スピーキング・パート2で出題が報告されているトピックは50個以上とも言われており、すべてに対して準備をしようとすると途方もない時間がかかります。実際、想定されるトピックすべてに対して完璧な原稿を用意しようとする人もいれば、ほぼぶっつけ本番で挑む人もいたりと、その対策は人によって実にさまざまです。
どの準備方法がベストかは、その方の性格や話し方のタイプにも大きく左右されます。事前準備がないと不安で仕方ないという人もいれば、話し出すとアイデアが次々と湧いて止まらなくなるという人もいるでしょう。
この記事では、Part 2の準備アプローチを3つのタイプに分類してご紹介します。自分にぴったりのスタイルを見つける方法に加え、それぞれのタイプが本番で陥りがちな注意点についても解説します。
目次
Part 2の想定問題は、なぜ全部に答えを用意しきれないのか
Part 2の準備方法には、どんな型があるのか
性格やタイプによって、向いている準備方法はどう変わるのか
本番ではどこでつまずくのか
話せる実体験がないトピックは、作り話で答えてもよいのか
準備はどんな順番で進めればよいのか
よくある質問
まとめ
01 Part 2の想定問題は、なぜ全部に答えを用意しきれないのか
キューカード1問ごとに条件が違ううえ、出題されるトピックは一定期間ごとにまとまって入れ替わると言われているため、1問に1本ずつ答えを用意していくと準備が出題に追いつきません。
同じ「人物」のトピックでも、聞かれる内容は少しずつ違います。
Describe a person who taught you something important.
Describe a person you enjoy talking with.
Describe a friend who you think is a good leader.
1つ目は何を教わったか、2つ目は話していて楽しい理由、3つ目はリーダーとしての資質が話の中心になります。選ぶ相手が同じ人でもかまいませんが、話の中心はトピックごとに変わります。トピック1問を準備の単位にすると、似たトピックが出るたびに準備をやり直すことになります。
そのため、準備の単位をトピック1問より大きく取る必要があります。ここまでは多くの学習法で共通していますが、単位をどう取るか、どこまでを事前に決めておくかで、準備のしかたが分かれます。
スピーキング
IELTSスピーキングは暗記で乗り切れるか:採点基準と試験官の進め方から考える
02 Part 2の準備方法には、どんな型があるのか
Part 2の準備方法は、書いて固める型、題材を決めて応用する型、その場で組み立てる型の3つに分けられます。違いは、本番の前にどこまでを決めておくかにあります。
型 準備ですること 本番でしていること
書いて固める型 トピックごとに回答を英文で書き、直してから声に出して練習する 書いた内容を思い出しながら話す
題材を決めて応用する型 人物なら人を1人、場所なら1か所と題材を決め、話す材料を集めておく 決めておいた題材を、トピックの条件に合わせて話す
その場で組み立てる型 初めて見るトピックで、準備1分・発話2分の練習を数多くこなす トピックを読んで、その場で話の順番を決める
英語の表現を1つずつ確かめながら進められるのが、書いて固める型です。話している最中に語や文法で止まりやすい人にとっては、言えることを増やす練習にもなります。
題材を決めて応用する型は、カテゴリーごとに少数の題材を用意しておけば、同じカテゴリーのトピックの多くに対応できます。準備の量と本番での応用のしやすさの釣り合いが取りやすい準備方法です。
その場で組み立てる型は、事前に覚えるものがいちばん少ない準備方法です。そのかわり、初めて見るトピックで話を組み立てる練習を、回数として積んでおく必要があります。
どれか1つに決める必要はなく、組み合わせてもかまいません。ただ、どの型を中心にするかで、練習時間の使い方が大きく変わります。
03 性格やタイプによって、向いている準備方法はどう変わるのか
向いている型を決めるには、準備のないトピックで話し始めたときに自分がどうなるかを見るのが近道です。頭が真っ白になる人と、話し出したら止まらない人とでは、練習で補うべきところが違います。
こんなタイプ 中心にしやすい型 気をつけたいこと
準備していないと不安で、頭が真っ白になりやすい 書いて固める型から始め、題材を決めて応用する型へ移る 書いた文を一字一句思い出そうとして、1語が出てこないところで止まる
話すことが思いつかず、30秒ほどで話が終わる 題材を決めて応用する型 集めた材料が事実だけになり、感じたことや理由が出てこない
話し出すと止まらず、話がそれやすい その場で組み立てる型 思いついた順に話して、箇条書きの最後の項目に届かない
実際にあったことしか話したくない 題材を決めて応用する型(実体験の題材を多めに用意する) トピックに合う実体験が見つからないと、準備の1分が探すだけで終わる
正確に言いたくて、言い直しが多い 題材を決めて応用する型に、その場で組み立てる練習を混ぜる 言い直しのたびに話の流れが途切れる
表の左の列は性格の分類というより、本番で起きやすい現象です。複数の行に当てはまる人もいるでしょう。たとえば、準備がないと不安な人が、書いた回答があると安心して話しすぎることもあります。
英語のレベルも判断材料になります。英語で文を組み立てること自体にまだ時間がかかる段階なら、書いて固める型で表現を確かめる時間は無駄になりません。反対に、言いたいことはすぐ英語になるのに話がまとまらない人は、書く時間を初見のトピックで話す回数に回したほうが、本番に近い練習になります。
自分のタイプが分からないときは、初めて見るトピックを1問選び、準備1分のあと2分話して録音してみましょう。途中で止まったのか、時間が余ったのか、最後の項目まで届かなかったのかを聞き直すと、どの行に近いかが分かります。
04 本番ではどこでつまずくのか
どの型にも、本番で起きやすい失敗があります。準備のしかたそのものより、準備したものをトピックにどう合わせるかでつまずくことが多いので、実際のトピックで見てみましょう。
4-1 書いて固めた回答を、トピックの条件に合わせないまま話す
キューカード
Describe a person who taught you something important.
Describe an elderly person you enjoy spending time with. のトピック用に、祖母についての回答を書いて練習していたとします。同じ祖母の話で答えようとして、書いた回答の冒頭からそのまま話し始めると、次のようになります。
✗
My grandmother is 82 and she lives in Kyoto. I visit her about once a month, and we usually go for a walk together.祖母の紹介から入り、何を教わったのかが最後まで出てこない
○
I'd like to talk about my grandmother, who taught me how to be patient.最初の1文で何を教わったかを言うと、そのあとの話をトピックの条件に沿って進めやすい
書いた回答を思い出しながら話していると、注意の大半が「次の文は何だったか」に向かい、キューカードの1行目を読み直す余裕がなくなります。書いた順番どおりに話し進めるうちに、2分が過ぎてしまいます。
書いて固める型で練習するなら、書き終えた原稿は声に出す前にしまい、キーワードを3語ほどだけ見て話す練習まで進めておきましょう。話し終えたら、トピックの箇条書きにすべて触れられていたかを確かめます。
4-2 決めておいた題材を、条件の合わないトピックにも使ってしまう
キューカード
Describe a noisy place you went to.
場所のカテゴリーで、くつろげる場所として家の近くのカフェを題材に決めていたとします。そのカフェで答えようとして、準備したとおりに話すと、トピックの条件と食い違います。
✗
There's a small café near my flat where I often go to relax. It's quiet, so I can read there for hours.静かな場所の話になり、noisy という条件と合わない
○
I'm going to talk about a café near my flat. It's usually quiet, but on Saturday afternoons it gets really noisy.同じ題材でも、条件に合う場面を選べば話せる
題材を決めておくと、どのトピックにもその題材で答えたくなります。○の例のように、条件に合う場面を選べば同じ題材でも話せますが、どうしても合わないなら題材を替えます。カテゴリーごとに題材を4つほど用意しておけば、1つが合わなくても切り替え先があります。
準備の1分では、トピックの条件を表す語(この例では noisy)を自分の題材に当てはめて、1文で言えるかを最初に確かめておきましょう。言えなければ、すぐに別の題材に切り替えます。
スピーキング
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4-3 その場で組み立てて、前置きだけで時間を使う
キューカード
Describe something you bought recently that you are happy with.
話すことに困らない人ほど、思いついた順に話し始めます。買ったものの話をする前に、その日の出来事から語り始めると、次のようになります。
✗
Last month I had a few days off, so I went to a shopping centre with my sister. We took the train, and it was really crowded because it was a holiday.何を買ったのかが出てくる前に時間が過ぎていく
○
I recently bought a pair of noise-cancelling headphones, and I'm really happy with them.最初の1文で買ったものを言い、経緯はあとで短く足す
Part 2では、2分がたつと試験官が話を止めます。前置きが長いと、箇条書きの最後の項目(このトピックなら、なぜ満足しているのかを説明する部分)を話す前に止められてしまいます。
その場で組み立てる型の人は、準備の1分で話す内容まで決めようとせず、箇条書きの順番と、最後の項目で何を言うかだけを決めておくとよいでしょう。話し出してから広げる力はすでにあるので、決めておくのは順番だけで十分です。
05 話せる実体験がないトピックは、作り話で答えてもよいのか
作り話で答えてもかまいません。スピーキングの採点項目は Fluency and Coherence、Lexical Resource、Grammatical Range and Accuracy、Pronunciation の4つで、話した内容が実際にあったことかどうかは採点項目に含まれていません。
実際にあったことしか話したくない人がつまずくのは、トピックに合う経験を探しているうちに準備の1分が終わってしまうときです。Describe a successful sportsperson you admire. のトピックが出たのに、スポーツ選手に特に関心がない、という場面がこれにあたります。
ただ、すべてを一から作るのも簡単ではありません。経験していないことは細部が浮かばず、話が一般論になって短く終わりがちです。話しやすいのは、実体験の一部だけを変えるやり方です。
実体験の変え方 例
2人の話を1人にまとめる 親切だった先輩と、仕事の進め方を教えてくれた上司を、1人の人物として話す
時期や場所を入れ替える 大学時代の旅行の出来事を、去年の旅行の話として話す
見聞きしたことを自分の経験として話す 友人から聞いた、混雑したイベントの話を、自分が行った場所として話す
どのやり方でも、場面の細部は実体験から持ってこられます。題材を決めて応用する型と組み合わせるなら、題材を集める段階で「このトピックには、この経験を少し変えて使う」と決めておくと、本番で探す時間が減ります。
06 準備はどんな順番で進めればよいのか
最初に自分のタイプを確かめ、そのあとに報告の多いカテゴリーから題材を決めていくと、準備の量を抑えられます。どの型を中心にしても、順番は大きく変わりません。
ステップ すること 確かめること
1 初めて見るトピックで、準備1分・発話2分を録音する 途中で止まるのか、時間が余るのか、最後の項目に届かないのか
2 人物と場所のカテゴリーから、題材を4つずつ決める 1つの題材で、同じカテゴリーのトピックを何問か話せるか
3 中心にした型で練習しつつ、ほかの型の練習も少し混ぜる 書いて固める型の人は初見のトピックで話せるか、その場で組み立てる型の人は表現の誤りが減っているか
4 同じトピックで日を空けてもう一度話し、録音を比べる 条件を表す語を最初の1文で言えているか、最後の項目まで届いているか
ステップ3でほかの型を混ぜるのは、本番ではどの型の力も少しずつ必要になるからです。書いて固める型だけで準備した人は、初めて見るトピックで話を組み立てる練習が不足しがちです。その場で組み立てる型だけの人は、同じ誤りを繰り返していても気づきにくくなります。
カテゴリーの分け方と、カテゴリーごとに出題されてきたトピックは、次の記事にまとめています。
スピーキング
Part 2・Part 3出題トピック集:スピーキングで何が聞かれてきたか【総論】
録音を聞き直すときに何を確かめればよいかは、こちらの記事で解説しています。
スピーキング
スピーキングの自己練習では何を振り返るべきか:短期対策なら表現のインプットより優先したいこと
07 よくある質問
Part 2の想定問題は、全部に答えを用意したほうがよいですか。
全部に用意する必要はありません。キューカードは1問ごとに条件が違い、出題も一定期間ごとに入れ替わると言われているので、1問ずつ用意していくと準備が追いつきません。人物や場所などのカテゴリーごとに題材を決めておくほうが、初めて見るトピックにも対応できます。
Part 2はほとんど準備しないで本番に臨んでも大丈夫ですか。
話し出すと止まらないタイプなら、事前に覚えるものは少なくても問題ありません。そのかわり、初めて見るトピックで話す練習の回数が必要です。前置きが長くなると箇条書きの最後の項目に届かなくなるので、準備の1分で話す順番だけは決めておくと安心です。
自分にどの準備方法が向いているのか分かりません。
初めて見るトピックで準備1分のあと2分話し、録音して聞き直してみましょう。途中で止まったなら、語や文法で詰まったのか、話す内容が尽きたのかを聞き分けます。語や文法なら書いて固める型、内容が尽きたり時間が余ったりしたなら題材を決めて応用する型、最後の項目に届かなかったならその場で組み立てる型を中心にするとよいでしょう。結果が1つに決まらなければ、当てはまる型を組み合わせて練習しましょう。
Part 2で作り話をすると評価が下がりますか。
下がりません。スピーキングの4つの採点項目に、話した内容が実際にあったことかどうかは含まれていません。ただ、すべてを一から作ると細部が浮かばず話が短くなりがちなので、実体験の一部を変えて話すほうが話しやすくなります。
準備しておいた題材とトピックの条件が合わないときはどうすればよいですか。
同じ題材のまま条件に合う場面を探し、それでも合わなければ題材を替えます。静かなカフェを題材にしていたなら、混み合う時間帯の話にすれば noisy という条件に合わせられます。カテゴリーごとに題材を4つほど用意しておくと、切り替え先に困りません。
書いた回答を覚えて練習するのはよくないのですか。
回答を書くこと自体は、表現を確かめる練習になります。問題が起きるのは、本番で書いた文を一字一句思い出しながら話そうとしたときです。トピックの条件に合わせる余裕がなくなるので、書いたあとはキーワードだけを見て話す練習まで進めておくと、本番でもトピックの条件に合わせて話せます。
試験まで時間がないときは、どの準備方法から始めればよいですか。
題材を決めて応用する型から始め、報告の多い人物と場所のカテゴリーで題材を4つずつ決めるところまで進めましょう。少ない題材で多くのトピックに対応できるので、限られた時間でも準備の範囲を広げられます。
08 まとめ
Part 2の準備に正解の型は1つではありません。準備がないと不安な人、すぐに話が終わる人、話し出すと止まらない人とで、補うべきところが違います。まず初見のトピックで2分話してみて、自分がどこでつまずくのかを確かめるところから始めましょう。
キューカード1問を準備の単位にせず、カテゴリーごとに題材を決める
準備方法は、書いて固める型、題材を決めて応用する型、その場で組み立てる型に分けられる
向いている型は、準備のないトピックで話したときに自分がどうなるかで決める
どの型でも、トピックの条件を表す語を最初の1文で言えるかを確かめる
話した内容が事実かどうかは採点されないので、実体験の一部を変えて話してもよい
中心にした型に、ほかの型の練習を少し混ぜる