タスクを1問選んで、読んで、アイデアを出して、書いて、添削を受ける。そこまでやったあと、その1問から何が手元に残っているでしょうか。答案そのものは残っても、次に別のテーマのタスクに当たったときに使えるものが十分に残っていないことがあります。
タスク深掘りシリーズでは、ライティング・タスク2のタスクを1問ずつ取り上げて、読み方から、賛成側と反対側のアイデア、答案に入れられる実例、レベル別の語彙、モデルアンサーの作り方までを通しで扱います。この記事はシリーズのハブで、毎回共通になる手順をここにまとめています。個別の記事はここから辿れます。
目次
タスク深掘りとは何をすることか
手順1 タスクを3つの要素に分解する
手順2 両側のアイデアを出し、一段掘り下げる
手順3 実例を用意し、答案への入れ方を決める
手順4 語彙をコロケーションで拾う
手順5 モデルアンサーを作る
シリーズの記事一覧
よくある質問
まとめ
01 タスク深掘りとは何をすることか
タスク深掘りとは、ライティング・タスク2のタスクを1問だけ選び、答案を書く前後の作業を最後まで済ませてしまうことです。取り上げるのは、本サイトに収録しているアクティブなタスク509件(2026年8月26日時点)の中から1問です。
手順 すること できあがるもの
1 タスクを前提・対象・問われていることの3つに分解する そのタスクで論じる範囲
2 両側のアイデアを出し、一段掘り下げる ボディに使えるメインアイデア
3 実例を集め、答案への入れ方を決める 裏づけに使える2件から3件の事例
4 語彙をコロケーションで拾う 中級と上級それぞれの表現リスト
5 モデルアンサーを作り、自分の答案と比べる 次に直すところ
なぜ1問を深く掘るのか
タスク2で出るテーマは毎回違います。それでも、論じ方のほうは使い回せます。政府が価格や規制で国民の行動を変えてよいか、という問いを1問きちんと準備しておくと、砂糖税、たばこ税、アルコールの販売規制、ジャンクフードの広告制限が、同じ論じ方で扱えます。1問を最後まで準備する作業は、その1問のための準備で終わりません。
逆に、毎回ちがうタスクを1問ずつ書いて添削を受けるだけだと、答案は増えても、次のタスクに持ち越せるものが十分に増えないことがあります。書くこと自体からも時間配分や自分の弱点は見えてきますが、書く前と書いたあとの作業を省くと、同じ深さの答案を量産することになります。
このシリーズが想定している読者
内容としては書けているのに Task Response が伸びない、という段階の方を想定しています。文法や語彙のミスが原因でスコアが止まっている場合は、先にそちらを扱った記事のほうが役に立ちます。アイデアは浮かぶが、それを並べたところで段落が終わってしまう。この形で止まっているなら、手順2以降で扱う掘り下げの作業から始めるとよいでしょう。
02 手順1 タスクを3つの要素に分解する
タスクを読んだら、書き始める前に次の要素に分けます。どのタスクでも同じ枠に入ります。
要素 何を書き出すか 答案での扱い
前提として与えられている事実 タスク文が事実として述べている部分 タスクの中では前提として受け入れる。ここを否定する議論は成り立たない
論じる対象 設問が指しているもの。this や these が受けている中身 本文の各段落が、この対象から離れないようにする。ずれると Task Response に響く
問われていること Discuss both views、To what extent などの問いかけの部分 要求されている作業の数だけ、答案に対応する部分を用意する
砂糖税のタスクを例にすると、次のように入ります。前提が「多くの国の政府が高糖分の食品と飲料に特別な税を最近導入した」、対象が these taxes、問われていることが「両方の見方を論じ、自分の意見を述べる」です。
前提の欄が埋まると、書いてはいけない方向がひとつ決まります。多くの国で導入済みだとタスク文が言っているので、そんな税は現実には不可能だという反論は成り立ちません。前提を先に書き出しておくと、この種の空振りを防げます。
対象がずれていないかを確かめる
このうち、答案でもっとも崩れやすいのが対象です。タスクの中の一語を拾ったあと、そこから一般論のほうへ広がってしまうと、書いている本人には正しく見えたまま議論が別のものになります。書き終えたあと、各ボディがその対象そのものについて論じているかを確認します。対象を指す語が本文中に出てきているかを見るのは、そのための簡単な確認方法のひとつです。代名詞や因果関係でつながっていれば、同じ語が毎回出てこなくてもかまいません。
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03 手順2 両側のアイデアを出し、一段掘り下げる
アイデアは、他人が用意したものを読む前に、自分で出します。先に完成品を読むと、そこに書いてあった議論しか浮かばなくなるからです。試験本番でアイデアを出すのは自分なので、まず自分で書き、そのあとで抜けを埋める順にします。
浅いまま止まっているサイン
思いついたアイデアが、次のどれかの形で終わっていたら、まだ一段足りていません。
評価だけで終わっている: 便利、効率的、負担が大きい、健康によいといった評価で止まっている。そう言えるのはなぜか、誰にとってそうなのかが書かれていない
別のタスクにそのまま貼れる: その段落を別のテーマのタスクの下に置いても違和感がないなら、そのタスク固有の議論になっていない
反論に一言で崩れる: 「そんなに変わらない」で終わってしまうなら、そうなる条件を自分で示せていない
掘り下げの向き
一段進めるときは、そのアイデアがなぜ成り立つのかを、対象の性質から説明します。砂糖税の例なら、値段が上がれば消費が減る、で止めずに、砂糖入り飲料には水や無糖のお茶という代替品が身近にあるので値上げが購入の変化につながりやすい、というところまで書きます。この一段があると、代替のきかない食品に課税した場合との違いへ進めます。
もうひとつの向きは、反対側の議論への先回りです。賛成側のボディで、反対側から出てきそうな批判にも触れておくと、自分の主張がどの条件で成り立つのかを示せます。両側を別々に書いて終わるより、議論が噛み合います。
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04 手順3 実例を用意し、答案への入れ方を決める
深掘りの段階では、1つのテーマにつき2件から3件ほど用意しておけば十分です。賛成側に1件、反対側に1件、規模や広がりを示すものが1件あれば、ボディの両方をまかなえます。答案に実例を2件も3件も入れるという話ではなく、書くときに選べる状態にしておくための準備です。
答案での入れ方
実例は、扱いを誤ると答案の質を下げます。数字を並べただけの文が入ると、その段落の議論がそこで止まってしまうからです。次の形で扱います。
主張のあとに続ける: 先に自分の主張を述べ、そのあとに実例を1文か2文で添える。実例から書き始めると、何を示すための例なのかが読み手に伝わらない
数字は原則として1つに絞る: 数字を詰め込みすぎると、報告書のような文章になりやすい。制度の仕組みか、結果の数値か、どちらか一方でよい
覚えていないなら国名と方向だけ: In the UK, a levy on high-sugar drinks led manufacturers to cut the sugar content of their products. のように、数字を出さずに書ける。間違った数字を書くより安全
出典を詳しく示す必要はない: According to a study published in ... のように研究名まで書いても、それで答案の評価が上がるわけではない。触れるなら国名や年に留める
その例が議論を進めているかを確かめる
実例を書くこと自体が目的になっていないかは、その1文を消してみると分かります。消しても段落の主張が変わらないなら、その例は議論を進めていません。入れる位置か、選んだ例そのものを見直します。
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具体例は入れるべきか:議論を深める例と、ただの繰り返しになる例の違い
06 手順5 モデルアンサーを作る
ここまでで、読み方、両側のアイデア、実例、語彙がそろいます。最後に、それを1本のエッセイの形にまとめます。本サイトのアプリ「タスク検索」でも、この順番で学習を進められます。
ステップ すること 確かめること
1 タスクを探す キーワードと問題タイプで絞り込む 選んだタスクを、手順1の3要素に分解できているか
2 自分でアイデアを書く 「メインアイデアを考える」から、ボディ2つのメインアイデアを入力する。Opinion型とDiscussion型では、自分の立場を入れる欄も出てくる。日本語でも入力できる 2つのメインアイデアが、どちらも論じる対象の話になっているか
3 論理をチェックする 入力したアイデアに対してフィードバックを受け取る タスクからずれていないか、2つのボディが同じことを言っていないか
4 定番のアイデアを見る 「メインアイデアを表示する」で、両側によく使われるアイデアが並ぶ。各側から2つまで選べる 自分が思いつかなかったアイデアはどれか
5 モデルアンサーを作る 自分のアイデア、または選んだ定番のアイデアからモデルアンサーを生成する。段落ごとに語数が表示される 自分が書いた答案と、どこが違うか
順番として大事なのは、2を3や4より先に済ませることです。定番のアイデアを先に見てしまうと、その中から選ぶだけの作業になり、自分で考える工程が消えます。まず自分で書き、そのあとで抜けを埋める順にしましょう。
IELTS学習アプリ
タスク検索
収録しているライティング・タスク2のタスクをキーワードと問題タイプで検索し、メインアイデアの検討からモデルアンサーの作成まで進められます。このシリーズで扱うタスクも、すべてここから探せます。
出てきたモデルアンサーをどう使うか
生成したモデルアンサーを読んで納得して終わりにすると、次に同じタスクを書いてもほとんど変わりません。次のどれか1つをやってから閉じるようにしましょう。
自分の答案と並べて、段落の役割を比べる: 各ボディの1文目だけを抜き出して並べる。自分のトピックセンテンスが、モデルアンサーと同じ粒度で書けているかを見る
コロケーションだけを抜き出す: 本文をそのまま覚えようとせず、組み合わせを5つほど書き出して、別のタスクで使ってみる
片側の段落を自分で書き直す: モデルアンサーの一方の側だけを残し、もう一方は見ずに自分で書く。両方読んでから書くより負荷がかかるぶん、定着します
モデルアンサーは、本番で同じタスクが出たときに再現するためのものではありません。自分の答案に足りていない要素を見つけるための比較対象として使うと、その1問から得られるものが増えます。
07 シリーズの記事一覧
取り上げたタスクを、公開した順に並べています。新しい回はここに追加していきます。
回 テーマ 問題タイプ この回で扱っていること
第1回 砂糖税 Discussion(Discuss both views) foods and beverages という対象の広さ、賛成側と反対側の定番アイデア、イギリス・メキシコ・デンマークの実例、税制まわりのコロケーション
第2回 大学の学費負担 Opinion(To what extent do you agree or disagree?) because でつながれた理由をどこまで争えるか、all と only の読み方、イングランド・オーストラリア・ドイツ・北欧の制度、学費と公費をめぐるコロケーション
タスク深掘りシリーズ
タスク深掘りシリーズ:砂糖税の出題背景・アイデア・実例・語彙【第1回】
タスク深掘りシリーズ
タスク深掘りシリーズ:大学の学費負担をめぐる前提の読み方・アイデア・各国の制度【第2回】
どの回から読んでも構いません。扱っているタスクは違っても、手順は同じです。本番までに時間がある方は、自分が苦手なテーマの回から始めてみるとよいでしょう。
08 よくある質問
どのタスクから深掘りを始めればよいですか。
アイデアがいちばん出にくいテーマから始めるのがおすすめです。書きやすいテーマは、深掘りをしなくてもある程度の答案になるため、作業の効果が見えにくくなります。シリーズの記事一覧から、自分が苦手だと感じるテーマの回を選んでみましょう。
タスク1問にどれくらい時間をかければよいですか。
決まった時間はありません。一例として、手順1と2で20分、実例と語彙の書き出しで20分、モデルアンサーとの比較で20分にすると1時間ほどになります。1回で終わらせず、日をあけてもう一度アイデアだけ書き出してみると、定着しているかどうかが分かります。
深掘りしたテーマが本番で出なかったら、準備が無駄になりませんか。
同じテーマが出ることを当てにする準備ではありません。1問を最後まで掘ると、そのテーマの知識だけでなく、論じ方そのものが手元に残ります。政府が価格や規制で行動を変えてよいかという問いを1問準備しておくと、たばこ税、アルコールの販売規制、ジャンクフードの広告制限が同じ論じ方で扱えます。
アイデアを先にアプリで表示してしまってもよいですか。
自分で書いたあとに見る順をおすすめします。定番のアイデアを先に見ると、その中から選ぶだけの作業になり、自分で考える工程が消えるためです。試験本番でアイデアを出すのは自分なので、まず自分で書き、そのあとで抜けを埋める順にしましょう。
具体例に出す数字を覚えていないときはどうすればよいですか。
数字を出さずに、国名と変化の方向だけを書けば十分です。In the UK, a levy on high-sugar drinks led manufacturers to cut the sugar content of their products. のように書けます。間違った数字を書くくらいなら、書かないほうが安全です。詳しい出典を示す必要もありません。
実例を答案に入れると、知識をひけらかしているように見えませんか。
主張を述べたあとに1文か2文で添える形なら、そうは読まれません。避けたいのは、例から書き始めることと、数字を詰め込みすぎることです。実例を消しても段落の主張が変わらないなら、その例は議論を進めていないので、入れる位置か内容を見直してみましょう。
モデルアンサーは丸暗記して本番で使ってもよいですか。
暗記した文章を再現する使い方はおすすめしません。同じタスクが出る保証がないうえ、覚えた文をあてはめようとすると、目の前のタスクとずれた内容になります。モデルアンサーは、自分の答案に足りていない要素を見つけるための比較対象として使い、段落の役割とコロケーションを持ち帰るようにしましょう。
深掘りはライティング・タスク2だけのものですか。
このシリーズで扱うのはライティング・タスク2のタスクです。取り上げるタスクは、本サイトに収録しているアクティブなタスク509件(2026年8月26日時点)から選んでいます。手順そのものはスピーキングのPart 3にも応用できますが、シリーズの記事はライティング・タスク2のタスクを対象にしています。
09 まとめ
タスク深掘りで手元に残るのは、そのテーマの知識よりも論じ方のほうです。同じ構造のタスクに材料を流用できるので、1問を最後まで掘る作業は、その1問のためだけの準備で終わりません。
手順1 タスクを前提・対象・問われていることの3つに分解する。前提を争う議論は成り立たない
手順2 両側のアイデアを自分で出してから、一段掘り下げる。評価だけで終わっていたらまだ足りない
手順3 実例は2件から3件そろえておく。答案では主張のあとに1文か2文で添え、数字は原則1つに絞る
手順4 語彙はコロケーションの単位で拾う。中級は誤りなく書き切る表現、上級は意味を絞り込める語彙
手順5 モデルアンサーは自分でアイデアを書いたあとに作り、自分の答案と並べて比べる
手順の中身は、個別の記事でそのタスクに即した形で確認できます。上の記事一覧から1本選んで、賛成側と反対側のメインアイデアを1つずつ、自分の言葉で書くところから始めてみましょう。