日本語で人の話を聞くとき、私たちは「はい」「なるほど」「そうなんですね」と、ほとんど無意識に相づちを打っています。一方で、英語の会話では、相手がこちらの話にほとんど相づちを返さず、黙って聞いていることに気づくでしょう。IELTSのスピーキングでも、試験官はうなずきもせずに話を聞いていることがよくあります。
相手が黙っているのは、話が面白くない、英語がわかりにくいと感じているからなのでしょうか。逆に、英語で話を聞きながら Yes, yes とくり返している自分の相づちは、相手にどう聞こえているのでしょうか。
目次
英語の会話では、なぜ相づちが少ないのか
相づちの打ち方の違いは、相手にどう受け取られるのか
試験官がうなずかないのは、話を聞いていないからなのか
日本語の相づちの癖は、試験のどこに出るのか
英語では、話を聞いていることをどう伝えればよいか
よくある質問
まとめ
01 英語の会話では、なぜ相づちが少ないのか
英語の会話で相づちが少なく感じられても、聞き手は話をきちんと聞いています。英語にも mm-hm、yeah、right のような相づちはありますが、日本語ほど頻繁には打ちません。話し手が言い終えるまで黙って聞くことも、英語では話をきちんと聞いている姿勢として受け止められます。
日本語と英語の会話を比べた研究では、日本語の会話のほうが聞き手の相づちがかなり多いことが、くり返し報告されているそうです。英語に堪能な日本人どうしが英語で話す場面でも、同じように相づちが多くなる傾向が見られたという調査もあります。相づちの多さは、英語力よりも、日本語で身についた聞き方の習慣に近いものだと言えます。
相づちが入るタイミングも違います。英語の相づちは、文が言い終わったところや、話し手がひと呼吸おいたところで入るのが一般的です。日本語では、話し手の文がまだ続いている途中でも「うん」「ええ」とはさみ、相手が話し続けるのを支えます。
日本語の相づち 英語の相づち
回数 多い。短い間隔で何度も入る 日本語より少ない
入るところ 話し手の文の途中にも入る 文の区切りや、話し手がひと呼吸おいたところ
よく使う形 うん、はい、ええ、そうそう、なるほど mm-hm、yeah、right、I see、really?
相づちが少ないとき 話を聞いていない、関心がないと感じやすい 話を最後まで聞いている、と感じる
英語の聞き手が黙っているのは、話し手の番をさえぎらずに、話が終わるのを待っているからです。聞き手に回るというのは、英語の会話ではこういう振る舞いを指します。
02 相づちの打ち方の違いは、相手にどう受け取られるのか
相づちの回数やタイミングの違いは、お互いに相手への印象を悪くするきっかけになりえます。日本人とイギリス人が英語で話す様子を調べた研究では、相づちの打ち方の違いが会話のすれ違いを生み、相手に対する否定的な印象につながっていたそうです。
日本語の感覚で英語を話す人は、相手がほとんど相づちを返さないと「伝わっていないのでは」「退屈させているのでは」と不安になります。その結果、同じことを言い直したり、話を途中で切り上げたりしがちです。
反対に、英語を母語とする人の側から見ると、話している最中に yeah, yeah, yeah と相づちが続くと、急かされているように感じたり、自分の番を取ろうとしているのかと思ったりする人もいるようです。日本語では相手を気づかうための相づちが、英語では話をさえぎる合図のように聞こえてしまうわけです。
どちらの感じ方にも、聞き手としての振る舞い方が言語ごとに違っていることが関わっています。違いを知っておけば、相手の沈黙に振り回されることも、自分の相づちで相手の話を止めてしまうことも減らせます。
03 試験官がうなずかないのは、話を聞いていないからなのか
試験官はうなずかず、相づちもほとんど返しませんが、受験者の話はしっかり聞いています。英語の会話では、話の途中に相づちを重ねず、区切りまで待って聞くことも、聞き手としてふつうの振る舞いです。そのうえ試験官は、どの受験者にも同じ条件で試験を行うため、反応を控えめにすることが多いとされています。
日本語の会話に慣れていると、相手の相づちが返ってこないことは「伝わっていない」のサインに見えます。しかし試験の場では、試験官の沈黙だけで答えの出来を判断することはできません。相づちがないことを気にして話を言い直したり、急いで切り上げたりするより、言おうとしていたことを最後まで話し切るほうが、自分の力を出しやすくなります。
試験官がどのような立場で試験に臨んでいるのかは、こちらの記事が参考になります。
スピーキング
スピーキング試験で試験官は何を考えているか?:緊張の正体は試験官との関係性の誤解にある
視線についても、日本と欧米で感じ方に違いがあります。試験官と目を合わせるのが苦手な人は、こちらの記事も参考になるでしょう。
スピーキング
スピーキング試験で目を見て話すのは必須か:視線が苦手な人の慣れ方と欧米との文化の違い
04 日本語の相づちの癖は、試験のどこに出るのか
日本語の相づちの習慣は、試験官の質問に答える最初のひと言によく表れます。日本語の会話なら自然な受け答えでも、英語では答えの中身が分かりにくくなります。
日本語の「はい」には、「質問を聞きました」という受け止めの意味があります。この感覚のまま、何を聞かれてもまず Yes と言ってから答えていないでしょうか。
Q. Where do you live?
✗
Yes, I live in Osaka.どこに住んでいるかを聞かれているので、Yes で答える質問ではない
○
I live in Osaka, in a quiet area near the river.聞かれたことにそのまま答え始める
Do you ... ? のような Yes か No で答える質問では、もっと紛らわしくなります。英語の yes は、同意や肯定の答えとして受け取られやすいからです。
Q. Do you like cooking?
✗
Yes ... well, actually, not really. I don't cook very often.最初の Yes が答えに聞こえ、すぐあとで打ち消すことになる
○
Not really, to be honest. I don't cook very often.答えそのもので話し始める
考える時間がほしくて Yes と言っているなら、Well, や Let me see. で間をとるほうが、答えの向きを先に決めずに済みます。
05 英語では、話を聞いていることをどう伝えればよいか
英語で聞いていることを伝えるには、相づちの数を増やすより、相手の話を区切りまで聞いてから反応することが役に立ちます。試験でも、日常の英会話でも、考え方は同じです。
場面 日本語の感覚でしがちなこと 英語での振る舞い
質問を聞き終えたとき Yes から話し始める 聞かれたことにそのまま答え始める。間がほしければ Well, や Let me see.
英会話やレッスンで相手の話を聞くとき 文の途中に何度も yeah を入れる 文の区切りで I see. や Right. と返し、話が一段落したら質問やコメントで応える
日常の英会話では、黙っているだけでなく、話が一段落したところで That sounds interesting. や So what happened next? のようにひと言返すと、聞いていたことが自然に伝わります。短い相づちだけを重ねるより、内容に触れたひと言のほうが、話を聞いていたことがはっきり伝わります。
自分の相づちの癖は、話している本人には気づきにくいものです。オンライン英会話やレッスンの様子を録音し、相手が話しているあいだに自分がどれくらい yeah や uh-huh をはさんでいるかを聞き返してみると、改めて気づくことがあるはずです。
06 よくある質問
英語の会話では相づちを打たないほうがよいのですか。
英語にも mm-hm、yeah、right のような相づちはあるので、打ってはいけないわけではありません。ただ日本語より回数が少なく、文の区切りや話し手がひと呼吸おいたところで入るのが一般的です。話し手が言い終えるまで黙って聞くことも、きちんと聞いている姿勢の表れです。
英語で話していて相手が相づちを返さないと、伝わっていないのではと不安になります。
相手が黙っているのは、話を区切りまで聞こうとしているからかもしれません。英語の会話では、日本語ほど頻繁に相づちを打たないのが一般的です。不安になって同じことを言い直したり、話を途中で切り上げたりするより、言おうとしていたことを最後まで話すほうが伝わります。
IELTSの試験官がうなずかないのは、答えがよくないからですか。
うなずきや沈黙は、採点の結果を示す反応ではありません。英語の会話では区切りまで黙って聞くこともふつうの聞き方で、試験官はさらに、どの受験者にも同じ条件で試験を行うため、反応を控えめにすることが多いとされています。
日本人の相づちは、英語ではどう聞こえるのですか。
話している最中に yeah, yeah と相づちが続くと、急かされているように感じたり、話をさえぎろうとしているように受け取ったりする人もいるようです。日本人とイギリス人の英語の会話を調べた研究では、相づちの打ち方の違いが相手への否定的な印象につながっていたそうです。
スピーキングの答えを Yes から始めるのは間違いですか。
Where do you live? のように Yes か No で答える質問でないなら、Yes から始めると不自然です。Do you like cooking? のような質問では、最初の Yes が答えそのものに聞こえます。考える時間がほしいときは、Well, や Let me see. で間をとるとよいでしょう。
英語で相手の話を聞くことに慣れるには、どう練習すればよいですか。
オンライン英会話やレッスンの様子を録音して、相手が話しているあいだに自分がどれくらい相づちをはさんでいるかを確かめるのが手軽です。そのうえで、短い相づちを重ねる代わりに、話が一段落したところで That sounds interesting. のように内容に触れるひと言を返す練習をしてみましょう。
07 まとめ
英語の会話では、話し手が言い終えるまで黙って聞くことが、聞き手としてのふつうの振る舞いです。試験官がうなずかないのも、その延長で考えると理解しやすいでしょう。
日本語の相づちは相手を気づかう習慣ですが、英語ではそのまま使うと、答えの最初の Yes が肯定の答えに聞こえてしまいます。まずは、聞かれたことにそのまま答え始めるところから意識してみましょう。
英語にも相づちはあるが、日本語より少なく、文の区切りで入るのが一般的
試験官がうなずかないのは、答えの出来とは関係ない
Yes か No で答える質問でなければ、Yes から話し始めない
日常の英会話では、短い相づちを重ねるより、区切りで内容に触れるひと言を返す