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ライティング・タスク2

IELTSライティングで背景知識はどこまで必要か:意味の取り違えから考える基本概念の押さえ方

執筆:高橋 響 公開日: 最終更新:

教育、環境、健康、テクノロジー、都市化、政府、仕事、犯罪。IELTSライティング・タスク2が扱うテーマはとても広く、知らないテーマが出たらどうしようという不安は自然なものです。かといって、世界中の社会問題を短期間で勉強しておくことも現実的ではありません。

この記事では、どこまでを事前に知っておけばよいのか、試験中に知らない概念に出会ったときにはどうすればいいか、より安全に書き進めるにはどうすればいいかを解説します。

01IELTSライティング・タスク2では知らないテーマが出る

ライティング・タスク2で、専門分野の知識そのものが採点されるわけではありません。それでも、扱われるテーマは受験者の日常からかなり離れたところまで広がります。たとえば、次のようなタスクがあります。

Fossil fuels are the main source of energy around the world. However, people are being encouraged to use alternative energy sources such as wind energy, solar energy and so on. Do you think this is a positive or negative development? Why?

Some people think the spread of multinational companies and globalization produces positive outcomes for everyone. Do you agree or disagree with this statement?

Many students around the world don’t choose science subjects at university. Give the reasons for this and describe the impact on the community.

エネルギー政策、多国籍企業、大学での専攻の選ばれ方。どれも、日本語でも人前で数分も話せない、という方が多いテーマではないでしょうか。だからこそ「背景知識がないと書けないのでは」という不安が出てきます。

ただ、IELTS公式の Writing Task 2 Band Descriptors には、テーマについての知識量を評価する観点はありません。Task Response で見られているのは、タスクを正しく理解して、それに対してどう応答したかです。実際、Band 4 の Task Response には次のような記述があります。

Writing Task 2 Band Descriptors(Band 4 / Task Response)

The prompt is tackled in a minimal way, or the answer is tangential, possibly due to some misunderstanding of the prompt.

回答が tangential、つまり本筋からずれてしまうと、それは misunderstanding of the prompt と判断されることを示唆しています。知識が足りないことではなく、タスクを取り違えることのほうが評価に直接つながる、と読める記述です。

そして、タスクの取り違えは、難しい構文や見たこともない語から起きるとは限りません。一見やさしい語、しかも自分では意味が分かったつもりでいる語からも起きます。

02それでも「常識的な用語」は知っておきたい

専門知識は要らない。この前提は変わりません。ただ、まったく何も知らない状態でタスクを読めるかというと、そこには少し乖離があります。

ここで分けておきたいのが、背景知識と、基本概念の理解です。気候変動の仕組みを詳しく説明できる必要はありません。ただ、renewable energy が何を指すのかを知らないままだと、タスクの読み方そのものが変わってきます。この2つは別のものです。

そもそもIELTSは、大学・大学院への進学や、専門的な環境で働くために必要な英語力を測る試験です。そうした場で英語を使って社会問題について話し合う場面を思い浮かべると、globalisation とは何か、fresh water とは何か、renewable energy とは何か、standard of living とは何かをまったく知らないままでは、議論そのものに入りにくくなります。

そう考えると、出題する側も「この程度の基本的な概念については、受験者もある程度は理解しているだろう」という前提でタスクを作っている可能性は十分にあります。大学や大学院に進学するのであればこのくらいの用語は「常識」であろうと出題者が考えているという前提で、用意しておく方が無難といえるでしょう。

この記事では、こうした用語をまとめて「基本概念」と呼びます。どこまでが基本概念で、どこからが専門知識なのか。だいたいの目安は次のとおりです。

テーマ基本概念(知っておきたい)専門知識(知らなくてよい)
fresh water は塩分を含まない水で、salt water と対になる地球上の水のうち淡水が占める割合、主要な帯水層の名称
芸術the arts は美術だけでなく、音楽・演劇・舞踊まで含む各国の文化予算の規模、主要な美術館の収蔵点数
エネルギーfossil fuels は石炭・石油・天然ガスを指し、風力や太陽光と対比される各国の電源構成の数値、発電コストの推移
教育higher education は大学以降の教育を指し、compulsory education と区別される各国の就学年数の制度、進学率の統計

右の列を知らなくてもタスクは読めますし、回答も書けます。読めなくなるのは、左の列を取り違えたときです。

03基本概念を取り違えると回答はどう変わるのか

02で挙げた fresh water を例に、実際のタスクで見てみます。

Lack of fresh water is becoming a global issue of increasing importance. What problems does the shortage of fresh water cause? What measures could be taken to overcome these problems?

fresh water=汚染されていない、きれいな水水質の悪化による健康被害を問題として挙げ、浄水設備の整備と工場排水の規制を対策として書く

fresh water=塩分を含まない水、つまり淡水農業用水や生活用水が足りないことによる影響を挙げ、節水・灌漑の効率化・海水淡水化を対策として書く

Cambridge Dictionary は fresh water を water that does not contain any salt, especially water found in lakes and rivers と定義しています。水について fresh と言うとき、対比されているのは salt であって、汚れているかどうかではありません。淡水であっても汚染されていることはありますし、そのまま飲める水とも限りません。

なぜ「きれいな水」と読んでしまうのか

fresh を「新鮮な」で覚えているからです。fresh food、fresh air と並べて記憶していれば、fresh water も同じ系列の語に見えます。ところが「新鮮な水」は日本語として落ち着かないので、読んでいるその場で「きれいな水」に読み替えられます。読み替えがうまくいってしまうと、そこで辞書を引く理由がなくなります。分からない語ではなく、分かった語になっているからです。

回答の中身がどこまで変わるか

設問は What problems does the shortage of fresh water cause? です。shortage を「安全な水が手に入らないこと」として処理すると、問題として挙がるのは水系感染症や工場排水による汚染になります。measures も浄水と規制に寄り、使える水の量そのものを増やす、あるいは減らさないという方向の対策が出てきません。水についての知識を書いているのに、設問が聞いている不足には答えていない回答になります。

芸術のタスクでも同じことが起きる

たとえば、政府の予算配分を扱う次のタスクです。

Some people think that the government should invest in public services instead of the arts. To what extent do you agree or disagree?

the arts=美術。絵画や彫刻のこと美術館の運営費や街なかの彫像を例に、医療や交通と比べて書く

the arts=美術に加えて、音楽・演劇・舞踊まで含む分野地域の劇場やオーケストラ、学校の音楽教育、文化産業の雇用まで含めて、医療や交通と比べる

the arts は、Cambridge Dictionary では the making or showing or performance of painting, acting, dancing, and music と定義されています。acting、dancing、music が入っているところが、カタカナの「アート」との差です。

この範囲は、タスクの側からも確かめられます。同じテーマの別のタスクは、政府が支援すべき artists の例として artists such as painters, musicians and poets と並べています。the arts を絵画と彫刻の話として読むと、書けるのは美術館と街の彫像までです。公共サービスと比べたときに書ける論点が、そこで大きく減ります。

食べものを扱うタスクの diet も同じです。Some people think this has negative effects on lifestyles and diets. という設問の diet をカタカナの「ダイエット」で読むと、書くのは体重の話だけになります。Cambridge Dictionary がこの語に最初に載せているのは the food and drink usually eaten or drunk by a person or group、つまりふだん食べているものの全体です。減量のための食事制限という語義も2つ目にありますが、このタスクで問われているのは前者で、栄養の偏りや、家庭で料理をする機会が減ったことまで書けるかどうかが変わります。

どの例も、語をひとつ読み違えただけでは終わりません。中心にある語をどう理解したかによって、そのあとに選ぶアイデアも、具体例も、対策も入れ替わります。

そして、fresh water や the arts の範囲を知らずに読んでいたとしても、それは自然なことです。日本語でも「淡水」を日常で使う場面はそう多くありませんし、「アート」と聞いて演劇を思い浮かべる人も少ないはずです。問われているのは、こういった基本概念をどこまで事前に知っておけばよいのか、そしてすべてを事前に覚えることができない以上、どう備えておくのか、というほうです。

04IELTSのために社会問題を全部勉強するべきか

答えはノーです。

出題されるテーマを並べていくと、教育・環境・健康・テクノロジー・都市化・グローバリゼーション・政府・仕事・犯罪・家族・メディア・観光へと広がっていきます。ひとつのテーマの中でも、環境なら気候変動、エネルギー、廃棄物、生物多様性というように枝分かれします。ここを網羅しようとすると、試験対策ではなく社会科の学習になってしまいます。

しかも、背景知識が増えれば回答の質も上がる、という関係にはなっていません。ライティング・タスク2で必要なのは、タスクを正しく読み、立場を決め、理由を掘り下げ、それを英語で書き切ることです。知識はその材料のひとつにすぎません。

テーマを読み込む勉強は、かかる時間がテーマの数だけ増えていくうえに、そのテーマが出たときにしか使えません。知識が増えても、03で見たような語の読み違いはそのまま残ります。

では、テーマの代わりに何をすればいいのでしょうか。

05いろいろな議題にアンテナを張っておく

ここで少し考えてみましょう。globalisation という語を、みなさんは最初にどこで知ったでしょうか。fossil fuels はどうでしょうか。

単語帳のページで覚えた、という方はあまり多くないはずです。学校の授業で出てきた、ニュースで何度も見た、環境の記事を読んでいるうちに意味がはっきりしてきた。基本概念と呼んでいる語は、こうやって身についていることが多いはずです。机に向かって暗記したというより、あちこちで出会ううちに、いつのまにか手持ちの語になっています。

だとすれば、普段やることも同じです。いろいろな議題に触れておくこと、そして出会った語をその場で確かめておくこと。この2つにアンテナを張っておきます。

タスクをまとめて見わたす

まず、ライティング・タスク2のタスクをざっと眺めてみましょう。1問ずつ書かなくても大丈夫です。教育、環境、健康、都市化と並べて読んでいくだけで、どんな語が繰り返し出てくるかが見えてきます。この記事で扱った fresh water も the arts も、何度も目にする語です。『タスク検索』を使えば、テーマごとにまとめて読めます。

社会の話を、英語でも日本語でも聞いておく

YouTube でも、ポッドキャストでも、ニュース番組でもかまいません。エネルギー政策、都市の交通、食料の問題。ひとつ見ておくだけで、その分野で使われる語がまとめて入ってきます。英語で聞ければリスニングの練習にもなりますが、日本語で中身を知っておくだけでも、タスクを読んだときの手がかりは増えます。

気になった語は、その場で調べておく

読んでいて引っかかった語、意味は分かるけれど人には説明できない語。そこが基本概念の候補です。調べるときは、訳語をひとつ確認して終わりにせず、次の3点まで見ておくとよいでしょう。

  • 何を意味するか:fresh water なら、塩分を含まない水。lake や river の水がこれにあたる
  • 何と対比されるか:salt water、sea water。この対比が分かれば、水質の話ではないことも同時に分かる
  • どんな文脈で使われるか:shortage、supply、limited resource といった語と一緒に出てくる。量の話をするための語だと分かる

こうして拾っていくと、ひとつのテーマにつき、このくらいの語がたまってきます。水なら次のあたりです。

対比・関連する語どんなタスクで出てくるか
fresh watersalt water / sea water淡水の不足、水資源の管理
water shortage / water scarcitywater pollution量が足りないのか、質が悪いのかを分ける
water supplywater consumption供給する側の話か、使う側の話か
irrigationagriculture / crops農業用水の使われ方と効率
desalinationsea water海水から淡水を作る対策

この10語ほどが手元にあれば、水をテーマにしたタスクで問われている内容を取り違えることはほとんどなくなります。世界の水問題を勉強しなくても、です。

他のテーマも同じように集まっていきます。

  • 環境:renewable energy と fossil fuels、greenhouse gases、carbon emissions、climate change
  • 教育:higher education と compulsory education、vocational education、access to education、academic performance
  • 芸術:the arts、performing arts、cultural heritage、public funding、creative industries
  • 都市化:urbanisation、urban areas と rural areas、population density、public transport
  • 仕事:working hours、job satisfaction、unemployment、work-life balance

対比される語は、自分の理解を確かめる目安にもなります。ある語について、対になる語や一緒に使われる語がすぐに出てこないなら、その語の意味の範囲をまだつかみきれていないかもしれません。renewable energy なら fossil fuels、developed countries なら developing countries、urban areas なら rural areas。ここが出てくるかどうかで、自分の準備の状態が見えます。

06日本語訳ひとつで覚えると何が抜け落ちるのか

基本概念を押さえるといっても、日本語訳を1語ずつ覚えるだけでは届かないことがあります。英語の語が指している範囲と、訳語が指している範囲がずれているときです。

standard of living を「収入」に縮める

A rise in the standard of living in a country often only seems to benefit cities rather than rural areas. What problems can this cause? How might these problems be reduced?

standard of living=国民の収入の水準都市と地方の所得格差だけを問題として挙げ、補助金と雇用創出を対策として書く

収入に加えて、手に入る商品やサービス、暮らしの快適さまで含む水準医療機関の数、公共交通の本数、進学先の選択肢まで含めて、都市と地方の差を書く

Cambridge Dictionary は standard of living を the degree of comfort that people in a particular social class, country, etc. have, and the number and types of products and services that they can buy と定義しています。買えるものの数と種類まで含む、という部分が要点です。「生活水準」という訳語そのものは誤りではありません。ずれが生まれるのは、その日本語をさらに「収入」まで縮めてしまうところです。

所得の一点に絞ると、problems は格差の話に集約され、solutions も補助金と企業誘致に限られます。医療、教育、交通、住まいといった、このタスクで書けたはずの論点がまとめて落ちます。設問の形式は満たしているので、書いている側には欠けている自覚がありません。

community をカタカナの「コミュニティ」で読む

Many students around the world don’t choose science subjects at university. Give the reasons for this and describe the impact on the community.

community には、the people living in one particular area or people who are considered as a unit because of their common interests, social group, or nationality という語義と、the general public という語義の両方が Cambridge Dictionary に載っています。日本語の「コミュニティ」は、このうち人と人との交流の面に寄って使われることが多い語です。

impact on the community を「地域の人間関係への影響」と読むと、大学で理系の科目を選ぶ学生が減ることの影響が、地域の行事や住民同士のつながりの話として書かれます。理由と影響を求める設問なので、形式のうえでは答えています。それでも、社会や地域にどのような影響が及ぶのか、という広い論点を落としてしまう可能性があります。

同じ語は the international community としても出てきます。食料需要の増加を扱うタスクの What measures can the international community take to meet this demand? という設問では、対策を取る主体が個々の国ではなく国々の集まりであることが読めているかどうかで、書く内容が変わります。

訳語のうしろにある範囲まで確かめる

この読み違いは、英英辞典を使いましょう、という助言だけでは解決しません。辞書を引いたあとに何をするかのほうが本題だからです。英語の語を日本語1語に置き換えた瞬間、英語の語が持っていた範囲は、その日本語の範囲に置き換わります。

確かめ方はごく簡単です。その語に含まれるものを2つか3つ挙げてみましょう。standard of living なら、収入、住まい、医療。3つ挙がれば、所得だけに縮んだ読み方からは離れられています。development、authority、education、community のような抽象名詞では、この確認をしておくといいでしょう。

07それでも知らない概念が出たらどうするか

事前の学習ですべてをカバーすることはできません。基本概念をある程度押さえたうえで、残った未知の部分は、試験中の読み方と書き方で補うことになります。

タスクの中から手がかりを拾う

試験中に辞書は引けませんが、タスクは何度でも読めます。次の順で確かめてみましょう。

ステップすること確かめること
1 中心にある語について、反対側に来る語を思い浮かべる fresh water なら salt water。どちらも浮かばないなら、意味の範囲をつかめないまま読んでいる
2 shortage・lack・rise・control のような語と、中心の語をつないで日本語で一文にする 「淡水が足りないと何が起きるか」。文にして意味が通らなければ、どちらかの解釈がずれている
3 中心の語以外に、解釈を裏づける語がタスクの中にないかを探す a limited resource、a global issue。自分の解釈がこれらと矛盾しないか
4 タスクを自分の言葉で一文に要約し、元のタスクと並べる 要約から消えた語があれば、その語をまだ処理できていない

fresh water の2問で試してみます。Lack of fresh water is becoming a global issue of increasing importance. のタスクでは、ステップ1で salt が出てくれば、そこで解釈が決まります。ステップ2は「淡水が足りないと何が起きるか」も「きれいな水が足りないと何が起きるか」も文として通ってしまいますし、ステップ3の a global issue も、水質の悪化は世界規模の問題なので決め手になりません。両方の解釈が通ってしまうタスクもある、ということです。

Some people think that the government should strictly control the supply of fresh water, as it is a limited resource, while others believe it should not be regulated. Discuss both sides and give your opinion.

こちらには as it is a limited resource という理由が添えられています。限りある資源という言い方は量についてのものなので、ステップ3だけで解釈が決まります。どのステップで決まるかはタスクによって変わるので、1つで決まらなければ次を試す、という進め方になります。

どのステップでも決まらないときは

4つを一通り試しても、手がかりが見つからないことはあります。そのときは推測で進めることになりますが、手がかりはまだ残っています。判断の材料は2つあります。

ひとつは、反対の立場が成り立つかどうかです。自分の読み方でタスクを読んだとき、賛成側と反対側の両方に言い分を用意できるでしょうか。片方しか成り立たないタスクは、Discuss both views や To what extent の設問としては不自然です。そこで詰まるなら、読み方のほうを疑ってみましょう。

もうひとつは、そのテーマで一般に何が論じられているかです。出題されるのは、社会の中で実際に議論になっている話題です。自分の解釈が、その分野でふつう議論されている内容から大きく離れているようなら、そこも見直す手がかりになります。

解釈が決まらないまま書くときの安全策

ステップ1で対になる語が出てこなかったときは、その語の意味をまだ決め切れていません。ここでできるのは、解釈をひとつに決めたつもりで書き進めないことです。

Fresh water, which is water free from contamination, is becoming scarce in many regions.自分の解釈を定義として書いている。ここで主題が水質に確定する

The shortage of fresh water is becoming a serious problem in many regions.タスクの語をそのまま使っている。主題は動かない

もちろん、タスクの語をそのまま使えば内容の誤読が解決するわけではありません。ここで防いでいるのは、自分の解釈を導入で言葉にして、主題をそちらに固定してしまうことです。

取り違えは、解釈を文字にした瞬間に読み手へ伝わります。裏を返せば、タスクの語をそのまま使い、対象を狭める説明を足さなければ、読み手が受け取る主題はタスクどおりのままです。書くときに気をつけておきたいのは、次のような点です。

  • 導入でタスクの語を定義し直さない:パラフレーズは、元の意味を保ったまま語句や文の形を変える作業であって、語の意味を説明することではありません。which is … や that is to say で語義を書き足したところが、そのまま解釈の宣言になります
  • 中心の語に、タスクにない形容詞を足さない:fresh water に clean、safe、drinkable のような限定語を添えると、そこで対象が狭まります
  • 実例は、解釈が変わっても成り立つものを選ぶ:特定の地域で水が足りていないという事実は、量の話としても質の話としても使えます。浄水場の建設費のように片方の解釈でしか意味を持たない例は、外れたときの損失が大きくなります
  • 結論で主題を言い換えない:導入とボディで保っていた対象が、最後の一文だけ狭まることがあります。結論はタスクの語に戻して書きましょう

知らないものを分かったふりで書き切らない、という守り方です。それでも、タスクの語がそのまま残っていれば、書き手がどの設問に答えようとしているのかは読み手に伝わります。

最後にもうひとつ。語をひとつ読み違えたからといって、回答全体が崩れるわけではありません。ライティング・タスク2は4つの観点で採点されます。語の取り違えは Task Response に影響しますが、段落の組み立て方、理由から結論までのつなぎ方、文法の正確さは、それぞれ別の観点として評価されます。「この語は取り違えているが、論理を組み立てて説明する力はある」と読まれる可能性は十分にあります。

むしろ、分からない語が出たところで手が止まってしまうほうが、影響は大きくなります。読み方に自信を持てないままでも、タスクの語を保ったまま、理由と具体例を積み上げて最後まで書き切りましょう。

08普段の学習で何をすればいいか

ここまでを学習の手順に直すと、ニュースを大量に読む形にはなりません。頻出テーマを決め、そこに出てくる基本概念を押さえ、対比される語やよく使われる組み合わせまで確かめる。手をつける単位は、思っているよりずっと小さくなります。

同じ語が出てくるタスクを並べて読む

ひとつのタスクで覚えた語は、別のタスクでは別の使われ方をします。この記事で fresh water の2問を並べたのは、片方には量の話だと決まる手がかりがあり、もう片方には無いからでした。the arts も同じです。painters, musicians and poets と例示しているタスクを1問見つければ、この語がどこまでを含むのかはタスクの側から確かめられます。『タスク検索』では、収録しているタスクを語で絞り込めます。fresh water で検索すれば、この記事で扱った2問が並びます。

IELTS学習アプリ タスク検索 ライティング・タスク2のタスクを、テーマや語で絞り込んで探せます

どの語と組み合わさるかを見る

概念の範囲は、定義よりも組み合わせのほうにはっきり出ます。water であれば、water shortage・water scarcity と water quality・water pollution が別の話であることは、組み合わせを並べれば分かります。fresh water がどちらの側の語と一緒に出てくるかも、そこから見えてきます。

IELTS学習アプリ コロケーション検索 語がどの語と組み合わさって使われるかを調べられます

英英の定義で範囲を確かめる

06で見た読み違いは、日本語訳で覚えているかぎり残ります。Cambridge Dictionary や Oxford Learner's Dictionaries の定義を一行読むだけで、その語に何が含まれて何が含まれないかが分かります。standard of living の定義に products and services が入っていることは、日本語の「生活水準」からは出てきません。

テーマごとに使える語をまとめて増やしたいときは、こちらの記事もあわせて読むとよいでしょう。

ライティング・タスク2 IELTSライティングのテーマ別語彙:キラーワードで説得力を上げる方法

文の構造や指示語のところで読み違える場合は、別の記事にまとめてあります。読み違いとしては隣り合っているので、自分がどちらでつまずいているかを確かめるのに使えます。

ライティング・タスク2 タスクを読み違えるのはなぜか?IELTSライティング・タスク2で起きる3つの誤読と読み方の練習

この記事で扱った fresh water のタスクそのものについては、水不足の問題と対策、回答に使える実例までを1本にまとめた回があります。読み方を確認したあとに、そちらで中身のアイデアを足していきましょう。

ライティング・タスク2 タスク深掘りシリーズ:fresh waterとは?水不足の問題・対策と使える実例【第6回】

09よくある質問

IELTSライティング・タスク2では背景知識が必要ですか

専門分野の知識そのものは、採点項目に入っていません。Writing Task 2 Band Descriptors にも、テーマについての知識量を評価する観点はありません。ただし、fresh water や the arts のような基本的な概念を取り違えると、タスクそのものを読み違えることになります。必要なのは知識の量ではなく、タスクの中心にある語を取り違えないことです。

IELTSのために社会問題を勉強したほうがよいですか

テーマを丸ごと勉強する必要はありません。出題されるテーマは教育から犯罪まで広く、網羅しようとすると際限がなくなります。効果的なのは、頻出テーマに出てくる基本概念を、対比される語とセットで押さえることです。語の数は限られており、同じ語が別のタスクにも出てくるため繰り返し使えます。

fresh water は「新鮮な水」という意味ではないのですか

Cambridge Dictionary は fresh water を、塩分を含まない水、とくに湖や川にある水と定義しています。水について fresh と言うときに対比されているのは salt です。fresh food や fresh air の fresh と同じ意味で読むと、水質の話だと受け取ってしまいます。

the arts は「美術」ではないのですか

美術も含みますが、それだけではありません。Cambridge Dictionary は the arts を painting, acting, dancing, and music を作ったり見せたり上演したりすること、と定義しています。芸術への公的支出を扱うタスクで、絵画と彫刻の話だけを書くと、劇場や音楽教育、文化産業といった論点がまとめて落ちます。

基本概念はどうやって覚えればよいですか

日本語訳だけを覚える形にせず、何を意味するか、何と対比されるか、どんな文脈で使われるかの3つをまとめて押さえるとよいでしょう。fresh water なら、塩分を含まない水であること、salt water と対になること、shortage や supply と一緒に出てくることまでを一組にします。対になる語も関連する語も出てこない語は、意味の範囲をまだつかみきれていない可能性があります。

意味の分からない語がタスクに出てきたら、どうすればよいですか

まず、その語と対になる語や、一緒に使われる語を思い浮かべてみましょう。次に、shortage や supply のような周囲の語とつないで日本語で一文にし、a limited resource のような解釈を裏づける語がタスクの中にないかを探します。それでも決まらないときは、自分の読み方で賛成と反対の両方が成り立つかを確かめたうえで、解釈をひとつに決めた形で書かず、タスクの語をそのまま使って書き進めるのが安全です。

知らない語がひとつあると、スコアは大きく下がりますか

語の取り違えは Task Response に影響しますが、ライティング・タスク2は4つの観点で採点されます。段落の組み立て方、理由から結論までのつなぎ方、文法の正確さは、それぞれ別の観点として評価されます。「この語は取り違えているが、論理を組み立てて説明する力はある」と読まれることも実際にあります。分からない語が出たところで手が止まってしまうほうが、影響は大きくなります。

タスクの語をそのまま使うと、パラフレーズができていないと見なされませんか

ここでいうパラフレーズは、元の意味を保ったまま、語句や文の形を別の表し方にする作業です。この記事で避けているのは、その語の意味を説明として書き足すことのほうです。which is … のような形で語義を添えると、自分の解釈がそのまま読み手に伝わります。置き換えられる語は置き換えたうえで、意味の説明は足さない、という使い分けになります。

カタカナ語はすべて疑ったほうがよいですか

日本語と英語で意味がほぼ重なる語も多いので、すべてを疑わなくても大丈夫です。確認しておきたいのは、社会や制度を論じるときに出てくる語です。community のように日本語で使うときの意味が英語より狭い語や、diet のように日本語では別の面に寄って使われている語があります。

語彙力を増やせば、この問題はなくなりますか

覚える語を増やすだけでは、この記事の06で扱った読み違いは残ります。日本語訳ひとつで覚えていると、英語の語が持つ範囲がその日本語の範囲に置き換わるためです。英英の定義で範囲を確かめること、対になる語をセットで覚えること、同じ語が出てくるタスクを並べて読むことが対策になります。

10まとめ

IELTSライティング・タスク2のために、すべての社会問題に詳しくなる必要はありません。それでも、頻出テーマに出てくる基本概念を知らないままだと、タスクそのものを取り違えることがあります。この2つは矛盾しません。勉強する対象を、テーマから概念の側へ置き換えるだけです。

  • ライティング・タスク2で、専門分野の知識そのものが採点されるわけではない。Band Descriptors にも知識量を評価する観点はない
  • ただし、出題する側が基本的な概念を前提にしている可能性はある。大学などで社会問題を英語で議論する場面を想定した試験だから
  • 基本概念の取り違えは、語ひとつの誤りでは終わらず、選ぶアイデアと具体例まで入れ替えてしまう
  • 覚えるのは訳語だけではなく、意味・対比される語・使われる文脈の3点。対になる語や一緒に使われる語が浮かばなければ、意味の範囲をまだつかみきれていない
  • 日本語訳1語に固定すると、英語の語が持つ範囲がその日本語の範囲に縮む。含まれるものを2つか3つ挙げて確かめる
  • 知らない概念が出たら、タスクの中の対比・理由・限定から意味を推測する。決まらないときは、自分で定義を作らず、タスクの語をそのまま使って書き進める
  • 語をひとつ取り違えても、回答全体が崩れるわけではない。手を止めずに、理由と具体例を積み上げて最後まで書き切る

取り違えは、語を知らないから起きるとは限りません。読み替えがうまくいってしまい、確認の対象から外れたときに起きます。次にタスクを読むときは、中心にある語について、対になる語や一緒に使われる語を1つ思い浮かべてみましょう。そこで何も出てこなかった語が、事前に押さえておきたい基本概念です。

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Hibiki Takahashi

この記事を書いた人

Hibiki Takahashi

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象にIELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住14年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

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