試験まであと2週間。1週目にタスクの読み違いを減らし、2週目にボディの段落の組み立て方を見直したら、3週目は定型文や、自分が正しいと思い込んでいる書き方のルールを見直します。
エッセイを書くとき、「この表現を使わなければならない」「この書き方は避けなければならない」と考えていることはないでしょうか。定型文を覚えたり、書き方のルールを守ったりすること自体が悪いわけではありません。ただし、それらにとらわれるあまり、設問に合った回答を書くことがおろそかになってしまっては本末転倒です。
今週は、Band 7の採点基準を踏まえて、定型文をどこまで使ってよいのか、そして自分が守っているルールが本当に必要なのかを確認します。決まりに頼るのではなく、設問や自分の主張に合わせて文章を組み立てられるよう、これまでの書き方を見直していきましょう。
目次
採点基準には、型や定型文について何が書かれているのか
定型文は、どこまでなら使ってよいのか
「〜しなければならない」と思っている決まりは、IELTSの決まりか
決まりの代わりに、何を基準に書けばよいのか
定型文と思い込みを減らす練習
この週の終わりに確かめること
よくある質問
まとめ
01 採点基準には、型や定型文について何が書かれているのか
採点基準には、型を使うこと自体を評価する記述も、禁じる記述もありません。型に関わるところで書かれているのは、回答の中身がタスクに答えているか、語が場面に合わせて選ばれているかです。Band 7の Task Response と Lexical Resource の現行版には、次のように書かれています。
Task Response・Band 7
Main ideas are extended and supported but there may be a tendency to over-generalise or there may be a lack of focus and precision in supporting ideas/material.
Lexical Resource・Band 7
An awareness of style and collocation is evident, though inappropriacies occur.
タスクを読む前に用意した理由は、どのタスクにも使えるように一般的な内容になりやすく、over-generalise(一般化に流れる)の記述に近づきます。また Lexical Resource のBand 4には、暗記したフレーズや定型表現(memorised phrases, formulaic language)を不適切に使うことがある、という記述があります。
この2点を、自分の回答で確かめられる問いにすると次のようになります。
記述 自分の回答で確かめること
a tendency to over-generalise ボディの1文目や理由の文が、ほかのタスクの回答にもそのまま入る内容になっていないか
awareness of style and collocation 暗記した言い回しを、このタスクの話題に合うかどうか確かめずに入れていないか
独学なら、直近の回答のイントロダクションとボディの1文目をこの問いで読み直します。レッスンや添削を受けている場合は、どの文が定型に頼っていて、そのタスクならどう書けたかを講師に確認しておくと、次の回答で書き替える場所が分かります。型に沿って書いた回答がなぜ7.0に届きにくいのかは、次の記事で詳しく説明しています。
ライティング・タスク2
IELTSライティングが6.5から7.0に上がらない:切り捨ての仕組みとテンプレートの限界
02 定型文は、どこまでなら使ってよいのか
書く順番や段落の役割を決めておくことは、型に頼ることとは別のものです。7.0を目指す段階で見直したいのは、タスクを読む前に用意した文や理由を、そのまま当てはめていないかという点です。前回と同じタスクで比べてみましょう。
Shops should give preference to selling local food rather than imported food. Do you agree or disagree?
ボディの1文目
△
Firstly, food plays an important role in people's lives, and everyone needs a healthy diet.食べ物を扱うどのタスクにも入る文で、地元の食品を優先すべきかどうかに答えていない
○
Firstly, local produce reaches shop shelves far sooner after harvest than imported produce.地元の食品と輸入品を比べ、このタスクの立場に1文目から答えている
△の文は、英文としては誤りがありません。それでも、地元の食品を優先すべきかどうかへの答えが出てくるのは2文目以降で、1文目だけを読んだ読み手にはその答えが見えません。
イントロダクションの1文目
△
In today's modern world, whether shops should sell local or imported food is a controversial issue.誤りではないが、どのタスクにも使える書き出しで、このタスクについての情報は増えていない
○
Supermarket shelves in many countries are now filled with fruit and vegetables flown in from the other side of the world.このタスクの話題に固有の状況を、自分の言葉で書いている
イントロダクションの1文目に定型の書き出しを使うこと自体で、評価が下がるわけではありません。ただ、定型の書き出しでは、語彙や文法の力は示しにくくなります。1文目に時間をかけすぎない範囲で、そのタスクの話題に固有の状況を1文で書けるようにしておくと、イントロダクションの段階からそのタスクに答え始めることができます。
確かめ方は1つです。書いた文を、別のタスクの回答の同じ位置に貼っても通るかを考えてみます。通ってしまうなら、その文はタスクを読む前から書けた文です。
ライティング・タスク2
IELTSライティング・タスク2 イントロの1文目に何を書くか|定型文・トレンド型・柔軟な導入の使い分け
ライティング・タスク2
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03 「〜しなければならない」と思っている決まりは、IELTSの決まりか
受験者が守っている決まりの中には、IELTSが定めていないものも混じっています。IELTSがタスク2について示しているのは、250語以上という条件と、40分程度という時間配分の目安、そして採点基準(Band Descriptors)です。段落の数や具体例の有無は、どこにも定められていません。
こうした決まりは、添削で受けた1回の指摘から生まれることがあります。「この段落では However は要らない」という指摘を「However は使ってはいけない」と覚えると、ほかのタスクでも同じ決まりを当てはめることになります。思い込みになりやすい決まりは、構成、語と表現、立場と論の進め方の3つに分けられます。
3-1 構成の決まりだと思っているもの
思い込み 実際のところ
ボディは必ず2つにしなければならない 段落の数に規定はありません。論点の数と、1段落でどれだけ展開できるかで決めます。2つにすると1段落あたりの語数に余裕が出るので、迷ったときの出発点にはなります
280語ちょうどに収めなければならない/結論は30語以上なければならない IELTSが定めているのは250語以上という条件だけです。ブロックごとの語数は、書く前に組み立てるための目安で、超えても足りなくても、それ自体が評価を左右するわけではありません
各段落に具体例を必ず入れなければならない 必須ではありません。理由の説明だけで主張が十分に裏づけられているなら、具体例を書かずに次へ進んでかまいません
ライティング・タスク2
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ライティング・タスク2
IELTSエッセイの語数配分:260〜280語を導入・ボディ・結論にどう割り振るか
3-2 語と表現の決まりだと思っているもの
思い込み 実際のところ
タスクの語は必ず言い換えなければならない タスクの文をまるごと写すのは避けたいところですが、キーワードを1語ずつそのまま使うことは問題ありません。意味がずれる言い換えをするより、立場を示す文やトピックセンテンスではキーワードをそのまま使うほうが安全です
難しい語と複雑な構文を使わなければ7.0は取れない Band 7の記述では、語や構文を柔軟に、ある程度正確に使えることが求められています。使い慣れていない語を入れて意味がずれたり、長い文で誤りが増えたりすれば、その記述からは遠ざかります
ライティング・タスク2
ライティングはリスク・リワードの連続:高度な語彙と複雑な構文をどこまで狙うか
3-3 立場と論の進め方の決まりだと思っているもの
思い込み 実際のところ
反対意見への譲歩を必ず入れなければならない ボディ1とボディ2で同じ方向の理由を2つ示す構成でもかまいません。譲歩を入れるなら、どこで譲歩を終えて自分の主張に戻るかを先に決めておきます
西洋の常識に合わせた意見を書かなければならない 意見の中身を読み手の社会に合わせる必要はありません。日本の事情を根拠にするなら、In Japan のように範囲を示し、前提を1文で書きます
ライティング・タスク2
Howeverを段落の途中で使うと議論の転換で行き詰まる:譲歩の置き場所とプランニング
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IELTSのエッセイは西洋の常識に合わせるべきか:日本の事情を根拠にするときの前提の示し方
どの決まりも、目安として使う分には役に立ちます。気をつけたいのは、目安を守ることが目的になり、タスクに合わない場面でも当てはめてしまうことです。
04 決まりの代わりに、何を基準に書けばよいのか
基準にするのは、タスクと、これまでの2回で作ってきた2つの1文です。何に答えるのかを言い表した日本語の1文と、各ボディのメインアイデアの1文があれば、段落の数も具体例の有無も、その主張を支えるのに何が必要かで決められます。
書いている途中で迷ったときは、決まりを思い出す代わりに、次の3つを自分に問いかけてみましょう。
この段落の主張は何か。それをこの文は支えているか
この文は、ほかのタスクの回答にもそのまま入ってしまわないか
いま守ろうとしている決まりは、採点基準かタスクの指示に書かれているか
3つ目の問いに「書かれていない」と答えたら、その決まりは自分で選んだ目安です。目安どおりに書くとタスクに答えにくくなる場面では、タスクのほうを優先します。
日本語で組み立てた考えをそのまま英語に置き換えると、決まりとは別の形で、文や段落の組み立てが日本語の習慣に引っぱられます。段落の主張を先に書くという英語の段落の組み立て方も含めて、次の記事が参考になります。
ライティング・タスク2
日本語で考えたまま書くと伸び悩む理由:語彙・構文・論理展開の3層で見る母語の影響
05 定型文と思い込みを減らす練習
まず、これまでに書いた回答を並べて、毎回同じ形になっている文を見つけるところから始めます。自分では使い分けているつもりでも、並べると同じ書き出しが続いていることがあります。
ステップ すること 確かめること
1 同じ位置の文を並べる 直近の回答3本から、イントロダクションの1文目と各ボディの1文目を抜き出して並べる タスクが違うのに、同じ形や同じ言い回しが続いていないか
2 タスクに合わせて書き直す 同じ形になっていた文を、そのタスクの話題に固有の内容で書き直す 書き直した文を別のタスクに貼ったとき、通らなくなっているか
3 自分の決まりを書き出す 書くときに守っている決まりを、思いつくだけ日本語で書き出す それぞれが採点基準かタスクの指示に書かれているか
4 目安に書き直す 書かれていなかった決まりを「〜を目安にする」という形に書き直す どんな場面なら目安から外れてよいかを1行で言えるか
練習の組み方の一例として、週の前半にステップ1から4を一度通し、後半は新しいタスクで40分の回答を2本か3本書く、という配分があります。回答を書いたら、イントロダクションとボディの1文目だけをステップ1の文と並べ、同じ形に戻っていないかを見ておきましょう。前の週から続けているトピックセンテンスの練習と、誤りの記録もそのまま続けます。
暗記した表現を外すと、語数が足りなくなるのではないかと不安になるかもしれません。タスクに合わせた1文は、定型文より短くなることもあります。その分は、ボディのメインアイデアの説明を1文足して補うほうが、回答の中身が増えます。
ライティング・タスク2
「シンプル・イズ・ベスト」の原則:語数を稼ぐ長い文が6.0以上で逆効果になる理由
06 この週の終わりに確かめること
週の終わりに、次の項目を確かめてみましょう。すべてにチェックが付かなくても次の週に進み、残った項目は並行して続けます。
直近の回答のイントロダクションの1文目が、毎回同じ形になっていない
ボディの1文目を別のタスクの回答に貼っても、そのままでは通らない
書くときに守っている決まりを書き出し、採点基準かタスクの指示に書かれているかを確かめた
書かれていなかった決まりを、目安として扱えている
迷ったときに、決まりではなくタスクとメインアイデアの1文に戻って判断できる
誤りの記録を続けている
07 よくある質問
テンプレートを使って書くと、IELTSライティングのスコアは下がりますか。
型を使うこと自体で評価が下がるわけではありません。問題になるのは、タスクを読む前に用意した文や理由が、そのタスクの設問に答えていない場合です。暗記したフレーズを不適切に使うことは、Lexical Resource のBand 4の記述にも挙げられています。
イントロダクションの1文目は、定型文でもよいですか。
定型の書き出しで評価が下がるわけではありませんが、語彙や文法の力は示しにくくなります。1文目に時間をかけすぎない範囲で、そのタスクの話題に固有の状況を1文で書けるようにしておくと、イントロダクションの段階からそのタスクに答え始めることができます。
ボディは2つと3つのどちらにするべきですか。
段落の数に規定はありません。論点の数と、1段落でどれだけ展開できるかで決めます。2つにすると1段落あたりの語数に余裕が出るので、迷ったときの出発点にするとよいでしょう。
タスクの単語は、すべて言い換えないといけませんか。
タスクの文をまるごと写すのは避けたいところですが、キーワードを1語ずつそのまま使うことは問題ありません。意味がずれる言い換えは立場そのものを変えてしまうので、立場を示す文やトピックセンテンスでは、自信のない言い換えはしないほうが安全です。
反対意見への譲歩は、必ず入れなければいけませんか。
必ず入れる必要はありません。ボディ1とボディ2で同じ方向の理由を2つ示す構成でもかまいません。譲歩を入れる場合は、どこで譲歩を終えて自分の主張に戻るかを、書き始める前に決めておきます。
自分が守っている決まりが、IELTSの決まりかどうかはどう確かめればよいですか。
採点基準(Band Descriptors)かタスクの指示に書かれているかを見ます。タスク2で示されているのは、250語以上という条件と、40分程度という時間配分の目安、そして採点基準(Band Descriptors)です。それ以外は自分で選んだ目安として扱い、タスクに答えにくくなる場面ではタスクのほうを優先します。
暗記した表現を減らすと、語数が足りなくなりませんか。
タスクに合わせた1文は、定型文より短くなることもあります。足りなくなった分は、ボディのメインアイデアの説明を1文足して補うと、語数だけでなく回答の中身も増えます。