディングの練習はカウントダウンとカウントアップのどちらで測るべきですか。
1パッセージにかかる時間の感覚をつかむ段階では、カウントアップがおすすめです。残り時間ではなく経過時間が表示されるので、見たときに焦りにくくなります。20分を過ぎても最後まで解けるため、そのパッセージに実際に何分かかったかが記録に残ります。
練習で1パッセージ20分を過ぎたら、途中でやめたほうがよいですか。
所要時間をつかむための練習なら、時間を過ぎてもそのまま最後まで解いてかまいません。20分で打ち切ると、自分が解き終えるのに本当は何分必要なのかが分からないままになります。実際にかかった時間を記録し、その差を少しずつ縮めていきます。
時計を見たら時間が足りなさそうなとき、どうすればよいですか。
1問にかける時間の上限を下げるのが現実的です。答えが決まらない問題に印を付けて先へ進めば、本文を丁寧に読んだまま遅れを取り戻せます。急いで読むと however のような流れを変える語を読み飛ばし、誤答が増えやすくなります。
コンピューター受験でもカウントアップの練習は役に立ちますか。
役に立ちます。コンピューター受験の画面には残り時間が表示されますが、1パッセージにかかる時間の感覚が身についていれば、残り時間を見てもいまどのあたりにいるかをすぐに判断できます。残り時間が画面上部に常に表示されていて見る回数が増えやすいので、途中で見るのを1回までにする練習もあわせてしておくとよいでしょう。
時計を見ずに解けるようになるまで、どのくらい練習すればよいですか。
決まった回数はありません。目安になるのは、解き終えたときに予想した時間と実際の時間の差です。予想がほぼ当たるようになってきたら、途中で時計を見ずに解く練習に移るタイミングです。慣れてくれば、1パッセージをだいたい18〜21分の間で解き終えられるようになります。
08 まとめ
パッセージごとに時間を均等に使うことと、時計を何度も見ないことは、どちらもリーディングの時間配分に欠かせません。時計を見る回数を減らしていくと、時間を気にして浅く読むことが減り、1パッセージにかかる時間の感覚も身についていきます。
前半の2つで25分ずつ使うと、最後のパッセージには10分しか残らない
時計を何度も見ると読解が途切れ、急いで浅く読んだ結果、読み直しが増える
練習はカウントアップで測り、時間を過ぎても最後まで解いて実際の所要時間を記録する
パッセージの途中で時計を見るのは1回までにし、区切りのよいところで見る
遅れに気づいたら、読む速度を上げるより、迷っている問題に印を付けて先へ進む
解き終えたら時間を予想してから見て、予想と実際の差を縮めていく
次にリーディングを1セット解くときは、ストップウォッチを0から動かして、パッセージごとにかかった時間と、途中で時計を見た回数を書き留めておきましょう。見た回数とかかった時間を並べてみるだけでも、自分の時計の見方の癖が分かります。