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先に身につけたいのは語彙力ではなく想像力かもしれない:知らない単語をイメージで言い換える方法

執筆:高橋 響 公開日:

エッセイのアイデアは浮かんでいるのに、「ピッキング」や「社会的制裁」の英訳が分からず、そこで数十秒を使ってしまう。タスク2に配分できるのは40分程度なので、この数十秒は小さくありません。

この記事では、訳語を探す代わりに、伝えたい場面を頭の中で絵にして、知っている英語で描き直す方法を、実際のタスクを使って解説します。語彙を増やすことより先に身につけておきたいのは、この想像力なのかもしれません。

01英語で何と言うか分からないとき、なぜ時間がなくなるのか

時間がなくなるのは、日本語で思いついた語を、そのまま1語の英語に置き換えようとするからです。プランニングのメモに「ピッキング」と書いた瞬間、頭の中の作業は「ピッキングの英訳を思い出す」に切り替わります。思い出せなければ、そこから先へ進めません。

この探し方には、日本語の1語に対応する英語の1語がどこかにある、という前提が入っています。ところが、ぴったり対応する1語が英語にない場合や、思い出した語が別の意味で読まれる場合があります。「ピッキング」はカタカナ語で、英語で picking とだけ書くと、果物を摘む、何かを選ぶといった意味に読まれます。鍵を道具で開ける行為を指すなら lock picking です。思い出せたつもりの1語が、読み手には別の場面として届いてしまいます。

Picking has become more common in cities.picking だけでは、鍵を開ける犯罪の話だと伝わらない

Burglars are finding new ways to open locks without a key.誰が何をしているのかを、知っている語で描いている

2つ目の文に難しい語は入っていません。burglar を知らなければ criminals でも意味は通ります。読み手が受け取る情報は「泥棒が、鍵を使わずに錠を開ける新しい方法を見つけている」で、エッセイの中で伝えたかったことはこれで十分に表せています。

採点者の手元にあるのは、回答に書かれた英文だけです。訳語が見つかるかどうかより、伝えたい場面が英語で読み手に見えるかどうかのほうが、回答にとっては大切です。

02「ピッキング」を知らなくても書けるのか:場面を絵にして言い換える

書けます。訳語の代わりに、その語が指している場面を思い浮かべ、そこに映っている人と動作を英語にすれば、1語を知らなくても内容は伝えられます。実際のタスクで試してみましょう。

In some countries, even though the rates of serious crimes are decreasing, people feel less safe than ever before. What do you think are the causes of this problem and what measures could be taken to solve it?

原因のアイデアとして、「ピッキングなどの手口がネットで広まり、自宅にいても安心できない」を思いついたとします。ここで「ピッキング」の英訳を探し始める前に、その場面を絵にしてみます。玄関の前に誰かがいて、鍵を持っていないのにドアを開けて入ってくる。その方法を、ネットの動画で誰でも見られる。絵にすると、必要な英語は次のような語に分かれます。

  • 誰が:criminals、burglars、people who want to steal
  • 何をする:break into homes、open locks without a key
  • どこで広まる:shared online、easy to find on the internet
  • その結果:people do not feel safe even in their own homes

これを1文にまとめると、次のようになります。

Ways to break into homes are now easy to find online, so many people no longer feel safe even inside their own houses.

メモの段階で「ピッキング」という語そのものにこだわる必要はありませんでした。このタスクで問われているのは、犯罪が減っているのに人々が不安を感じる原因です。その原因として伝えたいのは「自宅に侵入される手口が身近になった」という点で、鍵の開け方の名称ではありません。

侵入の手口を英語にしようとして、home invasion techniques という言い方が浮かんだ人もいるでしょう。これも、侵入の手口という大きな絵を英語にしようとした結果で、発想の方向は合っています。ただし、この語は住人がいる家に押し入る場面まで思わせるので、使う場面を選びます。

03「社会的制裁」は英語でどう書けばいいか:その後に起きることを描く

「社会的制裁」のように抽象度の高い語は、その語が指す出来事のあとで、当事者に何が起きるのかを書くと伝わります。名詞1語で表そうとせず、結果を並べる書き方です。

In many situations, people who break the law should be warned instead of punished. To what extent do you agree or disagree?

賛成側のアイデアとして、「軽い違反でも、名前が報道されると社会的制裁を受けるので、刑罰まで科さなくても十分に反省する」を考えたとします。英語には social sanctions という語もありますが、社会学などで使われる用語で、日本語の「社会的制裁」がネット上の批判や失職を思い浮かべさせるのと、同じ範囲を指すとは限りません。

そこで、制裁を受けた人に何が起きるのかを絵にします。周囲から悪く言われる。信用を失う。会社にいられなくなることもある。こうして場面に分けると、知っている語で書ける形が見えてきます。

They will receive social punishment.意味の見当はつくが、具体的に何が起きるのかが読み手に見えない

Once their names are made public, they may lose their reputation and even their jobs.名前が公になったあとに起きることを、順に描いている

lose their reputation も lose their jobs も、よく知っている動詞と名詞の組み合わせです。それでも、「刑罰を科さなくても、違反した人は十分に大きな代償を払う」という賛成側の論点を支えるには、この2つで十分です。

ボディの文にするなら、たとえば次のように続けられます。

For minor offences, a warning can be enough. Once their names are made public, offenders may lose their reputation and even their jobs, which is often a heavier cost than a small fine.

「制裁」という語は1回も出てきません。そのぶん、何が重い代償なのかが読み手にはっきり伝わります。

04イメージ化して伝えるには何を考えればよいか

訳語が出てこないときは、その語を場面に戻し、場面を知っている英語で描き、描いた英語が場面とずれていないかを確かめます。ピッキングの例も社会的制裁の例も、やっていることはこの順番です。

ステップすること確かめること
1. 場面に戻す日本語の語が指している状況を、映像として思い浮かべる誰がいて、何をしているか
2. 動作と結果で描く名詞1語を探さず、主語と動詞、その後に起きることを英語にする知っている語だけで文が組めているか
3. 絵と照らし合わせる書いた英文を読み、最初に思い浮かべた場面と同じものが見えるかを確かめる広すぎたり重すぎたりしていないか

1のステップで役に立つのは、「具体的に言うと?」と自分に聞くことです。「社会的制裁」なら周囲からの批判や失職、「ピッキング」なら鍵を使わずに錠を開けることが、その答えになります。抽象的な語ほど、この問いで場面に戻しやすくなります。

2のステップでは、名詞より動詞で考えます。日本語のメモは「〜の増加」「〜の悪化」のように名詞で終わりがちですが、英語では people lose、criminals open のように、誰が何をするかで書くと文が組めます。

この3つのステップは、試験の本番だけでなく、ふだんの練習でも繰り返せます。英文を別の語や構文で書き直す練習を重ねると、1つの内容に対して複数の書き方が浮かびやすくなります。

IELTS学習アプリ パラフレーズ練習 表示された英文を、別の語彙や文法で同じ意味に書き直すトレーニングです。

05言い換えた英語がずれるのはどんなときか

ずれが起きるのは、思い浮かべた絵と、書いた英語が表す絵が一致していないときです。知っている語で描くこの方法でも、確かめずに書くと、読み手には別の場面が伝わってしまいます。

5-1 絵が大きすぎる:home invasion techniques

02で触れた home invasion は、Cambridge Dictionary では、住人の許可なく家に入る行為や犯罪で、とくに住人がいるときのもの、盗みや襲撃を目的とすることが多いと説明されています(2026年9月13日時点)。

Home invasion techniques are shared online.住人がいる家に押し入る場面まで含んで読まれる可能性がある

Ways of breaking into homes are shared online.侵入の手口という、思い浮かべた絵の大きさに合っている

住人の留守中に鍵を開けられる不安を書きたいのであれば、break into homes のほうが絵に合います。反対に、在宅中に押し入られる恐怖を原因として書きたいなら、home invasion が合う場面もあります。どちらを選ぶかは、最初に思い浮かべた絵で決まります。

5-2 絵がぼやけている:bad things happen

もう1つは、場面に戻したつもりで、実際には何も描けていないケースです。「社会的制裁」を具体的にしようとして書いた、次のような文がその例です。

Bad things will happen to them in society.何が起きるのかが、日本語のメモより分からなくなっている

People around them may stop trusting them.誰が何をするのかが見える

bad things や problems で文を作ったときは、ステップ1に戻る合図です。「具体的に言うと?」をもう一度自分に聞くと、周囲が信用しなくなる、仕事を失う、といった場面が出てきます。

Lexical Resource では、語彙の幅だけでなく、語を正確に使えているかも見られます。知っている語で描く方法は、意味の分からない語を当てずっぽうで使うより安全ですが、描いた英語が場面に合っているかどうかは、書いた人が確かめる必要があります。

06語彙を覚えることは後回しにしてよいのか

語彙を覚える意味がなくなるわけではありません。順番として、場面を知っている英語で描けるようになっておくと、あとから覚えた語を使う場所がはっきりします。

たとえば、今回の練習で break into homes と書けるようになった人が、そのあと burglary という語を知ったとします。すでに頭の中に「家に侵入して盗む」という絵があるので、burglary はその絵の名前として入ってきます。単語帳で「burglary=住居侵入」と対訳だけを覚えるより、使う場面と結びついた形で残ります。

反対に、場面を描く力がないまま語だけを増やしても、試験中に思い出せなかった瞬間にまた止まってしまいます。覚えた語の数がどれだけ増えても、本番で思い出せない語はどうしても出てきます。

練習では、書き終えたあとに辞書を開くのがおすすめです。本番と同じように知っている語で描いて書き上げ、そのあとで「ピッキング」は lock picking、「ネット上で批判されること」は public shaming のように調べて、自分の描写と並べてみます。描写のほうが伝わりやすい場面もあれば、1語のほうが簡潔な場面もあるので、両方を持っておくと選べるようになります。

日本語の語を1語ずつ英語に置き換える書き方が、語彙・構文・論理展開のそれぞれでどのようなずれを生むのかは、次の記事で詳しく解説しています。

ライティング・タスク2 日本語で考えたまま書くと伸び悩む理由:語彙・構文・論理展開の3層で見る母語の影響

知っている語彙を回答で使える形にする練習については、こちらの記事が参考になります。

ライティング・タスク2 知っている語彙を得点に変える運用語彙トレーニングの使い方:前置詞とコロケーションをAIで直す

07よくある質問

IELTSライティングで英訳が分からない単語があったらどうすればいいですか

その語が指している場面を思い浮かべ、誰が何をしていて、その後に何が起きるのかを知っている英語で書きます。たとえば「ピッキング」なら、open locks without a key や break into homes のように動作で描くと、1語を知らなくても内容は伝わります。

「社会的制裁」は英語で何と言えばいいですか

social sanctions という語もありますが、社会学などで使われる用語で、日本語の「社会的制裁」と同じ範囲を指すとは限りません。エッセイでは、lose their reputation や lose their jobs のように、制裁を受けた人に起きることを書くほうが、読み手に具体的に伝わります。

picking と書いてもピッキングの意味で通じますか

picking だけでは、果物を摘む、何かを選ぶといった意味に読まれます。鍵を道具で開ける行為を指すなら lock picking です。語が思い出せない場合は、open locks without a key のように動作で書くと誤解されません。

簡単な単語で言い換えると、語彙のスコアで不利になりますか

Lexical Resource では、語彙の幅だけでなく、語を正確に使えているかも見られます。意味の分からない語を当てずっぽうで使うより、知っている語で場面を正確に描くほうが安全です。辞書で調べた語は、次に書くときに使える語として少しずつ増やしていけます。

home invasion は「空き巣」の意味で使えますか

Cambridge Dictionary では、home invasion は住人の許可なく家に入る行為や犯罪で、とくに住人がいるときのものと説明されています。留守中に侵入される話を書くなら、break into homes のほうが場面に合います。

言い換えた英語が正しく伝わっているか、どう確かめればいいですか

書いた英文を読み、最初に思い浮かべた場面と同じものが見えるかを確かめます。bad things や problems のような語で文を作っていたら、何が起きるのかがまだ描けていない合図なので、「具体的に言うと?」ともう一度考えてみましょう。

単語帳で語彙を覚えるのはやめたほうがいいですか

やめる必要はありません。場面を知っている英語で描けるようになっておくと、あとから覚えた語がその場面の名前として結びつき、使う場所がはっきりします。練習では、知っている語で書き上げたあとに辞書で調べ、自分の描写と並べてみるのがおすすめです。

08まとめ

「これを英語で何と言うのか」で止まったとき、探しているのは1語の訳語であることが多いはずです。けれども読み手に届けたいのは、その語が指している場面のほうです。知っている英語で動作と結果を書けば、ピッキングという語がなくても侵入の手口は伝わります。社会的制裁も、名前が公になったあとに信用や仕事を失う、と書けば読み手に届きます。

  • 訳語が出てこないときは、その語が指している場面を思い浮かべる
  • 名詞1語を探さず、誰が何をして、その後に何が起きるかを英語にする
  • 書いた英文を読み、思い浮かべた絵と大きさが合っているかを確かめる
  • bad things や problems で文を作ったら、「具体的に言うと?」に戻る
  • 練習では書き終えたあとに辞書を開き、自分の描写と1語の表現を並べて比べる

次にプランニングで手元の日本語メモを英語にするとき、辞書を思い浮かべる前に、その場面を一度頭の中で再生してみましょう。

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Hibiki Takahashi

この記事を書いた人

Hibiki Takahashi

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象にIELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住14年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

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