試験まであと1か月。ライティングのスコアはまだ6.0〜6.5のまま。7.0に届くかどうかは分からなくても、目標達成に必要な対策には一通り取り組んでおきたい。そんな人に向けて、残り4週間の学習内容を1週ずつに分けて紹介します。
1週目は、Band 7の採点基準で何が求められているのかを理解し、自分の回答と照らし合わせながら、タスクの大きな読み違いを減らすことが目標です。また、書いた回答の誤りを記録する習慣も、この週から始めておきましょう。記録を続けておけば、4週目に自分の弱点を振り返り、最後の見直しに役立てることができます。
目次
採点基準のBand 7では、何が求められているのか
残りの4週間を、どの順番で使うか
タスクから「大きく」ずれるとはどういうことか
タスクの読み違いを減らす練習
書いた回答の誤りを記録し始める
この週の終わりに確かめること
よくある質問
まとめ
01 採点基準のBand 7では、何が求められているのか
最初に確かめたいのは、4つの採点項目それぞれについて、Band 7の記述で何が求められているかです。IELTS公式サイトでは、ライティングのスコアは採点項目ごとのバンドを平均し、0.5刻みになるよう端数を切り捨てて出すと説明されています。3つの採点項目がBand 7でも、残る1つがBand 6なら最終スコアは6.5なので、4つすべてでBand 7の記述を満たすことが現実的な目標になります。スコアの計算の仕組みは、次の記事で表にして説明しています。
ライティング・タスク2
IELTSライティングが6.5から7.0に上がらない:切り捨ての仕組みとテンプレートの限界
自分の回答のどの採点項目がBand 6になっているのかを、自分で判断するのは簡単ではありません。成績証明書に載るのはライティング全体のスコアで、採点項目ごとのバンドは記載されないからです。仮に見当が付いたとしても、「Task Response を上げる」と決めただけでは、次の回答で何を変えればよいかまでは分かりません。Band 7の記述を1つずつ読み、自分の回答が満たしているかどうかを確かめていくほうが、変える点を具体的に挙げやすくなります。
Band 7の記述と、自分の回答で確かめること
採点項目 Band 7の記述(要約) 自分の回答で確かめること
Task Response 設問の主要な部分に適切に対応し、明確で展開された立場が示されている。メインアイデアは展開され、裏づけられている 設問のすべてに答えているか。立場がイントロダクションから結論まで変わっていないか。各ボディの主張を、説明や例で最後まで支えているか
Coherence and Cohesion 情報とアイデアが論理的に構成され、回答全体を通して明確な展開がある。段落の中のアイデアの並びも概ね論理的 段落の中で、前の文から次の文へ話が飛んでいないか。つなぎ言葉を足さなくても、文と文の関係が読み取れるか
Lexical Resource ある程度の柔軟さと精密さをもって使えるだけの語彙がある。文体やコロケーションへの意識が見られ、スペリングや語形成の誤りはわずか 言いたいことに合った語を選べているか。語の組み合わせが不自然な箇所はないか。スペリングの誤りは少ないか
Grammatical Range and Accuracy さまざまな複雑な構文をある程度の柔軟性と正確さで使い、誤りのない文が頻繁に見られる 単文だけでなく、いくつかの種類の複文を使えているか。誤りのない文が、回答の多くを占めているか
表の「Band 7の記述」の列は、IELTS公式サイト(ielts.org)が公開しているライティング・タスク2の Band Descriptors(現行版)の要約です。原文と、ほかのバンドとの違いは次の記事で確認できます。
ライティング・タスク2
ライティング・タスク2 採点基準表(Band Descriptors):2023年5月改訂で何が変わったのか
独学なら自分の回答と照らし、レッスンなら講師に確かめる
独学の場合は、書いた回答を表の「自分の回答で確かめること」に沿って読み直し、満たせていないと思う記述を書き出します。それぞれに、どう書き直せば満たせるかを1行添えておきましょう。たとえば「ボディ2の主張を、例を1つ挙げただけで終えている。例の前に、なぜそう言えるのかを1文説明する」のような1行です。この1行が、次の回答で直す点になります。
自分の回答は、書いた本人には記述を満たしているように見えがちです。満たしているかどうか判断がつかない記述は「分からない」として残しておき、満たしていると決めつけないほうがよいでしょう。
レッスンや添削を受けている場合は、どの記述を満たしていないか、どう書けば満たせるかを講師に確認するのが確実です。採点項目ごとのバンドを聞くだけで終えずに、記述のどの部分を満たせていないのかまで聞いておくと、次の回答で何を変えればよいかがはっきりします。
現在のスコアが5.5の場合は、まずBand 6の記述と自分の回答を比べるほうが取り組みやすいかもしれません。その段階は次の記事で扱っています。
ライティング・タスク2
IELTSライティングが5.5から上がらない:6.5までに変えるのは4つの採点項目のうちどれか
タスク1をBand 6のまま残していないか
タスク2の対策に集中しているときほど、タスク1の確認は後回しになりがちです。IELTS公式サイトでは、タスク2はタスク1の2倍の重みでライティングのスコアに反映されると説明されています。比重はタスク2のほうが大きいものの、タスク2で7.0を取ってもタスク1が6.0なら、計算上ライティングは6.5になります。
このシリーズは、2週目以降はタスク2を中心に進めます。その前に、直近のアカデミック・タスク1の回答から概要文(overview)だけを抜き出し、データを分類して主な傾向や差異まで示せているかを確かめるとよいでしょう。
ライティング・タスク1
アカデミック・タスク1のOverview(概要文)の書き方:置く位置と、概要と詳細の境界を図の種類ごとに整理
1か月で変えやすいのは、すでに持っている力の使い方
語彙や文法の知識そのものを大きく増やすには、1か月では時間が足りないかもしれません。1か月で変えやすいのは、タスクの読み方、段落の組み立て方、見直しの手順のように、すでに持っている力の使い方です。このシリーズで1週ずつ取り上げるのも、こうした力の使い方です。
1か月で7.0に届くかどうかは、独学でも添削を受けても保証はありません。添削を受けると、自分の回答が採点基準のどのあたりにあるかを外から確かめる機会が増えます。独学なら費用を抑えられる一方で、回答のずれには自分で気づく必要があります。
02 残りの4週間を、どの順番で使うか
4週間は、タスクの読み方、段落の中身、定型文への頼り方、英語の正確さの順に取り上げます。回答全体の方向を決めるものから、1文の中の誤りへ、という順番です。
タスクを大きく読み違えた回答は、段落の組み立てや文法をどれだけ直しても、別の問いへの答えであることは変わりません。先に読み違いを減らしておくと、2週目以降に直す段落や文が、タスクに答えている回答の一部になります。
週 この週に確かめること 週の終わりの目安
1週目(この記事) Band 7の採点基準で求められていること、タスクの読み違い タスクを大きく読み違える回数が、週の前半より減っている
2週目 トピックセンテンスとメインアイデア 各ボディのメインアイデアを、書き始める前に1文で言える
3週目 定型文への頼り方、「〜しなければならない」という思い込み 決まった書き出しや型に頼らずに、タスクに合わせて書き始められる
4週目 文法・スペリング・単数と複数・冠詞の誤り、本番前の数日の過ごし方 1本の回答の誤りを5個以下に抑える
表の「週の終わりの目安」は、IELTSが定めた基準ではありません。次の週へ進む前に、自分の状態を確かめるための目安です。4週目の「5個以下」も、採点基準に個数が書かれているわけではなく、練習のときに自分で数えて管理するための数です。目安に届かなくても次の週には進み、残った項目は並行して続けます。
英語の正確さを扱うのは4週目ですが、誤りの記録は1週目から始めます。4週目に誤りを減らすときには、どの種類の誤りを何回繰り返しているかという記録が手元にあるほど、見直しで見る場所を絞りやすくなるからです。
03 タスクから「大きく」ずれるとはどういうことか
大きなずれとは、回答全体が、タスクで問われているのとは別の問いに答えてしまっている状態です。具体例の1文だけ話の範囲が少し広がるような小さなずれとは、Task Response への影響が違います。次のタスクで比べてみましょう。
An increasing number of developing countries are expanding their tourist industry. Why do you think this is the case? Do you think it is a positive or negative development?
3-1 回答全体が別の問いに答えてしまう読み違い
このタスクには設問が2つあります。発展途上国が観光産業を拡大しているのはなぜか、そしてそれは良い変化か悪い変化か、です。どちらか一方を落とすと、設問の片方に答えていない回答になります。
✗
観光産業が広がっている理由を2つ挙げて、2段落とも理由の説明で終える良い変化か悪い変化かという2つ目の設問に、どこにも答えていない
○
理由と、良い変化か悪い変化かの両方に答える設問が2つあるタスクでは、両方への答えがそろって、はじめてタスクに答えたことになる
評価する対象を取り違える読み違いもあります。tourist industry という語から観光そのものを思い浮かべると、旅行で視野が広がる、異文化に触れられる、といった旅行者の側の話が出てきます。
✗
観光旅行が良いことか悪いことかを論じる旅行者にとっての利点を挙げているだけで、発展途上国が観光産業を拡大していることへの評価になっていない
○
発展途上国が観光産業を拡大していることが、その国にとって良い変化か悪い変化かを論じる雇用や外貨の収入、環境や地域の暮らしへの影響など、受け入れる国の側から評価する
developing countries という限定を落として、観光産業一般や先進国の例だけで書き進めるのも、回答全体の対象を変えてしまう読み違いです。
この3つの読み違いが大きなずれになるのは、イントロダクションの立場を示す文、各ボディのトピックセンテンス、結論といった、回答の骨格になる文までタスクからずれてしまうからです。骨格がずれると、その下に続く説明や具体例がどれだけ丁寧でも、回答全体が別の問いへの答えとして読まれます。
3-2 1文の範囲が少し広がるだけの小さなずれ
ボディの具体例で1文だけ先進国の例に触れた、サポートの1文で tourist industry を travel と言い換えて意味が少し広がった、というずれは、回答全体の向きを変えません。立場の文とトピックセンテンスがタスクに答えていれば、回答がどの問いに答えているかは読み手に伝わります。
大きなずれ 小さなずれ
どこで起きるか 立場を示す文、トピックセンテンス、結論 具体例や補足説明の1文
回答への影響 回答全体が別の問いに答える その1文の範囲が広がる、または狭まる
この週の扱い 回数を数えて、減らしていく 記録しておき、2週目以降に段落の中身を作るときに見る
ここでの目標は、大きなずれをゼロにすることではありません。週の前半より後半のほうが大きなずれの回数が減っていれば、2週目に進む準備はできています。
ずれが起きやすい場所は、アイデアを出す段階、パラフレーズ、限定語の見落としなど、ほかにもあります。自分がどこでずれやすいのかを知るには、次の記事が参考になります。
ライティング・タスク2
タスクの理解のズレはどう防げばいいのか?自分では気づけない理由と気づくための練習法
ライティング・タスク2
問題タイプ別の答え方:ダブルクエスチョン【各論⑥】
04 タスクの読み違いを減らす練習
まずは、回答を書く本数を増やすより、タスクを読んで「何に答えるのか」を日本語1文で書く回数を増やします。読むだけの練習は1問数分で終わるので、40分の回答1本と同じ時間で、何問ものタスクの読み方を確かめられます。
ステップ すること 確かめること
1 日本語1文にする 誰が何をしていることについて、何を答えるのかを書き出す 限定語(developing countries など)と、設問の数が入っているか
2 検算する その読み方で答えを作れるかを確かめる 賛否や評価を問われているなら反対の立場も成り立つか、理由を問われているなら理由をそのまま挙げられるか
3 骨格と照合する 書き終えた回答から、立場を示す文、各ボディのトピックセンテンス、結論だけを抜き出してタスクと突き合わせる ステップ1で書いた1文とずれていないか
先ほどのタスクでステップ1をやると、違いは次のように出ます。
✗
観光業は良いか悪いかを答える発展途上国という限定と、理由を問う設問が抜けている
○
発展途上国の多くが観光産業を拡大していることについて、その理由と、それが良い変化か悪い変化かの両方を答える誰が、何をしていることについて、何を答えるのかがそろっている
作るのは日本語訳ではなく、自分が何を答えればよいのかを言い表した1文です。全文を訳せていなくても、この1文が書ければ書き始められます。逆に、この1文がすぐに書けないときは、タスクをまだ読み切れていない可能性があります。英文の構造や、指示語が指しているものを確かめ直してみましょう。
練習の組み方の一例として、平日は毎日タスクを5問ほど読んでステップ2まで済ませ、週に2本か3本は40分で回答を書いてステップ3まで通す、という配分があります。本数は生活の予定に合わせて調整してかまいません。
大きなずれの回数を数えるときは、自分の1文をその場で正しいと判断しないことが大切です。自分で書いた1文は、書いた直後には正しく見えます。翌日に読み直したり、添削を受けている場合は講師の解釈と比べたりすると、ずれに気づきやすくなります。ステップ1と2の詳しいやり方は、次の記事で実際のタスクを使って説明しています。
ライティング・タスク2
タスクを読み違えるのはなぜか?IELTSライティング・タスク2で起きる3つの誤読と読み方の練習
タスクの語の範囲をどこまで広げて読むかで迷うときは、次の記事の考え方も使えます。
ライティング・タスク2
タスクの表現をどう解釈するのか?迷ったときに範囲を決める3つの視点
05 書いた回答の誤りを記録し始める
書いた回答から、文法や語彙の誤りを種類ごとに記録しておきましょう。4週目に1本あたりの誤りを減らすとき、自分がどの種類の誤りを何回繰り返しているかが分かっていれば、見直しで確認する場所を絞れます。
記録するときは、直された語をそのまま書き写さずに、どういう種類の誤りだったのかが分かる形で書きます。
✗
promotes の s が抜けていたその単語だけの記録で終わる
○
主語が単数の一般論を書くとき、三単現の s が抜ける別の動詞で同じ誤りをしたときにも使える
あわせて、1本ごとの誤りの数も残しておきます。この数が、4週目に5個以下を目指すときの出発点になります。記録は、たとえば次のような表にしておくと続けやすいでしょう。
回答 誤りの型 自分で見つけた数 添削で指摘された数
1本目 主語が単数の一般論で、三単現の s が抜ける 1 2
1本目 数えられる名詞を、冠詞も複数形もない形で書く 0 3
1本目 合計 1 5
「自分で見つけた数」と「添削で指摘された数」を分けておくのは、誤りを見つける順番にも意味があるからです。書き終えてすぐにAI添削にかけると、自分で誤りを探す機会がなくなります。一晩置いて自分で読み返し、見つけた誤りを記録してから添削の指摘と照らし合わせると、自分では見つけられなかった誤りがはっきりします。4週目の見直しでは、こうした自分では見つけられなかった誤りを重点的に確認します。
ライティング・タスク2
文法は分かっているのにミスが出るのはなぜか:三単現のsを落とす仕組みと見直しの手順
ライティング・タスク2
ライティング短期対策の罠:時間がない人ほど陥りやすい学習の悪循環とは
06 この週の終わりに確かめること
週の終わりに、次の項目を確かめてみましょう。すべてにチェックが付かなくても2週目には進み、残った項目は並行して続けます。
4つの採点項目それぞれについて、Band 7の記述で何が求められているかを自分の言葉で説明できる
直近の回答について、満たせていないと思う記述と、どう書き直せば満たせるかを書き出した。レッスンを受けている場合は講師に確認した
直近のタスク1の概要文で、データを分類して主な傾向や差異まで示せているかを確かめた
タスクを読んで、何に答えるのかを日本語1文にできる。その1文に限定語と設問の数が入っている
週の前半と後半を比べて、タスクを大きく読み違えた回数が減っている
書いた回答の誤りを、種類が分かる形で記録している
1本ごとの誤りの数を、自分で見つけた数と指摘された数に分けて残している
07 よくある質問
試験まで1か月で、IELTSライティングを6.0から7.0に上げることはできますか。
1か月で7.0に届くかどうかは、独学でも添削を受けても保証はありません。1か月で変えやすいのは、タスクの読み方や段落の組み立て方、見直しの手順のように、すでに持っている力の使い方です。このシリーズでは、そうした力の使い方を1週ずつ確かめていきます。
自分の回答のどの採点項目がBand 6なのか、自分で判断できますか。
成績証明書に載るのはライティング全体のスコアで、採点項目ごとのバンドは記載されないため、自分で判断するのは簡単ではありません。Band 7の記述を採点項目ごとに読み、自分の回答が満たしていそうかを1つずつ照らし合わせるほうが、次に何を変えればよいかが具体的になります。レッスンを受けている場合は、どの記述を満たしていないかを講師に確認するのが確実です。
3つの採点項目がBand 7なら、ライティングは7.0になりますか。
残る1つがBand 6なら、最終スコアは6.5です。4つの採点項目の平均は0.5刻みになるよう端数が切り捨てられるため、平均が6.75でも6.5になります。4つの採点項目すべてでBand 7の記述を満たすことが、現実的な目標になります。
タスク2だけ対策すれば、ライティングは7.0になりますか。
タスク2はタスク1の2倍の重みで反映されますが、タスク2で7.0を取ってもタスク1が6.0なら、計算上ライティングは6.5です。直近のタスク1の概要文で、データを分類して主な傾向や差異まで示せているかを、早めに確かめておくと安心です。
タスクの読み違いは、ゼロにしないといけませんか。
1週目の目標は、回答全体が別の問いに答えてしまう大きなずれの回数を減らすことです。具体例の1文だけ話の範囲が広がるような小さなずれがあっても、回答全体が別の問いへの答えになるわけではありません。小さなずれは記録しておき、2週目に段落の中身を作るときにあらためて見ます。
1週目は、エッセイを何本書けばよいですか。
決まった本数はありません。書く本数より、タスクを読んで何に答えるのかを日本語1文にする練習を増やします。一例として、平日は毎日タスクを5問ほど読み、週に2本か3本は40分で回答を書いて、骨格の文をタスクと照合する組み方があります。
時間がないので、書いたらすぐAI添削にかけてもよいですか。
AI添削を使うこと自体に問題はありません。書いてすぐにかけると自分で誤りを探す機会がなくなるので、自分で読み返して誤りを記録してから添削の指摘と照らし合わせるのがおすすめです。そうすると、自分では見つけられなかった誤りが分かり、4週目の見直しでどこを重点的に確認すればよいかが決まります。