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スピーキング

ラスト1か月でスピーキング7.0を目指す:3週目に見直す決まった型と「〜しなければならない」という思い込み【第3回】

執筆:高橋 響 公開日: 最終更新:

2週目で話の筋を整えてきたなかで、気づいたことはないでしょうか。どの質問にも同じ言い出しで答えていたり、「必ず理由を2つ言う」「最後は結論で締める」といった決まりに沿って話していたり。準備を重ねるほど、こうした型は自然と身についていきます。ただ、それが本当に点数につながっているのかは、一度立ち止まって確かめておきたいところです。

第3回のテーマは、決まった型と「〜しなければならない」という思い込みです。まず、採点基準と試験の進め方が、暗記した回答についてどう示しているのかを確認します。そのうえで、準備と回答の暗記がどこで分かれるのか、自分が守っている決まりがIELTSの決まりなのか、それとも自分で作ったものなのかを見ていきます。決まりを手放したあとに、何を手がかりに話せばよいのかも整理します。

練習では、これまでの録音を聞き返して、自分の決まり文句を探します。型に頼らなくても話せる状態をつくって、最後の1週間につなげていきましょう。

01採点基準と試験の進め方は、暗記した回答について何を示しているのか

スピーキングの Band Descriptors で memorised(暗記した)という語が出てくるのは、Band 3以下の記述です。たとえばBand 3の Grammatical Range and Accuracy には、明らかに暗記していると思われる発話を除けば文法の誤りが多い、という記述があります。暗記した部分は、その人がその場で組み立てた英語とは分けて見られていることが分かります。

IELTS公式サイト(ielts.org)の記事(2023年2月1日公開)でも、暗記した回答について次のように書かれています。

IELTS公式サイト(ielts.org)

Examiners are highly trained to spot memorised answers, which never bodes well for test takers.

試験の進め方から見ても、用意した回答が通用する場面は限られています。Part 1 と Part 2 は、どの受験者にも同じ条件で質問が出されるように、試験官が使う文言が細かく決められています。一方、Part 3 では試験官が受験者のレベルに合わせて言葉を調整でき、台本にない追加の質問もできるとされています。Part 2 のトピックの一覧を全部覚えたとしても、そのあとに続く Part 3 の質問は、事前に用意できません。

パート質問の決まり方用意した回答の使いどころ
Part 1トピックごとに決まった質問を、決まった文言で聞かれるトピックは予想できても、質問の言い回しまでは分からない
Part 2トピックが書かれたカードを受け取り、1分準備して話す用意した題材を使える場面がある
Part 3Part 2 のトピックにつながる質問を、試験官がやり取りの中で続ける回答の全文をそのまま使うのは難しい

試験官向けの資料や、暗記した回答が試験のどこまで通用するのかは、次の記事で詳しく扱っています。

スピーキング IELTSスピーキングは暗記で乗り切れるか:採点基準と試験官の進め方から考える

02準備と回答の暗記は、どこで分かれるのか

覚えたものを別の質問にも持ち運べるほど準備に近く、特定の質問にしか使えないほど回答の暗記に近づきます。話せる題材や、トピックに合う語を知っておくことは、質問が変わっても使えます。特定の質問のために作った文章は、その質問が出たときにしか使えません。

準備として役に立つもの回答の暗記に近づくもの
内容人物、場所、出来事など、話せる自分の経験や題材質問ごとに書いた回答の全文
語トピックの中身を説明するのに必要な語どの質問にも入れるつもりで覚えたイディオムや難しい語
答え方自分の1文目を問い直して、次の1文を足す練習どの質問にも同じ順で当てはめる答え方の型
言い出し答えの見当を先に言う、言いたい語が出ないときに中身で説明する、といった話し方毎回の答えの最初に言う決まった1文

2-1 用意した話を、トピックに合わせずに話す

Part 2 では、1人の人物や1つの出来事を、いくつかのトピックに使えるように準備しておく方法があります。同じ人を選んでもかまいませんが、用意した話をトピックに合わせずにそのまま話すと、話の中心がトピックからずれていきます。

Describe a person who is well organised.
You should say:
who this person is
how you know this person
what this person does to stay organised
and explain why you think this person is well organised.

✗

「尊敬する人」のトピック用に用意した、料理が上手な友人の話を、そのまま2分話す料理の腕前やおいしかった料理の話が中心で、整理整頓や計画性については最後に1文触れるだけになる

○

同じ友人を選び、パーティーの料理を何日も前から段取りして準備する様子を中心に話す人物は同じでも、話の中心を well organised に合わせている

Part 2 では、話の内容がトピックからずれていても、試験官はその場で話を止めません。止められないので、うまく話せたように感じます。ただ、そのあとに続く Part 3 の質問は、トピックについての話から始まります。準備の1分では、用意した題材のどこをトピックに合わせて話すかを決めておきましょう。Part 2 の準備の方法にはいくつかの選択肢があり、向き不向きは人によって違います。

スピーキング IELTSスピーキングPart 2の想定問題にどう備えるか:性格やタイプで変わる準備方法の向き・不向き

2-2 同じ型に語を入れ替えて、どの質問にも答える

Q. Do you prefer watching TV alone or with other people?

△

That's an interesting question. I prefer watching TV with other people for two reasons. Firstly, it is more enjoyable. Secondly, we can share our opinions. So I prefer watching TV with other people.決まった言い出し、理由を2つ、最初の文に戻るまとめ、という型に語を入れている

○

It depends on what I'm watching, really. For football, I'd much rather watch it with friends, because half the fun is shouting at the screen together. But if it's a drama, I usually watch it on my own, because I hate it when people talk during the important scenes.何を見るかで答えが変わることを、場面を挙げて話している

△の回答は、英語としての誤りはありません。ただ、Part 1 で同じ型の答えが何問も続くと、質問が変わっても同じ形と同じ語で答えることになります。型の中にある「理由は2つ」も、IELTS の決まりではありません。○の回答は理由の数を数えておらず、何を見るかによって答えが変わる、という自分の実際の好みを話しています。

03「〜しなければならない」と思っている決まりは、IELTSの決まりか

スピーキングの対策として紹介される決まりの中には、IELTSが定めているものではなく、練習の目安や、ある場面で役立つ工夫が、いつのまにか決まりとして広まっているものがあります。目安として使うのはかまいませんが、守らなければならないと思うと、質問に合わせて話す余地が狭くなります。

3-1 答えの形について思い込みやすいこと

思い込みやすいこと実際のところ
Part 1 は「結論・理由・具体例」の3文で答える1問の答えの長さや文の数は決まっていない。公式に決まっているのは、Part 1 全体が4分から5分であること
理由は必ず2つ挙げる理由の数に決まりはない。1つの理由を説明して深めるほうが、話の筋を保ちやすいことも多い
Part 3 では必ず賛成と反対の両方に触れる両方に触れることは必須ではない。範囲を付けて答えると、当てはまらない場合を話す流れが生まれることはある
Part 2 は箇条書きの順に答える箇条書きは話の手がかり。話しやすい順に話してかまわない

Part 1 の答えの長さについては、1問15秒から20秒ほどを練習上の目安として1週目で紹介しました。これは Part 1 全体の時間から逆算した目安で、毎問その長さに合わせなければならない決まりではありません。

3-2 語と表現について思い込みやすいこと

思い込みやすいこと実際のところ
イディオムや難しい語を入れないとBand 7に届かないBand 7の記述には、あまり一般的でない語やイディオムを使う力が「ある程度」見られることが挙がっている。使う数の決まりはなく、場面に合わずに使えば不適切な使い方になる
Furthermore や Moreover でつなぐと評価が上がるBand 7の記述は、話し言葉のつなぎの表現を柔軟に使えること。書き言葉のつなぎを並べることではない
質問の語は必ず別の語に言い換えるBand 7の記述は「必要に応じて」効果的に言い換えること。質問の語をそのまま使うこと自体は誤りではない

イディオムを覚えること自体が悪いわけではありません。意味と使う場面が分かっている表現を、話の中で合う場面が来たときに使えれば、語彙の幅を示すことにつながります。毎日いくつか覚えて翌日の答えに入れる、という練習は、合う場面かどうかを考えずに入れる癖につながりやすいので注意が必要です。

3-3 話し方について思い込みやすいこと

思い込みやすいこと実際のところ
Um や Well と言うと評価が下がるその語を言ったこと自体で評価が下がるわけではない。見られているのは、発話全体の流れ
言い直すと評価が下がるBand 7の記述にも、言い直しが起こりうることが書かれている。条件は一貫性に影響しないこと
聞き返すと評価が下がる聞き取れなかった質問は聞き返してよい。Part 1 の質問は決まった文言で読まれるので、繰り返してはもらえても、言い換えてもらえるとは限らない
That's an interesting question. で考える時間を作る使うこと自体は誤りではない。毎回の言い出しにすると、時間はつながっても答えの中身は増えず、決まった言い回しとして聞こえやすくなる

フィラーの役割と、聞き返しや言い直しを試験中にどう扱うかは、それぞれ次の記事で扱っています。

スピーキング IELTSスピーキングでUm・Uh・Wellは評価が下がる?フィラーを怖がる必要がない理由:Fluency and Coherenceの観点から見る スピーキング IELTSスピーキング試験の受け方:聞き返しと言い直しをどう扱うかの判断基準

04決まりの代わりに、何を手がかりに話せばよいのか

決まりの代わりに手がかりにするのは、いま聞かれている質問と、自分がいま言った1文です。どちらも試験の場で必ず手元にあるので、トピックや質問の言い回しが予想と違っても使えます。

手がかり自分に問うこと扱った週
質問何を聞かれているか。1文目でそれに答えたか2週目
自分の1文目その中の語から、次に何を足せるか1週目
足した文いま言ったことは、質問の答えのどこを支えているか2週目

型を覚えると、本番で迷う場面が減るように感じます。ただ、型は質問を聞く前から答え方を決めておくものなので、質問が型に合わないときに、そのずれに気づきにくくなります。質問と自分の1文目を手がかりにすれば、答え方は質問を聞いたあとに決まります。この手がかりを使って話す練習を、本番までに何度も重ねておきましょう。

05自分の決まり文句を、録音から見つける練習

自分が決まった言い回しに頼っているかどうかは、1本の録音だけでは判断しにくいものです。いくつもの答えを並べてはじめて、同じ言い出しや同じ語が繰り返されていることに気づきます。

ステップすること確かめること
1 並べる1週目からの録音の中から、Part 1 と Part 3 の答えを10問ほど選び、それぞれ最初の2文を書き出す同じ言い出しで始まっている答えがいくつあるか
2 数える書き出した文の中で、何度も出てくる言い回しや語に印を付けるThat's an interesting question.、for two reasons、Firstly、convenient などが繰り返されていないか
3 答え直す印を付けた言い回しを使わずに、同じ質問にもう一度答える1文目から質問に答えているか
4 初めての質問に答える受験する時期のトピックから、まだ答えたことのない質問を選んで答える型を使わずに答え始められたか

ステップ3では、印を付けた言い回しを、別の決まった言い回しに置き換えないことが大切です。That's an interesting question. を Let me think about that. に替えても、毎回の言い出しが決まっていることは変わりません。言い出しを外して、1文目で答えから話し始めます。

ステップ4では、Part 3 の質問のあとに、自分で Why? や Can you give an example? と追加の質問をして、もう1回答えてみましょう。Part 3 では試験官が台本にない質問を続けることがあるので、用意していない質問に続けて答える練習になります。レッスンを受けている場合は、講師に追加の質問をしてもらうと、本番に近い形で練習できます。

練習の組み方の一例として、週の前半にステップ1から3を一度通し、後半は毎日ステップ4で初めての質問に Part 1 を3問、Part 3 を3問ほど答える、という配分があります。1週目から付けている誤りの記録も続けておきます。

スピーキング 2026年9-12月に試験を受ける人が押さえておきたいトピック:出題傾向を踏まえた学習計画の立て方

06この週の終わりに確かめること

週の終わりに、次の項目を確かめてみましょう。すべてにチェックが付かなくても4週目には進み、残った項目は並行して続けます。

  • 暗記した回答が、試験のどこまで通用しにくいのかを説明できる
  • Part 2 で用意した題材を使うとき、話の中心をトピックに合わせられる
  • 「理由は2つ」「両方に触れる」のような決まりが、IELTSの決まりではないことを知っている
  • 自分の録音から、繰り返し使っている言い出しや語を見つけた
  • 決まった言い出しを使わずに、1文目で質問に答え始められる
  • まだ答えたことのない質問に、型に頼らずに答えられる

07よくある質問

IELTSスピーキングで、暗記した回答を話すとどうなりますか。

スピーキングの Band Descriptors で暗記した発話に触れているのは Band 3以下の記述で、暗記した部分は、その場で組み立てた英語とは分けて見られています。IELTS公式サイトの記事でも、試験官は暗記した回答を見分けられるよう訓練されていると書かれています。また Part 3 では台本にない質問もあるので、用意した回答の全文をそのまま使うのは難しくなります。

Part 2 では、1つの話をいくつかのトピックに使ってもよいですか。

同じ人物や出来事を選ぶこと自体は問題ありません。崩れやすいのは、用意した話をトピックに合わせずにそのまま話すときです。準備の1分で、題材のどこをトピックに合わせて話すかを決めておくと、話の中心がずれにくくなります。

スピーキングでは、理由を2つ挙げなければいけませんか。

理由の数に決まりはありません。1つの理由を、なぜそう言えるのかと問い直して説明を深めるほうが、話の筋を保ちやすいことも多くあります。質問によっては、場合によって答えが変わることを話すほうが、自分の考えに近い答えになります。

Band 7を取るには、イディオムを使わなければいけませんか。

Band 7の Lexical Resource の記述には、あまり一般的でない語やイディオムを使う力がある程度見られることが挙がっていますが、使う数の決まりはありません。意味と使う場面が分かっている表現を、合う場面で使えることのほうが大切です。合わない場面で無理に入れると、不適切な使い方になります。

That's an interesting question. で答え始めるのはよくないですか。

使うこと自体は誤りではありません。毎回の言い出しにすると、考える時間はつながっても答えの中身は増えず、決まった言い回しとして聞こえやすくなります。別の決まった言い回しに替えるより、言い出しを外して1文目で答えから話し始める練習をするとよいでしょう。

質問が聞き取れなかったときに聞き返すと、評価が下がりますか。

聞き取れなかった質問は聞き返してかまいません。Part 1 の質問は決まった文言で読まれるので、繰り返してはもらえても、別の言い方に変えてもらえるとは限りません。聞き取れないまま推測で答えて、質問とずれた話をするよりも、聞き返して答えるほうが質問に沿った答えになります。

型を使わないと、本番で何を話せばよいか迷ってしまいませんか。

型の代わりに、質問と自分の1文目を手がかりにします。1文目で質問に答え、その中の語を問い直して次の1文を足し、足した文が質問の答えを支えているかを確かめます。この手がかりは、トピックや質問の言い回しが予想と違っても使えます。

08まとめ

3週目に減らしたいのは、質問を聞く前から決まっている部分です。決まった言い出し、理由の数、答えの順番を外しても、質問と自分の1文目を手がかりに話し始められれば、用意していない質問に続けて答える準備ができています。

4週目は、1週目から付けてきた誤りの記録を使って、繰り返す誤りを絞り込みます。発音で1か月の中で変えやすいところと、本番前の数日の過ごし方も扱います。

シリーズのほかの回は、次のとおりです。

スピーキング ラスト1か月でスピーキング7.0を目指す:1週目に確かめるBand 7の採点基準と短く終わる回答【第1回】 スピーキング ラスト1か月でスピーキング7.0を目指す:2週目に確かめる答えの1文目と話の筋【第2回】 スピーキング ラスト1か月でスピーキング7.0を目指す:4週目に絞る繰り返す誤りと発音、本番前の数日【第4回】
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Hibiki Takahashi

この記事を書いた人

Hibiki Takahashi

日本語で学ぶIELTS対策専門スクール『PlusOnePoint(プラスワンポイント)』創設者・代表。『英語ライティングの鬼100則』(明日香出版社)著者。1997年に大阪大学医学部を卒業後、麻酔科専門医として活躍。2012年渡豪時に自身が苦労をした経験から、日本人を対象にIELTS対策のサービスを複数展開。難しい文法・語彙を駆使するのではなく、シンプルな表現とアイデアで論理性・明瞭性のあるライティングを指導している。これまでの利用者は4,500名を超え、Twitterで実施した「12週間チャレンジ」では、わずか4週間で7.0、7週間で7.5など、参加者4名全員が短期間でライティングスコア7.0以上を達成(うち2名は7.5を達成)。「IELTSライティングの鬼」の異名を持つ。オーストラリア在住14年、IELTS 8.5(ライティング 8.0)、CEFR C2。

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