「どこを直せば目標スコアに届きますか」という質問には、講師としてできるだけ具体的に答えたいと思っています。ただ、授業でライティングの回答やスピーキングを拝見して課題が分かっても、何をどの順番で改善すれば目標スコアに届くかまでは、最初の時点では見通せません。この記事では、最初の学習計画を一つに決め切らない理由と、途中で計画を見直すときに何を確かめているのかを、講師の立場からお話しします。
目次
「どこを直せば目標スコアに届くか」に一言で答えにくい理由
弱点と、先に取り組む課題が一致しないとき
最初の学習計画は仮説として立てる
課題をすべて同時に直そうとすると起きること
講師のアドバイスが途中で変わるのはなぜか
月1回の無料学習相談をおすすめしている理由
よくある質問
まとめ
01 「どこを直せば目標スコアに届くか」に一言で答えにくい理由
IELTSの指導をしていると、受講生の方から「自分はどうすれば目標スコアに到達できますか」という質問をよくいただきます。ライティングであれば、「私のライティングのどこが悪くて、どこをどう直せば目標スコアに届きますか」という質問です。
限られた時間の中で勉強しているのですから、何に集中すればよいのかを知りたいのは当然です。
それでも、この質問に答えるときには、いつも少し葛藤があります。回答を読めば、現時点で改善したほうがよい点はいくつも挙げられます。ただ、改善点が分かっても、どこから取り組めば目標スコアに早く近づけるのかは、また別の問題です。
授業でのライティングやスピーキングから講師が判断できること 取り組んでみるまで分からないこと
いま目立っている誤りと、その種類 その誤りを直すのに、どのくらいの期間がかかるか
目標スコアの採点基準と比べて、まだ届いていない点 どの課題から手を付けると、スコアに表れやすいか
次に取り組むとよさそうな練習 その練習を続けたとき、実際にどの程度上達するか
どこが弱いかは、授業でライティングの回答やスピーキングを拝見していれば、ある程度お伝えできます。どの弱点から直すのが最適かは、実際に練習を続けてみてはじめて見えてきます。多くの場合は、何回かのレッスンを通して、その人の得意なことや、改善しやすそうな課題を講師が見極め、そのつど進め方を修正していきます。
先に取り組む課題は、目標スコアによっても変わります。たとえば、ライティングで似たような回答を書いている2人がいて、1人の目標は6.0、もう1人は7.0だとします。採点基準のBand 6の記述では、文法の誤りがあっても、伝達を妨げることはめったにない水準が示されています。目標が6.0なら、まず読み手が意味を取り違えるような誤りを減らすことが先になるかもしれません。Band 7の記述になると、誤りのない文が頻繁に見られることや、メインアイデアを展開して裏づけることまで求められます。目標が7.0なら、誤りを減らすのと並行して主張の展開の仕方にも手を付けるので、同じ回答を読んでも、講師が最初に提案することは目標スコアによって違ってきます。
最初の段階で一つの方法に決めてしまわないのは、実際の変化を見ながら進め方を調整したほうが、結果として目標に早く近づけると考えているからです。優先したい課題は、はじめにお伝えします。そのうえで、実際の上達の具合を見ながら、必要に応じて取り組む内容を変えていきます。
02 弱点と、先に取り組む課題が一致しないとき
文法の誤りが目立つスピーキングの受講生がいるとします。弱点がはっきりしているので、まず文法の正確さを上げるのが筋に見えます。
ところが、話しながら時制や冠詞を正しく使えるようになるまでには、予想以上に時間がかかることがあります。紙の上なら正しく直せる文法でも、話す場面で使いこなすには別の練習が要るからです。
正確さを上げようとすることで、ほかの面に影響が出ることもあります。話しながら文法を意識しすぎると、言葉が出るまでに間が空いたり、言い直しが増えたりします。正確さを上げようとして、流暢さが一時的に下がることもあるわけです。どこまで文法の正確さに時間を使うかは、流暢さとの兼ね合いを見ながら決めることになります。
同じ受講生でも、質問への答え方を変えるほうが早く変化が出るかもしれません。理由を一つ足してから、具体的な場面で広げる。こうした話の展開の仕方を練習すると、比較的早いうちに回答がよくなる人もいます。スピーキングは Fluency and Coherence、Lexical Resource、Grammatical Range and Accuracy、Pronunciation の4つの採点項目で評価されるので、改善の方向は発音、文法、語彙、言い直しや不要なフィラーの減らし方、話の展開と、いくつもあります。
ライティングでも同じことが起きます。議論の展開が浅く、文法の誤りも目立つ回答があるとします。文法の誤りは添削で一つずつ指摘できるので、取り組みやすく見えます。ただ、誤りの種類が多いと、すべてを減らすまでには時間がかかります。一方で、ボディの各段落で主張を一つに絞り、理由と具体例で支える書き方に変えると、それだけで主張が読み手に伝わりやすくなることがあります。どちらを先にするかは、実際に何本か書き直してみて、どちらのほうが改善が見られやすいかを見て決めることもあります。
何から取り組むのが効率的かは、現在の英語力だけでは決まりません。得意不得意、これまでの学習経験、1週間に使える時間によっても変わります。学校で文法を一通り学んできた人と、話すことには慣れていても文法を体系立てて学んだことのない人とでは、同じ誤りでも直り方が違います。
一番弱いところを改善することが、最も効率のよいスコアアップの方法になるとは限りません。取り組む順番を決めるときには、弱さの大きさと、変化が出るまでにかかりそうな時間の両方を見ています。
03 最初の学習計画は仮説として立てる
今の回答から、優先する課題を決める
→
決めた練習を一定の期間続ける
→
何が変わったかを確かめる
→
続けるか、変えるかを決める
講師が「まず文法の正確さを上げましょう」と提案するときは、授業で拝見したライティングの回答やスピーキングをもとに判断しています。ただ、どのくらいの期間で直るのか、直ったときに回答全体がどこまでよくなるのかまでは、その時点では見通せません。
そこで、最初に立てた計画が合っているかどうかも、実際に取り組みながら確かめていきます。ある課題に集中して取り組み、予想どおり改善していればその方向で続け、思ったほど改善が見られなければ、練習の方法を変えるか、別の課題を先にすることを考えます。
最初の段階で「あなたはこれをやれば目標スコアが取れます」と言い切ってしまうと、成果が出ない期間が続いても、講師も受講生もその方法を変えにくくなります。
今の時点でいちばん見込みのある方法を選び、一定の期間ごとに結果を確かめていれば、合わない練習に気づいたときに早く方針を変えることができます。
練習を続けても変化が見えない時期が長引いたときの見極め方は、次の記事で扱っています。
IELTS総合対策
IELTSスコアが伸び悩む「プラトー」を抜け出す方法:停滞期がいつまで続くのかを見極める
04 課題をすべて同時に直そうとすると起きること
「今の自分に何が足りないのか、最初に全部知っておきたい」という気持ちはよくわかります。足りないものが分からないまま勉強を続けるのは不安です。ただ、すべての課題を把握することと、そのすべてに今すぐ取り組むことは別の話です。
発音も、文法も、語彙も、流暢さも同時に改善しようとすれば、相当な時間と労力が必要になります。仕事や学校と両立しながら勉強している方であれば、使える時間には限りがあります。1回の練習で意識できることにも限りがあり、これらを同時に気にしながら話すと、どれも中途半端になりがちです。
課題をすべて並べて「これを全部できるようにしましょう」と伝えても、何から手を付ければよいのか分からなくなってしまうかもしれません。そこで、気づいた課題はお伝えしたうえで、今の時期に取り組むものを一つか二つに絞ります。残りの課題には、優先した課題が改善してから取り組みます。
IELTS総合対策
あえて完璧を目指さない選択:4技能それぞれの切り上げどき
05 講師のアドバイスが途中で変わるのはなぜか
最初は「語彙を広げましょう」と言われていたのに、2か月後には「今は文法に集中しましょう」と言われる。受講生の方からすると、以前と言っていることが違うと感じるかもしれません。
アドバイスが変わる理由はいくつか考えられます。語彙が伸びて、次に目立つ課題が文法に移った場合があります。語彙の練習を続けても思ったほど変化が出ず、先に文法を直したほうが回答全体がよくなると判断した場合もあります。仕事が忙しくなって使える時間が減り、短い時間で続けられる練習に切り替えることもあります。
たとえば、平日に1時間ずつ勉強できていた方が、仕事の繁忙期に入り、平日は20分ほどしか取れなくなったとします。ライティング・タスク2は1本書き上げるのに40分ほどかかるので、平日には取り組みにくくなります。そこで、平日は表現の確認やスピーキングの短い質問に答える練習に切り替え、ライティングはまとまった時間が取れる週末に書く、という分け方に変えることがあります。練習の中身が変わっても、目指しているスコアと取り組んでいる課題は同じです。
どの場合も、学習を進めるなかで優先したいことが変わったために、アドバイスも変わっています。アドバイスが変わったときは、何が理由で変わったのかを講師に聞いてみるとよいでしょう。理由が分かれば、それまでの練習で何が身についたのかも見えてきます。
06 月1回の無料学習相談をおすすめしている理由
プラスワンポイントでは、受講生の方に、月1回を目安に無料IELTS学習相談をご利用いただくようおすすめしています(任意です)。分からないことや困っていることを質問する場として使っていただくのはもちろん、これまでの学習を振り返り、今の取り組み方が合っているかを確かめる時間にもしていただきたいと考えています。
相談で確かめること たとえば
前回の相談から何に取り組んできたか どの練習を、1週間に何回続けたか
その結果、何が変わったか 模擬試験の結果、添削で指摘される誤りの種類
まだ変わっていないこと 前回と同じ指摘が続いている点
次の1か月をどう進めるか 同じ方向で続けるか、別の方法や課題を試すか
こうしたことを定期的に振り返っていれば、変化の出ない練習を何か月も続けてしまうことは避けやすくなります。相談の前に、取り組んだ練習と気づいたことを短くメモしておくと、限られた時間でも話が具体的になります。
相談前のメモの例
取り組んだこと:Part 3の質問に、理由と具体例を足して答える練習を週3回
変わったこと:2文で止まらずに、続けて話せるようになってきた
変わらなかったこと:話が長くなると、時制の誤りが増える
受講を検討している段階の方にも、現在のスコアとこれまでの対策をうかがったうえで、次に優先して取り組むことをご提案しています。
無料IELTS学習相談
これまでの取り組みと変化をうかがい、次の進め方を一緒に考えます
07 よくある質問
IELTSで目標スコアを取るには、何から勉強すればいいですか。
人によって違います。今の回答から優先する課題を一つか二つに絞り、取り組んだ結果を見て次を決めていく進め方がおすすめです。
一番苦手な採点項目から対策したほうがいいですか。
弱さの大きさだけでは決めません。変化が出るまでにかかりそうな時間もあわせて見ます。
講師のアドバイスが前回と違うのは、方針がぶれているからですか。
練習の結果を見て、優先する課題を変えた可能性があります。気になるときは、変わった理由を聞いてみるとよいでしょう。
学習計画はどのくらいの間隔で見直せばいいですか。
プラスワンポイントでは、受講生の方に月1回を目安に無料学習相談で振り返ることをおすすめしています。
自分の弱点を最初に全部教えてもらうことはできますか。
授業で気づいた課題は、まとめてお伝えできます。そのうえで、今の時期に取り組むものを一つか二つに絞ります。
練習を続けても変化が出ないときは、やめたほうがいいですか。
練習の方法を変えるか、別の課題を先にするかを考えます。どちらにするかは、何が変わっていないのかを見てから決めます。
受講していなくても無料相談は受けられますか。
受けられます。
08 まとめ
見えている弱点と、先に取り組む課題は同じとは限らない
最初の学習計画は、試しながら見直す前提で立てる
課題は全部知ったうえで、取り組むものを一つか二つに絞る
アドバイスが変わったら、変わった理由を聞いてみる
最初に立てた計画は、取り組んだ結果を見ながら一緒に見直していきます。次の相談までに、取り組んだ練習と、変わったこと・変わらなかったことを短くメモしておきましょう。