試験まであと1週間になると、「まだやっていないこと」に目が向きやすくなります。スコアの上がりそうな表現をインプットしたり、別の解き方を試したりしたくなるのも自然なことです。
ただ、この時期に大切なのは、新しいことを増やすことではありません。これまで練習してきたやり方を崩さず、本番でいつもどおりの力を出せる状態にしておくことです。これは、テニスの決勝直前にフォームを大きく変えないのと同じです。新しいフォームが悪いのではなく、それを試合で使えるようにするには時間が必要だからです。では、試験までの最後の1週間は何をして、何をしないほうがよいのでしょうか。
01試験1週間前に新しいことを覚えると、なぜ結果が悪くなるおそれがあるのか
試験の1週間前に覚えた新しいやり方は、本番の緊張と時間制限の中で、まだ一度も試されていないからです。これまで繰り返してきた解き方や書き方は、細かく考えなくても手が動く状態になっています。新しく覚えたやり方は、一つひとつ意識しないと進められません。
本番では、時間が限られているうえに緊張もあります。意識を向けられる量には限りがあるので、新しいやり方を思い出すことに注意を取られると、そのぶん問題そのものに向ける余裕が減ります。途中で「やはり元のやり方に戻そう」と迷えば、どちらのやり方も中途半端なまま時間が過ぎていきます。
1週間前にやりがちな変更と、本番で起きうることを比べてみましょう。
| 1週間前にやりがちな変更 | 本番で起きうること |
| ライティングで、新しいテンプレートや段落構成に切り替える | 練習で測っていない時間配分になり、結論を書く時間が足りなくなる |
| 覚えたばかりの難しい語句を回答で使おうとする | 意味や語法を取り違え、かえって語彙や文法の評価が下がる |
| リーディングで、解く順番や本文の読み方を変える | ペースがつかめず、最後のパッセージに十分な時間が残らない |
| リスニングで、メモの取り方を変える | 書くことに気を取られて、次の設問の答えを聞き逃す |
| スピーキングで、新しく準備した回答を覚え込む | 思い出しながら話すことになり、話の流れが途切れやすくなる |
どれも、変更そのものが悪い対策だというわけではありません。時間をかけて練習すれば、いまより良いやり方になる可能性もあります。問題は、その練習をする時間がもう残っていないことです。
単語を覚えることも同じで、覚えること自体が点数を下げるわけではありません。気をつけたいのは、覚えたばかりの語を本番で使おうとすることです。使い方に自信のない語を回答に入れるより、これまで使い慣れてきた語で正確に書くほうが、評価は安定します。
02決勝の直前にフォームを直さないのはなぜか
テニスの選手が決勝の直前にフォームを直さないのは、決勝まで勝ち上がってきたフォームが、その大会で結果を出してきたものだからです。
決勝の前日にサーブのフォームを変えたとします。新しいフォームはまだ体になじんでおらず、試合の緊張の中で再現できるかどうか分かりません。かといって、一度崩した元のフォームにすぐ戻れるとも限りません。どちらのフォームも安定しない状態で決勝に入ることになります。
フォームの改造は、大会のない時期に時間をかけて取り組むものです。新しいフォームで打ち込み、練習試合で試し、崩れたら直すことを何度も繰り返して、ようやく試合で使えるようになります。
IELTSに当てはめると、次のように対応します。
| テニス | IELTS |
| 決勝まで勝ち上がってきたフォーム | これまでの模擬試験や練習で繰り返してきた解き方・書き方 |
| 決勝の直前 | 試験までの最後の1週間 |
| 大会のない時期のフォーム改造 | 試験が終わってから取り組む、やり方の見直し |
この1週間でできるのは、新しい力を足すことより、いまある力をそのまま本番で出せるようにすることです。
03新しいことと軽い確認は、どこで分ければよいか
分かれ目は、本番でのやり方が変わるかどうかです。これまでと同じ解き方・書き方を思い出すための作業なら軽い確認で、本番でのやり方そのものを変える作業なら、この1週間では避けたい新しいことです。
同じ「単語の勉強」でも、これまで使ってきた単語帳で間違えた語を見直すのは軽い確認にあたります。新しい単語帳を買って、そこに載っている上級の語を回答で使えるようにしようとするのは、新しいことにあたります。
| 技能 | 軽い確認 | この1週間は避けたいこと |
| ライティング | これまでの添削を読み返し、自分がよく間違える形を確かめる | テンプレートや段落構成を変える、新しいつなぎ言葉を覚えて使う |
| スピーキング | いつもの練習どおりに英語を声に出し、口を慣らしておく | 新しい回答を丸ごと覚える、覚えたての表現を詰め込む |
| リーディング | いつもの解き方で1回分を解き、時間の感覚を思い出す | 解く順番や読み方を切り替える |
| リスニング | 英語の音声を毎日少し聞き、耳を英語に慣らしておく | メモの取り方や、設問の先読みのしかたを変える |
軽い確認には、もう一つ条件があります。本番の力に影響しない程度にとどめることです。確認のつもりで長時間の演習を重ねると、疲れが残ったまま本番を迎えることになります。前日に通しで模擬試験を解いて点数が悪かった場合も、その結果に気持ちが引っ張られやすくなります。
04最後の1週間は何をして過ごせばよいか
最後の1週間に取り組みたいのは、メンタルのコントロール、体調の管理、そして軽い確認の3つです。どれも新しい力をつける作業ではありませんが、これまでの力を本番で出しきれるかどうかに関わります。
4-1 メンタル:崩れたときの立て直し方を決めておく
真剣に準備してきた人でも、試験の前には不安が残るものです。1週間で消そうとしなくて大丈夫です。不安をゼロにすることを目標にすると、不安が残っていること自体がまた焦りの種になります。
それより役に立つのは、本番で手応えが悪かったときにどうするかを、先に決めておくことです。IELTSのスコアは、4つの技能ごとに別々に出ます。リスニングで聞き逃した設問があっても、リーディングの採点がそれで変わることはありません。1問を聞き逃したら、その設問はいったん忘れて次の設問に耳を向ける。1つの技能で手応えが悪くても、次の技能は新しく始まる別の試験だと考える。こうした切り替え方を、試験の前に自分の言葉で決めておくと、本番で崩れたときにも次の設問へ戻りやすくなります。
1週間前の模擬試験の点数に一喜一憂しすぎないことも大切です。その週の点数には調子の波も含まれていて、本番でも同じ点数になるとは限りません。
4-2 体調管理:試験の開始時刻に生活のリズムを合わせる
体調の面でまず意識したいのは、試験の開始時刻に頭が働いている状態をつくることです。受ける試験の開始時刻が朝早いのに、ふだん夜遅くまで勉強して朝ゆっくり起きる生活をしているなら、この1週間で少しずつ起きる時間を早めていくとよいでしょう。
夜遅くまで勉強時間を延ばすのは、この時期には逆効果になりかねません。食事も、試験の前だからといって特別なものに変える必要はなく、ふだんどおりで十分です。
前の晩に寝つけないことがあっても、1晩の睡眠だけで結果が決まるわけではないと考えておくと、眠れないことへの焦りが少し和らぎます。会場までの移動や当日の持ち物も、前日までに確認しておけば、当日の朝に慌てずに済みます。
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4-3 軽い確認:自分の間違いを読み返す
この1週間の確認では、自分がこれまでに書いたエッセイや解いた問題が、いちばんの手がかりになります。ライティングの添削で繰り返し指摘された形や、模擬試験で何度も落とした設問のパターンは、本番でも同じところでつまずきやすい箇所です。そこを読み返しておけば、本番で同じ形が出てきたときに気づくことができます。
通しで時間を計って解く練習は、週の前半までにしておくと安心です。後半は、英語の音声を聞く、いつもの練習どおりに声に出して話すといった、英語に触れ続けるための軽い作業に切り替えます。勉強をすっかり休んでしまうより、英語から離れすぎない程度に触れておくほうが、本番に入ったときに頭が英語に切り替わりやすくなります。
05目標に届かなかったときの次のプランは、いつ組めばよいか
次の受験のチャンスがあるなら、そのための中長期的なプランは試験が終わってから組みましょう。この1週間のうちに「もし届かなかったら」と次の計画を考え始めると、目の前の試験に向けるはずの集中が、まだ起きていない結果のほうに向いてしまいます。
試験が終わって結果が届けば、4つの技能それぞれのスコアが手元にそろいます。どの技能があとどれだけ足りないのかが分かれば、試験前に想像で組むより的を絞ったプランになります。
この1週間に我慢した新しいやり方も、そこで取り組めばよいものです。テンプレートを見直す、解き方を変える、語彙を増やすといった作業は、次の試験まで時間があるときなら、練習で何度も試しながら身につけることができます。テニスでいえば、大会が終わったあとのフォーム改造にあたります。
この試験が本当に最後の機会だという人は、試験後のプランを考える必要はありません。後がないのであればなおさら、この1週間は、これまで積み上げてきたものをそのまま出すことに集中しましょう。
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06よくある質問
IELTSの1週間前に新しい単語を覚えるのはやめたほうがいいですか
単語を覚えること自体が点数を下げるわけではありません。気をつけたいのは、覚えたばかりの語を本番の回答で使おうとすることです。意味や語法を取り違えると、かえって評価が下がるおそれがあります。この時期は、これまで使ってきた単語帳で間違えた語を見直す程度にとどめるのが無難です。
試験直前にライティングのテンプレートを変えてもいいですか
試験の1週間前に切り替えるのはおすすめしません。新しいテンプレートは練習で時間を測っていないため、本番で時間配分が崩れ、結論を書く時間が足りなくなるおそれがあります。テンプレートの見直しは、試験が終わって次の受験まで時間があるときに取り組むほうが安全です。
1週間前の模擬試験で点数が悪かったら、解き方を変えるべきですか
この時期に解き方を変えるのは避けたほうがよいでしょう。その週の点数には調子の波も含まれていて、本番でも同じ点数になるとは限りません。解き方を変えると、新しいやり方にも元のやり方にもなじまないまま本番を迎えることになります。
IELTSの前の1週間は勉強を休んだほうがいいですか
すっかり休むより、英語に触れ続けておくほうがおすすめです。自分の添削や間違えた設問を読み返す、英語の音声を聞く、いつもの練習どおりに声に出して話すといった軽い確認なら、疲れを残さずに続けられます。通しで時間を計る練習は、週の前半のうちに済ませておきましょう。
IELTSの前日は模擬試験を解いたほうがいいですか
前日に通しで模擬試験を解くのは、控えておくのが無難です。疲れが残るうえ、点数が悪かったときには、その結果を引きずったまま本番を迎えかねません。前日は、会場までの移動や持ち物を確認し、軽く英語に触れる程度で十分です。
試験前の晩に緊張して眠れないときはどうすればいいですか
1晩の睡眠だけで結果が決まるわけではない、と考えておくと、眠れないことへの焦りが少し和らぎます。そのうえで、試験の1週間前から開始時刻に合わせて起きる時間を早めておくと、当日の朝に頭が働きやすくなります。
今回の試験で目標に届かなかったときのことが気になって集中できません
次のチャンスがあるなら、そのためのプランは試験が終わってから組みましょう。結果が届けば技能ごとのスコアが分かるので、どこがあとどれだけ足りないのかをもとに、的を絞ったプランを組むことができます。試験までの1週間は、いまある力を本番で出しきることに集中するほうが結果につながります。
07まとめ
試験まで残り1週間という時期に焦るのは、それだけ真剣に取り組んできたからです。ただ、この段階で新しいことを覚えるのは、決勝の直前にフォームを直すのと同じで、これまでの力まで崩してしまうおそれがあります。
- 本番でのやり方を変える作業は、この1週間では避ける
- 添削や間違いの読み返しなど、これまでのやり方を思い出す軽い確認にとどめる
- 本番で手応えが悪かったときの切り替え方を、先に決めておく
- 試験の開始時刻に合わせて、起きる時間を少しずつ早める
- 次のチャンスがあるなら、中長期的なプランは試験が終わってから組む
ここまで来たら、これまでの練習で繰り返してきたやり方を信じて、そのまま本番で使いましょう。