日本人にとってLとRの発音の区別が難しいことは周知の事実ですが、特定の組み合わせになると、その傾向がとくに顕著になります。プラスワンポイントのスピーキングの授業でよく見かける例の1つが、area という単語です。Rの発音がLになってしまい、/ˈeə.li.ə/ のように響いてしまうのです。
人それぞれ苦手なパターンは違いますが、このように間に入るRをうまく発音できるようになると、一気に英語らしく響くようになります。ぜひマスターしたいところです。今回の記事では、この area を例に挙げ、どのようにマスターしたらいいのか、その応用方法まで含めて解説します。
01air は言えるのに area は言えないのはなぜか
/r/ が母音と母音のあいだに入ると、そこに日本語の「リ」が当てはまってしまうからです。崩れるのは3音節のうち真ん中の /ri/ です。area はイギリスでよく聞く読み方で /ˈeə.ri.ə/エアリア、アメリカでよく聞く読み方で /ˈer.i.ə/ です(Cambridge Dictionary)。出だしと語末は日本語の音でもそれなりに近い形になりますが、真ん中の /r/ だけが別の音に置き換わります。
✗
/ˈeə.li.ə/真ん中で舌先が上の歯ぐきに当たっている。L に近い音として届く
○
/ˈeə.ri.ə/舌先はどこにも触れないまま、次の /i/ へ渡る
本人の意識のうえでは、Rを出しているつもりであることがほとんどです。air /eər/ や red /red/ のように、Rを意識して練習してきた位置では出せているからです。それでも area になると入れ替わるのは、Rそのものが苦手だからではなく、/r/ が置かれている位置が変わるからです。
母音にはさまれた位置になると、日本語の「リ」が呼び出される
air を単独で言うとき、/r/ のうしろに母音は続きません。日本語には「r の音だけで終わる」という形がないので、対応する日本語の音が出てきません。そのぶん、練習してきた英語の /r/ がそのまま出ます。
ところが area では、/r/ の前に /eə/、うしろに /i/ が来ます。母音、子音、母音という並びは、日本語の「リ」がちょうど当てはまる形です。日本語には「r + i」を1拍でまとめた「リ」という音があるので、この並びを見た瞬間に、練習してきた英語の /r/ ではなく、口に染みついた「リ」のほうが先に動きます。
| 語 | /r/ の位置 | 崩れやすさ |
| red /red/ | 語の先頭 | 意識して練習する位置なので出しやすい |
| air /eər/ | 音節の終わり。うしろに母音が続かない | 対応する日本語の音がないので置き換わりにくい |
| area /ˈeə.ri.ə/ | 母音と母音のあいだ | 日本語の「リ」がそのまま出てくる |
同じ語のなかで出せたり出せなかったりするのは、この位置の違いによるものです。「Rの練習が足りない」と受け取ると、すでにできている語頭のRをもう一度練習することになり、崩れている場所には手が届きません。
02日本語の「リ」が英語で L に聞こえるのはなぜか
分かれ目は、舌先が口の中のどこかに触れるかどうかです。英語の /l/ は舌先を上の歯ぐきに当てて、息を舌の両わきから逃がす音です。英語の /r/ は、舌先をどこにも触れさせずに、口の中で構えるだけの音です。日本語のら行は、多くの場合、舌先で上の歯ぐきのあたりを軽く弾いて出します。触れるという一点で、日本語のら行は英語の /r/ の側から外れます。
| 舌先 | 息の通り道 | 長さ |
| 英語の /r/ | どこにも触れない | 舌の上を通る | 伸ばして出し続けられる |
| 英語の /l/ | 上の歯ぐきに当てたまま | 舌の両わきから抜ける | 伸ばして出し続けられる |
| 日本語の「リ」 | 上の歯ぐきのあたりを一瞬弾く | 弾いた瞬間に開く | 一瞬で終わる。伸ばせない |
日本語のら行は、英語の /l/ とも /r/ とも同じではありません。それでも英語の聞き手にとっては、舌先が当たったかどうかが先に届くので、L として受け取られることが多くなります。当たり方や速さによっては D に近く聞こえることもあります。いずれにしても、意図した /r/ としては届きません。
日本語ではRとLを区別する必要がないので、この2つは同じ引き出しに入っています。英語を話すときだけ引き出しを分ける必要があり、しかも母音にはさまれた位置では日本語側の引き出しが先に開きます。area で起きているのはこの順番の問題です。
スピーキング
子音が続く場合のRの発音:pr・trで起きるLに近づく癖の直し方
同じ置き換わりは、problem や train のように子音が続く位置でも起きます。そちらは母音がはさまる形ではなく、直前の子音から /r/ へ移る動きが原因なので、直し方も別になります。上の記事で扱っています。
03自分の「リ」がどちらの音か、どう確かめるか
確かめることは2つあります。1つは、日本語の「リ」が出ていないかどうかです。英語の /r/ も /l/ も、息が続くかぎり出し続けられる音です。日本語の「リ」は舌先を弾く動きなので、弾いた時点で終わり、伸ばそうとすると母音の「イ」に変わってしまいます。もう1つは、舌先が上の歯ぐきに触れているかどうかです。触れていれば /l/ の側、触れていなければ /r/ の側になります。
| 手順 | やること | どう判断するか |
| 1 | area を普段の速さで言い、真ん中の音だけを取り出して伸ばしてみる | 伸ばせずに「イ」になったら、日本語の「リ」が出ている |
| 2 | その位置で舌先が上の歯ぐきに当たっているかを意識する | 当たっている感覚があれば /l/ 側の音になっている |
| 3 | 舌先を浮かせたまま、同じ位置をもう一度出してみる | 音がこもって聞こえれば /r/ の側に寄っている |
耳で確かめるなら、母音にはさまれた位置で /r/ と /l/ が入れ替わる語の組を使うと分かりやすくなります。どれも、変わっているのは真ん中の1音だけです。
母音にはさまれた /r/ と /l/
arrive /əˈraɪv/ alive /əˈlaɪv/
correct /kəˈrekt/ collect /kəˈlekt/
pirate /ˈpaɪ.rət/ pilot /ˈpaɪ.lət/
この3組を交互に言ってみて、2つの区別が付かないなら、area の真ん中も分かれていない可能性が高くなります。逆にこの3組が分かれていれば、/r/ と /l/ の区別そのものはできています。次は、その動きを area のように母音が続く並びの中で出せるかを確かめます。
録音して聞き返すときに聞く場所
自分の声は骨を通して聞こえるため、話しながらの判断はあてになりません。録音して聞き返すときは、語全体の印象ではなく、真ん中の1音だけに絞って聞きます。/eə/ から /i/ へ移るあいだに、コツンという当たりの感じが入っていれば、そこが直す場所です。
04air の構えを崩さずに area まで伸ばすには
area は、air の舌の構えを保ったまま音を足していくと作れます。air を言った時点で舌先はどこにも触れていないので、その状態を崩さずに /i/、/ə/ と足していけば、真ん中で舌先が当たる余地がなくなります。途中の airy /ˈeə.ri/ も実際に使われている語なので、そのまま単語として練習できます。
| ステップ | 言う語 | 確かめること |
| 1 | air /eər/ | 言い終えたところで舌を動かさずに止める。舌先がどこにも触れていない状態を覚える |
| 2 | air をそのまま伸ばす | 語末の /r/ を2秒ほど出し続ける。伸ばせていれば /r/ の構えができている |
| 3 | airy /ˈeə.ri/ | 伸ばしている /r/ の途中から /i/ へ移る。舌先を新しく当て直さない |
| 4 | area /ˈeə.ri.ə/ | airy のうしろに /ə/ を軽く添える。ここで舌先を動かさない |
手順の中心はステップ2です。ここで /r/ を伸ばしておくと、次の母音へ移るときに舌先を当て直す動きが入りません。「リ」を足すという組み立て方をすると、日本語の1拍を追加することになるので、そこで舌先が当たります。足すのは「リ」ではなく母音の /i/ だけ、と捉えると動きが変わります。
✗
air +「リア」日本語の2拍を足す組み立て方。「リ」のところで舌先が当たる
○
air + /i/ + /ə//r/ は air の時点で出し終えている。あとは母音を2つ足すだけ
練習のうえでは、air で出している /r/ をそのまま /i/ へ渡す感覚が使えます。area の /r/ を出し直すところから始めなくて済みます。練習のときは、air を伸ばした状態から一度も舌先を当てずに area まで言い切れるかどうかを目安にするとよいでしょう。
舌先を当てないようにすると音がこもる場合
舌先を浮かせることを意識しすぎると、舌全体が奥に引き込まれて音がこもることがあります。/r/ で必要なのは舌先を触れさせないことだけなので、舌の根元まで引く必要はありません。こもってきたと感じたら、air を1回言って構えを取り直すと元に戻せます。
スピーキング
スピーキングで音がこもる原因、それは過剰なR:不要な場所で舌がRの位置に動く癖を直す
Rを意識した結果、Rが要らない場所にまで舌が動いてしまう癖もあります。こもりが area 以外でも出ているなら、上の記事のほうが当てはまります。
05同じ場所で崩れるIELTS頻出語はどれか
area で起きている置き換わりは、/r/ が母音にはさまれている語で同じように起きます。とくに /ri.ə/ という並びを持つ語は area と同じ形なので、area で身につけた動きを、そのまま当てられます。どれもIELTSのスピーキングで使う機会の多い語です。
| 語 | イギリスでよく聞く読み方 | 使う場面 |
| area | /ˈeə.ri.ə/ | 住まいや街の話題 |
| various | /ˈveə.ri.əs/ | 種類の多さを言うとき |
| experience | /ɪkˈspɪə.ri.əns/ | Part 2 の経験を語る問題 |
| serious | /ˈsɪə.ri.əs/ | 問題の深刻さを言うとき |
| period | /ˈpɪə.ri.əd/ | 時期や期間を言うとき |
| material | /məˈtɪə.ri.əl/ | ものの材質、学習の教材 |
| curious | /ˈkjʊə.ri.əs/ | 興味や関心を言うとき |
7語とも /ri.ə/ という並びを含んでいます。/r/ のうしろに弱い母音が続くところは7語に共通しています。前に来る母音は語ごとに違うので、移りやすさは少しずつ変わります。area で舌先を当てない動きができるようになったら、この並びをそのまま続けて言ってみると、同じ動きが使い回せることを確かめられます。
とくに experience は、Part 2 で経験を語るときに使いやすい語です。ここが安定すると、答えの途中で言い直しが減ります。
Q. Do you like the area you live in?
Yes, I do. It is a quiet area, and I have had a good experience living there for the past three years.
はい。静かなところで、この3年間、住んでいて気持ちよく過ごせています
There are various small shops near the station, so I can get most things without going into the city.
駅の近くに小さな店がいろいろあるので、街の中心まで出なくてもたいていのものは手に入ります
この2文には area、experience、various と、同じ並びの語が3つ入っています。住まいの話題ではこうした重なり方が起きやすいので、1か所直すだけで答え全体の聞き取りやすさが変わります。
06よくある質問
air は言えるのに area が言えないのはなぜですか。
/r/ が置かれている位置が違うからです。air では /r/ のうしろに母音が続かないので、対応する日本語の音が出てきません。area では /r/ が母音と母音のあいだに入り、日本語の「リ」がちょうど当てはまる形になるため、練習してきた英語の /r/ より先に「リ」の動きが出ます。
日本語の「リ」は英語の L と同じ音ですか。
同じではありません。英語の /l/ は舌先を上の歯ぐきに当てたまま出し続ける音で、日本語の「リ」は舌先で歯ぐきのあたりを一瞬弾く音です。ただ、どちらも舌先が触れるので、英語の聞き手には L として受け取られることが多くなります。当たり方によっては D に近く聞こえることもあります。
自分が L の音を出しているかどうか、どう確かめられますか。
舌先が上の歯ぐきに当たっているかどうかで分かります。英語の /r/ は舌先がどこにも触れません。英語の /l/ と日本語の「リ」はどちらも触れます。さらに、日本語の「リ」は弾く動きなので伸ばせず、伸ばそうとすると母音の「イ」に変わります。
R と L の区別を練習するにはどんな語が使えますか。
母音にはさまれた位置で入れ替わる語の組が使えます。arrive /əˈraɪv/ と alive /əˈlaɪv/、correct /kəˈrekt/ と collect /kəˈlekt/、pirate /ˈpaɪ.rət/ と pilot /ˈpaɪ.lət/ の3組は、変わっているのが真ん中の1音だけなので、area と同じ場所を確かめられます。
area は air に「リア」を足すと考えてよいですか。
「リア」と考えると、日本語の2拍を足すことになり、「リ」のところで舌先が当たります。足すのは母音の /i/ と /ə/ だけと考えるほうが動きが変わりません。/r/ は air の時点ですでに出ているので、そこから続けるつもりで言えます。
舌先を当てないようにすると音がこもります。
舌全体が奥に引き込まれている可能性があります。/r/ で要るのは舌先を触れさせないことだけなので、舌の奥は動かさずに済みます。こもってきたと感じたら、air を1回言って構えを取り直すと戻せます。
area 以外に同じ崩れ方をする語はありますか。
/ri.ə/ という並びを持つ語はすべて同じです。various /ˈveə.ri.əs/、experience /ɪkˈspɪə.ri.əns/、serious /ˈsɪə.ri.əs/、period /ˈpɪə.ri.əd/、material /məˈtɪə.ri.əl/、curious /ˈkjʊə.ri.əs/ が当てはまります。前の母音が違うだけで、崩れる場所は同じです。
07まとめ
- area で崩れるのは3音節のうち真ん中の /ri/。出だしと語末ではない
- 原因は /r/ が母音にはさまれた位置に来ること。そこに日本語の「リ」が当てはまる
- 英語の /r/ は舌先がどこにも触れない。日本語の「リ」は舌先で歯ぐきを一瞬弾くので L として届く
- 見分け方は2つ。伸ばして「イ」になったら日本語の「リ」。舌先が歯ぐきに触れていたら /r/ ではない
- arrive と alive、correct と collect、pirate と pilot の3組で同じ場所を確かめられる
- 作り方は air を伸ばし、その /r/ の途中から /i/、/ə/ へ移る。「リア」を足さない
- various・experience・serious・period・material・curious も同じ並び。1つ直ると一緒に直る
語頭では出せている /r/ が、母音にはさまれた途端に日本語の弾く動きへ戻ります。air を伸ばしたまま母音を足していく形に切り替えて、真ん中で舌先が当たっていないかを録音で確かめてみましょう。