多読、精読、音読、スラッシュリーディングは、どれもリーディングの練習法としてよく名前が挙がりますが、続けたときに伸びる力はそれぞれ違います。いまのスコアと、何でつまずいているかによって、先に取り組みたい練習も変わってきます。
この記事では、4つの練習法がそれぞれ何を伸ばすのかを確かめたうえで、IELTSリーディングのスコア帯ごとに、どの練習から手をつけるとよいかを解説します。試験までの期間や1日に使える時間が限られている人に向けて、効果を実感しやすい練習から始める選び方も紹介します。
01多読・精読・音読・スラッシュリーディングは、それぞれ何を伸ばす練習なのか
4つの練習は、英語を読むという点では同じですが、1回の練習で扱う英文の量と、読むときに注意を向ける場所が違います。そのため、続けたときに伸びる力も変わります。
1-1 精読:1文ずつ構造と意味を確かめる
精読は、短い英文を1文ずつ、主語と動詞、修飾の範囲、語の意味まで確かめながら読む練習です。伸びるのは、英文の構造を正確に取る力です。IELTSのパッセージには、主語が長い文や、関係詞や分詞で情報が何重にもつながっている文が出てきます。こうした文で意味を取り違えると、該当箇所を見つけていても設問を落とします。
1回で扱う量が少ないので、1日の時間が短くても続けやすい練習です。題材は、解き終えた公式問題集のパッセージのうち、間違えた設問の該当箇所を中心に選ぶと、練習と得点のつながりが見えやすくなります。すべての文を精読しようとすると、1パッセージを終えるまでにかなりの時間がかかるので、対象を絞ることが続けるコツです。
1-2 多読:やさしい英文を大量に読む
多読は、辞書をほとんど引かずに内容を追うことができる、やさしめの英文をたくさん読む練習です。伸びるのは、英文を止まらずに読み進める速さと、同じ語や表現に何度も出会うことで身につく慣れです。
多読でいちばん大切なのは英文の難しさです。英語教育の研究では、文章中の語のおよそ98%を知っていると、辞書なしで内容を楽に理解できるとされているそうです。50語に1語ほど知らない語がある程度の文章です。これより難しい英文を多読のつもりで読むと、1文ごとに止まることになり、実際には精読に近い練習になります。
多読は、効果を実感するまでに時間のかかる練習です。読む速さの変化はすぐには感じにくく、ある程度の量を読み続けてから振り返ったときに、前より楽に読み進めていると気づく、という形で表れます。
1-3 音読:意味を理解した英文を声に出して読む
音読は、英文を声に出して読む練習です。リーディングの練習として取り入れるなら、意味と構造をすでに理解した英文を使うのが前提になります。意味の分からない英文を声に出しても、音をなぞるだけで終わってしまいます。
声に出して読むと返り読みができないので、音読を続けると、英文を前から順に、意味のまとまりごとに処理する感覚が身につきやすいと言われています。精読で理解した英文を、つかえずに意味を追いながら読み上げることができるまで繰り返すと、精読で得た理解を、速く読む力につなげることができます。
読み方に自信のない語が多いと、音読のたびに止まってしまいます。先に音声で読み方を確認しておくと進めやすくなります。
1-4 スラッシュリーディング:意味のまとまりごとに区切って読む
スラッシュリーディングは、英文に意味のまとまりごとにスラッシュを入れ、区切りごとに前から意味を取っていく練習です。英語の語順のまま理解する練習なので、日本語に訳すときのように文末から戻る読み方を減らすことができます。
Many cities / that once depended on heavy industry / have gradually turned / their empty factories / into museums and public spaces.
「多くの都市が/かつて重工業に頼っていた/少しずつ変えてきた/使われなくなった工場を/博物館や公共の場所に」と、区切りの順に意味を取ります。
区切り方には慣れが必要です。細かく切りすぎると区切りの数が増え、かえって意味のつながりが見えにくくなります。
✗
Many / cities / that / once / depended / on / heavy industry / have / gradually / turned ...1語ずつ区切ると、1語ずつ訳しているのと変わらない
○
Many cities / that once depended on heavy industry / have gradually turned ...主語・動詞・目的語と、それを説明する部分でまとまりを作る
手応えを得やすいのは、関係詞や長い主語のある文で返り読みをしていた人です。一方で、スラッシュを入れながら読むことが習慣になると、区切りを探すぶんの時間がかかるようになります。いつまで続けるかは、05で詳しく見ていきます。
02自分に合う練習法は、何を手がかりに選べばよいか
練習法は、伸ばしたい力、試験までの期間と1日に使える時間、効果を実感できるまでの長さの3つを手がかりにすると選びやすくなります。4つの練習法を比べると、次の表のようになります。
| 練習法 | 伸びやすい力 | 1回に必要な時間 | 効果の実感 |
| 精読 | 英文の構造を正確に取る力 | 短い時間でも進めやすい | 早め。分からなかった文が分かるようになる |
| 多読 | 止まらずに読み進める速さ、語や表現への慣れ | まとまった時間があると続けやすい | 遅め。量を重ねてから気づく |
| 音読 | 前から順に意味を取る感覚、精読した英文の定着 | 短い時間でも進めやすい | 中くらい。同じ英文をつかえずに読み上げることができるようになる |
| スラッシュリーディング | 英語の語順のまま意味を取る力 | 短い時間でも進めやすい | 早め。慣れるにつれて伸びは小さくなりやすい |
伸ばしたい力は、いまの間違え方から考える
伸ばしたい力は、解き終えた問題の間違え方から見当をつけることができます。該当箇所は見つけたのに選択肢を選び間違えた、本文を読んだのに内容が頭に残っていない、という間違いが多いなら、英文を正確に取る力がまだ足りていないのかもしれません。反対に、最後まで解き終わらなかった問題や、時間があれば解けた問題が多い場合は、読む速さか時間の使い方に課題があると考えられます。
リーディング
IELTSリーディング60分の時間配分と読み方の切り替え:3種類の読み方の使い分けと撤退の目安
期間と1日の時間で、いろいろ試す余裕があるかを考える
試験まで数か月以上あり、1日にまとまった時間を取ることができるなら、多読のように効果が出るまで時間のかかる練習も組み込むことができます。試験が近い人や、1日に使える時間が短い人には、いくつもの練習を試して自分に合うものを探す余裕はあまりないはずです。まずは効果を実感しやすく、解いた問題に直結する練習から始めるのが確実です。
効果を実感できるまでの長さは、続けやすさに関わる
効果を感じられない練習は、途中でやめてしまいやすくなります。多読のように実感が遅い練習を選ぶなら、読んだ量を記録しておくと、手応えがないときにも前に進んでいることを確かめることができます。精読やスラッシュリーディングは、昨日まで意味の取れなかった文が分かるようになるので、手応えを得やすい練習です。
03IELTSリーディングのスコア別に、どの練習から始めるとよいか
スコアはアカデミックの正答数で考えます。5.0は40問中16〜17問、6.0は23〜25問、7.0は30〜31問が目安です。スコア帯ごとに始めやすい組み合わせを紹介しますが、同じスコアでも間違え方は人によって違います。02で見た間違え方と合わせて考えると、自分に合うものが見つかりやすくなります。
| スコア(正答数) | 中心にする練習 | 組み合わせる練習 |
| 5.0前後まで(17問前後まで) | 精読 | 理解した文の音読 |
| 5.5〜6.0(18〜25問) | 精読と音読 | スラッシュリーディング、期間があれば多読 |
| 6.5前後(26〜29問) | 多読 | 間違えた箇所の精読 |
| 7.0以上(30問以上) | 多読 | 間違えた設問の精読 |
リーディング
【リーディング】正答数とスコア:バンドスコアの目安がわかる対応表
3-1 5.0前後まで:精読を中心に、理解した文を音読する
正答数が17問前後までの段階では、読む速さより先に、1文の意味を正しく取れているかを見直すと、伸びを感じやすくなります。知らない語が多く、文の構造も取りにくい状態では、多読に使うやさしい英文を探すところから難しくなります。
精読で扱う英文は、パッセージ全体でなくてかまいません。間違えた設問の該当箇所にある数文を選び、語を調べ、主語と動詞を確かめます。意味が分かった文は、何度か音読しておきましょう。語彙を増やす学習と並行しながら、意味の分かる文を少しずつ増やしていく段階です。
リーディング
リーディング5.0の壁:語彙不足を疑う前に正答数のギャップを追う
3-2 5.5〜6.0:精読と音読に、スラッシュリーディングを組み合わせる
正答数が18〜25問のあたりは、1文ずつなら意味を取ることはできても、長い文や情報の多い段落で読むのが遅くなり、時間が足りなくなるという悩みが出てきやすい段階です。
精読で構造を確かめた文にスラッシュを入れ、区切りごとに前から意味を取る練習をすると、返り読みを減らすことができます。そのうえで同じ英文を音読すると、区切りを意識しなくても前から意味を追う感覚が身につきやすくなります。
試験まで期間があるなら、この段階で多読を始めてもよいでしょう。IELTSのパッセージより明らかにやさしい英文、たとえば学習者向けに語彙を制限した段階別の読み物(graded readers)から選ぶと、止まらずに読み進めることができます。
3-3 6.5前後:多読で読む量を増やし、精読は間違えた箇所に絞る
正答数が26〜29問のあたりでは、英文を正確に取る力はある程度ついていて、課題が読む速さと言い換えの見抜き方に移ってきやすくなります。
この段階では、多読で読む量を増やすと、読む速さと語や表現への慣れの両方で効果が期待できます。題材を、学習者向けの読み物から一般向けのニュース記事、研究者が一般の読者に向けて書いた解説記事へと移していくと、IELTSのパッセージに近い文体にも慣れていきます。
精読をやめる必要はありません。対象を、間違えた設問の該当箇所と、言い換えを見抜けなかった文に絞ると、時間をかけすぎずに続けることができます。
リーディング
リーディングのパラフレーズ(言い換え)を見抜く読み方トレーニング:パターンの把握から日々の練習法まで
3-4 7.0以上:多読で量を保ち、精読で間違いの原因を確かめる
30問以上を安定して取るには、3つのパッセージを時間内に読み終えたうえで、細かい言い換えや筆者の主張を取り違えないことが求められます。
この段階では、スラッシュを書いて区切りを確かめる必要は、あまりなくなっているはずです。多読で読む量を保ちながら、間違えた設問だけを精読して、なぜその選択肢を選んだのか、本文のどの語を読み違えたのかを確かめます。1問の差でスコアが変わる帯なので、間違えた原因を1問ずつ確かめる精読が役立ちます。
04試験までの期間や1日の時間が限られているときは、どこから始めるか
試験まで時間がない場合も、1日の時間が短い場合も、優先したいのは、解いた問題とのつながりが見えやすく、効果を実感しやすい練習です。
試験まで1か月ほどしかないとき
多読を新しく始めても、試験までに読む速さの変化を実感するのは難しくなります。この期間は、公式問題集を解き、間違えた設問の該当箇所を精読し、理解した文を音読する、という流れに絞ると、練習に無駄が出にくくなります。取り組む英文がすべて自分の間違いから来ているので、1回の練習が次の本番の得点に結びつきやすくなります。
1日に使える時間が短いとき
1日の時間が短いときは、1回で区切りをつけやすい練習を選びます。精読なら数文、音読なら1段落、スラッシュリーディングなら数文と、短い単位で進めることができます。多読は1回に読む量が少ないと話の筋を追いにくくなるので、週末などまとまった時間が取れる日にまわすと続けやすくなります。
期間にも時間にも余裕があるとき
余裕がある場合は、いくつかの練習を試しながら、自分に合う組み合わせを探すことができます。その場合も、効果を実感するまでの長さが練習によって違うことを知っておくと、実感の遅い多読を早々にやめてしまうことを防げます。どの場合も、解いた問題の正答数を記録しておくと、練習の効果を数字で確かめることができます。
05練習を続けても効果が感じられないときは、どこを見直すか
練習を続けているのに手応えがないときは、練習法そのものを替える前に、やり方を見直してみましょう。4つの練習には、それぞれ手応えが出にくくなる進め方があります。
5-1 スラッシュリーディングは、いつやめればよいか
スラッシュリーディングは、区切りを入れなくても前から意味を取ることができるようになったら、役目を終える練習です。区切りを探しながら読む状態が続くと、探す時間のぶんだけ読むのが遅くなります。区切りごとに頭の中で日本語に訳している場合も、読む速さが訳す速さに引っぱられます。
スラッシュを書かずに英文を読んでみて、区切りの位置が自然に分かるようになっていたら、紙に書くのをやめてみましょう。そのあとは、長い文でつかえたときだけ区切りを入れる使い方に切り替えると、スラッシュに頼らない読み方に近づいていきます。
5-2 多読をしているのに、読む速さが変わらない
多読を続けても読む速さが変わらないと感じる場合は、英文が難しすぎるのかもしれません。辞書を引く回数が多い、1ページ読むのに時間がかかる、話の筋を見失う、という状態なら、1段階やさしい英文に替えてみるとよいでしょう。IELTSに近い英文で多読をしたくなりますが、多読で伸ばしたいのは止まらずに読み進める力なので、難易度を下げても練習の目的からは外れません。
5-3 精読をしても、長い文で意味を取り違える
精読をしていても長い文で意味を取り違える場合は、知らない語を調べたところで止まっているのかもしれません。語の意味がすべて分かっても、どこまでが主語か、関係詞がどの名詞を説明しているかを取り違えると、文の意味は変わります。語を調べたあとに、主語と動詞、修飾の範囲まで確かめておくと、似た構造の文に出会ったときに役立ちます。
5-4 音読しても、内容が頭に残らない
同じ英文を何度も音読していると、慣れるにつれて内容を考えずに声だけを出すようになりがちです。音読のあとに、その英文の内容を日本語で一言にまとめてみると、意味を追いながら読んでいたかを確かめることができます。まとめられなかったときは、音読をいったん止めて、その文を精読し直してみましょう。
06よくある質問
IELTSリーディングの対策は、多読と精読のどちらを先にやるべきですか。
正答数が17問前後までの段階なら、精読から始めるのがおすすめです。1文の意味を正しく取れない状態では、辞書なしで読み進めることができるやさしい英文を探すこと自体が難しくなります。6.5前後からは多読の比重を上げ、精読は間違えた設問の該当箇所に絞ると続けやすくなります。
スラッシュリーディングはいつまで続ければよいですか。
スラッシュを書かなくても区切りの位置が自然に分かるようになったら、紙に書くのはやめてかまいません。区切りを探しながら読む状態が続くと、そのぶん読むのが遅くなります。そのあとは、長い文でつかえたときだけ区切りを入れる使い方に切り替えるとよいでしょう。
音読はリーディングのスコアアップに役立ちますか。
意味を理解した英文で行うなら、前から順に意味を取る感覚を身につける練習になると言われています。意味の分からない英文を声に出しても音をなぞるだけになりやすいので、精読で理解した英文を使うのがおすすめです。音読のあとに内容を日本語で一言にまとめると、意味を追いながら読んでいたかを確かめることができます。
多読にはどのくらいやさしい英文を選べばよいですか。
辞書をほとんど引かずに話の筋を追うことができる英文が目安です。英語教育の研究では、語のおよそ98%を知っていると辞書なしで内容を楽に理解できるとされているそうで、50語に1語ほど知らない語がある程度になります。辞書を引く回数が多いなら、1段階やさしい英文に替えるのがおすすめです。
試験まで1か月しかない場合、多読を始める意味はありますか。
多読は効果を実感するまでに時間がかかる練習なので、1か月では読む速さの変化を感じにくいでしょう。試験が近い場合は、公式問題集を解き、間違えた設問の該当箇所を精読し、理解した文を音読する流れに絞ると、次の本番につながりやすくなります。取り組む英文が自分の間違いから来ているためです。
1日30分ほどしか時間が取れない場合、どの練習をすればよいですか。
1回で区切りをつけやすい精読、音読、スラッシュリーディングから選ぶとよいでしょう。精読なら数文、音読なら1段落と、短い単位で進めることができます。多読は1回に読む量が少ないと話の筋を追いにくいので、まとまった時間が取れる日にまわすと続けやすくなります。
リーディングで7.0以上を目指す場合も、精読は必要ですか。
対象を絞って続けると役立ちます。30問以上を安定して取るには、細かい言い換えや筆者の主張の取り違えを減らす必要があり、間違えた設問の該当箇所を精読すると、本文のどの語を読み違えたのかを確かめることができます。読む量は多読で保ち、精読の対象を間違えた設問に絞ると、無理なく続けることができます。
07まとめ
- 精読は英文の構造を正確に取る力、多読は止まらずに読み進める速さ、音読とスラッシュリーディングは前から順に意味を取る感覚を伸ばす練習です
- 正答数が17問前後までは精読から、18〜25問では音読とスラッシュリーディングを組み合わせ、26問を超えたら多読の比重を上げていきます
- 試験が近い人や1日の時間が短い人は、解いた問題とつながり、効果を実感しやすい精読と音読から始めると、1回ごとの練習が得点に結びつきやすくなります
- スラッシュリーディングは、区切りを書かなくても意味のまとまりが分かるようになったら、書くのをやめてかまいません
- 多読で手応えがなければ英文の難しさを、精読や音読で手応えがなければ進め方を見直します
合う練習は、スコアが上がるにつれて変わっていきます。正答数が1つ上の帯に入ったら、練習の組み合わせを見直してみましょう。