エッセイを書き終えたあと、綴りを見直す時間まで取れている受験者はあまり多くありません。語彙も構成も考えたうえで、最後に残るのが綴りだからです。ところが採点基準では、綴りの誤りはLexical Resourceの中で見られています。『スペリング強化』のWritingは、この部分だけを取り出して練習するためのアプリです。ユーザー登録をすれば無料で利用できます。
この記事では、Writingのスキルにどんな語が入っているのか、Listeningの語と何が違うのか、イギリス綴りとアメリカ綴りをどう扱えばよいのかを、採点基準の記述とあわせて解説します。
目次
『スペリング強化』のWritingはどんなアプリか
エッセイの綴りは採点基準のどこで見られているのか
Listeningの語と何が違うのか
イギリス綴りとアメリカ綴りはどちらで書けばよいか
綴れる語を、使える語に変えるには
よくある質問
まとめ
01 『スペリング強化』のWritingはどんなアプリか
『スペリング強化』は、英文を音声で聞き、空欄になっている語を綴って入力するアプリです。制限時間は60秒で、その中で何問正解できるかを数えます。スキルはListeningとWritingの2つがあり、形式は同じまま、出題される語彙だけが入れ替わります。この記事で扱うのはWritingのほうです。
2026年8月25日時点で、Writingには1,266問が収録されています。このうち266問は2語以上のフレーズで、Listeningの156問より多くなっています。エッセイで使う表現は marine pollution や universal basic income のように複数語のかたまりで機能することが多いため、フレーズの比率が高くなっています。
Writingでは3問連続で正解するとタイマーが延びます。Listeningの5問より少ない回数で延びるのは、1問あたりに入力する文字数が多いからです。延長は+10秒、+20秒、+30秒と大きくなり、最長で99秒まで伸びますが、1問でも間違えると連続のカウントもボーナスの段階も最初に戻ります。
Listening Writing
収録問題数 1,402問 1,266問
2語以上のフレーズ 156問 266問
ボーナスが出る連続正解数 5問 3問
出題される語の性格 解答欄にそのまま書く語 エッセイの中で使う語とフレーズ
このアプリはAIによる添削を使っていません。判定は正解の綴りとの照合だけで行われるため、トークンを消費せず、1日に何回でも回せます。
IELTS学習アプリ
スペリング強化
音声を聞いて空欄の語を綴る60秒の練習アプリです。ListeningとWritingでターゲットになる語彙が入れ替わります。ユーザー登録をすれば無料で利用できます。
02 エッセイの綴りは採点基準のどこで見られているのか
綴りはLexical Resourceの中で見られています。ライティング・タスク2の採点基準(Band Descriptors、2023年5月改訂の現行版)には、バンドごとに綴りへの言及があります。
Band 7
There are only a few errors in spelling and/or word formation and they do not detract from overall clarity.
Band 6
There are some errors in spelling and/or word formation, but these do not impede communication.
Band 5
Errors in spelling and/or word formation may be noticeable and may cause some difficulty for the reader.
この3つを並べると、判断の軸が見えてきます。誤りが何個あるかではなく、その誤りが読み手にどう影響するかで書き分けられています。Band 6では誤りがあっても伝達を妨げなければよく、Band 7では全体の明瞭さを損なわない程度に限られ、Band 5では読み手にとって負担になり始める、という順です。
ここから分かるのは、綴りを1つも間違えないことが目標ではないということです。目標になるのは、綴りの誤りがあっても全体の明瞭さを損なわない状態です。逆に言えば、読み手が意味を取りにくくなるような誤りは、数が少なくても影響する可能性があります。とくに、そのエッセイの主題になっている語を綴り間違えると、繰り返し出てくるぶん目に付きやすくなります。環境について書いているのに environment が毎回 enviroment になっていれば、誤りは1種類でも同じ箇所で繰り返されるため、文章全体の明瞭さに影響しやすくなります。
採点基準の記述をバンドごとに確認したい場合は、次の記事に現行版と旧版を並べています。
ライティング・タスク2
ライティング・タスク2 採点基準表(Band Descriptors):2023年5月改訂で何が変わったのか
03 Listeningの語と何が違うのか
Writingに入っているのは、エッセイの中で自分が選んで書く語です。Listeningでは音声から語を特定しますが、ここでは書こうと決めた語を正しく綴れるかが問われます。
種類 収録されている表現の例 どこで使うか
社会・環境のテーマ語
marine pollution、social cohesion、cultural heritage、multicultural society
タスク2の本論で、話題そのものを名指しするとき
因果・程度を述べる表現
lead to serious consequences、has a devastating impact、overexploitation of natural resources
タスク2で理由や影響を述べるとき
変化を表す表現
a gradual increase、a marginal increase、a dramatic surge、bottom out
タスク1でグラフの動きを描写するとき
抽象度の高い単語
empirical、equitable、discrepancy、phenomenon、subsidize
どちらのタスクでも、抽象的な議論を進めるとき
変化を表す表現がまとまって入っているので、タスク2だけでなくタスク1の準備にもなります。a marginal increase と a dramatic surge のように、程度の違いを語で書き分ける表現は、綴りを間違えると読み手が意味を取り違えます。
Listeningの語とWritingの語には97語の重なりがありますが、同じ語でも出題される英文が違います。accommodation はListeningでは We can arrange ____ near the campus. として、Writingでは Finding affordable ____ in the city is difficult. として出ます。エッセイで実際に書く形の文で出会えるので、綴りと一緒に使い方も入ります。
3-1 フレーズで出題される意味
266問がフレーズで出題されるのは、エッセイの誤りがかたまり単位で起きるからです。environmentally friendly は、環境という語も友好的という語も知っている受験者が、environmently friendly や environmental friendly と書いてしまうことがあります。1語ずつなら綴れても、つないだ形では崩れるということです。
it could be argued that のような定型表現も同じです。意味は完全に理解していても、argued の綴りや that の有無で止まると、書いている途中で流れが切れます。フレーズごと打ち込む練習をしておくと、本番では考えずに手が動きます。
04 イギリス綴りとアメリカ綴りはどちらで書けばよいか
イギリス式・アメリカ式のどちらで書いても問題ありません。IELTSではどちらのスペリングも使用できるので、organise と organize のどちらを書いても綴りの誤りにはなりません。アプリでも、綴りが割れる語には両方が正解として登録されています。
北米以外で多く見られる綴り 北米で多く見られる綴り
behaviour、labour、colour behavior、labor、color
organise、emphasise、analyse organize、emphasize、analyze
centre、litre、theatre center、liter、theater
catalogue、programme、fulfil catalog、program、fulfill
licence(名詞)、enrolment license、enrollment
この表は二択の暗記表として使うものではありません。同じ地域の中でも書き手によって選ぶ綴りは違いますし、-ize の綴りはイギリスでも使われています。自分が知らなかったほうを足す、という読み方をしておくと実際の役に立ちます。
気をつけたいのは、どちらを選ぶかより、自分がどちらで書いているかを把握しているかどうかです。analyse と organize が同じエッセイに混ざっていること自体が評価に影響するとは公開されていませんが、混ぜて書いていると、自分がどのルールで書いているのか分からなくなり、labour を labor と書いたつもりで labour と書くような取り違えが起きます。片方に決めておくほうが、書いている最中に迷いません。
もう一つ、綴りが割れる語には品詞で使い分けるものがあります。イギリス式では、名詞は licence、動詞は license と区別します。アメリカ式では、名詞と動詞のどちらも license と綴ります。practise と practice も同じで、イギリス式では動詞が practise、名詞が practice、アメリカ式ではどちらも practice です。イギリス式で書くと決めた場合は、綴りを選ぶ前にその語がどちらの品詞で使われているかを見ることになります。
05 綴れる語を、使える語に変えるには
綴れることは、その語を答案で使うための入口です。綴りに自信がない語は、書いている最中に無意識に避けてしまい、結局は知っている簡単な語に置き換わります。語彙の量は足りているのに Lexical Resource の評価が上がらない、という場合の原因がここにあることもあります。
ただし、綴れるようになっただけでは答案に出てきません。その語がどんな前置詞や名詞と組んで使われるのかまで分かって、はじめて自分の文の中で組み立てられます。ここから先は別のアプリの担当になります。
段階 できるようになること 使うアプリ
綴れる
書こうと決めた語を、迷わず正しく書ける
スペリング強化(Writing)
組み立てられる
指定された表現を使って、日本語の内容を1文の英語にできる
運用語彙強化
自分の答案で出てくる
誤って覚えていた形が直り、エッセイの中で正しく使える
表現マスターW
この順番で考えると、それぞれのアプリで何をしているのかがはっきりします。『スペリング強化』で綴りに引っかからなくなった語を『運用語彙強化』で文にしてみて、そこで繰り返し間違える表現を『表現マスターW』に登録する、という流れです。逆に、綴れない語をいきなり英作文で使おうとすると、綴りと語法の両方で崩れて、どちらが原因なのか分からなくなります。
IELTS学習アプリ
運用語彙強化
用意された出題セットから語彙・イディオムが提示され、それを使って日本語を英訳します。新しい表現のインプットに使います。
ライティング・タスク2
『表現マスターW』の使い方を徹底解説:登録する表現の選び方と運用方法
06 よくある質問
IELTSのライティングで綴りを間違えると評価が下がりますか
綴りはLexical Resourceの中で見られています。採点基準は誤りの数ではなく、その誤りが読み手にどう影響するかで書き分けられていて、Band 6では伝達を妨げない程度、Band 5では読み手にとって多少の負担になる程度とされています。1つも間違えないことより、綴りの誤りがあっても全体の明瞭さを損なわない状態を目標にするとよいでしょう。
イギリス綴りとアメリカ綴りのどちらで書けばよいですか
どちらでも構いません。IELTSではイギリス式・アメリカ式のどちらのスペリングも使用できるので、organise と organize のどちらを書いても綴りの誤りにはなりません。ただし自分がどちらで書いているかを把握しておくほうが、書いている最中に迷わずに済みます。
Writingには何問収録されていますか
2026年8月25日時点で1,266問が収録されています。このうち266問は2語以上のフレーズです。Listeningの156問より多く、エッセイで使う表現が複数語のかたまりで機能することが反映されています。
ListeningとWritingはどちらから始めればよいですか
直近で受けた模擬試験や本番で、綴りによって点を落とした技能のほうから始めるとよいでしょう。両方の心当たりがある場合は、97語が両方に入っているので、どちらから始めても重なる部分は練習できます。
Writingは3問連続でボーナスが出るのはなぜですか
1問あたりに入力する文字数が多いためです。Writingは266問がフレーズで、overexploitation of natural resources のように長い表現も出題されます。Listeningは5問連続、Writingは3問連続でタイマーが延びます。
タスク1の対策にも使えますか
使えます。a gradual increase、a marginal increase、a dramatic surge、bottom out のような変化を表す表現が収録されています。程度の違いを書き分ける表現なので、綴りを誤ると読み手が意味を取り違えます。
綴りを覚えれば、その語を答案で使えるようになりますか
綴れることは入口で、それだけでは答案に出てきません。どんな前置詞や名詞と組んで使われるかまで分かって、はじめて自分の文の中で組み立てられます。綴りに引っかからなくなった語は『運用語彙強化』で英作文にしてみて、繰り返し間違える表現は『表現マスターW』に登録するという流れになります。
練習にトークンを使いますか
使いません。このアプリはAIによる添削を行わず、正解の綴りとの照合だけで判定しています。ユーザー登録をすれば無料で、1日に何回でも練習できます。
07 まとめ
綴りに自信がない語は、答案を書いている最中に自分で避けています。書ける語を増やすことは、使える語を増やすことの前提になります。
綴りはLexical Resourceで見られている。誤りの数より、全体の明瞭さを損なっていないかが判断の軸になる
Writingは1,266問。266問がフレーズで、タスク1の変化を表す表現も入っている
3問連続でタイマーが延びる。間違えるとボーナスの段階も戻るので、確実さを優先する
イギリス綴りとアメリカ綴りはどちらでも正解。自分がどちらで書いているかを決めておく
licence と license のように、品詞で綴りが分かれる語もある
綴れるようになった語は『運用語彙強化』で文にし、間違え続ける表現は『表現マスターW』へ渡す
次に書くエッセイで、綴りが不安だという理由で書くのをやめた語がいくつあったかを数えてみるといいでしょう。その語がそのまま、いま練習する価値のある語です。