前回は7.0だったスピーキングが、今回は6.0。勉強方法も使っている教材も変えていないし、試験中に大きく失敗した覚えもない。それなのに、スコアが1.0下がってしまった。そんな結果を前に、何を見直せばよいのか分からず、戸惑っていませんか。
スコアが下がったからといって、必ずしも英語力そのものが落ちたとは限りません。4つの採点項目のうち、どこで評価が変わったのか。前回の7.0は安定して出せる実力だったのか、それとも今回はトピックとの相性や緊張によって、普段の力を十分に発揮できなかったのか。スコアの数字だけでは、原因を特定することはできません。また、Part 2やPart 3で扱われるトピックが変わったことや、緊張して回答が短くなったことは、評価にどう影響するのでしょうか。勉強方法を変えていなくても、実は練習の内容や回答の仕方に変化が生じていた可能性もあります。
大切なのは、スコアが下がったという事実だけで判断せず、何が起きていたのかを一つずつ整理することです。この記事では、採点項目ごとの評価の考え方から、トピックや緊張が回答に与える影響、普段の勉強で見落としがちな点までを解説します。そのうえで、再採点を申し込むかどうか、次の受験までに何を確かめておくべきかを考えていきます。
目次
7.0から6.0に下がったとき、採点項目では何が起きているのか
前回の7.0は、毎回出せるスコアだったのか
Part 2・Part 3のトピックが変わると、なぜスコアが変わるのか
緊張して答えが短くなると、何が評価しにくくなるのか
勉強は変えていなくても、変わっていたことはないか
下がったスコアは再採点を申し込むべきか:次の受験までに確かめること
よくある質問
まとめ
01 7.0から6.0に下がったとき、採点項目では何が起きているのか
スピーキングが7.0から6.0に下がったなら、計算上は4つの採点項目のバンドの合計が3以上下がっています。たとえば、3つの採点項目が1バンドずつ下がると、この差になります。スピーキングのスコアは、4つの採点項目(Fluency and Coherence、Lexical Resource、Grammatical Range and Accuracy、Pronunciation)に付いた整数のバンドを平均し、0.5刻みになるよう端数を切り下げて出すと一般に説明されているからです。
4つの採点項目 合計 平均 スコア
7・7・7・7 28 7.0 7.0
7・7・7・6 27 6.75 6.5
7・7・6・6 26 6.5 6.5
7・6・6・6 25 6.25 6.0
6・6・6・6 24 6.0 6.0
7.0から6.5への下がり方なら、2行目のように1つの採点項目がBand 6になっただけでも起こります。一方、7.0になる合計は28か29、6.0になる合計は24か25なので、6.0まで下がるには合計が少なくとも3下がる必要があります。1つの採点項目だけが3バンド以上下がったことも計算上はありえますが、複数の採点項目で前回より低い判定が付いたと考えるほうが自然です。
なお、成績証明書(Test Report Form)に載るのはスピーキング全体のスコアだけで、採点項目ごとのバンドは記載されません。どの採点項目が下がったのかは、自分の回答から推測するしかありません。採点項目ごとの Band 6 と Band 7 の違いは、次の記事で比べています。
スピーキング
IELTSスピーキングが6.0から上がらない:話せているのに7.0に届かないのはなぜか
02 前回の7.0は、毎回出せるスコアだったのか
前回の7.0と今回の6.0は、どちらも同じ実力から出た結果である可能性があります。採点項目ごとのバンドは整数で付くので、ある採点項目の力がBand 6とBand 7の境目にあれば、その日の回答の出来によってどちらの判定にもなりうるからです。
✗
前回の7.0が自分の実力で、今回だけ失敗した前回のスコアを基準にして、今回の原因を1つ探そうとする
○
前回も今回も、Band 6とBand 7の境目にある採点項目が複数あった前回は境目の上側に、今回は下側に判定が付いたと考える
スピーキングの試験は11分から14分で、そのあいだに話した回答だけが採点の材料になります。Part 2のキューカードもPart 3の質問も試験ごとに違い、担当する試験官も違います。境目にある採点項目が3つあれば、前回はその3つともBand 7と判定され、今回は3つともBand 6と判定される、ということも計算上は起こりえます。
そう考えると、前回の7.0を偶然だったと片づける必要はありません。2回の結果の差は、どの採点項目がまだ安定していないのかを知る手がかりになります。前回と今回で、試験のどこが違ったのかを思い出せる範囲で書き出してみましょう。Part 2のトピック、Part 3で答えに詰まった質問、答えの長さ、話しているときの手応えなどです。
03 Part 2・Part 3のトピックが変わると、なぜスコアが変わるのか
話しやすいトピックとそうでないトピックでは、使える語彙の具体さが変わり、Lexical Resource の判定に表れやすくなります。Band 7 の記述には、さまざまな話題で語彙を柔軟に使えることが含まれているからです。
Band 7・Lexical Resource(抜粋)
Resource flexibly used to discuss a variety of topics.
自分の仕事や趣味に近いトピックなら、その分野の具体的な語が自然に出てきます。一方で、ふだん考えたことのない話題になると、どの話題にも使える一般的な語で話をつなぐことになります。次のPart 3の質問で比べてみます。
Q. What do you think are the biggest problems caused by power outages?
✗
I think it's a big problem. People can't use their smartphones and they can't use the internet, so it's very inconvenient. And it's dangerous, too. So I think it's a big problem.big problem、inconvenient、dangerous のような一般的な語で話をつなぎ、最初の答えに戻っている
○
The most obvious one is that daily life just stops. Lifts break down, traffic lights go off, and people can't charge their phones, which matters a lot in an emergency. But I'd say the bigger risk is for people who rely on medical equipment at home, or for hospitals if their back-up generators fail. In a country like Japan, where earthquakes can knock out the power for days, that's a serious concern.何が止まるのかを具体的に挙げ、誰にとっての危険かまで話を進めている
✗の回答は、停電に限らず多くの話題にそのまま使える言い方でできています。○の回答に出てくる lifts、traffic lights、back-up generators、knock out the power は、どれも難しい単語ではありません。停電という話題について考えたことがあれば出てくる語です。
前回は、たまたま話しやすいトピックだったのかもしれない
前回のPart 2が自分の経験に近いトピックで、今回はほとんど考えたことのないトピックだったなら、語彙の判定が変わった理由の1つと考えられます。試験で問われているのは、身近な話題を話せるかだけでなく、さまざまな話題で語彙を使い分けられるかでもあります。これまでに出題が報告されているトピックの中から、自分が避けてきたものを選んで練習しておくと、トピックによる差を小さくできます。
スピーキング
Part 2・Part 3出題トピック集:スピーキングで何が聞かれてきたか【総論】
04 緊張して答えが短くなると、何が評価しにくくなるのか
短く答えること自体で評価が下がるわけではありません。ただ、答えが短くなると、語彙や文法の幅を示す材料が少なくなります。前回より緊張していた、試験官の反応が気になった、という自覚があるなら、答えの長さが変わっていなかったかを振り返ってみましょう。
Fluency and Coherence の Band 6 と Band 7 には、どちらも long turns(長い発話)という語が出てきます。Band 6 は長く話そうとする姿勢が見られる段階、Band 7 は目立った苦労なしに長く話せる段階です。Part 3の質問に1文だけで答えて次の質問を待つ回答が続くと、どちらの記述にも当てはめにくくなります。
✗
I think the biggest problem is that we can't use electricity, so it's very inconvenient.質問には答えているが、理由や例がないまま終わっている
この回答そのものに誤りはないものの、1文で終わっているため、語彙の幅や複文を正確に組み立てる力を示す場面がないまま次の質問に移ってしまいます。前回は理由と例まで話していたのに、今回は1文で止めていたなら、話す力は変わっていなくても、採点の材料は前回より少なかったことになります。
緊張で答えが短くなるのを防ぐには、答えの1文目を言ったあとに「理由を1つ」「例を1つ」足すことを、練習の段階から決めておくといいでしょう。緊張そのものとの付き合い方は、下の記事で取り上げています。
スピーキング
スピーキング試験の緊張を味方にする方法:適度な緊張がパフォーマンスを高める仕組み
05 勉強は変えていなくても、変わっていたことはないか
勉強のやり方が同じでも、準備の中身や、ふだん英語を話す量が前回の受験から変わっていることがあります。どちらも本人には気づきにくい変化です。
準備が、回答の暗記に寄っていないか
受験を重ねるうちに、出題が予想されるトピックごとに回答を用意し、それを覚える準備が増えていなかったかを振り返ってみましょう。Part 1とPart 2は覚えた内容を使える場面がありますが、Part 3では試験官が台本にない質問を足すことができます。覚えた回答が使えない質問に入ったところで、急に答えが短くなったり、一般的な語に戻ったりすると、03と04で見た状態になります。暗記した回答が試験のどこまで使えるのかについては、採点基準と試験官の進め方から考えた記事があります。
スピーキング
IELTSスピーキングは暗記で乗り切れるか:採点基準と試験官の進め方から考える
ふだん英語を話す時間が減っていないか
前回の受験のころは、仕事や留学で英語を話す機会が多かったのに、今はほとんど話していない、ということはないでしょうか。机に向かう勉強の量が同じでも、口に出して話す量が減っていれば、とっさに言葉を選ぶ速さや、長く話し続ける感覚は保ちにくくなります。前回の受験から時間が空いている場合は、次の記事も参考になります。
IELTS総合対策
ブランクのあとにIELTS学習を再開する:どこから戻すかを決める4つの手順
06 下がったスコアは再採点を申し込むべきか:次の受験までに確かめること
スピーキングは再採点(Enquiry on Results)の対象で、最初の採点とは別の試験官が録音を聞いて採点し直します。今回の回答が前回と同じくらいの出来だったと感じていて、必要なスコアにあと0.5だけ足りないなら、再採点を検討する余地があります。費用や申請期限は運営団体ごとに決まっているので、次の記事で確認しておきましょう。
IELTS総合対策
IELTS再採点(リマーク)の仕組みと申請方法:EORとOne Skill Retakeの違い
ただし、再採点でスコアが上がる保証はありません。02で見たように、境目にある採点項目が複数あるなら、再採点で結果が変わらなくても、次の受験でまた上下する可能性があります。再採点の結果を待つあいだも、次の受験に向けて、どの採点項目が境目にあるのかを確かめておくといいでしょう。
確かめること やり方
トピックによって答えの中身が変わらないか 得意なトピックと、避けてきたトピックで1問ずつ録音し、使っている語の具体さを比べる
答えが1文で止まっていないか Part 3の質問5つに答えて録音し、理由や例まで話せた回答がいくつあるかを数える
覚えた回答に頼っていないか 準備していない質問を混ぜて練習し、準備した質問との話しぶりの差を聞き比べる
話す量が足りているか 1週間のうち、英語を声に出して話した時間を書き出してみる
録音を自分で聞いて判断できるのは、答えの長さや同じ語の繰り返しのような聞いて分かる部分までで、どの採点項目が境目にあるのかまでは見極めにくいこともあります。講師に聞いてもらっても独学でも、次のスコアが保証されるわけではありません。講師に回答を聞いてもらえば、外から確かめる機会が増えます。独学なら費用を抑えられますが、どこが不安定なのかの見通しは立てにくくなります。結果を受け取ったあとの振り返り方は、次の記事にもまとめています。
IELTS総合対策
スコアを見て終わりにしない:IELTSの結果が出た後の振り返り方
07 よくある質問
IELTSスピーキングが7.0から6.0に下がったのは、採点ミスですか。
採点ミスとは限りません。採点項目ごとのバンドは整数で付くので、Band 6とBand 7の境目にある採点項目が複数あれば、その日の回答によってどちらの判定にもなりえます。計算上、7.0から6.0に下がるには、4つの採点項目のバンドの合計が3以上下がっている必要があります。
スピーキングのどの採点項目が下がったのかを知る方法はありますか。
成績証明書にはスピーキング全体のスコアしか載らないので、採点項目ごとのバンドは分かりません。自分の回答を録音して書き起こし、つなぎ言葉の偏り、語彙の具体さ、誤りのない文の多さ、リズムなどを採点項目ごとに確かめて推測することになります。
Part 2のトピックの当たり外れで、スコアは変わりますか。
変わることはありえます。話しやすいトピックでは具体的な語が出やすく、考えたことのないトピックでは一般的な語でつなぐことになりやすいからです。Band 7 の Lexical Resource には、さまざまな話題で語彙を柔軟に使えることが含まれています。
緊張して答えが短くなると、スピーキングのスコアは下がりますか。
短く答えること自体で評価が下がるわけではありません。ただ、答えが1文で終わると、語彙や文法の幅を示す材料が少なくなります。答えの1文目のあとに理由と例を1つずつ足すことを、練習の段階から決めておくといいでしょう。
勉強のやり方は変えていないのに、スピーキングが下がるのはなぜですか。
勉強のやり方が同じでも、準備が回答の暗記に寄っていたり、ふだん英語を声に出して話す量が減っていたりすることがあります。Part 3では試験官が台本にない質問を足せるので、覚えた回答が使えない質問で答えが短くなることもあります。
スピーキングが下がったら、再採点を申し込むべきですか。
スピーキングは再採点の対象で、別の試験官が録音を聞いて採点し直します。回答の出来が前回と同じくらいだったと感じていて、必要なスコアにあと0.5足りないなら申し込む価値はありますが、スコアが上がる保証はありません。費用や期限は運営団体ごとに異なります。
次の受験までに何を練習すればいいですか。
避けてきたトピックで回答を録音し、得意なトピックと語の具体さを比べてみましょう。あわせて、Part 3の質問に理由や例まで話せているか、準備していない質問で話しぶりが変わらないかを確かめると、どの採点項目が安定していないのかの手がかりになります。
08 まとめ
スピーキングが前回より下がったときは、今回の失敗を1つ探すより、どの採点項目がBand 6とBand 7の境目にあるのかを確かめるほうが、次の受験につながります。
7.0から6.0に下がるには、計算上、4つの採点項目のバンドの合計が3以上下がっている
境目にある採点項目は、その日の回答によってどちらの判定にもなりうる。前回の7.0と今回の6.0は同じ実力から出た可能性がある
考えたことのないトピックでは一般的な語に頼りやすく、語彙の判定に表れる
答えが1文で終わると、語彙や文法の幅を示す材料が少なくなる
準備が暗記に寄っていないか、ふだん話す量が減っていないかも振り返る
再採点は申し込めるが、上がる保証はない。結果を待つあいだも、境目にある採点項目を確かめておく
まずは今回の試験で出たPart 2のトピックを思い出し、同じトピックでもう一度2分間話して録音してみましょう。前回うまく話せたトピックと聞き比べると、どこに差があるのかが分かりやすくなります。