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タスク深掘りシリーズ:大学の学費負担をめぐる前提の読み方・アイデア・各国の制度【第2回】

執筆:高橋 響 公開日:

大学の学費は、学生本人が全額を負担すべきか。IELTSライティング・タスク2でこの主張に当たると、答案は「学費が高すぎるので政府が助けるべきだ」という方向へ流れがちです。ところが、このタスクが賛否を求めているのは学費の高さそのものではありません。

タスク深掘りシリーズの第2回では、本サイトに収録している大学の学費負担のタスクを取り上げます。理由まで書き込まれた主張をどこまで争えるのか、賛成側と反対側それぞれの定番アイデアとその掘り下げ方、イングランド・オーストラリア・ドイツ・北欧の制度、学費と公費をめぐる語彙までを解説します。モデルアンサーそのものは載せませんが、自分で作るときの流れも最後に紹介します。

01このタスクでは何が問われているのか

取り上げるのは、本サイトに収録しているライティング・タスク2のタスクです。Opinion型(To what extent do you agree or disagree?)で、レベルは中級に分類しています。読み方から語彙までを1問ずつ通しで準備する手順は、シリーズのハブ記事にまとめています。

タスク深掘りシリーズ タスク深掘りシリーズ:アイデア・実例・語彙・モデルアンサーまで1問ずつ徹底解説【総論】

Some people believe that university students should pay all the costs of studies because university education only benefits students themselves, not society as a whole. To what extent do you agree or disagree?

(大学教育が利益をもたらすのは学生本人だけであって社会全体ではないのだから、大学生は学びにかかる費用の全額を負担すべきだ、と考える人がいます。この意見にどの程度賛成しますか、あるいは反対しますか。)

1文が長く、because でつながれた理由まで入っています。この形のタスクでは、どこまでが賛否の対象なのかを取り違えたまま書き始めることが起きます。まず、実際に起きる読み違いから見ていきましょう。

1-1 because 以下を背景の説明として読み飛ばす

because のうしろは、because の前を支える理由です。ここを「そういう事情がある」という背景の説明として受け取ると、賛否の対象が学費の負担だけに縮みます。

賛否の対象=学生が学費を負担すべきかどうか賛成なら「本人のためだから当然だ」、反対なら「学費が高すぎて払えない」で終わり、社会が受け取っているものの話が出てこない

賛否の対象=「学生本人しか利益を受けないのだから全額を負担すべきだ」という主張全体理由の側を否定して反対する道が開ける。社会も利益を受けていると示せれば、それだけで反対の根拠になる

ここが、第1回で扱った砂糖税のタスクとの違いです。あちらの1行目(多くの国が高糖分の食品と飲料に税を導入した)は、タスクの中では前提として受け入れることになる事実でした。今回の because 以下は事実として与えられているのではなく、ある人たちの考えの一部として書かれています。だから争えます。

賛否の対象がどこまで広がっているかは、その文が誰の考えとして書かれているかで決まります。Some people believe that ... because ... の形なら、because のうしろも believe の中に入っています。

1-2 all と only を軽く読む

この1文には、範囲を限定する語が2つ入っています。費用の側の all the costs と、利益を受ける人の側の only benefits students themselves です。読み飛ばすと、立場の取り方がずれます。

賛否の対象=学生が費用を負担すべきかどうか「学生も一部は負担すべきだ」と書いて賛成のつもりになる。主張は全額負担なので、実際にはこれは反対側の議論

賛否の対象=学生が全額(all the costs)を負担すべきかどうか一部負担という立場は、部分的に反対する立場として組み立てられる。To what extent なので、この立場がそのまま答えになる

all や only のように限定の強い語が入った主張は、当てはまらない例を示すと、そこまで言い切れるのかを疑いやすくなります。学費を一部でも公費で賄っている国があれば、全額負担が唯一の形ではないと言えますし、大学教育から利益を受けている人が学生以外にもいれば、only の部分は限定として弱くなります。この性質を利用した立場の作り方は、別の記事で扱っています。

タスクの構造を分解する

読み違いを避けるために、このタスクを要素に分けてみます。

要素このタスクの場合
前提大学教育が利益をもたらすのは学生本人だけで、社会全体ではない。この一文は、賛否の対象になっている考えの一部として書かれている
論じる対象大学生が学びにかかる費用の全額を負担すべきだという主張
問われていることその主張にどの程度賛成するか、あるいは反対するか

タスクの中で「前提」と呼べるものには2種類あります。書かれている事実として受け入れて論じるものと、主張の一部として書かれていて争えるものです。今回は後者なので、反対側のボディを1つ、理由そのものへの反論に使えます。書き始める前にどちらなのかを見分けておくと、どこを争うかが決まります。

もうひとつ、the costs of studies という言い方にも幅があります。授業料だけを指すのか、生活費や教材費まで含むのかは、この1文からは決まりません。答案の中で先に範囲を決めておくと、議論が揺れずに済みます。tuition fees and living costs のように書いてしまえば、読み手も同じ範囲で読んでくれます。

02なぜ大学の学費のテーマが繰り返し出るのか

このテーマが出続けている理由は、各国の制度がいまも動いていて、しかも答えが1つに定まっていないからです。OECDの Education at a Glance 2025 は、2023年時点の加盟国の高等教育の財源を4つの型に分類しています。授業料がほぼ無償で支援も手厚い型、授業料が高く学生支援も整っている型、授業料が中程度で支援の対象を絞る型、授業料が高いのに公的な支援が限られる型の4つです。

制度は固定されているわけでもありません。イングランドの学部の授業料の上限は、2017年から9,250ポンドで据え置かれていましたが、2025/26年度に9,535ポンド、2026/27年度に9,790ポンドへ引き上げられました。ドイツでは2006年に一部の州が授業料を導入し、2014年までにすべての州が廃止しています。制度が動いている以上、賛成と反対の両方に材料があります。

日本の感覚のまま書くとずれる

日本の国立大学の授業料には、文部科学省令が定める標準額があります。2025年度の標準額は授業料が535,800円、入学金が282,000円で、2004年度の法人化以降、各大学は標準額の20%増までの範囲で自分の金額を決められます。標準額そのものは20年にわたって据え置かれてきました(文部科学省資料をもとにした旺文社教育情報センターの集計、2025年)。

この環境で育つと、学費は家庭が用意するものだ、という感覚から出発しがちです。すると「学生が全額を負担すべきだ」という主張が、それほど強い立場には見えません。逆に、公立の年間授業料が500米ドルを下回る北欧の制度を知っている読み手から見ると、同じ主張はかなり踏み込んだ立場に見えます。

賛成側のボディを書き終えたときに、議論が「学費は本人が払うのが普通だ」という一文の言い換えだけで進んでいたら、日本の相場を世界の標準として扱っていないかを確認してみるとよいでしょう。

このタスクの準備は、他のタスクにも使える

このタスクは、費用を利用する側が負担すべきか、それとも公費で賄うべきか、という問いの一例です。この問いに答えるときの論じ方は、対象を入れ替えてもそのまま働きます。利用しない人まで負担するのは公平か、負担を求めると利用できない人が出ないか、その活動から利益を受けているのは利用者だけか。この3つの観点は、道路、水道、美術館、公害の後始末といったタスクでも同じように使えます。

本サイトに収録しているアクティブなタスク509件のうち、費用を利用する側と公費のどちらが負担すべきかを論じるタスクは10件あります(2026年8月26日時点)。このタスクを1問きちんと準備しておくと、残りの9件にも材料を流用できます。

収録タスクの例このタスクの準備がそのまま使えるところ
Many museums charge for admission while others are free. Do you think the advantages of charging people for admission outweigh the disadvantages?利用する人以外にも利益が及ぶかどうかという論点、負担を求めたときに利用をやめる層が出るという論点
As the number of cars increases, more money has to be spent on road systems. Some people think the government should pay for this. Others, however, think that drivers should cover the costs.受益と負担を一致させるという考え方、その考え方が働く条件
Access to clean water is a basic human right. Therefore, every home should receive a water supply free of charge. To what extent do you agree or disagree?権利として保障する範囲と、費用を誰が持つかを分けて論じる形

03賛成側でよく使われるアイデアと、その掘り下げ方

賛成側で実際によく書かれるのは、収入が上がるのは本人だから本人が払う、公費にすると進学しない人まで負担する、自分で払うと大学と講座を厳しく選ぶ、というあたりです。どれも筋の通った議論ですが、思いついたところで止めて次の段落へ進むと、1文で言い切れる内容が段落になってしまいます。

3-1 収入が上がるのは本人だから、本人が払う

最初に浮かぶ議論です。ここで止まると、University graduates earn more money, so they should pay for their own education. の1文で終わります。読み手は納得しますが、それ以上の情報を受け取れません。

掘り下げるときに考えたいのは、その見返りがどれくらいで、いつ手に入るのか、という点です。OECDの集計では、大学を出た人が生涯で得る金銭的な利益は、費用と在学中に得られなかった収入を差し引いたあとでOECD平均が男性364,200米ドル、女性300,900米ドルと報告されています(Education at a Glance 2025、2022年の数字)。金額の大きさは、賛成側の主張を支えます。

そのうえで一段進めると、議論の形が変わります。ここまでは、利益が本人に集中するのだから費用の少なくとも一部は本人が持つのが筋だ、という負担の正当性の話です。ここから先は、どう払わせるかという設計の話に移ります。この見返りが手に入るのは卒業後で、進学を決める時点では手元にありません。つまり「本人が払う」という考え方を実際の制度にするには、在学中の一括払いではなく、支払いの時期を後ろへずらす仕組みが要ります。ここまで書くと、反対側から出てくる「払えない人が進学できなくなる」という批判に先回りできます。

止まっている書き方掘り下げた書き方
主張大学を出ると収入が上がるので、本人が費用を払うべきだ見返りが本人に集中するので本人が払うのが筋だが、その見返りは卒業後にしか出ない
次に書けることだから公費は不要だ、で終わる支払いの時期をずらす仕組みが要る、という設計の話へ進める
反論への強さ「進学できない人が出る」で崩れるその反論への答えを自分の段落に含めている

3-2 公費にすると、大学に行かない人まで負担することになる

2つ目は公平性の議論です。大学に進学しない人も税は納めているので、高等教育を公費で賄えば、進学しない人が進学する人を支えることになります。

この議論を一段深くするのは、実際に誰が進学しているのかというデータです。イングランドでは、親の少なくとも一方が高等教育を修了している25歳から34歳のうち76%が自分も高等教育を修了しているのに対し、親が後期中等教育を修了していない層では37%にとどまります。その差は39ポイントに達します(Education at a Glance 2025、2023年の数字)。進学の機会がもともと偏っているなら、公費で賄う制度が届く先も偏ります。

ここで気づいておきたいのは、同じデータが反対側でも使えることです。偏りがあるからこそ費用の壁を下げる必要がある、という議論も同じ数字から出てきます。両側で使えるデータを1件持っておくと、結論で相手側の言い分に触れるときに材料を探し直さずに済みます。

ライティング・タスク2 博物館・美術館は入場料を取るべきか?:運営費と政府援助から考えるタスク2の背景知識

3-3 自分で払う側になると、大学と講座を厳しく選ぶ

3つ目は、費用を負担する立場になると選び方が変わる、という議論です。ここも If students pay, they will study harder. だけでは弱くなります。学習態度の話は本人の心がけの問題に見えて、制度の是非を支える根拠になりにくいからです。

この論点が強くなるのは、大学の側に働く力として書いたときです。学生が費用と卒業後の進路を見比べて進学先を選ぶようになれば、選ばれない講座は定員を埋められません。大学は講座の構成を見直す動機を持ちます。話の主語が学生から大学へ移るので、政策としての効果として論じられます。

ただし、この仕組みが働くのは、進学前に比べられる情報がある場合に限られます。卒業生の進路や就職の状況が公開されていなければ、学生は値段だけを見ることになり、選び直す先がないまま負担だけが増えます。条件を添えておくと、反論を受けても立場が崩れません。

04反対側でよく使われるアイデアと、その掘り下げ方

反対側は、社会も利益を受けている、全額負担は進学の判断を変える、実際の制度は学生と公費のどちらか一方に寄せていない、という順で書けます。1つ目はタスクの理由の部分に正面から答えるもので、このタスクではもっとも強い反論になります。

4-1 利益を受けているのは学生だけではない

タスクの because 以下は、大学教育の利益が学生本人に限られる、という主張でした。ここを崩せば、全額負担という結論の土台が消えます。反対側のボディの1つをこれに使うと、議論がタスクの文言に噛み合います。

気をつけたいのは、「社会も得をする」で止めてしまうことです。誰が何を受け取っているのかを1つに絞ると、段落に中身が出ます。たとえば医師、看護師、教員、土木や電気の技術者は大学で養成されていて、その人数が減れば、大学に通っていない人の生活にも影響が出ます。学費を1円も払っていない人が、医療や学校教育という形で大学教育の成果を受け取っているわけです。

お金の流れでも同じことが言えます。収入が高いほど納める所得税は増えるので、公費で支えた分の一部は税として戻ってきます。ただし、いくら戻るのかは税率と就職先によって変わるので、金額を断定せずに仕組みとして書いておくほうが安全です。

この段落を書くときは、理由を否定するところと、では誰がいくら払うべきかを決めるところを分けておきましょう。社会も利益を受けていると示しても、それだけで「全額を公費で賄うべきだ」とは決まりません。分けて書けば、結論で立場を決めやすくなります。

4-2 全額負担は、進学するかどうかの判断そのものを変える

2つ目は、費用が進学の決定に与える影響です。ここは実際に検証されている論点なので、実例を1件添えると議論が締まります。

ドイツでは2006年に一部の州が年1,000ユーロを上限とする授業料を導入し、2014年までに全州で廃止しました。この期間を分析した研究は、授業料の導入が新規の在籍に最大4.5ポイントの負の影響を与えたと推計しています。同じ研究は、それ以前の分析では有意な効果が出ていなかったことにも触れています(Görgen and Schienle、2021年)。

結果が研究によって割れていること自体が、この論点の書き方を決めてくれます。「学費を上げれば進学者が減る」と言い切るのではなく、金額の水準と、支払いの時期と、支援制度の有無によって結果が変わる、と条件つきで書きます。条件つきの主張は、Task Response で見られる立場の一貫性とも相性がよく、結論まで同じ線で通せます。

4-3 実際の制度は、学生負担か公費負担かの二択になっていない

3つ目は、all という語に正面から答える議論です。02で触れたOECDの4つの型は、どれも授業料と学生支援の組み合わせで説明されています。授業料を高く設定している国が、給付や貸与の制度を用意していないわけではありません。

イングランドはその代表です。学部の学生が負担する授業料は年13,135米ドルで、データのある29の国と地域の平均3,186米ドルを大きく上回ります。それでも学生の93%が所得連動型のローンを利用していて、返済は所得が基準額を超えてから始まります(Education at a Glance 2025)。学生が全額を負担しているように見える制度でも、いつ払うかは公的な仕組みが決めているわけです。

誰が負担するかは、学生か公費かのどちらかに寄せる話ではなく、どの費用を、いつ、どの割合で持つかという設計の話になっています。極端な形で書かれた主張に対しては、当てはまらない例を挙げて、そこまで言い切れるのかを問う書き方ができます。

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両側を見たあと、自分の意見をどう決めるか

このタスクの設問は To what extent do you agree or disagree? なので、全面的に賛成、全面的に反対のほかに、程度で答える道があります。決め方の目安を挙げておきます。

  • 理由の側から決める:大学教育の利益が学生本人に限られるという見方に同意できないなら、主張にも反対になります。この道筋だと、導入から結論まで1本の線で通せます
  • 範囲で決める:授業料は学生が負担し、生活費や進学の機会は公的に支える、というように線を引きます。部分的に賛成する立場を取るなら、どこで線を引くのかを導入で1文示しておきます
  • 条件で決める:所得連動型の返済のような仕組みがあるなら賛成、進学の時点で全額を用意させるなら反対、という決め方です。制度の設計を条件にすると、4-2で見た「結果は条件で変わる」という議論とつながります

避けたいのは、両側を並べたまま、結論で初めて立場を示すことです。Opinion型のタスクでは、導入の段階で立場を示しておくほうが、読み手が段落の役割を追いやすくなります。

05答案に入れられる実例はどれか

このテーマでは、公表されている資料で確認できる実例が見つけやすくなっています。次の4件を覚えておくと、賛成側にも反対側にも使えます。

ひとつ断っておくと、国どうしを比べられる形で公表されているのは、学部段階の授業料と学生支援の数字が中心です。タスクは大学教育全体を扱っていますが、答案では制度の型を示す例として使うと収まりがよくなります。

国と時期制度の仕組み報告されていること
イングランド(英国)
2025/26年度から
学部の授業料に上限を設ける。2017年から9,250ポンドで据え置かれていたが、2025/26年度に9,535ポンド、2026/27年度に9,790ポンドへ引き上げられた。費用は所得連動型のローンで賄い、返済は所得が基準額を超えてから始まる学部生が負担する授業料は年13,135米ドルで、データのある29の国と地域の平均3,186米ドルを上回る。学生の93%がローンを利用し、卒業時の債務は平均68,683米ドルを超えると報告されている(OECD、Education at a Glance 2025)
オーストラリア
1989年
HECS。学生に費用の一部を求めるが、返済は所得が基準額に達してから。全国規模の所得連動型の負担制度としては世界初とされる(UNESCO)2025-26年度の返済が始まる所得の基準額は67,000豪ドル。2025年7月からは、基準額を超えた部分にだけ返済率をかける方式に変わった
ドイツ
2006年に導入、2014年までに廃止
一部の州が年1,000ユーロを上限とする授業料を導入した。導入するかどうかは州ごとの判断に委ねられていた導入期間の新規の在籍に最大4.5ポイントの負の影響があったとする推計がある一方、それ以前の分析では有意な効果が出ていなかった(Görgen and Schienle、2021年)
OECDがこの類型に挙げるデンマーク・フィンランド・ノルウェー・スウェーデンなど
2023年時点
公立の高等教育機関の年間授業料が500米ドルを下回り、学生の半数を超える人が給付か貸与を受けているOECDは、進学時の負担を抑える代わりに、卒業後の所得税を通じて集団で費用を賄う選択だと説明している(Education at a Glance 2025)

制度の型が4つに整理されていること自体も、答案で使えます。全額負担か全額公費かの二択ではないと1文で示せるので、all を含む主張への反論に向いています。

答案での使い方

主張のあとに1文か2文で添える、数字は原則として1つに絞る、出典を詳しく示す必要はない、といった実例の扱い方はハブ記事にまとめています。このタスクでは、その差が次のように出ます。

In England the fee cap rose from 9,250 pounds to 9,535 pounds in 2025 and to 9,790 pounds in 2026, and 93 per cent of students borrow through a public loan scheme, graduating with debts of over 68,000 US dollars.情報は正しいが、数字が多く、何を主張したいのかが見えない

Even where students are charged the full fee, the state still decides when they pay it. In England, over ninety per cent of students borrow through a public loan scheme and repay only once their income passes a set threshold.主張を述べたうえで、それを裏づける例として続けている。数字は93%の1つに絞っている

イングランドの例なら、授業料の額か、ローンを利用している割合か、どちらか一方に絞ります。両方を入れると、制度の説明のほうが主張より長くなります。

06中級と上級で押さえたい語彙とコロケーション

このテーマで語彙が伸びない原因は、単語を知らないことよりも、動詞と前置詞の組み合わせを外すことにあります。pay、cost、benefit のような語はどれも基本語ですが、何とつなぐかで読みやすさが変わります。コロケーションの単位で覚えると、そのまま答案に移せます。

中級(バンド6を目指す段階)

コロケーション意味と使いどころ
tuition fees授業料。複数形で使うのが基本。金額を1つ挙げるときだけ a tuition fee of ... と単数にできる
pay for their own education自分の学費を自分で払う。pay は前置詞 for を伴う
cover the costs of ~〜の費用を賄う。タスク文の the costs of studies と同じ組み合わせ
afford to go to university大学に通う金銭的な余裕がある。afford のうしろは to不定詞
benefit from ~〜から利益を得る。動詞として使うときの前置詞は from
benefit society as a whole社会全体に利益をもたらす。他動詞の用法で、タスク文で使われている形
higher education高等教育。大学や大学院をまとめて指す語。university education より広い範囲を指せる
government funding政府の資金。funding は不可算
financial support経済的な支援。support も不可算
take out a student loan学生ローンを組む。take out と組み合わせる
pay back a loanローンを返済する。repay a loan も同じ意味で使える
a well-paid job収入のよい仕事。賛成側で見返りを説明するときに使う

上級(バンド7以上を目指す段階)

コロケーション意味と使いどころ
an income-contingent loan所得連動型のローン。返済の開始も金額も所得に応じて決まる制度を1語で示せる
a repayment threshold返済が始まる所得の基準額。オーストラリアやイングランドの制度を説明するときに必要になる
subsidise higher education高等教育を公費で補助する。他動詞なので目的語を直接続ける。米つづりは subsidize
publicly funded universities公費で賄われている大学。publicly funded は形容詞のかたまりとして前から名詞を修飾する
cost-sharing費用の分担。学生と公費がどの割合で負担するかを指す語で、二択にしない立場を示せる
the graduate premium大学を出た人の収入が、そうでない人より高い分。03の議論を1語でまとめられる
a means-tested grant世帯の収入などに応じて支給される給付。財源の議論で使う
widen access to higher education高等教育への門戸を広げる。access はこの意味で不可算
act as a barrier to ~〜への障壁として働く。Tuition fees can act as a barrier to entry.
deter students from -ing学生が〜するのを思いとどまらせる。前置詞のうしろは動名詞
spillover benefits費用を払った本人以外にも及ぶ利益。04-1の議論をまとめられる
shift the burden onto ~負担を〜に移す。shift the burden onto individual students
recoup the cost of ~〜の費用を回収する。The state recoups part of the cost through income tax.
a skilled workforce技能を持った労働力。社会の側の利益を説明するときの定番

tuition と tuition fees はどう使い分けるか

Cambridge の辞書は tuition に、教えるという行為と、そのために払うお金の両方の語義を載せています(2026年8月26日時点)。つまり tuition だけでも授業料を指せますが、指導そのものを指すこともあります。答案では tuition fees と書いておくと、どちらの意味かで読み手を迷わせません。

cost と fee も混ざりやすい組み合わせです。fee は特定のサービスに対して請求される額を指し、cost は費用の総額を指す広い語です。タスク文の the costs of studies には、授業料のほかに生活費や教材費も入り得ます。答案で範囲を決めておくなら、tuition fees and living costs のように並べて書けば伝わります。

このテーマで出やすい誤り

University education benefits to society.benefit を「利益をもたらす」の意味で使うときに to は入らない

University education benefits society. / Society benefits from university education.他動詞なら目的語を直接続ける。「利益を得る」の意味なら benefit from

Many students cannot afford going to university.afford のうしろに動名詞は続かない

Many students cannot afford to go to university.to不定詞で受ける。名詞なら afford the fees のように直接続けられる

The government should subsidise to universities.subsidise は他動詞なので前置詞は要らない

The government should subsidise universities. / The government should provide subsidies to universities.名詞の subsidies を使うときだけ to を伴う

IELTS学習アプリ コロケーション検索 単語やフレーズを入力すると、その語と自然に組み合わさる表現を確認できます。tuition や funding のようなテーマ語を入れて、動詞と前置詞の組み合わせを確かめておきましょう。

07モデルアンサーはどう作るか

ここまでで、タスクの読み方、両側のアイデア、実例、語彙がそろいました。残るのは、これを1本のエッセイにまとめる作業です。この記事にモデルアンサーを載せていないのは、完成品を先に読むと、そこに書いてあった議論しか浮かばなくなるからです。自分の材料で1本書いたあとに、比べる相手としてモデルアンサーを用意するほうが学習になります。

作る手順はどの回でも同じなので、5つのステップとモデルアンサーの使い方はハブ記事にまとめています。このタスクで進めるときは、タスク検索で university costs と入力し、問題タイプを Opinion に絞ると見つかります。

このタスクで確認したいことが2つあります。1つは、入力した2つのメインアイデアのうち少なくとも1つが、because 以下の理由に触れているかどうか。両方とも学費の高さや奨学金の話になっていたら、01で見た読み違いがそのまま答案に出ています。もう1つは、立場を all the costs に対して決めているかどうか。「学生も一部は払うべきだ」で立場を作ったつもりになっていないかを見ておきましょう。

IELTS学習アプリ タスク検索 収録しているライティング・タスク2のタスクをキーワードと問題タイプで検索し、メインアイデアの検討からモデルアンサーの作成まで進められます。この記事で扱ったタスクも university costs で検索すると見つかります。

08よくある質問

大学の学費のタスクでは、賛成と反対のどちらを選ぶと有利ですか。

有利な側はありません。採点で見られるのは立場そのものではなく、選んだ立場を最後まで一貫して支えられているかどうかです。ただしこのタスクは all the costs と only benefits students themselves という強い言い方を含むので、全面的に賛成する立場は支えるのが難しくなります。程度で答える道が設問に用意されているので、そちらを使うと組み立てやすくなります。

because 以下の理由に反対して、結論では賛成する、という書き方はできますか。

できますが、その道筋をとるなら理由を1文で示しておく必要があります。大学教育は社会にも利益をもたらすが、それでも費用は本人が負担すべきだ、と主張するなら、なぜ利益の広がりと費用の負担が別の話なのかを説明することになります。説明を省くと、導入と本文で言っていることが食い違って見えます。

all the costs とありますが、一部負担という立場は賛成と反対のどちらになりますか。

反対側に入ります。タスクの主張は全額を学生が負担すべきだというものなので、一部でよいという立場はその主張を否定しています。ただし全面的な反対とは違うので、導入で「一定の負担には賛成するが、全額には反対する」と範囲を示しておくと、読み手が立場を取り違えません。

日本の学費の例を答案に使ってもよいですか。

使えます。国立大学の授業料に標準額があり、各大学が20%増までの範囲で決めているという仕組みは、公費と学生負担の組み合わせの一例として説明できます。ただし答案では、自分の国の事情を並べるだけにせず、その例から何が言えるのかを1文で添えると伝わります。

tuition と tuition fees は、どちらを使えばよいですか。

授業料を指したいときは tuition fees が確実です。Cambridge の辞書は tuition に、教えるという行為と、そのために払うお金の両方の語義を載せています。tuition だけでも授業料の意味になりますが、fees を添えておけば読み手が迷いません。

各国の制度の数字を覚えていないと、この種のタスクは書けませんか。

数字がなくても書けます。答案に必要なのは、費用の負担のしかたが国によって違うという事実と、その違いが何を生むのかという説明です。数字を1つ添えられると主張の裏づけになりますが、原則として1つに絞り、出典を詳しく示す必要はありません。

income-contingent loan のような専門的な語は、使ったほうがよいですか。

意味を説明できる範囲で使うと効果があります。この語は「所得が一定の水準に達してから返済が始まるローン」という仕組みを1語で示せるので、説明の語数を節約できます。意味があいまいなまま使うと、かえって内容が伝わらなくなるので、自信がなければ repay only after their income reaches a certain level のように書き下しても構いません。

このタスクの準備は、他のタスクにも使えますか。

使えます。費用を利用する側と公費のどちらが負担すべきかを論じるタスクは、本サイトに収録しているアクティブなタスク509件のうち10件あります(2026年8月26日時点)。美術館の入場料、道路の整備費、水道、公害の後始末といったテーマで、受益と負担をどう対応させるかという同じ観点を使えます。

09まとめ

このタスクの難しさは、テーマの知識ではなく1文の構造にあります。because でつながれた理由まで含めて「ある人たちの考え」として書かれているので、理由の側を争えます。そこに気づけるかどうかで、書ける議論の数が変わります。

  • because 以下も賛否の対象に入っている。背景の説明として読み飛ばさない
  • all the costs と only benefits students themselves を落とさない。範囲を限定する語が立場の取り方を決める
  • 賛成側は、見返りが本人に集中することを示したうえで、その見返りが卒業後にしか出ないところまで進める
  • 反対側は、利益を受け取っている人を1つに絞って具体的に書く。理由を否定することと、費用の分担を決めることは別の話として扱う
  • 実例は、イングランド、オーストラリア、ドイツ、北欧の4件から1件を選び、数字は原則として1つに絞る
  • 語彙は benefit、afford、subsidise の前置詞から固める。tuition は fees を添えて使う

ここまでの準備ができたら、あとは自分で1本書いてみる段階です。手順と、他の回で扱っているタスクの一覧はハブ記事にまとめています。

タスク深掘りシリーズ タスク深掘りシリーズ:アイデア・実例・語彙・モデルアンサーまで1問ずつ徹底解説【総論】
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Hibiki Takahashi

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Hibiki Takahashi

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象にIELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住14年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

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