エッセイの見直しというと、文法の誤りや語の選び方に目が向きがちです。その手前に、短縮形や大文字小文字のように、読み返すだけで直せる項目がいくつかあります。
ここで扱うのは、短縮形と略記、口語表現、改行の位置、大文字と小文字、綴りの5つです。綴りや段落のように Band Descriptors に名前が出てくるものと、短縮形や文頭の But のように、誤りではないけれどエッセイでは選びにくいものがあるので、そこを分けて見ていきます。
目次
表記と語調のルールは、採点のどこに関わるのか
短縮形と略記を使わない
口語表現を書き言葉に置き換える
段落を変えるところ以外で改行しない
大文字と小文字を正しく書く
綴りを正確に書く
提出前に表記を確認する順番
よくある質問
まとめ
01 表記と語調のルールは、採点のどこに関わるのか
短縮形や大文字小文字のような表記の項目は、それだけを取り出して評価する基準はありません。一方で、綴り・句読点・段落は、IELTS公式の Writing Task 2 Band Descriptors に語として出てきます。
たとえば Lexical Resource の Band 6 には spelling and/or word formation の誤りについての記述があり、Coherence and Cohesion の Band 6 には paragraphing への言及があります。内容や論の運びとは別のところで、表記も評価に関わっています。
この記事で扱う範囲
この記事が扱うのは、アイデアの出し方や段落構成ではなく、書き言葉としての表記です。短縮形と略記、口語表現、改行の位置、大文字と小文字、綴りの5点を順に見ていきます。
表記の項目 関わる観点 Band Descriptors の記述
綴り・語形 Lexical Resource Band 6:spelling and/or word formation の誤りが伝達を妨げない範囲であること
段落・改行 Coherence and Cohesion Band 6:paragraphing を使っているが、つねに論理的とは言えない
句読点 Grammatical Range and Accuracy Band 6:grammar and punctuation の誤りがあるが、伝達を損なうことはほとんどない
短縮形や口語表現そのものを対象にした基準はありません。Lexical Resource の Band 7 には style への意識という言及がありますが、これは語の選び方全体についての記述で、短縮形の可否を決めているものではありません。大文字小文字も、Band Descriptors に単独の項目としては出てきません。それでも、文の先頭が小文字のままのエッセイは書き言葉として整っていないので、句読点と同じ並びで見ておきたい部分です。
表記と語調をそろえる作業は、アイデアを考える作業とは性質が違います。知っていればすぐに実行できるので、書き始める前に覚えておくと、次の1本から反映できます。
02 短縮形と略記を使わない
エッセイでは、I'm や don't のような短縮形を開いて書きます。短縮形は文法の誤りではありませんし、会話やくだけた手紙では普通に使われます。アカデミックな書き言葉では開いた形が一般的なので、回答では I am、do not、cannot と書くほうが無難です。
ジェネラル・トレーニングのタスク1で、友人にあてた手紙を書く場合は事情が変わります。くだけた語調が求められる課題では、短縮形を使って構いません。ライティング・タスク2のエッセイでは開いた形にそろえます。
2-1 短縮形を開いて書く
△
It's clear that governments don't have enough funding.誤りではないが、回答の語調には合いにくい
○
It is clear that governments do not have enough funding.開いて書く
アポストロフィを含む語を探すと、短縮形はまとめて見つかります。所有格の apostrophe(the government's policy)は残していい形なので、混ぜないように分けて見ます。
2-2 略記は語で書く
短縮形と混同されやすいのが略記です。I am を I'm と縮めるのが短縮形、and so on を etc. のように別の表記へ置き換えるのが略記で、この2つは別のものです。
△
Governments should invest in roads, railways, etc.何が続くのかを読み手が補うことになる
○
Governments should invest in roads and railways.挙げるものを決めて言い切る
△
Many countries & companies rely on imported food.& はエッセイでは and と書く
○
Many countries and companies rely on imported food.語として書く
etc. と and so on は、列挙をあいまいなまま打ち切ります。読み手には、そのあとに何が入るのか分かりません。2つ挙げて言い切るほうが、述べている内容が具体的になります。
迷ったときは、正式な形で書いておくと安全です。information、pictures のように正式な語で書けば、語調が問題になりません。TV のように辞書で普通の名詞として扱われている語もありますが、その場合もフォーマルな文章で使われる語かどうかは別に確かめます。
ライティング・タスク2
IELTSエッセイの書き言葉:口語表現をどこまで削るかの判断基準
03 口語表現を書き言葉に置き換える
口語表現を避けるのは、それが誤りだからではありません。意味の範囲が広かったり、語調が会話寄りだったりして、回答では選びにくいというだけです。書き言葉に置き換えると、何を述べているのかが1つに決まります。
3-1 get は、何を表しているかで書き分ける
get は、受け取る、手に入れる、〜になる、理解する、到着するといった内容をまとめて表せる動詞です。便利な反面、どの意味で使ったのかが文脈任せになります。
get を使った文 書き言葉での言い換え get が表している内容
Workers get more money. Workers earn higher wages. 稼ぐ
Students get a scholarship. Students receive a scholarship. 受け取る
Cities get crowded. Cities become crowded. 〜になる
Readers get the point quickly. Readers understand the point quickly. 理解する
Commuters get to the office late. Commuters arrive at the office late. 到着する
get そのものが誤りというわけではありません。見ておきたいのは、同じ意味で get を重ねている箇所と、何を指しているのかが読み取りにくい箇所です。そこを文脈に合う動詞に置き換えると、伝わり方が具体的になります。
3-2 文頭の But と Also を置き換える
But や Also で文を始めること自体は、英語として成立します。出版された文章にも出てきます。ただ、回答では However と In addition のほうが書き言葉の語調に合うので、迷わずに選べます。前の文との関係が逆接なのか追加なのかで選ぶ語は変わるので、置き換えるときはそこを見ます。
△
But some people disagree with this view.語調が会話寄りに響く
○
However, some people disagree with this view.うしろにカンマを打つ
△
Also, technology has changed the way people work.回答では追加を示す語を選びたい場面
○
In addition, technology has changed the way people work.書き言葉で広く使われる
文の中で and や but を使うことには、何の問題もありません。置き換えたいのは、接続詞を文の先頭に出して前の文とつなぐ形だけです。
3-3 三点リーダーで列挙を締めない
三点リーダーは、引用の一部を省いたことや、言葉が途中で途切れたことを示す記号です。エッセイの地の文で使うと、書き手が言い残した部分を読み手が想像することになります。列挙を締めるための記号ではないので、地の文では使いません。
✗
Cities face many problems such as pollution, traffic...引用の省略を示す記号なので、列挙の締めには使わない
○
Cities face two serious problems: air pollution and traffic congestion.数を決めて中身を示す
04 段落を変えるところ以外で改行しない
自分で改行を入れるのは、段落を変えるときだけです。1文ごとに改行すると、どこまでが1つの段落なのかが読み手に伝わりません。Coherence and Cohesion では paragraphing が評価の対象に入っているので、改行は段落の切れ目を示す記号として扱います。
✗
Firstly, public transport reduces traffic congestion. It also lowers emissions in city centres. Therefore, governments should invest in it.1文ごとに改行している
○
Firstly, public transport reduces traffic congestion. It also lowers emissions in city centres. Therefore, governments should invest in it.段落の中は続けて書く
4-1 段落の切れ目は、空行か字下げのどちらか一方に決める
段落の示し方をIELTSが規定しているわけではありません。コンピューター受験では、段落の終わりで改行を1つ余分に入れて空行を作ると切れ目が見えます。紙の受験では、字下げか空行のどちらか一方に決めておきます。
どちらの方法でもよいのですが、1本のエッセイの中で混ぜないようにします。前半を空行、後半を字下げで示すと、読み手が段落の境目を判断しにくくなります。
4-2 文の途中では改行しない
コンピューター受験では、行の終わりに来た語は自動で次の行へ送られます。そこへ自分で改行を入れると、文の途中に段落の切れ目のような空きができます。紙の受験でも同じで、行が余っていても文が続くあいだは次の語を続けて書きます。
ライティング・タスク2
IELTSエッセイの段落分け:どこで改行するかの判断基準
05 大文字と小文字を正しく書く
文の1字目は大文字にし、I は文のどこにあっても大文字で書きます。この2つは、書き終えたあとに読み返せばその場で見つかります。
メッセージアプリでは i can のように小文字だけで書く習慣がありますが、エッセイではその区別も表記の一部です。日本語には大文字と小文字の別がないので、意識しないと残ったままになります。
✗
in my country, people i know often work long hours.文頭と I が小文字のまま
○
In my country, people I know often work long hours.文頭と I を大文字にする
5-1 大文字にする語と、しない語
判断の軸は、特定のものを名指しする固有名詞かどうかです。IELTSのエッセイで出てくる範囲に絞って並べます。
種類 書き方 例
国名・都市名・地域名 大文字で始める Japan, Tokyo, Asia
言語名・国民や地域の人を表す語 大文字で始める English, Japanese students
曜日・月 大文字で始める Monday, September
特定の組織・機関の名前 大文字で始める the University of Tokyo, the World Health Organization
季節 小文字のまま summer, winter
学問の分野 小文字のまま(言語名は大文字) mathematics, economics, English
一般的に述べる政府・大学・企業 小文字のまま the government, universities, companies
5-2 強調のために大文字を並べない
VERY IMPORTANT のように大文字を並べて強調する形は、エッセイでは使いません。強調したい内容は、語の選び方と文の組み立てで示します。
△
This is a VERY serious problem.大文字で強さを足している
○
This is a particularly serious problem.語で程度を示す
ライティング・タスク2
IELTSエッセイの句読点:カンマを打つ場所と打たない場所
06 綴りを正確に書く
綴りは、Lexical Resource の記述に名前が出てくる項目です。Band 6 では、spelling and/or word formation の誤りが伝達を妨げない範囲であることが示されています。1語の誤りで観点のスコアが決まるわけではありませんが、同じ語を毎回落としているなら、その語を覚え直すだけで済む話です。
イギリス式とアメリカ式のどちらの綴りでも問題ありません。organise と organize、centre と center のどちらを選んでも構いません。IELTSが統一を求めているわけではありませんが、1本のエッセイの中で一方に決めておくと、読み手が表記のゆれに引っかからずに済みます。
6-1 落としやすい綴り
よくある誤り 正しい綴り 落としやすい部分
becuase because au の順番
enviroment environment n が2つ入る
goverment government n が抜けやすい
recieve receive ei の順番
beleive believe ie の順番
necesary necessary ss が2つ
definately definitely -ite- の部分
occured occurred r を重ねる
sucessful successful cc と ss
oppertunity opportunity or の部分
落としやすい語は人によって違います。添削で指摘された語だけを書き留めておくと、自分用の短いリストになります。10語ほどのリストでも、見直しのときに見る場所が決まります。
6-2 語形の取り違えも同じ観点で見られている
Band Descriptors の記述は spelling and/or word formation なので、綴りと語形は同じ観点に入っています。語尾を取り違えると、意味そのものが変わります。
✗
Economical growth has slowed in many countries.economical は「節約になる」の意味
○
Economic growth has slowed in many countries.economic は「経済の」
politics と political、benefit と beneficial のように、名詞と形容詞で語尾が変わる語は、書きながら形を選び間違えやすいところです。よく使うテーマの語だけでも、名詞と形容詞の両方をセットで覚えておきましょう。
IELTS学習アプリ
スペリング強化
音声を聞いて綴りを入力する練習ができます。落としやすい語を繰り返し確認するのに使えます。
07 提出前に表記を確認する順番
見直しに使える時間は限られています。5つを同時に見ようとすると抜けるので、見る順番を決めておきます。次の順なら、文の内容を読み返さずに形だけを追えます。
ステップ すること 確かめること
1 エッセイ全体を見渡す 改行が段落の切れ目だけに入っているか。段落の示し方が前半と後半でそろっているか
2 文の先頭をたどる 1字目が大文字になっているか。But や Also で始まっていないか
3 小文字の i を探す 単独の i が残っていないか
4 アポストロフィを探す 短縮形が残っていないか。所有格はそのままでよい
5 自分のリストの語を探す 落としやすい語として書き留めてある綴りだけを見る
内容の見直しとは別の作業として扱うと、両方が中途半端になりません。論の運びを直す見直しは書き終わりの前に、表記の確認は最後にまわします。
この順番で見るものは、どれも短時間で判断できるものばかりです。1文ずつ読み直す必要がないので、見直しに使える時間が少ないときでも一巡できます。
08 よくある質問
短縮形を使うと評価が下がりますか
短縮形そのものを取り出して評価する基準はありません。ただ、アカデミックな書き言葉では開いた形が標準なので、回答では I am や do not と書くほうが無難です。ジェネラル・トレーニングのタスク1で、友人にあてたくだけた語調の手紙を書く場合は事情が変わります。
But や Also で文を始めるのは間違いですか
間違いではありません。出版された文章にも出てきます。回答では However と In addition のほうが書き言葉の語調に合うので、迷わずに選べます。文の中で and や but を使うことには問題がありません。
イギリス式とアメリカ式の綴りは、どちらで書けばよいですか
どちらを使っても問題ありません。organise と organize、centre と center のどちらを選んでもよいでしょう。1本のエッセイの中で一方に決めておくと、表記のゆれが出ません。
段落の切れ目は、空行と字下げのどちらで示せばよいですか
どちらでも構いません。コンピューター受験では改行を1つ余分に入れて空行を作ると切れ目が見えます。紙の受験では字下げでも空行でも示せます。決めておきたいのは、1本のエッセイの中で混ぜないことだけです。
etc. や and so on を使ってはいけませんか
禁止されている表記ではありません。ただ、列挙をあいまいなまま打ち切る形になるので、そのあとに何が入るのかが読み手に分かりません。挙げるものを2つに決めて言い切るほうが、述べている内容が具体的になります。
綴りを1語間違えると Lexical Resource のスコアは上がりませんか
Band 6 の記述は、誤りが伝達を妨げない範囲であることを述べています。1語の誤りだけで観点のスコアが決まるわけではありません。気にしたいのは、同じ語を毎回落としている場合です。
大文字にするか迷ったときは、どう判断すればよいですか
特定のものを名指しする固有名詞かどうかで判断します。国名、都市名、言語名、曜日、月、特定の組織の名前は大文字で始めます。季節や学問の分野、一般的に述べる政府や大学は小文字のままです。
表記の確認は、見直しのどの段階でやればよいですか
内容の見直しとは分けて、最後にまわします。エッセイ全体を引いて改行の位置を見てから、文の先頭、小文字の i、アポストロフィ、自分が落としやすい綴りの順に追います。どれも数秒で判断できるので、残り時間が2分でも一巡できます。
09 まとめ
短縮形は開いて書き、etc. や & のような略記は語で書く
get は、earn・receive・become・arrive のように内容に合わせて書き分ける
文頭の But と Also は、However と In addition に置き換える
改行は段落を変えるときだけに使い、段落の示し方は1本の中でそろえる
文の1字目と I は大文字にし、強調のために大文字を並べない
綴りはイギリス式とアメリカ式のどちらでもよく、1本の中で一方に決める
短縮形、大文字小文字、改行は、書き終えたあとに形を見るだけで確認できます。get や文頭の接続語の選び方は、前後の内容まで見て決めます。綴りは覚えているかどうかで決まるので、添削で指摘された語を書き留めておきましょう。次の1本で同じ指摘が返ってこなければ、そのぶんの時間を内容の組み立てにまわせます。